はじめに:前回のまとめ
1.労働法の概観
2.講義方法の説明
*本日の講義テーマ:日本の企業別組合=「御用組合」か?
1.事例から([資料1]参照)
2.世界の団体交渉システム
1)産業別組合の組織形態をとっている場合
┌─────────────────┐
A産業使用者団体 │ X社 Y社 Z社
│
└─────────────────┘
団体交渉 ↑↓
┌─────────────────────┐
A産業労働組合 │ a b
c
g │
└─────────────────────┘
d e f
h
2)アメリカ合州国(排他的交渉代表制度)
┌─────────────────┐
A産業使用者団体 │ X社 Y社 Z社
│
└─────────────────┘
団体交渉 ↑↓ ┌──────────────────┐交渉単位
│┌─────────────────┼───┐
交渉代表 ││ a
b c
│ g │ A労組
│└─────────────────┼───┘
│
d e f
│ h
└──────────────────┘
*交渉単位内で、労働委員会が管轄する全従業員の選挙によって交渉代表を選ぶ
選択肢は、A組合 vs. (B組合) vs. No Union
*現実には、NO UNION が多い(1950年の25%から1980年の52%へ)
原因:組合組織率の低下(約17%)
不当労働行為の増加(1980年は1957年の750%)
反組合コンサルタントを2/3の会社が雇っている 等
3)日本:企業別組合
X社 Y社 Z社
団体交渉
団体交渉
X社 ┌──┐
Y社 ┌─┐
労働組合│a b│ 労働組合│ c│
g
└──┘
└─┘
d e f
h
<参照>
組合数 イギリス= 309 組合(1989年)
AFL-CIO = 86 組合(1993年)、未加盟の独立組合が存在
DGB = 16 組合(1995年)、未加盟の独立組合が存在
日本 =34000 組合(1988年)
組織率 日本:24.2%(1993年)→現在は22%
高い国(北欧諸国:80~90%、イギリス・オランダ:40~50%)
低い国(アメリカ:14% 、フランス:8%)
但し、日本よりはるかに労働組合の影響力が大きいシステム
3.労働者参加制度([資料2]参照)
1)労働者参加の諸形態(ILOのオスロ・シンポジウム 1974年より)
1.労働者統制
2.労働者重役制
3.従業員代表制:実際には組合代表、団体交渉との差異の問題
4.団体交渉制
2)ドイツ :労働者代表制と労働者重役制
3)スウェ?デン :労働者重役制と労働者持株制度
4)日本 :労働協約に基づく労使協議制
4.御用組合なのか
1)諸見解
2)企業別組合の弱点
3)労使関係を論じる際の若干のコメント
1.制度の視点からの議論は誤り
理由:制度も動きもその意味も多様
2.議論方法
1)評価軸=労働者の権利・条件の擁護・発展
2)他方で、企業別組合制度成立と維持の必然性;その活動の
弱点・不十分性
3)「御用組合論」の傲慢さ
3.法的視点から見ると、どうなるのか
[資料1]
◆山岸章・連合顧問
94.12.03 朝日新聞夕刊
ボクは、四十六年間の労働組合人生を通して、この信条(「是は是、非は非」)を守ってきたつもりだ。「日経連の意見と八割は一致する」。連合会長時代、そう公言していた。住宅政策、物価といった国が取り上げるべき課題については意見は同じ、共同行動で解決を迫ろう、と。一致しない二割は、賃金や労働時間といった労使間で解決すべき問題への取り組み。これは徹底的に団体交渉しよう、と言い続けた。そこまで率直にならないと、労使間の信頼関係はつくれない。
◆要求なしで春闘妥結
95.03.14 朝日新聞夕刊
スーパー大手のユニーの春闘は十三日、今年の賃上げを三・八一%、九千九百七十七円(組合員平均三〇・八歳)とすることで労使が合意した。同時に、一時金は五カ月とすることも決めた。組合側が賃上げ要求を出さず、労使でつくる特別の委員会で話し合って決める異例の春闘となった。全ユニー労働組合(平野俊文委員長)によると、産業間・企業間の業績格差が進み、年俸制も導入される時代に、他産業・他企業をにらんで要求する形は限界に来ていると判断し、競争に打ち勝つためには、経営側と対立する形の団体交渉もふさわしくないため、こうした方式にしたという。ユニーは「価格破壊」の進展などに伴い、リストラクチャリング(事業の再構築)を進めている。これを受け、昨年の春闘で組合は定期昇給のみを要求、ベースアップゼロで妥結していた。
[参考文献]
日本労働法学会編『現代労働法講座 4 団体交渉』(1981年、総合労働研究所)
光岡正博『団体交渉権の研究(新訂版)』(1986年、法律文化社)
同『経営参加権の研究』(1988年、法律文化社)
坂本重雄『団体交渉権論』(1994年、日本評論社)
[自己点検]
1)自己点検
a)講義を受講して、理解が進んだ点
b)講義でわかりにくかった点
2)自由記述
a)講義に関する質問
b)その他
*注意(再録):自己点検について
1.毎回の講義で自己点検の提出
2.趣旨:講義への能動的出席を援助するための措置
3.1)点検項目a)b)によって成績評価する
一発逆転試験も実施するが、逆転する答案はほとんどない
*2)は自由記述であり、成績評価の対象ではない
4.e-mailも活用してもらいたい。私のaddressは、satokei@law.ritsumei.ac.jp