2001年度 立命館大学夜間主コース 「労働団体法」講義      2001.05.22.佐藤
 第6回「B組合活動  A・便宜供与」

はじめに
 1.前回のまとめ:組合と組合員の関係
   具体的事例:ユニオン・ショップ協定の効力
   前回の質問:ユ・シ協定違憲論の背景、最高裁判決後のユ・シ協定の意味
 2.講義の構成:団結権(労働組合、組合活動)、団交権、団体行動権

*本日の講義テーマ:労働組合は組合事務所を自由に使えるのか?

1.事例から(国労会館明け渡し請求事件:資料参照)

2.便宜供与をめぐる問題状況
 1)「便宜供与」とは何か
 2)便宜供与の必要性:組合の組織形態
 3)便宜供与の際の権利の対立:使用者の施設管理権と組合活動の権利
 4)便宜供与を受けることが労働組合の権利といえるか

3.労働組合法規定
  1)関連規定:労組法二条・七条→労働組合の権利とは規定されていない
 2)法解釈へ:私法上の原則 v.組合活動にとっての不可欠性

4.具体的局面
 [要点]便宜供与の使用者からの一方的廃止が問題になることが多くなり、その際に、     便宜供与の法的性質として、憲法28条を根拠とする組合保障の観点からの主     張と、労使合意による供与であるとの主張が闘わされている。

 1)在籍専従
  1.在籍専従とは何か
   2.在籍専従の根拠をめぐる論点
      a)組合保障論:根拠としての憲法28条
      b)労使合意論:使用者の財産権侵害が正当化されるためには合意が必要
   3.最高裁判所判決:三菱重工長崎造船所事件 最一小判 昭48.11.8

 2)チェック・オフ
  1.チェック・オフとは何か
   2.権利の根拠:チェック・オフの適法性と使用者による一方的廃止の相当性
    a)組合保障論
    b)労使合意論
   3.最高裁判所判決:済生会中央病院事件 最二小判 平元.12.11
    a)少数意見
    b)多数意見
     労基法24条違反でありむしろ違法行為
     ←批判 1.労基法24条の保護は不要、2.組合員のみの問題、3.実態

  3)組合事務所の供与
   1.組合事務所供与の根拠をめぐる論点
    a)組合保障論
      b)労使合意論
     民法597条
     ←批判 民法の条文が前提とする関係ではない
   2.最高裁判所判決:日産自動車事件 最二小判 昭62.5.8
   b)+差別禁止→組合事務所貸与
     ←評価 論理の飛躍、b)への修正

[参考文献]
*「便宜供与」の問題は、通常のテキストでは不当労働行為の項目で扱われることが多い。
 日本労働法学会編『現代労働法講座8不当労働行為U』(1982年、総合労働研究所)
 塚本重頼『不当労働行為の認定基準』(1989年、総合労働研究所)
 宮里邦雄「便宜供与差別」季刊労働法161号(1991年)

[自己点検]
 1)自己点検
  a)講義を受講して、理解が進んだ点
    b)講義でわかりにくかった点
  2)自由記述
  a)講義に関する質問
   b)その他

[受講者数]
     4/17 4/24 5/08 5/15 5/22 5/29 6/05 6/12 6/19 6/26 7/03 7/10 7/17
法    48   48  44   47
経・営   7    3    7    2
産社     6    5    4    5
合計    61   56   55   54
[国労に対する事務所の明け渡し請求事件]

◆国労会館の敷地問題、法廷へ                      94.02.28  朝日新聞
 国鉄清算事業団は、東京・八重洲にある国鉄労働組合(国労)本部ビル(国鉄労働会館)の敷地の明け渡しを求める訴訟を東京地裁に起こした。時価数十億円で、同事業団が返還訴訟に持ち込んだ旧国鉄時代の貸し付け地では最大規模。同じような未返還地は全国にかなり残っており、事業団は、政府が国鉄の分割・民営化当時に示した旧国鉄用地の処分期限を三年後に控え、返還交渉が難航しているものについては順次法的措置を講ずる方針だ。
 国鉄労働会館が立つ旧国鉄の貸し付け地は約六百五十平方メートルで、敷地の大部分を占めている。同事業団によると、旧国鉄が一九五二年に一年ごとに更新する短期使用契約を国労と結び貸し付けた。国労中央本部のほか全労協など関連労組団体を中心に労働金融公庫、旅行代理店、居酒屋など十九団体が入居している。

◆スト権スト訴訟が決着、和解成立 国鉄清算事業団と国労        94.12.28  朝日新聞
 旧国鉄を引き継いだ国鉄清算事業団が国労などを相手に東京・八重洲の国労会館の明け渡しを求めた訴訟が二十七日午後東京地裁で和解した。和解の条件として国労側が会館の明け渡しに同意し、清算事業団は一九七五年のスト権ストに絡んで国労などに二百二億円の損害賠償を求めた訴訟を取り下げた。これにより提訴以来十八年に及んだ「スト権スト訴訟」が決着した。清算事業団と国労の双方は今回の和解に先立って二十四日亀井静香運輸相の立ち会いのもとで合意書に調印。和解と訴訟取り下げはその内容に従って行われた。

◆旧国鉄の貸付地、返還拒めば法的措置                  94.12.31  朝日新聞
 旧国鉄時代に組合や民間会社に貸し付けられたままいまだに返還されていない土地について、国鉄清算事業団(西村康雄理事長)は、返還を拒否している相手には一九九五年度中にすべて民事訴訟や調停などの法的措置を取ることを決めた。一方で基本的に無償、無条件で明け渡しを求めてきた従来の方針を改め、必要なケースには補償措置を取ることで、和解による早期解決を促す。清算事業団は今回の措置を九七年度末までに全物件の処分を終えるための切り札にする考えだ。
 旧国鉄は、遊休鉄道用地の一部を組合事務所や民間の商店、事務所などに使うことを認めていた。権利金を取らず、使用料も相場より割安にする代わり、三年ごとの短期契約とし、国鉄が要求すれば無条件に立ち退くことになっていた。
 八七年に清算事業団が国鉄を引き継いだ際、こうした貸付地は全国で一万四百件残っていた。事業団は契約を打ち切る一方、使用者と個別に交渉して返還を求めた。その結果、九四年度初めには未返還地は千七百件、約八十八ヘクタールまで減少した。しかし、長期間の交渉にもかかわらず返還されないケースも多く、分割民営化時に政府が旧国鉄の長期債務を返済するための資産処分の期限とした九七年度末が迫ってきたため、法的措置で解決を目指すことを決めた。