2001年度 立命館大学夜間主コース 「労働団体法」講義     2001.06.12.佐藤
 第9回「C団体交渉 団交権保障の要件」

はじめに:試験解説

*本日の講義テーマ:組合は何についても交渉できるのか?

1.事例から([資料]参照)

2.団体交渉権行使が正当であるための要件
 1)交渉当事者
  1.典型:労働組合 vs. 使用者
    2.問題となる事例
   1)労働者側
     イ)上部団体:1)個人加盟          2)連合体
     ロ)下部組織:1)単位組合の支部
          2)自主的組織 e.g.三池闘争での職場組織
     ハ)併存組合:1)共同交渉   cf.旭ダイヤモンド事件 最二小判 昭60.12.13
     ニ)非典型的組織:1)争議団、2)合同労組、3)地域労組
    2)使用者側
       イ)元使用者・職安所長、ロ)出向・派遣先企業、ハ)親会社
 2)交渉担当者
   1.典型:組合委員長 vs. 社長
  2.問題となる事例:交渉委任 cf.委任禁止条項
 3)交渉対象事項
   1.典型:賃上げ・時短
    2.問題となる事例:経営事項
    大浜炭鉱事件(最二小判 昭24.4.23)、高知新聞社事件(最三小判 昭35.4.26) 4)交渉態様
  1.典型:誠実交渉
  2.問題となる事例:差し違え条件の提示
    日本メ−ル・オ−ダ−事件 最三小判 昭59.5.29

3.交渉対象事項と「経営権」
 1.「経営権」の主張 cf.公務員について「管理運営事項」
    経営・販売戦略、役員・管理職の人事など
 2.諸見解
   A説・経営事項については義務的団体交渉事項ではない
    cf.諸外国(ドイツ:経営協議会で、合州国:任意的事項)
   B説・経営事項であっても、労働条件に直接関係するものは義務的事項
   C説・労働内容・雇用保障への関心からであれば、義務的事項
    理由:公害、賄賂等、自らの労働の社会的意義にかかわる、自らの雇用に影響

[自己点検]
 1)自己点検
  a)講義を受講して、理解が進んだ点
    b)講義でわかりにくかった点
  2)自由記述
  a)講義に関する質問
   b)その他

[資料]交渉事項

◆栃木新聞「廃刊」発表から1ヵ月 労組、復刊へ地道な活動      94.05.01  朝日新聞
 栃木新聞の経営陣が三月三十一日に突然、「廃刊」を発表してから一カ月。この間、廃刊に反対する四十四人の労組員たちは、経営陣との団体交渉の実現に向け、活動を続ける一方、四十三年の歴史を持つ「栃木新聞の灯を消すな」と、独自にA3判でコピーした「栃木新聞」の発行を続けている。労組の団交要求に、経営側は応じる気配を見せず解決の糸口は見えない。「話し合いもなく突然解雇を通知するなんて聞いたことがない。非常識すぎる」と労組の顧問弁護士。地労委による団交交渉のあっせんも成果がなく、労組は「不当労働行為救済」の申し立てに踏み切った。「経営側には一日も早く交渉の場についてほしい」と石川委員長。「一カ月たって一人ひとりに組合員としての自覚が出てきた。本格的な活動はこれからです」。栃木新聞の実質的なオーナー会社だった鹿沼カントリーグループの斎藤昌男弁護士の話「会社の解散を前提とした交渉なら応じられる。本来、解散と廃刊は株主の専権事項。労使間の話し合いで決められることではない。(こちらの主張が)正しいか正しくないかは、最終的には最高裁判事が決めることだ。」

◆安全問題などで団交を申し入れ JR九州2労組             92.10.08  朝日新聞
 JR九州の2労組が7日、安全問題と合理化問題で会社へ団体交渉を申し入れた。九州運輸局が事故の続発するJR九州に対し「安全管理が不十分。抜本策を示せ」と警告書を出しており、労組側も「極端な合理化と利益優先策が事故多発の原因」と批判している。しかし、会社側は「ダイヤ編成や事故問題は会社の経営権に属し、団交になじまない」と、拒否の姿勢をとっている。団交を求めたのは、運転士中心で旧動労系のJR九州労(北弘人委員長、約1300人)と国労九州本部(飯田信広委員長、約750人)。

◆国立病院の「賃金職員」、リストラ危機                 94.03.02  朝日新聞
 年収が今より一挙に二割もダウンしたら……。国立の病院・療養所の「賃金職員」と呼ばれる人たちが、危機に直面している。ことの起こりは、赤字経営となっている国立病院などの人件費削減を狙って厚生省が、賃金職員に的を絞って昨年打ち出した人減らしと待遇切り下げの「リストラ」令。全日本国立医療労働組合(全医労)近畿地協は三日、大阪市内で白衣の看護婦らを動員して一千人規模の「ひな祭りデモ」を繰り広げ、同省近畿地方医務局に「リストラ」令の撤回をアピールする。
 賃金職員は「日雇い」の身分で採用され、全国で看護婦を含めて約一万三千人いる。職員全体の約二割を占め、医療現場の人手不足を補ってきた。一律に正職員より低い待遇におかれていたが、労使交渉し、仕事の実態に応じた上積みをはかってきた。それを厚生省は、今春、来春の二段階で上積み前の水準に戻す、としている。人員も四年かけて約千八百人減らす計画だ。全医労大阪病院支部は、「勤務条件そのものの変更だ」と主張し、病院側に団体交渉を申し入れている。しかし、病院側からは「病院の管理運営事項だ」と、事実上、団交を拒む返事しかかえっていない。
 

[受講者数]
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法    48   48  44   47   46   45   52
経・営   7    3    7    2    5    4    6
産社     6    5    4    5   3    5    4
合計    61   56   55   54   54   54   62