2001年度 立命館大学経済・経営学部 「労働法」講義

第1回「労働法の概観」

2001.09.26. 佐藤 
 

はじめに:本日の予定
 1.講義内容の紹介・内容変更
 2.労働法のアウトライン
 3.講義の受講方法の解説

1.事例から:スタートレックDS9「Bar Association」(ビデオ)

2.経済・経営学部講義としての「労働法」
 1.「人事労務管理論(「人的資源管理論」)」「労使関係論」との関係
  1)「人事労務管理論」の構成
  2)労働法の狭い位置付け
 2.人事労務管理の規範としての労働法
  1)人事労務管理は使用者の自由裁量ではない
  2)規範
     1.憲法規範
     2.労働契約法規範
     3.実定労働法
 3.講義の構成  cf.人事労務管理論の構成、浪江先生の講義概要
  9/26 労働法の概観
   10/03  労務管理とジェンダー
     /10  雇用管理     :採用
     /17           :人事異動(配転・解雇)
   /24                    :多様な雇用形態
     /30  就業条件管理   :労働時間
   11/07                   :休息
   /14           :労働安全衛生、労働災害補償
   /21  企業福祉管理   :福利厚生、賃金
     /28  従業員関係秩序管理:就業規則と懲戒
   12/05  労使関係管理   :労働組合
     /12          :団体交渉
    /19                   :団体行動
    1/09  権利救済機構   :裁判所、労働委員会、労働基準監督署

3.労働法のアウトライン
 1.労働運動の論理 vs. 法認された範囲
  2.労働法の体系
    1)最低条件保障と組合活動の場保障
    2)広義の「労働法」
  3.実定労働法の分野別法律
 

 ┌──────┬────────────┬────────┬────────┐
 │      │(a)労働団体法      │(b)労働保護法  │(c)雇用保障法  │
 ├──────┼────────────┼────────┼────────┤
 │(1) 民間   │ 労働組合法      │ 労働基準法  │ 雇用対策法  │
 │      │ (旧:1945.12.22   │ (1947.4.7) │ (1969.7.21 )│
 │      │  現:1949.6.1)   │ その他    │ 雇用保険法  │
 │      │ 労働関係調整法    │        │ (1975.4.1) │
 │      │ (1946.9.27) その他 │        │ その他    │
 ├──────┼────────────┼────────┼────────┘
 │(2) 公的現業│            │        │        
 │   国  │ 国営企業労働関係法  │ ○(全面適用)│        
 │      │ (公労法:1948.12.20 │        │        
 │      │  国労法:1986.12.4 )│        │        
 │   地方 │ 地方公営企業労働関係法│ ○(全面適用)│        
 │      │ (1952.7.31)     │        │        
 ├──────┼────────────┼────────┤
 │(3) 一般公務│            │        │        
 │   国  │ 国家公務員法     │ X(適用なし)│        
 │      │ (1947.10.21)    │        │        
 │   地方 │ 地方公務員法     │ △(原則適用 │        
 │      │ (1950.12.13)    │ 一部適用なし)│        
 └──────┴────────────┴────────┘
 4.労働条件設定手段
   1)四つの手段
    1.「労働契約」:個人の主体性と労働者の二重の自由
       2.「労働協約」:労働者集団による統制、
       3.「就業規則」:使用者による経営秩序維持、
       4.「法定基準」:最低基準の法による確保
    2)相互関係
 ┌────────────┐(a) 労組法16条「規範的効力」
 │労働契約?(a) ? 労働協約 │(b) 労基法1条「最低基準」
 │ |  (f)    |   │(c) 労基法1条「最低基準」、労基法92条「法令に従う
 │ (d)       (b)   │(d) 労基法93条「就業規則が最低」
 │ |  (e)     |   │(e) 労基法92条「協約に従う」
 │就業規則?(c) ? 法定基準 │(f) 労基法1条「最低基準」、労基法13条
 └────────────┘
    3)「最低基準」の現在の問題点
       1.協約で上積みができていない(つまり、「最高基準」となっている)
       2.法定基準が低い
       3.その法定基準すら守られていない
 
 

[自己点検項目]
 1)講義を受講して、理解が進んだ点
  2)講義でわかりにくかった点
  3)講義に関する質問
 4)その他(自由記述)
 

*講義受講上の注意事項

1.大学の講義とは
 1)教養講演会ではない
   ・知識を得ることが目的ではない
   ・自らの考える力を得ることが目的
 2)受講態度
   ・受け身でボーと私の話しを聞いていても何の意味もない
   ・考えながら聞かなければならない
     考えること:何がわかったか、何がわからなかったか、質すべき疑問は何か
           論点について自分はどう考えるか
     cf.私の学生時代のゼミ教官・佐藤幸治先生のお話し
 3)講義出席が必須
   ・講義に出ず、教科書・参考書で勉強して力がつくことは絶対にありえない
   ・形式的にも、「大学設置基準」により講義に出席していない学生に単位を認定す
     ることはできない。

2.講義の進め方の具体的注意
 1)講義の進め方
   1.休講はないし、逆に補講もない。
   2.講義はレジュメに基づいて進める。
   3.一回の講義で一話完結させる方式で話す。
  2)レジュメとは何か
   1.レジュメとは、講義を実際に聞く際に、話の全体像と、その中に置ける現在話して
     いる事項の位置を理解するためのもの。講義を聞かずして、レジュメを読むだけで
   内容を理解することは絶対に不可能。また、レジュメとは資料ではないので、講義
   の欠席者用にレジュメを保存・配布することなどありえない。
    2.あくまで講義が主で、レジュメは従の存在。たとえば、レジュメを見て、私が話し
     を飛ばした、と言う学生がいるが、これは本末転倒した発想である。
    3.レジュメは、講義の最初に配布する。遅れた者は、教壇まで取りに来ること。
  3)ノ?トのとり方
   1.大判のノートを使い、レジュメに書き込んではいけまない。
    ・レジュメに書き込んでいる人がよく見られるが、私の講義レジュメは書は込みを
       前提としたものとはなっていないし、ノートをとることが学ぶ上で重要であると
    考えているので、書き込みできるレジュメにするつもりもない。
    2.論点と筋を中心に、私の述べる全てを記述する構えで臨んでほしい。
  4)自己点検について
    1.講義への能動的出席を援助するための措置
   2.点検項目1)、2)によって成績評価する
     一発逆転試験も実施するが、逆転する答案はほとんどない
   3.質問・意見表明については、e-mailも活用してもらいたい。私のaddressは、
     satokei@law.ritsumei.ac.jp

[教科書]
 西谷敏・萬井隆令編『労働法2 個別的労働関係法[第3版]』(1999年、法律文化社)

 
 勉強会をやりませんか

 本年度は、2時10分からの本講義と、6時からの夜間の労働法を担当しています。その
ため、本講義終了後、6時からの講義開始までの間、時間が空いています。この時間を利用
して、学生から本講義についての質問を受けたり、場合によっては自主ゼミのような形態で
労働法(社会保障法でもよい)勉強会を行ったりすることが可能です。ただ、学生諸君の希
望があるかどうかが不明ですので、もし希望があれば、「自己点検用紙」にその旨を書いて
ください。もし開くならば、以下のような実施要領になると思います(希望に応じて考えま
すが)。

日時:毎週水曜日
3時40分頃(本講義終了後)?6時前(夜間の講義開始)
場所:この講義教室が使えればこの教室。
   使えなければ、スチューデント・ワークショップのどこかの部屋
内容:講義についての質疑応答
   勉強会
参加:自由