第8回「就業条件管理: 労働災害」
2001.11.14. 佐藤
はじめに
*本日の講義テーマ:過労死に対する補償はなされないのだろうか?
1.具体的事例から[資料1:過労死]
(a)概念:死因は急性心不全、しかしそれを「過労死」と呼んでいる、
(b)原因:長時間労働と単身赴任
劣悪な労働環境
(c)対処:死亡に対して労災補償を申請し、
「業務が原因」の基準で判断し、
遺族補償給付が決定された。
2.「過労死」とは何か
@「過労死」概念について((a))
1.医学的に見ると
2.概念:社会医学
3.件数 労働省 →認定件数
過労死弁護団→推定
A法的問題点
1.原因((b)):長時間労働は「労働時間」の項で
劣悪の労働環境については、「3.事前予防」で
2.補償((c)):「4.事後救済」で
3.事前予防
@労働災害の現状と安全衛生対策の必要性
1.労災の件数[資料2] cf.交通事故件数
2.事前予防の必要性
3.特徴としての労働者参加(安全・衛生委員会、労働災害防止指導員)
A労働安全衛生法(労安衛法)
1.経緯
1)労働基準法第5章「安全及び衛生」
2)1972年労働安全衛生法
2.内容
1)目的 *労基法と一体
2)義務主体・客体 *「使用者」ではなく「事業主」
3)労働災害防止計画
4)安全衛生管理体制 *安全・衛生委員会
5)危険防止措置の義務付け
6)就業にあたっての措置
7)健康管理 *健康診断
電電公社帯広局事件 最一小判 昭61.3.13 (医師選択の自由)
3.刑事責任
1)刑罰規定/両罰規定 2)民事責任
4.事後救済:労働者災害補償
@無過失責任と定額補償(労基法八章)
1.民事上の損害賠償
2.無過失責任による補償の必要性と定額補償
A責任保険的側面と社会保障的側面(労働者災害補償保険法)
1.責任保険としての開始
2.法改正と社会保障的側面の拡大
B受給手続
1.申請→労働基準監督署→認定→給付(不支給に対しては、再審査・取消訴訟)
2.保険金は全額を使用者が支払う(?からして当然)
3.使用者に対して加入強制
4.ほぼ全労働者をカバー(パート・アルバイト・外国人労働者にも全て適用される)
C認定基準:「業務上」
1.補償内容
2.認定基準
1)一般的基準:業務起因性と業務遂行性
2)業務上災害の例
イ)一般的基準 ロ)就業時間中の災害 ハ)就業時間外の災害
ニ)出張中の災害 ホ)運動会 ヘ)天災 ト)通勤途上災害
3)業務上疾病の例
イ)頚肩腕症候群 ロ)塵肺 ハ)白蝋病 ニ)脳・心臓疾患
5.過労死の労災認定
@労災認定
1.労働省による認定基準
1)1961年基準、2)1987年基準、3)1994年緩和、4)1996年緩和、5)緩和予定
2.裁判による逆転判決の増加
A過労死は労働災害であるのか/自殺過労死は?
[参考文献]
「過労死弁護団全国連絡会議」編『過労死』(1989年、双葉社)(1992年、講談社文庫)
川人博『過労死社会と日本』(1992年、花伝社)
同『過労自殺』(1998年、岩波新書)
ダグラス・ラミス/斎藤茂男『ナゼ日本人ハ死ホド働クノデスカ?』
(1991年、岩波ブックレット)
暉峻淑子『豊さとは何か』(1989年、岩波新書)
[自己点検項目]
1)講義を受講して、理解が進んだ点
2)講義でわかりにくかった点
3)講義に関する質問
4)その他(自由記述)
[出席者]
10/3 10 17 24
31 11/7 14 21 28 12/5 12
19 1/9
経済 61 54 53 50 47
経営 102 102 94 92
98
合計 163 156 147 142 145
[前回講義(11月7日)での主な質問]
☆パートタイマー
・企業や会社は1日8時間と決められていますが、アルバイトは労働時間の上限が決められているのでしょうか?
・期間の定めについて、なぜ1年以下でないといけないのか。2年目以降は正社員として扱う、というのは賃金形態・雇用形態そのものを変えることとなるのか。
・非正規社員を一年以上雇ってはいけないということだが、パートやアルバイトの募集の時に、よく、「一回生で卒業まで働ける人」「長時間働ける人」とあるが、これは違法か。
・均等待遇Dの説だと『正社員』というものがなくなってしまうのではないだろうか?同じ賃金で雇うのならば、期間を定めて雇ったり、必要であれば更新すればよいので、言葉は良くないが、使い勝手が良いということになる。会社には社長と身の回りの世話をするもの以外はすべてパートか契約社員でまかなってしまえるようになる。
☆日本の労働時間
・日本の働きすぎの労働時間をカットして欧米並にするのに一体どうすればよいのだろうか?昔から日本は良く働くというイメージがあるが、景気とかに影響されてさらに残業(サービス)が増えたりするのだろうか?
・欧米の国はなぜ労働時間を短縮できるのか?また、逆に日本ではなぜ労働時間を短縮できないのか?
・残業がなかったら日本はここまで産業の水準が上がることはなかったのですか?
・本来、日本は無資源国で貧乏国ですから、勤勉こそが今の日本を支えているといえるのですね。きっと労働者も企業も触れたくない理由はここにあるんじゃないでしょうか。ほかの先進国と同じ労働時間に下げれば、日本はあえていえば、後進国になるのではないでしょうか。途上国は先進国にどんどん成長し、日本の未来はなくなるのではないでしょう
か。悲しいかな、黙って働くことですね。
勉強会の案内
先日より案内している労働法の勉強会は、以下の時間・場所で行っています。講義についての質問がある人、労働法についてより勉強したい人はどうぞ。
日時:毎週水曜日、午後4時前から5時頃まで
場所:A312(アドセミナリオ3階)
内容:講義内容について、該当する教科書の部分を読んでいく形式