2001年度 立命館大学経済・経営学部  「労働法」講義

第9回「企業福祉管理:賃金・福利厚生」

2001.11.21. 佐藤

はじめに
 1.労働災害 :事前の予防措置→安全衛生、事後の救済措置→労災補償
 2.今週の予定:

*本日の講義テーマ:福利厚生制度は企業の恩恵的施策か

1.具体的事例から:長谷工コーポレーション事件(資料1参照)

2.賃金法制
 1.「賃金」とは何か
  1)定義:「労働の対償」
  2)賃金 v.恩恵=協約・就業規則・労働契約などによる判断
   イ)退職金    ロ)賞与
 2.「賃金」とされるとどうなるか
  1)賃金支払いの原則の適用(24条)
   イ)通貨払いの原則、ロ)直接払いの原則、ハ)全額払いの原則、ニ)定期払いの原則
   2)休業手当
   3)最低賃金

3.福利厚生制度
 1.種類(資料2参照)
   *企業による以外に、国によるもの(たとえば、各種の社会保険)
     労働組合によるもの(たとえば、組合の保養施設など)がある
 2.制度目的
   1)人材確保
   2)労働運動による労働条件
 3.最近の動向:経費削減
      e.g.企業年金の廃止、カフェテリア・プラン

4.福利厚生の権利義務関係
  1.制度目的の確認:企業の恩恵的施策ではない、現実の機能
 2.諸見解
   1)労働者に権利はない
      2)労使合意(労働協約、労働契約)による
      3)労働者の権利→効果:賃金と考える、一方的不利益変更の禁止

[自己点検項目]
 1)講義を受講して、理解が進んだ点
  2)講義でわかりにくかった点
  3)講義に関する質問
 4)その他(自由記述)

[出席者]
   10/3   10   17   24   31  11/7 14   21   28  12/5 12   19  1/9
経済    61  54  53   50  47 
経営   102  102   94   92   98
合計   163  156  147  142  145

[前回講義(11月14日)での主な質問]

☆36協定
・36協定で労働者側が調印しなかった例はあるのか。あるとしたら、今度は労働者側に有利になって、好待遇を要求したりしないのか?

☆割増賃金
・自ら残業する場合もあると思うが、それが必要である残業であっても不必要な残業であっても、企業は残業手当を支払う義務があるのか。
・アルバイトでタイムカードというものがあるが、例えば、10時45分に仕事が終った場合、そこでタイムカードを押しても、もし仕事の単位が30分刻みなら10時30分まで働いたことにしかならない。これは社会的にどうなのだろう。

☆残業規制
・残業時間にも最長何時間という決まりはあるのか。

☆残業義務
・36協定の効果は免罰効果のみで残業義務は生じないとの事ですが、ビデオの最高裁判決では義務を負うとのことでした。しかしすべての労働者が協定に同意するということはまずありえないことを思えばこの判決の意味がよく理解できません。これはどういうことなのでしょうか?
・就業規則の中に残業同意条項が入っているときには、会社側に説明義務はないのでしょうか?日立事件の最高裁の判決を覆すにはどうしたらよいのでしょうか?
・労働組合が残業を受け入れていなかった場合、労働者が残業を断ったことで企業の経営が困難になるとしてもその残業を断ることが企業の就業規則に引っかかることはないのか。
・社会人一年目の人は能力があまりなく、仕事を終らせるのが遅いので残業はあたりまえだと聞くが、そのような一年目の社員でも残業を拒否することはできるのか。

☆その他
・田中さんは解雇され、争議をしている間、どのようにして生計を立てていたのか?
・最高裁の判決と国民の間にはなぜこんなにも大きなギャップがあるのか?最近、司法改革がクローズアップされているが、この改革によってギャップは埋まるのでしょうか?
・毎回思うことですが、裁判とはなんと時間がかかり、また人生をめちゃくちゃに(本人にとっては有意義だという人もいるでしょうが)してしまうものなのでしょう。もっと短時間で決まらないのですか?もっとよい方法はないのでしょうか?
・あと、最高裁の裁判長がビデオで指令を出していたのにはびっくりした。こういうことは普通あることなのか?
 

勉強会の案内

先日より案内している労働法の勉強会は、以下の時間・場所で行っています。講義についての質問がある人、労働法についてより勉強したい人はどうぞ。

日時:毎週水曜日、午後4時前から5時頃まで
場所:A312(アドセミナリオ3階)
内容:講義内容について、該当する教科書の部分を読んでいく形式