2001年度 立命館大学経済・経営学部  「労働法」講義

第11回「労使関係管理:労働組合」

2001.12.05. 佐藤

はじめに

*本日の講義テーマ:仕事中に職場で組合活動はできるか?

1.事例から:国鉄札幌駅事件、ホテルオークラ事件(資料参照)

2.労使関係管理と憲法
 1)憲法規定(資料1)
 2)労働基本権の制限:公務員(資料2)

3.「労働組合」の基礎知識
 1)日本の労働組合(資料3)
 [要点]日本の労働組合は歪な組織形態(企業別組合組織)をとっており、それが労働
     法解釈にも極めて大きな影響を与えている。
  1.社会的自律の産物
   2.産業別組合と企業別組合
   3.企業別組合の弱点とされていること
  2)法的に「労働組合」であるとされるとどのような利点が認められるか
  1.刑事免責
  2.民事免責
  3.不利益取り扱い
  4.法人格、不当労働行為手続き、など法律上の便宜
 3)法的意味での「労働組合」の要件
   1.「労働者」
   2.「自主性」(「純粋性」、「独立性」)
   3.目的
  4.「団体性」

4.就業時間中、職場内での組合活動
 1)リボン闘争(就業時間中の組合活動)
   1.「リボン闘争」とは何か
   2.論点:組合活動の権利と「職務専念義務」
     a)「業務阻害性」からの判断
     b)「職務専念義務」からの判断
   3.最高裁判所判決(大成観光(ホテル・オークラ)事件 最三小判 昭57.4.13 )
     a)少数意見
     b)多数意見
   4.その後の最高裁判所判決
      オリエンタルモーター事件 最二小判 平3.2.22
 
 2)ビラ貼り(企業施設利用の組合活動)
   1.「ビラ貼り」とは何か
   2.論点:組合活動の権利と「施設管理権」
     a)受忍義務説     b)違法性阻却説     c)許諾説
    3.最高裁判所判決(国労札幌地本事件 最三小判 昭54.10.30)
    4.その後の最高裁判所判決
       住友化学工業名古屋製造所事件 最二小判 昭54.12.14(秩序乱さずと判断)
       明治乳業事件         最三小判 昭58.11. 1(同)

[参考文献]
 日本労働法学会編『現代労働法講座 3 組合活動』(1981年、総合労働研究所)
 片岡 『岐路にたつ労働者の人権(補訂版)』(1999年、法律文化社)
 

[自己点検項目]
 1)講義を受講して、理解が進んだ点
  2)講義でわかりにくかった点
  3)講義に関する質問
 4)その他(自由記述)

[出席者]
   10/3   10   17   24   31  11/7 14   21   28  12/5 12   19  1/9
経済    61  54  53   50  47    49   48
経営   102  102   94   92   98       86   88
合計   163  156  147  142  145      135  136
 

勉強会の案内

先日より案内している労働法の勉強会は、以下の時間・場所で行っています。講義についての質問がある人、労働法についてより勉強したい人はどうぞ。

日時:毎週水曜日、午後4時前から5時頃まで
場所:A312(アドセミナリオ3階)
内容:講義内容について、該当する教科書の部分を読んでいく形式
 

[資料1:憲法上の労働基本権保障]
 第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  “ All people shall have the right to maintain the minimum standerds of
           wholesome and cultured living”
       ?国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及          び増進に努めなければならない。
   *第26条は、教育権保障規定←教育権も社会権として位置づけられている
 第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
       ?賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
       ?児童は、これを酷使してはならない。
 第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保          障する。
 その他の条文 e.g.13条、14条、15条、16条、18条、19条、21条/22条、29条

[資料2:労働基本権の制限]
  国家公務員法(国公法)/地方公務員法(地公法)/国営企業労働関係法(国労法・   旧公共企業体等労働関係法)/地方公営企業労働関係法(地公労法)
┌───┬──┬─────────────┬─────────────────┐
│   │民間│公的現業         │一般公務             │
├───┼──┼─────────────┼─────────────────┤
│団結権│ ○│○            │○                │
│   │  │但し、オ?プン・ショップ │但し、消防・監獄・警察・海上保安庁│
│   │  │             │   オ?プン・ショップ、登録制 │
├───┼──┼─────────────┼─────────────────┤
│団交権│ ○│○            │△                │
│   │  │但し、対象事項の制限   │団交は可能だが協約締結権はない  │
│   │  │   協約実施に議会承認 │対象事項・手続きに制約      │
├───┼──┼─────────────┼─────────────────┤
│争議権│ ○│X            │X                │
│   │  │但し、制裁は解雇のみで  │不利益処分、刑事罰あり      │
│   │  │    刑事罰はない   │                 │
├───┼──┼─────────────┼─────────────────┤
│賃金決│協約│協約           │勧告               │
│定方法│  │成立しないと仲裁(中労委)│(人事院・人事委員会・公平委員会)│
└───┴──┴─────────────┴─────────────────┘

[資料3]
 組合数 イギリス=  238 組合(1995年)
     AFL-CIO =  86 組合(1993年)、未加盟の独立組合が存在
     DGB =   16 組合(1995年)、未加盟の独立組合が存在
     日本  =34000 組合(1988年)
 組織率 日本:24.2%(1993年)
     高い国(北欧諸国:80~90%、イギリス・オランダ:40~50%)
     低い国(アメリカ:14% 、フランス:8%)
      但し、日本よりはるかに労働組合の影響力が大きいシステム
 

[前回講義(11月28日)での主な質問]

☆事前予防
・健康診断の労働者義務とはいかなるものか。健康診断を受ける権利なのか?
・アルバイト・派遣社員にも健康診断の義務はあるのか。

☆労働災害
・今日の授業で損害賠償と労災補償の違いが分かった。しかし労災補償は誰が労働者にお金を払うのか。労働者が所属している企業or加入している保険会社?無過失責任では企業は悪くないので賠償の必要はないと思う。
・「過失」とは「悪意」という意味なのか。悪意の有無は実証が困難ではないか。
・ 今回の新聞記事では、遺族保障給付金が300万円/年払われるとあるが、これだけなのか。 定年まで働いていたらもらえたであろう何十年分かの給料や、退職金をもらえたりしないのか。
・仕事が原因で病気になった場合、労災補償が適用されるが、期間的な範囲はあるのか。ケガの場合はその場だけで終わることが多いが、病気は長期的なものである。何年も続けて補償してくれるわけではないと思う。補償の限界と言うのはどのくらいになるのか。
・アルバイトでも過労死は認められるのか。・従業員は労災とかありますが、なぜ学生にはそのような制度がないのか?)・自営業者ならどうなるのか。

☆業務上・外
・業務外(自宅・通勤途中)で急死した場合、明らかに会社の仕事による疲労の蓄積がその原因と考えられる場合は、 法律家の判断にゆだねるのか。人それぞれストレスの感じ方、体力、生活習慣などはばらばらで、疲労の影響もその分何通りもあると思うのだが。残された家族などの声を聞く制度などは整っているのか。
・労働災害に付いて、帰宅途中に使用で別の場所に行き、別ルートで家に向かった際、災害に巻き込まれた場合は通勤途中の災害として認定されるのかどうか。
・労働時間外に自主的に働いていて、働きすぎで亡くなったとしたら、それは労災として認められる場合はあるのか。
・出張中は24時間保障されるのに、少し遠いところに食事に行くと保障外になる、ということがよくわからなかった。
・退職後に在職中での粉塵などの蓄積が原因で死亡した場合、労災は認められるのか。
・もし会社が定められた基準を全て守った上で、労働者が急性心不全などで死亡した場合、労災と認められるのか。

☆認定基準
・個人単位で仕事の重さを評価していこうという動きがあるといっていたが、個人の体力や精神面での強さなどは、 客観的に判断しにくい要素だといえる。どうやって客観的な基準を設けるのか。
・職場でいじめられてストレスがたまり、死んでしまった場合、過労死としてもいいのですか?職場の環境が原因だったため会社の責任になるのでしょうか?その亡くなった人がいじめられていたという証言があった場合、損害賠償はもらえるのですか?
・過労死を出してしまった企業に対しての措置はどんなものがあるのですか?

☆自殺過労死
・自殺過労死について聞きたかった。自殺過労死は労働災害にはいるのか。それに関する論争は今でも続いている、 または決着がついているのか。
・自殺過労死とは、自分から仕事をたくさんしてストレスを貯め死に追い込むのですか。
そんな人がいるのですか?