第12回「労使関係管理:団体交渉」
2001.12.12. 佐藤
はじめに
*本日の講義テーマ:労働者は協約で決まったことに従わねばならないのか?
1.具体的事例から:(資料参照)
2.世界の団体交渉システム
1)産業別組合の組織形態をとっている場合
┌─────────────────┐
A産業使用者団体 │ X社 Y社 Z社
│
└─────────────────┘
団体交渉 ↑↓
┌─────────────────────┐
A産業労働組合 │ a b
c
g │
└─────────────────────┘
d e f
h
2)アメリカ合州国(排他的交渉代表制度)
┌─────────────────┐
A産業使用者団体 │ X社 Y社 Z社
│
└─────────────────┘
団体交渉 ↑↓
┌──────────────────┐交渉単位
│┌─────────────────┼───┐
交渉代表
││ a b c
│ g │ A労組
│└─────────────────┼───┘
│
d e f
│ h
└──────────────────┘
*交渉単位内で、労働委員会が管轄する全従業員の選挙によって交渉代表を選ぶ
選択肢は、A組合 vs. (B組合) vs. No Union
*現実には、NO UNION が多い(1950年の25%から1980年の52%へ)
原因:組合組織率の低下(約17%)
不当労働行為の増加(1980年は1957年の750%)
反組合コンサルタントを2/3の会社が雇っている 等
3)日本:企業別組合
X社 Y社 Z社
団体交渉
団体交渉
X社 ┌──┐
Y社 ┌─┐
労働組合│a b│ 労働組合│ c│
g
└──┘
└─┘
d e f
h
3.団体交渉権保障の法制度
1)法的効果
1.刑事免責 2.民事免責 3.団交拒否の行政救済
2)正当であるための要件
1.交渉当事者
1.典型:労働組合 vs. 使用者
2.問題となる事例
1)労働者側:イ)上部団体、ロ)下部組織、ハ)併存組合、ニ)非典型的組織
*判断基準=統一的意思形成
2)使用者側:イ)元使用者・職安所長、ロ)出向・派遣先企業、ハ)親会社
2)交渉担当者
1.典型:組合委員長 vs. 社長
2.問題となる事例:交渉委任 cf.委任禁止条項
3)交渉対象事項
1.典型:賃上げ・時短
2.問題となる事例:経営事項
4)交渉態様
1.典型:誠実交渉
2.問題となる事例:差し違え条件の提示
4.労働協約の法制度
1)法的効力=強行的直律的効力(労働組合法16条)
cf.イギリス=紳士協定
2)法的効力をえるための要件(労働組合法14条)
3)労働協約の部分と効力
[効力]
[部分]
@規範的効力 → 協約の規範的部分 → C協約の拡張
:強行的効力+直律的効力
e.g.賃金、労働時間
c.f.労組法17条
A債務的効力 → 協約の債務的部分
:債権債務的効力
e.g.ストをやらない合意
? ←B協約の制度的部分
e.g.組合員の解雇についての協議
4)中心的論点
@規範的効力をめぐる主要問題:「有利原則」
c.f.組合と使用者との間の合意にすぎないものがどうして「規範」となるのか、
の問題は先週の「労働協約の法的性格」で述べた。
1.問題状況
2.学説
労働契約<労働協約 労働契約>労働協約
(a)両面的強行性説
○
○
根拠・産別と企業別
・組合つぶし
(b)片面的強行性説
○ ○
根拠・個人の権利
・不当労働行為で処理
A債務的部分をめぐる主要問題:「平和義務」
1.問題状況:争議を為さない義務の範囲
2.学説
(a)協約の本質から一切争議はできない
(b)「相対的平和義務」
B制度的効力
1.問題状況:「解雇協議条項」の効力
2.考え方
(a)債務的効力
(b)規範的効力 (c)ケースバイケース
C協約の拡張
1.「労働組合を結成している少数者への拡張」
(a)完全適用説 (b)選択的適用説 (c)完全否定説
2.不利な労働条件の拡張
[参考文献]
坂本重雄『団体交渉権論』(1994年、日本評論社)
片岡 『労働協約論』(1984年、一粒社)
[自己点検項目]
1)講義を受講して、理解が進んだ点
2)講義でわかりにくかった点
3)講義に関する質問
4)その他(自由記述)
[出席者]
10/3 10 17 24
31 11/7 14 21 28 12/5 12
19 1/9
経済 61 54 53 50 47 46
49 48 49
経営 102 102 94 92
98 89 86 88 94
合計 163 156 147 142 145
135 135 136 143
[前回講義(12月5日)での主な質問]
☆賃金
・硬貨は一体何枚までならいいのか。20枚はOK、100枚は不可ということだが、結論は?
・現物支給は違法か。・私の知り合いで、レンズ大手のM者は、業績不振で「現物払い」(カメラ)がありました。これは違法ということになりますが、どうしてこのような違法行為がまかり通るのですか。
・最低賃金はどのようにして額が決定されるのか。地域によって額が違うのはなぜか。
・私が高校生の時バイトしていたのですが、時給が630円スタートでした。これは違法
だったとして、足りない分をもらおうと思ったら、やはり訴えなければならなかったので
しょうか?
☆就業規則の法規制
・就業規則の作成義務はどんな形態の会社や店でもあるのだろうか?例えば個人で経営し
ている飲食店でも義務付けられているのでしょうか?
・聴取は協議ではないといっていたが、では結果的に、聴取は意味がないのではないか。
・就業規則で常時10人以上を使用する会社は作成、意思聴取、届出、周知義務があり、
守らなかった場合は法律で罰せられると先生はおっしゃっていたが、(「労働法がわかる辞
典」平田薫署、日本実業出版社)のP.159で、協議・同意条項がなくても、変更の効力には影響がないとする最高裁判決(昭和27)があったり、中には意見聴取・届出の手続きを経れば、周知は欠いても有効と読める判例もいくつかあると述べています。