4−2 組織介入から相互研修へ向かうFDプログラム     (FD組織作りのためのFD)

 全学FDセンターがおこなうべき組織作り支援には2つの支援がある。ひとつ目は各部局のFDリーダーがFDプログラムを作成することへの支援(FD実施支援)、いまひとつは、各部局のFDリーダーが一般教員のニーズを把握するさいの支援(ニーズ把握支援)である。ここでは、後者の例をみてみよう。
 ニーズ把握支援として、徳島大学大学開放実践センターが、私立K大学からの依頼によって企画・実施したワークショップの例をあげる。対象はK大学専任教員および事務職員である。
 まず6月中にFDの基本的な考え方を述べ(K大学からの要請で「授業公開」を例とした講演を行った)、さらにK大学教員がどのようなFDを欲しているか、ニーズ把握のアンケートを実施した。アンケートによると、「分からない」「ニーズが不明」という意見を始め、自らの学部の切実な声に基づくFD欲求があまりみられなかった。このような状況を鑑みて、これに引き続く9月のFDワークショップでは、各学部の問題点を上げてゆき、それに基づいた「自らの学部のニーズに基づいたFDプログラム」を、漠然とした形でも構想する、ということを実施した。このFDのコンセプトは、自らのFD活動は自らで提案し作ってゆくということであった。
 本FD活動のスケジュールは以下であった。

【第1日(2007年6月25日)】
講演「相互研修としての授業公開〜垣根が低い授業公開に向けて〜」:徳島大学大学開放実践センター神藤貴昭准教授
ニーズ把握アンケートも実施
【第2日(2007年9月10日)】
FD・SDワークショップ(参加者44名)
コーディネーター:徳島大学大学開放実践センター・曽田紘二センター長、川野卓二准教授、神藤貴昭准教授
10:00 開会宣言、スケジュール確認、諸連絡
10:15〜10:45 講演「<相互研修>をつくる」:徳島大学大学開放実践センター・神藤貴昭准教授
10:45〜12:00 学部別グループディスカッション(各演習室)
ワークショップ「ニーズ把握」
12:00〜13:00 昼食
13:00〜13:35 ワークショップ「ニーズ把握発表」、質疑応答
13:35〜14:05 講演「FDプログラムのいろいろ」講師:徳島大学大学開放実践センター 神藤貴昭 准教授
14:05〜15:45 学部別グループディスカッション(各演習室)ワークショップ「学部(班別)FDプログラムの作成」
15:45〜16:55 ワークショップ「学部(班別)FDプログラムの発表」
16:55〜17:00 閉会

 第1回目の講演時におこなったアンケート結果は以下であった(有効回答17件)。授業公開について尋ねた問1、問2は省略する。

●問3 あなたの部局では、どんなFDが求められていると思いますか?
@授業方法を改善する意味で必要であり、学部として全ての教員が取り組むべきと思います。
A学生に学習意欲を湧かせる授業がどのように実現できるか、理解力の乏しい学生にもヒントを与えて誘い水となるような授業、また余裕があれば習熟度の高い学生のレベルアップが可能な授業が、どのようにすれば可能なのかを皆で探るようなFDが必要でしょう。
B学生にわかりやすい教育方法をみつける。
C授業は講義型だけでなく学生の参加型を取り入れるようなFDが必要と思う。
Dこれが一番ムズかしい。ニーズが不明なのです。現在はハラスメント関連のFD活動が多いです。
E各教官間の授業内容の連携。
F(自生的+ネットワーク)型
G初年次教育、専門導入教育についての勉強会。スタッフの多くが、参加できる、FD活動。連続性を持ったFD活動。
H1.教育技術 2.学生評価の客観性
I学生の理解度(level of understanding)と参加度(participation)を高める方法。
Jワークショップ的に手を動かす頭を働かすこと。参加さえしてもらえば何とかなるのにそれができない。FDの顔つきがない方がいい。
K今は問3・4まで考える余裕がありません。
L学生に自信を持たせる、学生に夢を持たせる、学生に誇りを持たせる、ような授業ができること。
M分らないから問題。
N相互授業参観。なかばトップダウンでも良いので、開始すべきと考えている。
O実際の授業の役に立つもの。
P授業評価(学生からの)に基づく授業改善とそれに対応する学生の意見の改善をする。

●問4 あなたの部局では、どんなFDは、いらない!と思いますか?
@学生サービスに還元できるFD以外は必要ない。
A他人の授業の欠点、あらのみを詮索する形では、生産的ではないと思います。互いに授業の質のブラッシュアップにつながるようなFDであるべきです。
B ―
C特になし
Dポイント化されるFDはいらない。あるいは到達目標を定められるのもいらない。
E実際の現場に沿っていない授業のための授業計画。
F賛同を得られないもの。
G ―
H授業評価のコメントの公開?
I ?
Jいらないものはないと思いますが、講演会は人が集まらないので・・・
K ―
L問3の●●●(解読不可)場合
M従って、何が必要か何が不要か不明のまま文科省の圧力のもとにやっているにすぎない。そもそも自主的な部分がない。
N今のところない。
OK大学の実情とあわない講演。
PFDは必要である。それをどの様に生かすか?である。

 これらのアンケート結果を見ると、まず問3「あなたの部局では、どんなFDが求められていると思いますか?」においてはDKMのように「分からない」という教員、EJのように参加する教員間の調整や意思疎通といったFD以前の問題が含まれている。さらに問4あなたの部局では、どんなFDは、いらない!と思いますか?」においてはEFMOのように、K大学の実情に合わないFD活動への懸念が示されている。
 筆者らは、これらから、FD活動を各学部の実情に合わせてつくってゆくことから始めるべきであると判断し、上のようなFDワークショップをおこなった。