法学部におけるインターネット資源の積極的利用の試み


                              
  わが国で「インターネット」が話題になったのはここ一二年のことだが、今やこの言葉が新聞、雑誌、テレビその他に登場しない日はない。情報基盤の整備にかかわる公共投資やマルチメディア・ビジネスが経済動向に大きく作用するばかりでなく、その出現は政治的な意味合いにおいても決定的に重要な意味を持っていると思われる。
  現状のインターネットの利用には一定の制約がある(ネットワークに接続された端末の利用可能性、コンピュータについての最低限の知識の必要、etc.)ことも事実であるが、その制約さえクリアーできれば、地域や国家の枠を超えて直接に情報を共有し、各個人が情報の発信者になれるということの持つ意味はこの上なく大きい。一方では、十分なセキュリティが保障されていないこと、差別的表現や猥褻な書き込みが時として見られること、著作権の侵害など法的なトラブルが生じた場合の責任の所在が不明であることなど、問題は山積しており、それらに対する確実な見通しなしにこのような「モンスター」を連れ込んでもよいのかといった警戒論があることも事実であるが、しかし、それにもかかわらず、このような無政府状態こそが新たな可能性を秘めているように思われるのである。
  本学でも、「情報基盤整備第2期計画」の完成により全学でのインターネット資源の利用が可能となったが、そこから、法学部教学に対しても多くの課題が投げかけられた。
 法学部では94年3月の段階で「情報機器・ネットワーク環境の利用能力は、学生が社会に巣立って生きていく上で必要な基礎的素養」であることを確認し、それを学部教学でも提供できるよう、いくつかの試みがなされてきた。まず94年度に専門科目として「情報法」を開設し、翌95年度には法学部専門科目教員の担当する「法政情報処理の基礎」を前後期にわたって開設し、相当数の法学部学生がこれら科目を受講した。これらと並行して、95年度の当初から Atson-1によるネットワーク上に法学部の会議室を順次開設し、ゼミや講義の単位でこれを設ける例も増えてきている。ここに書き込まれる多くの意見を見ていると、考え方や行動様式、さらには能力の面でも、まさに新たな世代が登場しつつあることが改めて確認できる。今後の課題は、それらをどう発展させて、参加し創造する「インターネット民主主義」の主体へとどう成長させていくかということだろう。
 最近の「インターネット・ブーム」の中心的な話題であるWWWについては、95年9月の段階で法学部調査委員会に問題を提起し、教授会の承認を得て法学部ホームページの作成に取りかかった。具体的な作業は産業社会学部の学生である浅野・本多両君の奮闘により予定より少し遅れるだけで完了し、他大学法学部に対しても何とか面目をほどこすこととなった。今後は、まず英語版を完成させ、各教員、各院生(将来的には学部学生も)のページを作り、研究業績の公表など、発信面の充実をはかっていきたい。
UNITAS[立命館大学広報課]  号


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