児童虐待 −再統合を目的とした親子分離に向けて−

                             二〇〇二年十月十五日

                        大阪市立大学第一部社会保障ゼミ

 

<1 日本とイギリスにおける制度の違い>

 

(児童相談所における処遇の比較)

親子分離・・・施設や里親に委託した上で援助する

同意分離・・・児童を施設や里親に委託する際に保護者の許可を得た

法的分離・・・児童を施設や里親に委託する際に保護者の許可を得ていない

在宅指導・・・虐待を受けた児童を実家で援助する

※児童相談所長による親権喪失宣告請求(民法834条、児童福祉法33条の6)も存在するが、現状では殆ど利用されていない(平成12年度は請求件数8件、認容件数0件)

 

・「親子不分離の原則」から、親子分離は実質的に親権の喪失にあたる

  分離された親子の再統合は基本的に考えられていない

・これに対して、イギリスでは地方当局が作成した子供保護プラン(虐待防止と親子再統合の為の具体的な計画)を裁判所が認定しない限り親子分離命令は受理されない

  「再統合を目的とした親子分離」を意識している

 

<2 家族療法>

 

(家族療法)ストレッサー(ストレスを生み出す構成員)だけでなく家族全員に治療を施す、具体的には家族全員に個別的なカウンセリングを施す事により、家族に本来備わっているストレス解消効果を取り戻すことを重視した治療法

  しかし、「当事者に自発性がないとその効果が見込めない」という問題点が存在

   そこで、再統合を目的とした親子分離を以下の二つの目的を達成するために実施

(目的)1、子供の安全を確保

    2、虐待を行う保護者に「親子再統合」という目標を設定させ、治療への自発性を生み出させる

※この制度を日本で活用する場合に、問題となるのが受入先

 →里親制度の発展が必要

 

<3 里親制度>

 

(里親の種類)

児童福祉法上の里親  養子縁組里親 養子縁組を前提

養育里親  将来実親の下に帰ることを前提

ボランティア里親   週末里親  長期休暇や週末などの短期間里親の下へ預ける

※児童福祉法上の里親には行政から資金面での援助があるが、ボランティア里親は無償

以下、養子縁組を目的としない里親制度、主として養育里親制度について検討

 

(里親制度の目的)

1:1でのケアが可能→子どもにとって最も望ましい環境を提供

(里親制度の現状)

・現状では施設入所が主(専門家一人につき面倒を見る子供の数は平均約6名)

・アナウンス不足により、里親の登録者数は1950年代をピークにどんどん減少

・里親登録者のサポートに乏しい

 

(東京都の取り組み)

委託児童間、里親間での交流のための懇親会

児童相談センターに「養育家庭担当者」「養育家庭支援センター」を設置

里親が養育に疲れを感じた時に一時的に里子をセンターで養育する「レスパイト制度」

 ←自主的にガイドラインを定めて里親制度の運用里親の負担を軽減できる制度を充実

(専門里親)

・児童福祉司経験者や教育関係者、既に里親の経験のある人等が研修を受けたうえで養育

*  高度の専門性から、里親手当ても通常の養育里親の約3倍を2年間支給

 

『フローより』

通告                      調査                          親子分離          同意分離

 


判定 

 

相談                      一時保護                  在宅指導         法的分離

 

 

                                                            

 

 

                                                                          以上

 

参考資料

「子どもを虐待から守る制度と介入手法 イギリス児童虐待防止制度から見た日本の課題」

峯本耕治編 明石書店

 

「アルコール依存症と家族」

清水新二著 培風館