<分科会>
現状の苦情処理制度の問題点を踏まえつつ、より良い制度を新しく作るために以下の二つの案を提示する。
案1 利用者
⇓
《窓口》市町村
公開、提示可
⇓
苦情相談の専門組織
公開 ⇓
市民オンブズマン 都道府県 =国保連
苦情処理のチェック 改善 ⇓ 運営適正化委員会
事業者
案2 利用者
⇓
苦情相談所
市民オンブズマン ⇓
都道府県
⇓
事業者
●苦情相談所をどのくらいの範囲で設置するか
責任体制を重視するため、それぞれの地域で配置する。
イギリスでは窓口の一本化が行われ、国のレベルで対応している。これを参考にして、責任が明確で分かりやすい制度にするためには、窓口は一つである方がよいと考えた。
●窓口の市町村で苦情処理はしないのか
市町村の内部では苦情処理をせずに、苦情を吸い上げる組織として機能させる。市町村を窓口業務に専念させることに対し、苦情の相談を受けた段階で市町村にその苦情が握りつぶされてしまい、上の苦情処理機関まで行かないのではないかという疑問が出た。この点は、市町村でマニュアル化を行うなどの規制をして確実に上まで行く方法を考える必要がある。また、市町村を通したくない、苦情処理相談所をたくさん作ったほうがいいという意見も出た。市町村を窓口にするのは、情報量の少ない高齢者を考慮に入れた上で身近であることが理由である。ここでいう市町村とは、公民館などの施設も含む。しかし、苦情相談所も認知度を高めれば十分に機能する。認知度を高めることは可能だろうか。
金沢市のように、すでに市の中に苦情処理専門組織がある自治体も存在する。全国レベルの法整備を行うにしても、このような意欲ある自治体を見習って十分に生かすことが大切になってくる。
●行政の責任を後退させないために
苦情処理の制度を一本化するといっても地域やその人によって様々な事情があるため、窓口を一つにして対応するのではなく、たくさんの苦情処理ルートがあってもよい。最終的にどのくらいの苦情が処理されているかを政策評価すれば、苦情解決の程度によって責任の所在をはっきりさせることが可能ではないか。
苦情処理の仕組みを法定化するのではなく、苦情処理状況の数字やデータを公表するなど政策評価の仕組みを法定化してはどうか。しかし、公表が遅れている現実と解決の中身が示しにくいという問題がある。
金沢市では、事業者向けと市民向けの事例集が別々に作られており、市民がそれを評価する制度がある。資料が公開されていても関係のない人は見ないという問題が少なからず存在するため、公開の方法や情報提供の方法を考える必要がある。
●日本とスウェーデンのオンブズマン制度を比べて
スウェーデンのオンブズマンは政策評価まで行っているのに対し、日本ではもっぱら利用者と事業者の調整役である。そこで日本においてもスウェーデンのようにオンブズマンを全国組織化し、地位の安定、国保連に委員を派遣する権限、情報公開の権限を与えるべきである。国レベルの政策に対して影響を与えられるようなオンブズマンの組織編成を整える必要がある。
ここでスウェーデンと日本の国の規模の違いという点で、日本の10分の1以下の規模しかないスウェーデンの制度をそのまま取り入れてうまく機能するのかという問題がある。もしそのまま取り入れるのであれば、地方自治体レベルでこれを実施するのか。
また、オンブズマンの制度化にあたって権限を持ったオンブズマンを目指すとしているが、逆に権限がなければ何でもできるのだという意見があった。行政内オンブズマンと市民オンブズマンの連携が必要である。スウェーデン型のオンブズマンでは行政にしか影響力を持たないため、日本に取り入れるにあたって行政や民間事業者に直接意見を言える弾力性が必要だろう。
●終わりに
審査請求のような不服申し立てと苦情相談をはっきり分けずに考えていた点で不十分であった。しかし、今の制度はわかりにくく、統一したほうがいいということに変わりはない。利用者の側からはどこの機関でも苦情申し立てをできることが重要であり、行政の責任を後退させないために最終的には政策評価ができるような制度が必要である。