専業主婦と年金  

          2002.9.15

金沢大学石田ゼミ

 

      報告者 伊藤彩、竹部功一、江藤耕平

1.はじめに                    伊藤彩

*  年金制度〜自助自律の原則〜

*  専業主婦の将来は保障されているか?

 

石田ゼミでは、社会保障制度のひとつである『年金制度』について取り上げます。年金制度は、老後の生活費をまかなうためにつくられた制度です。年金額は、老後も夫婦二人で暮らすことを前提として、夫婦二人分の生活費として算出されています。年金をもらうためには、保険料を払わなければなりません。年金制度では、みんなが公平に年金をもらえるように、自分の分の保険料は自分で負担するというのが原則です。ただ、夫がサラリーマンで妻が専業主婦という場合は、基礎年金に関して被用者世帯を単位として保険料を課し、専業主婦を夫の扶養家族として扱うことから、個別に保険料を徴収されることがありません。
しかし、はたしてこれで本当に専業主婦の将来が保障されているのか、私たちは疑問に思いました。別居や離婚など、「夫婦二人で共に暮らす」という制度の前提が崩れたとき、専業主婦はたちまち弱い立場に立たされるのではないか、と思いました。
そこで、私たちは専業主婦の立場から年金制度について検証しました。まず、現在の年金制度のしくみについて説明します。そして、専業主婦が年金を受け取ることができる権利について、制度上どのような問題があるのかを挙げて、その問題をどのように解決していけばよいかについて、私たちの意見を述べたいと思います。

 

2.現行制度のしくみ                竹部功一

(一)専業主婦の定義

(二)サラリーマンの年金制度

(三)夫がリストラされたとき

(四)夫と離婚する際の専業主婦の立場

 

(一)専業主婦の定義

サラリーマンの妻、また場合によっては限られたパート労働のみを行う被扶養者のこと

 

(二)サラリーマンの年金制度

資料1、2、3を参照しながら現行制度を把握する

・ 基礎年金制度の導入―女性の年金権―

*  サラリーマン世帯の平均給付モデル

 

(三)夫がリストラされたとき

@     解雇された時点から専業主婦が定額の保険料負担に迫られる

A     年金への認識の薄さから来る手続き漏れ

B     厚生年金制度から脱退することで夫婦の年金設計が狂う

 

(四)夫と離婚する際の専業主婦の立場

 昭和60年の制度改正により,基礎年金部分については個人単位で給付が受けられることになったものの,依然として厚生年金部分については夫のみに受給権がある

↓そこで

女性の老後生活を保障する制度整備の必要性

 

3 離婚時の年金分割                江藤耕平

(一)専業主婦の家事労働をどう評価するか              

(二)諸外国における離婚時の年金の取り扱い

(三)権利の分割

(四)離婚時には

 

(一)   専業主婦の家事労働をどう評価するか

 専業主婦は配偶者の賃金に対して潜在的な持ち分権を有している

 家庭外で獲得した資産は離婚の際に原則として均等に分割されるべきものである

 

(二)   外国における離婚時の年金の取り扱い

 共通点@年金が発生する前であっても年金分割を実施する

    A双方が年金権を持っている場合にも年金分割を実施し差額を調整する

 

(三)   権利の分割

 *年金権の分割  自分が受給年齢に達した時点で支給される

          元の配偶者が死亡しても支給される 

*  年金権そのものの分割の仕組みを基本とする

(四)   離婚時には

*離婚時に自動的に均分されている

短所: 個別の事情に即した分割ができない

長所: 離婚時に自動的に均分されることが安心感を与える

 

おわりに

専業主婦に対する保障を充実させることが必要であるが,専業主婦を現行の厚生年金制度により多く加入させることで,厚生年金を受給する権利を確保するという手段も考えられる。

*  パートタイム労働者を厚生年金に加入させる案

賃金も低く加入期間も短いため基礎年金とあわせても老後の生活を保障するためには不十分である。専業主婦は老後の生活を夫の年金に頼らざるを得ないのが現状であり,厚生年金に加入したからといって老後が保障されたとはいえないため,根本的な解決とはならない。

専業主婦の家事労働がしっかりと評価され,年金分割によって確実に,そして十分な額を受給できるような制度にするべきである。そのためには婚姻時から夫の賃金を専業主婦に分割して,報酬比例年金を離婚した際に受け取る方法が最良であると考える。