参考資料
日本の虐待の現状
日本の現状
通告を危惧する理由の代表的な例
「ヨソの家のことがら」に対しては口出ししないという風潮が根強く残っているから。
「児童虐待かどうかよくわからなかったから、連絡できなかった」から。
「児童相談所に告げると面倒なことになる」と考えるから。
「児童相談所の世話になどならなくても自分一人で何とかなる」と思うから。
「親と喧嘩をしたくない、親とトラブルになるとかえって子どもを助けられなくなる」から。
「親との信頼関係を損ないたくない」から。
児童虐待に関する知識、特に児童相談所に関する認識が低いから。
外国での児童虐待への取り組み
アメリカについて
児童虐待の定義は全米各州によって各様。通告される仕組みや処理にも違いがある。
全体的な動き
<児童虐待通告法>・・・児童虐待と通告義務者の定義が明文化された
目的 児童虐待の隠れる余地を残さないよう、児童虐待を可能な限り顕在化させ、これによって児童虐待の保護と、将来の児童虐待の予防を果たさんとする。
各州の通告義務者 約40種ほどの専門職 (特に重要な専門家は、医療関係者・保険従事者・教育関係者・社会サービス関係者・司法、警察関係者)
義務とはなっていない者 家族・隣人・一般人(但しこれらからも通告を受け入れる)
各州の特殊な例 コロラド・イリノイ・カリフォルニア州 写真の現像者にも通告義務(児童の性的な写真に明白に現れているような性的虐待や性的搾取を知る立場にある者)
フロリダ・ケンタッキー・ミネソタ州等 虐待を疑う立場にある者は誰でも通告義務がある
免責規定について 誤通告でも民事上刑事上の法的責任を免除する規定のこと→後難をおそれて通告を思いとどまらせることのないように配慮されている
通告義務者を定めた意味 身体的虐待の発見を小児科医や内科医に効率よく通告させるために義務的通告制度を講じた
措置 以前に同様の虐待事実があることがわかり、その事実に疑いを持ちながらも通告しなかった通告義務者の存在が明らかになったとき、通告義務者にも訴追が行われる。罰金、拘禁刑の制裁に対応し、行政的には、医師等の免許取り消しまたは停止の措置がとられている。
問題点 監視の網の目を細かくしすぎた。→精神科医やカウンセラーに対しても通告義務を課し、虐待の範囲で不明瞭な法律規定をおいたことから、児童虐待の定義が不本意に拡張され、あいまいなものとなった
解決策 通告の対象事例を児童が死に瀕するほどに重大な侵害を受けている場合などに限定する
通告の根拠になる児童虐待の定義を明確にする
家族のカウンセリングの最中にある者は通告義務を免除する
児童虐待を扱う専門家については通報義務をある程度柔軟にする
具体例
<カリフォルニア州>・・・「規範化」が進んでいる
刑法第11164条以下に規定化
目的 児童を虐待から保護すること
通告義務者についての規定
対象者 保育所職員、学校教師、医師、看護婦、その他の医療関係者、心理療法士、カウンセラー、ソーシャルワーカー、児童保護機関の職員
(CMフィルムや写真等を現像する業者)
どんな時 自分の職務の範囲内で児童虐待の事実を知ったとき
虐待の疑いがあるものと推察したとき
(16歳未満の児童が性的行為を行っているような、あるいはその対象となっているような写真や映画、スライド等をその職務上発見した場合)
方法 速やかに児童保護機関に電話で報告
事実を知ってから36時間以内に書面で報告しないといけない
(速やかに刑事司法機関に電話で報告。また36時間以内に書面で報告しなければならない)
専門家でも、虐待が心理的なものである場合はこれを任意的なものとしており、通告義務までを規定するものではない
誤通告の規定
対象者 児童虐待を通告したもの
内容 仮にその事実がなかったとしても、刑法上および民法上の訴追を受けることがないものとして、免責規定を定めている。
罰則規定について
対象者 通告義務者
どんな時 児童虐待の事実に気づいていながら、あるいは気づいているはずと認められるにも関わらず、その通告を怠った場合
方法 刑法上の処罰が課せられる(6ヶ月の拘禁または1000ドル衣赤の罰金刑)
問題点 通告義務を厳しく画一的に制度化したことへの専門家による抵抗。
(患者へのカウンセリングを中断させなければならないと治療関係は維持しにくくなると考えるため、専門家であろうとすればするほど通告を避けたがる傾向)
<マサチューセッツ州>
通告義務者についての規定
対象者 ファミリーカウンセラー・ソーシャルワーカー・法執行関係者(保護監察官・警察官)・学校関係者(公私立学校のの教師・同事務職員)・医療関係者(医師・歯科医・看護婦)
どんな時 子どもが虐待、放任によって身体的または情緒的に深刻な害を受けていると判断するについて合理的な理由を有する場合
方法 ソーシャルサービス課へ口頭で直ちに通報しなければならない
口頭通報の後、48時間以内に書面によるレポートを提出しなければならない
罰則規定について
対象者 義務者
どんな時 疑わしいケースについて、口頭通報、書面通報しない場合
内容 1000ドルを超えない罰金に処される
免責規定について
対象者 通報義務を負うもの
通報義務を負わないもの
内容 民事・刑事の責任を問われることはない
善意で通報した場合は責任を問われない
現状
* イギリスについて
通告義務について
医師、教師等の専門家は、たとえ児童虐待を受けているか、あるいは虐待をうけるおそれのある児童を発見したとしても、そのことを警察を含む当局に通告する法廷義務はない。
通告制度の特徴
虐待だけでなく「子どもの福祉と安全に対する不安」を広く対象としている
理由 教師や保健スタッフ等の子どもに関わる専門職にとっても、個々のケースが厳密な意味での「虐待」に該当するか否かの判断は容易ではないため、子どもの福祉に不安を抱いた者が虐待かどうか自信を持てないため、通告を躊躇おそれがあるから。
援助やサポートを必要としている虐待以外の福祉ニーズを抱えた子どもや家族は多数存在しており、それらを援助することが虐待の防止につながるから。
専門職に対しても罰則付きの通告義務は定められていない(「子どもが重大な危害を受けている又はその恐れがあると信じたものは何人でも、社会サービス局に通告しなければならない」との一般的な通告義務と通告を促進するための措置等が定められている)
理由 児童虐待が注目され始めた当初既に、地方当局による体系的な児童福祉サービスと、児童虐待防止活動に長年関わってきたNSPCC(全国児童虐待防止協会)が存在しており、この様な福祉機関を持っていなかったアメリカと比較すると、通告を義務づける法律を制定する必要性が低かったため。
通告受理機関として警察が重要な役割を果たしている
内容 イギリスでは社会サービス局、警察・NSPCCが通告受理機関となっている。
メインは社会サービス局であるが、警察も通告の受理機関として重要な役割を果たしている。
ACPCのガイドラインにより各関係機関内部の通告手続・対応が明確に定められている
内容 子どもの福祉と安全に不安を抱いた専門職が、相談や必要な情報・アドバイスを得ることが出来ないようにすること
各関係機関ごとに情報やアドバイスを提供できる責任者を指名し、その指名・連絡先等を周知しておくこと
不安の内容・協議相談の内容等を文章に記録し、最終的に何らかの対応をするか否かの明確な合意に至る必要性があること
等を定められている。
各段階において常に明確な決定・決断にいたること、その決定内容を記録に残すことが、求められている
専門職は、通告前に、通告を行うことについて「親の同意を求めること」(但し「同意を得ること」ではない)が原則とされている。(「専門職は、原則として、不安を感じた点について、家族との話し合いを求めなければならず、また、可能な場合には、社会サービス局に通告を行うことについての家族の同意を求めなければならない。しかし、それは、そのような話し合いや同意を求めることによって、子どもが重大な危害を受ける危険を増大させることのない場合に限られる」と定められている)
理由 一時の反発が予想されたとしても、通告を行う以上、それを率直に伝えることが、親との信頼関係を築き、その後の調査やケアーを実施していく上で、必要なことであると考えられているため。
専門職からの電話による通告は、書面による事後確認が必要とされている
一般市民からの通告については、誰が通告者であるかの秘密は守られる
内容 近隣住民当の一般市民からの通告については、社会サビス局は、通告者の同意がない限り、通告者の氏名・その他の通告者を特定できるような情報を、第三者(通告の対象となっている家族や他機関)に開示してはならないとされている。一般市民たる通告者を守り、通告を促進するために必要なルールである。
通告に対して、社会サービス狂句が何らかの対応をしないことを決定した場合には、その決定が通告者に伝えられる。
現状
年間で約16万件以上の通告件数がある。(うちわけ、家庭訪問等による調査が実施されたのが12万件、子ども保護会議が召集されたのが4万件、最終的に子ども保護登録に至ったのが2万4500件という調査結果がでている)→極めて積極的に通告が行われている????
罰則規定がないのに何故積極的に通告が行われているか?
児童虐待に対する社会一般の意識が、非常に高い。=児童虐待という社会問題の存在が、一般市民の間でも当然のこととして受け止められるようになっているということ。
教師、小児科医等の医師、ソーシャルワーカー、保健婦、警察官等の専門職の児童虐待についての知識や経験が蓄積されてきているから。
ACPCのマネージメントの下で、専門職及び関係諸機関の連携・協力体制が整備され、年々充実化してきているため。
*カナダについて
通告義務について
・医師、看護婦(士)、歯科医、薬剤師、臨床心理士を含む、ヘルス・ケア専門職
・教師および学校長
・ソーシャルワーカーおよびファミリーカウンセラー
・牧師、ユダヤ教のラビ、他の宗教の聖職者
・保育者、保育園の管理者
・ユースワーカー、レクリエーションワーカー
・警官、保安官や検死官
・弁護士
・サービス提供者との雇用者
・子どもに関与する専門職あるいは公的な職業にあるいかなる物
刑罰について
上記の通告義務者が、疑わしい子ども虐待・ネグレクトに関して通告を怠った場合には、
1,000ドル以上の罰金が科せられる。
まとめ
カナダをまとめると、どんなときであっても子どもは守られなければならないと言うこ
となのであろう。通報者は子どもの虐待、ネグレクトに気づいたら、「疑い」だけで通告す
ることができる。この段階では、虐待の疑いについて事前評価と調査を実施0結果†通告
の半分の45%が誤通告となるが、逆に表現するとその半分の55%が保護などのサービスを
受けている。また法律の規定により疑いのケースを通告してもらい、専門家が事前評価、
調査することで問題の早期発見、早期対応ができていることは、子どもの人権を尊重して
いく上で極めて重要であるといえよう。
*スウェーデンについて
・1966年に、親による体罰は虐待であると規定する法律が制定された
・1971年、「子どもの権利協会」設立
・1979年、子どもに対するすべての体罰を禁止するための法改正