研究室配属を検討している学生さんへ

エネルギー・資源循環工学研究室(山末研)に興味を持っていただきありがとうございます.我々が研究している内容は「研究内容の概略」でも説明していますが,ここではこの研究室で学べることをもう少し具体的に説明したいと思います.

さて,当研究室では,現代社会が抱えるエネルギー問題や資源問題を解決することを目的として研究を進めています.ここで重要なことは,世界中の多くの研究者が同じような理念を持って研究を進めていることです.では,当研究室に配属して学ぶことのアドバンテージは何でしょうか?

それは,機械工学(その中でも特に熱力学,移動現象論,材料科学等)に礎を置きながら,さらに「ライフサイクル思考」という概念を導入することで「真に環境に優しい材料やプロセスを提案できる人材になれる」という点です.

ライフサイクル思考とは何でしょうか?以下の図をご覧ください.

ライフサイクル思考:全てのプロセスの環境負荷を原料採取から処分段階まで含めて評価

この図は同じ機能を有する2種類の製品について,その生涯(ライフサイクル)における二酸化炭素排出量を比較したものです(数値は適当).例えば,この両製品が自動車であった場合,消費というのはいわゆる走行段階,すなわち燃費に関係しており,ここだけ(赤い点線内)を見ると製品Aの方が優れていることになります.従来はこのような視点から多くの自動車メーカーや研究者が少しでも燃費の良い自動車を開発しようとしていました.しかし,ライフサイクルで眺めてみると少し話は異なってきます.自動車を生産するためには資源サイクル,原料製造,そして組立等の製品生産,そして自動車が生涯を終えた後には廃棄処分が必要です.そしてその各ステージで二酸化炭素が排出されます.そしてライフサイクル全体で眺めると,実は製品Bの方が優れた製品であることが分かります.しかも,製品Bの二酸化炭素排出量をさらに下げようとした場合,燃費よりまず「資源採掘」に関わる二酸化炭素排出量削減に注力した方が効率的であることが分かります(このような分析をライフサイクル分析=Life Cycle Analysis, LCAといいます).本研究室で学ぶことで,このようなライフサイクル思考に基づいた製品開発戦略を提案できる能力を養うことが可能となります.

このLCAは机上の議論ではありません.自動車業界でも2030年にはLCA規制なるものが導入されようとしていますし,つい先日の2021年3月には自動車工業会会長も定例会見でライフサイクル思考の重要性を述べています.LCAの概念はその他の素材産業,重工業,インフラ系の企業全てにおいてすでに導入されつつあるのです.機械工学科の学生さんに私の研究紹介をする際,ライフサイクル思考の話をすると「それって機械工学科と何の関係があるんですか?」と質問を受けることがあります.でも,実は機械工学科に限らず,全ての工学系研究者は本来ライフサイクル思考に基づいて注力すべき研究対象を見定めなければならないのです.

山末研究室では「資源」や「エネルギー」に着目しながら種々の製品やプロセスのライフサイクル全体にわたる「弱点」を自ら抽出できるように指導します.そして実際にその弱点を解決できるような材料やプロセスの開発を行います.もちろん皆さんの興味によっては,社会システムや政策提言といった内容に踏み込んだ研究をする場合もあります.このように社会を広く俯瞰しながらライフサイクル思考に基づいて戦略を立て,さらに自然科学的手法を駆使しながら実際に社会に貢献できる材料やプロセスを提案できる研究室は立命館大学機械工学科だけでなく,日本全体,あるいは世界全体を探しても非常に限られていますが,当研究室はそれを実現できる数少ない研究室の1つと自負しています.

是非私たちと一緒に学んでみませんか?