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今月のことば

2017年2月 雪の北海道の熱い日

 厳冬期に北海道に行く機会はあまりありません。今年は、北海道大学で特別講義を頼まれたので、雪の北海道に行きました。その日は、吹雪で現地はマイナス9度、場合によっては引き返すこともあるというアナウンスを受け、心配しながら飛び立ちました。この時期は、気象条件によって、飛行機が飛ばないこともあり、本当に引き返すこともあります。しかし、空港の除雪作業のために40分遅れたものの、無事に千歳空港に着きました。
 大荒れになることもあるかと、もしものことを考えて、予備日をとっていたので、その日は千歳にも近い支笏湖の秘湯の宿に泊まりました。ここは、機会があるごとに若いときから何度も泊まっている北海道の定宿といってもよい宿ですが、冬ははじめてでした。湖畔のほとりの一軒家で、まわりは自然のほかには何もなく、静寂につつまれた別天地です。宿に迫った山ぎわでは、深い雪の斜面をシカの群れが行き来していました。
 幸いにして翌朝は晴れました。雪の湖の向こうの暗闇に星と月が輝く紺色の空が、じょじょに赤みをさして朝焼けになり、やがて日の出がはじまり、湖にまばゆい光が差し込むまで、早朝のスペクタクルを眺めることができました。
 北海道大学では、「人間研究のパラダイムシフト-私の人生と生涯発達心理学」と題した特別講演をしました。あらかじめ数回の学習会をして、私の本を読みすすめて準備してくださった大学院生や学生さんなど、たくさんの熱心な若い聴衆が詰めかけてくださいました。私は、自分自身の人生の歩みとからめて、心理学において挑戦してきた基本的な「ものの見方」の変革について語りました。改めて、最初の本『ことばの前のことば』を書いてから、30年たったのだという年月の長さに気づかされました。単に「継続は力なり」ではないよ、「持続するこころざし」こそ、大切だよと語りかけながら、まだまだ「こころざし半ば」、このまま死んではなるまい、これから残された時間を本当に大切にしなければと身がひきしまる気持ちでした。
 特別講義のあとの懇親会でも、交替しながら隣の席にやってきた若者たちが、熱い質問を次々と発してくるので、私の語りもますます熱を帯びて、議論は夜中まで延々とつづきました。雪の北海道で体験した感動にみちた熱くて長い一日、わすれがたい貴重な日になりました。

写真 支笏湖の日の出



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