立命館法学 2000年1号(269号) 334頁(334頁)


◇資料◇

韓国の司法制度改革の動向と展望

沈 羲基(シム フイギ)
(東国大学教授)



一、一九九〇年代の司法改革構想の三つの潮流


  一九九〇年代の韓国の司法改革構想は、三つの流れに沿って立案・推進されてきた。その一つは、一九九三年一一月から活動を始めた司法制度発展委員会(大法院長が法曹人、法学教授、言論人など三一名の委員を委嘱。以下、司発委とする)の司法発展構想(1)であり、その二つ目は、一九九五年に当時の金泳三大統領の委嘱で構成された世界化推進委員会(以下、世推委とする)と大法院が共同で立案した司法改革構想(2)である。最後は、一九九九年四月に現在の金大中大統領の委嘱で構成され活動を始めた司法制度改革委員会(以下、司改委とする。法曹人七名を含む教授や言論人など一八名で構成)の司法改革構想(3)である。
  司発委の二六個の審議案件の選定と研究活動を実質的に遂行したのは、八名の判事で構成された研究室であった。世推委の構想を実質的に主導したのは、司法改革小委員会の研究幹事である権五乗教授(ソウル大学)と朴世逸青瓦台政策企画首席秘書官であった。この二人は、経済正義論(権教授)と国際化論(朴首席)を主張・推進してきた法学者であった。司改委は現在、盛んに業務を進行している途中であるので、その実質的な主導者が誰であるのかは知られていない。しかし、現政府の性格から考えれば、司改委の司法改革構想や世推委の司法改革構想から大きく離れることはないであろう。司発委の構想は、「少数判事による高効率司法」を志向しており、世推委の構想は、「競争原理の導入」(司法一元化)を前提にした「多数判事による低廉高品質司法」を志向している。ただ、司発委と世推委の構想には「市民の司法参加」構想が欠けている。これに対し、司改委の司法改革審議案件には、「陪審・参審制の問題」が含まれており、この案件をいかに具体化するか、その帰趨が注目される。
  一九九〇年代に韓国で展開されたまたは展開されている司法改革運動を概括的に考察することを目的とする本稿の立場からは、一九九五年の一年間、世推委と大法院が展開した司法改革論争に焦点をあてて議論を進めることにする。世推委と大法院は、一定の合意にこぎ着けたが、その過程で烈しい論争を展開した。論争の主人公は、世推委と大法院であったが、論争が進行するにつれて、大韓弁協、法務部、法学教授会がこれに部分的に加わるか、または支援勢力の役割を遂行した。論争の主体は、言論媒体を宣伝・扇動の手段として動員し、互いにより多くの市民からの支持を得るために熾烈な争いを繰り返した。一九九五年の韓国の法曹界と法学界は、この論争で費やしたとしても言い過ぎではないであろう。この論争の過程で、「韓国法曹と法学界の実像と虚像」が赤裸々に「法律サービスの消費者」たる市民に露出されることになった。本稿では、一九九五年の司法改革論争に焦点をあてて、論争の経過を分析的に検討し、二一世紀の韓国の司法改革議論の展開方向を展望してみることにしたい。

二、一九九五年の司法改革論争の始まり


  一九九五年一月二一日に世推委が発足し、一月二五日には当時の金泳三大統領が「世界化構想」を発表した。世推委は二月二一日、「司法改革」を世界化のための重点推進課題の一つとして採択した後、これを推進するための小委員会を構成した。二月二四日に世推委は、「法律サービスおよび法学教育の世界化」のための計画を樹立して大統領に報告した。金大統領がいう世界化とは、韓国を「周辺国」の立場から跳躍させ、「世界の中心国家の一員」たらしむるように発展させようとするものである。そのためには、政治、経済、社会、文化のあらゆる方面にわたって改革政策が展開されるべきであった。金大中政府は、すでに様々な改革作業を遂行して、市民から広範囲な支持を得ていた。各言論では、法曹人の数の不足、過多な弁護士費用、法曹不法行為、法曹人の不親切かつ権威的態度などの法律サービスの問題点を集中的に浮き彫りにし、司法改革を要求する世論を形成すると同時に、司法改革の正当性と必要性を力説した(4)。これとともに、一九九五年二月三日と四日にわたって、次のような内容の世推委の「司法改革構想」が言論を通じて明らかになった。一、一九九四年現在、三〇〇名程度である司法試験合格者の定員を将来的には最大二〇〇〇名まで増やさなければならない。なぜなら、法曹市場の供給不足が過多な弁護士費用と法曹のサービスの低下を招いたし、韓国社会の弁護士に対する需要はますます増えており、南北統一以降の北朝鮮の住民に対する法律サービス提供の問題をも考えれば、弁護士の数の増員は至急の課題になるからである。二、優秀な法律家を大量に養成するためには、アメリカ式のロースクールをモデルとした「韓国型専門法科大学院」(以下、専門大学院とする)を設立して、量的・質的に優秀な法律家を養成しなければならない。なぜなら、ウルグァイ・ラウンドの妥結に伴う法律市場の開放に備え、国際競争力のある専門法律家を養成するためには、従来の法科大学学制と司法研修所の統一的な研修教育だけでは対応できないからである。市民・社会団体をはじめ多くの国民は、政府のこのような方針に強い支持を表した。
  世推委の司法改革構想の中で革新的なものは、アメリカ式ロースクールをモデルとした韓国型専門大学院を設立して、優秀な法律家を大量に養成しようとする構想であった。この構想は、法学教育をはじめとする法律家養成体制の改編に留まるものではなく、韓国の法曹構造を全面的に再編しようとする主張にまで拡大される余地があった。たとえば、大法院と世推委の共同発表文には、「法学教育から法曹人力の選抜と運用、法曹職に関する制度と運用および慣行に至るまで法曹構図全般にわたる広範囲な検討」を行うとの文言が挿入されていた(6)。言論の論調は、専門大学院の導入を全面的に支持する方向であった(7)
  言論を通じて露わになった「大統領と政府、世推委の司法改革に対する強い意志」そして「市民の幅広い支持」を感知した参加連帯(8)(参与民主社会と人権のための市民連帯)司法監視センターは、朝鮮日報社会部法曹チームと一〇回連載で、「司法改革共同企画」を進行させ、新聞に詳細な分析記事を掲載した。二月二六日に「法曹人の画期的な増員」をうたって始まったこの企画には、それまで司法改革の当為性を絶え間なく主張してきた法曹内外の人々、とくに司法改革に積極的であった法学者と弁護士らが大挙して参加し、世推委の司法改革を支持する世論を形成するのに大きな役割を果たした(9)
  朝鮮日報をはじめとする韓国の主要日刊紙は、連日、韓国法曹界の問題点と不正・腐敗を詳細に報道した。このようにして、司法改革の当為性と必要性が市民の中で瞬く間に広がっていった。これに対し、法曹界も反撃を開始した。法曹界は、(1)世推委が司法改革を推進するのは三権分立の原則に反し(推進主体の問題)、(2)言論を通じた世論裁判でもっていくのは不当であり(推進方法の問題)、(3)慎重な研究なしに短時間に改革しようとするのは不当である(推進日程の問題)と主張した。世推委は、法曹界の批判を受け入れ三月九日に世推委小委員会に専門家会議を構成・運営することとし、ここに大法院、法務部、大韓弁護士協会の代表を参加させた。
  その間に、弘報処は、三月一六日にいち早く司法改革構想に対する世論調査を行い、その結果を発表した。その世論調査の結果は次のとおりである。
「韓国の国民の多くが現行司法制度の改革と専門法科大学院の導入に賛成している。弘報処が世論調査機関であるコリア・リサーチに依頼し、三月六日から八日まで、全国一九歳以上の男女一〇〇〇名を対象に電話世論調査を実施した結果、応答者の八三・四%が司法制度の改革が必要である(非常に必要五二・三%、若干必要三一・一%)と答えた。とくに、事務職従事者と学生は、それぞれ九三・四%、九〇・二が必要であるとの見解を示した。改革を至急に行うべき分野としては、前官礼遇(判検事退職者が弁護士になった場合、その弁護士が扱う事件の求刑・判決に手心を加える慣習)などの法曹界の誤った慣行の排除(四四・六%)、弁護士費用の調整(一二・五%)、大学の法学教育の改善(一二・四%)、司法試験制度の改善(九・一%)、法曹人力の増員(八・四%)、判・検事の任用制度の改善(四・九%)の順に表れた。受験資格に制限を設けない現行司法試験の代わりに専門大学院を新設して、その修了者に弁護士試験の受験資格を与えようとする意見に対しては、賛成六七・八%(非常に賛成二九・一%、どちらかといえば賛成三八・七%)であり、一五・五%が反対した。また、現在および未来の多様な法律需要に合わせて法曹人の数を拡大するように司法試験制度を改編すべきと答えた人は七三・六%であった(10)。」
  世推委は、自己が主管する司法改革作業に法曹界の代表が単純に「参加」する形式は問題があるとの問題提起を受け入れ、三月一八日に大法院と共同で司法改革を推進することに合意した。しかし、大法院と世推委の交渉は難航を繰り返した。
  韓国法学教授会(会長は金哲洙ソウル大学教授)理事会は、三月二一日に、世推委の司法改革案を支持する内容の建議文を、金大統領と世推委委員長、教員改革委員会委員長、教育部長官にそれぞれ提出した(11)。三月二七日には大韓弁協が、世推委の司法改革構想と関連して声明を出し、「韓国の実情に合わないアメリカ式のロースクール制度をにわかに導入して法文化を変えることは、混乱をもたらすことになる」とし、「既存の制度の改善を通じて法曹人力を漸進的に増やすべき」と主張した(12)。そこで、司法改革の論争は、法曹界(大法院、法務部、大韓弁協)と非法曹界全部(法務部を除く行政府全部と法律司法委員会を除く立法府全部、法学教授会)の集団的な争いの様相を帯びて展開された。

三、一九九五年四月二五日の第一次合意司法試験の定員の大幅な増員


  大法院と世推委は、一九九五年四月二五日に一次合意文を発表した。両方は、「法律サービスの質を画期的に改善するため、法曹人の大幅な増員が必要である」との認識を同じくし、「現行三〇〇名の水準の試験による法曹人の選抜定員を原則として一九九六年に五〇〇名、一九九七年に六〇〇名、一九九八年に七〇〇名にし、二〇〇〇年からその後には一〇〇〇名ー二〇〇〇名の範囲で増やす」ことに合意した。しかし、法学教育制度を含む法曹人養成制度の改編の具体的な内容に対しては、合意を得ることができなかった。この問題を議論するため、世推委と大法院は、それぞれ三名の専門家を推薦して法曹学制委員会を構成し、ここでこの問題を続けて議論することにした。

四、一九九五年一二月一日の第二次合意法曹人養成制度改変に対する交渉決裂


  法曹学制委員会では、様々な方案を出して検討したが、最終的には世推委案と大法院案の二つに絞られた。世推委は、「競争力のある法律家の養成」のために「専門大学院設置案」を主張した。世推委は、専門大学院の学制として「四(学部)+三(大学院)案」が望ましいが、これを多少変更した「三+三案」でもかまわないとの立場であった。これに対し、大法院案は、「学制延長案」(二年の教養教育+三年の専門教育)を主張した。世推委と大法院はこの問題について合意しえなかった。
  一九九五年一二月一日、両方は、法学教育制度の改編は、「大学教育改革の次元で法学教育界が必要な改編を自律的に推進していくこと」とし、司法研修所は、「大法院がそれまでの司法研修所の運営経験を土台に大幅な制度改変を推進していくこと」とする点で合意した(13)。形式上は「合意」であったが、実質上は「交渉の決裂」であった。

五、一九九六年二月八日の教育改革委員会の最終案の発表


  教育改革委員会(以下、教改委とする)は、法学教育制度改変のための具体的な方案を作る目的から、法学教育改革のための特別委員会(以下、特委とする)を設置して運営した。ところで、教改委は、すでに大学教育全般を多専攻複合学問体制に改編するとの基本方針を立てていたため、法学教育の改編は大学教育改革の基本方針に従う線で進行されなければならなかった。一九九六年二月八日に特委は、法学教育を二元化することに合意した。特委は、法学教育を一般教育と専門教育とに分けて、一般教育は大学課程で実施し、専門教育は専門大学院で実施するという構想をとったものである。教改委は、専門大学院は一定の能力と施設をもった教育機関のみが実施できるようにし、長期的にはこれを司法試験と連携させていくという(14)構想をもっていた。「司法試験との連携」とは、「短期的には専門大学院の卒業者に司法試験を免除する方案を目標とし、長期的には司法試験受験資格を専門大学院の修了者に制限するという方案(15)」である。
  紙数の制限上、ここでは詳細な分析を省略せざるをえないが、論争の各主体らは、ときには対立・葛藤をし、ときには連合し、勢が不利であると判断するときには妥協または後退し、力を持ち始めれば再び攻撃をして合意事項を覆すという、複雑かつ錯綜した姿をみせていた。私は、このようなことは、競争原理に鈍かった韓国の法曹市場と法学教育市場が、法律市場の開放を要求する世界化の流れに直面して現した初期的な緊張と葛藤現象であると考えたい。

六、二一世紀の韓国の司法改革議論の対する展望


  司発委、世推委および司改委という三つの委員会が作り出した構想は、すべて将来別途の具体的な実践が必要な「綱領」の性格をもっている。その中では、すでに実現されたものもあり、将来その実現可能性が明らかでないものもあり、重なるものもある。この三つの構想は、二一世紀に韓国で展開される新しい司法改革構想作業に基礎資料として提供されるであろう。従って、それらが単に「構想」または「綱領」にすぎないものであるとして無視することはできない。一九九九年九月六日に司改委の第一次試案が発表された。しかし、その中で画期的な事項はほとんどない。韓国の法曹人と法学者たちの焦眉の関心事である法曹人養成方案、そして市民が関心をもっている参審・陪審に対する試案はまだ発表されていない。おそらく、司改委の審議案件の中で、かかるものがもっとも合意しにくい案件になるであろう。司法権の独立、司法の清廉性などは古くからの主題であるが、韓国では今なお懸案問題となっており、二一世紀の前半部の二〇年あまりの期間にわたってその状況が続くであろうと考える。二一世紀になっても、韓国の法曹人は相変わらず「少数法曹人による高効率法律サービス主義」を固執するであろう。韓国の政治圏(立法府と行政府)は、みずから腐敗問題から脱しきれない限り、韓国の法曹人の閉鎖的かつ独寡占的な法律市場構造調整作業に乗り出すことが困難である。韓国の行政府がもっとも清廉であると主張することのできた一九九五年上半期に司法改革を貫徹できなかったことを、専門大学院擁護論者らは非常に残念に思っている。そのような機会がまたやってくるのかどうか、予測しえない。より進取な司法改革運動の可能性を提示する動力はほかのところにある。
  先に私は、一九九九年の時点から韓国の司法改革の動向を回顧するとき、もっとも注目すべき時期は一九九五年であると述べた。一九九五年が重要な理由はどこにあるのか?  それは、そのときを前後して司法改革議論に従来は参加しなかった新しい主体たち(new players)が登場し、積極的に発言するようになり、時間が経つにつれてこの新しい主体の発言が段々より重要な影響力を行使していったからである。一九九五年二月と三月に、世推委の司法改革構想は、世論の圧倒的な支持をえていた。一九九〇年代はじめの韓国社会には、「参加する市民の形成と台頭」があったので、世推委は一九九五年四月に大法院をはじめとする司法既得権者らの一定の譲歩をえることができた。従って、この新しい主体の動向を観察することが、これから韓国の司法改革の将来を予測できる捷径になると考える。この新しい参加者は、韓国の中産層を形成する市民である。従来、韓国の司法改革議論の発言者たちは、大法院、法務部、大韓弁護士会などの法曹集団と、様々な法学教授集団であった。ところが、一九九五年を前後して司法改革議論に市民が積極的に参加しはじめ、現在は大法院、法務部、大韓弁護士協会、法学教授集団などの主体ら(old players)は、市民からの同意と支持なしにはいかなることも円満に推進することができなくなった。最近の司法改革に深い関心を示す市民団体は連合して、討論会の開催、デモ、司法監視活動を通じて司改委の活動に圧迫を加えている。現代の韓国の代表的な「司法改革のための市民連帯」には、一九九九年四月二七日に結成された「消費者保護と司法改革のための社会団体共同推進連合会(四〇個団体の連合)と、一九九九年七月二〇日に結成された「司法改革のための市民社会団体連帯会議」(参与連帯、経済正義実践市民連合が中心)がある。
  前者の綱領の中には、大法官、憲法裁判所裁判官、法院長(裁判所長)、検事長、警察署長の住民直選制の実施、陪審・参審制の導入を主張する項目と、世推委が推進した専門大学院案を支持する項目が含まれている(16)。後者の活動綱領の中には、「司法権に対する市民的参加と統制の実現」方案として、大法院長、憲法裁判所長、大法官、憲法裁判所裁判官、検察総長、警察署長に対する人事聴聞会の実施、陪審制・参審制、検察審査会のような市民参加方案の導入が主要関心事項に含まれている。
  二一世紀の韓国の司法改革の方向とその成就の可能性は、韓国社会の腐敗緩和程度、市民層の成長程度と密接に関連するであろう。法曹内部からの改革の声と成果も少なくないが、韓国の法曹が従来のような閉鎖的かつ独寡占的な法曹市場構造を持続する限り、内部からの改革に大きな期待をよせることは困難であると考える。一九九五年四月の第一次合意以降、司法試験の定員は大幅に増加した。その後、私は、一時、「量的変化」が「質的変化」を伴うかもしれないとの希望的な展望をしたことがある。しかし、やはりというか、一九九八年に「司法試験の定員を七〇〇名水準に凍結する」措置がなされた。このことが、私が法曹内部からの改革に大きな希望をもちえない理由である。

(1)  司発委は、計二六個の案件を審議した。その案件は、判事の業務軽減、司法府の位相強化、判事の専門化、法院の強制力の確保方案など、すべて裁判業務に関連したものか司法府の内部の問題に局限されていた。二六個の審議案件は、高等法院の支部の設置、法官会議の立法化、常設簡易法院の設置、大法院の予算案要求権、法院警察の創設、大法院の法律案提出権、法官任用資格の強化、副判事制度の導入、行政事件の審級構造、特許訴訟の審級構造、上告制度の改善、拘束令状実質審査制度、専門法院の設置、ソウル市内の合議支院の地方法院への昇格、ソウル民・刑事地方法院の統合、司法政策研究院の設置、登記・戸籍庁の設置、司法補佐官制度の改善、法官人事委員会制度、法官に対する勤務評定、法官職級制度、地域別の法官任用制、司法研修所制度の改善、元老法曹人力の活用方案、法院侮辱行為に対する制裁、第一審の構造調整、民事控訴審の構造調整などである。司法制度発展委員会研究室『審議対象案件検討資料』(第一集、一九九三・一一;第二集一九九三・一二);権誠「司法改革の方向と問題点」『法学』(ソウル大学)三五巻一号四ー一〇頁(一九九四)。
(2)  大法院・世推委「法律サービスおよび法学教育の世界化」(一九九五・四・二五);「法律サービスおよび法曹人養成制度の世界化」(一九九五・一二・一)。
(3)  大統領の直属諮問機構たる司法改革推進委員会は、一九九九年九月六日「司法改革一次試案」を発表した。一次試案には、全部で三三個の議題の中で、不拘束裁判拡大などの人身拘束制度の改善、民・刑事法律救助拡大、国選弁護および裁定申請の拡大、法務法人活性化と法律サービス市場開放対策などの一七個の議題について委員会での暫定的に合意された。しかし、主要議題である、特別検察制の導入、法曹非理の根絶対策、とくにロースクールの導入および法曹人力の養成方案、陪審・参審制の導入、裁判所・検察の組織改編および人事制度の改善方案など、一六個の議題は引き続き審議を経て一二月末まで最終案をまとめる予定である。来る一二月三一日までの任期で活動している司改委は、法曹人七名を含む教授、言論人などの一八名で構成されており、一九九九年四月二八日に発足してから、これまで毎週一回以上の審議を開いてきた。
(4)  権五乗『司法もサービスだ』(金泳三政府改革叢書八、未来メディア、一九九六・三)一一頁。
(5)  朝鮮日報、一九九五・二・四、五面;一九九五・二・二八、五面。
(6)  権・前掲書(注4)一五頁。
(7)  たとえば、朝鮮日報は、「アメリカ式ロースクールと類似した制度の導入を積極的に検討しており、司法改革共同企画チームは、長期的に専門法科大学院案が法曹人を画期的に増やしても法曹人の資質を向上できる案として支持する」と報道した(一九九五・二・二八、三五面)。
(8)  「参与民主社会と人権のための市民連帯」、一九九四年九月一〇日にソウルの大韓弁護士会館で創立大会を開いて出帆した市民団体である。大学教授、弁護士など市民三〇〇名が会員として加入している参与連帯は、議政(国会活動)監視、司法(法院・検察の活動)監視などの二つの監視センターと、人権教育および国際連帯を担う人権センターを設置・運営している。参与連帯はまた、労働、独占財閥の弊害、環境問題、障害者問題などの公益性を帯びる問題を法律的に解決するための公益訴訟センターと良心宣言を活性化し、保護するための内部告発者支援センターも設置している。参与連帯は、各種活動を専門的に遂行するため、常設弁護人団も構成している(朝鮮日報一九九四・九・一一、二六面)。参与連帯は、社会各分野の民主主義を総体的に監視できる、韓国でもっとも影響力のある市民団体である。
(9)  参与民主社会市民連帯  司法監視センター『市民のための司法改革』(一九九六)七頁。
(10)  朝鮮日報一九九五・三・一七。
(11)  朝鮮日報一九九五・三・二二、三七面。
(12)  朝鮮日報一九九五・三・二八、四五面。
(13)  権・前掲書(注4)八六ー八七頁。
(14)  権・前掲書(注4)二〇頁。
(15)  権・前掲書(注4)一〇三頁。
(16)  「司法改革と司法正義のためのわれわれの主張」(これはもともと法律消費者連盟の綱領であったが、一九九八年四月一七日に開催された「司法改革促求市民大会」で正式に採択されたといわれている)。
(徐勝訳)

※本稿は昨年一〇月二二日、立命館大学で行われた日韓共同シンポジウム「変貌する日韓の司法−改革の焦点」で発表されたものである。