立命館法学 2000年3・4号上巻(271・272号) 570頁




EU消費者保護とドイツ団体訴訟の新展開


出口 雅久


 

は  じ  め  に

  二〇〇〇年四月に成立したわが国の消費者契約法は、契約当事者間の情報格差や交渉力格差を正面から認めて、その格差を濫用して事業者が消費者との契約を締結したり、また事業者に一方的に有利な契約条項を定めた場合に、消費者に契約の取消しを許したり、契約条項の全部又は一部を無効にすることによって、消費者の正当な利益の擁護を図ることを目的としている(第一条)。確かに、かかる情報格差の存在を明文の形式ではじめて認めたものとしては、わが国において消費者契約法は画期的な法律と評価できる(1)。しかし、一般の消費者にとっては権利が与えられていても、実はそれを行使することはそれほど容易なことではない。現代社会においては消費者個人の力だけで悪質な事業者に対して裁判制度を通して紛争解決をして行くのは極めて困難な状況となってきている(2)。また、新民事訴訟法も依然として二当事者対立構造を前提としているために、消費者保護に力点を置いた提訴手段は未だに脆弱であると言わざるを得ない(3)。したがって、二一世紀における大規制緩和時代において真の意味で消費者保護を徹底させて行くためには、訴訟において消費者が提訴し易い法制度を整備することが必要不可欠である(4)。さらに、経済取引は益々国境を越えて進展しており、消費者保護の国際的な観点からの検討も重要である(5)
  米国と並んで、日本にとって重要な輸出相手であるEU諸国においては、従来より消費者に代わって、消費者の権利を実現する方法の一つとして、消費者団体自体に訴訟を提起する権限を付与する団体訴訟制度が運用されてきた(6)。わが国の消費者契約法の審議過程においても、団体訴権の是非について議論はされたが、最終的な立法に際しては、衆参両院の附帯決議において、消費者契約法の施行状況を見ながら、将来において団体訴権の検討を行うとしたに留まり(7)、今回の消費者契約法には時期尚早として盛り込まれなかった(8)。これに対して、EU諸国をはじめとする団体訴権を伴なったグローバルな消費者保護法制の動向と比較すると、わが国の消費者契約法二条が、消費者契約によって保護される主体を消費者個人に限定し、NPOを含む消費者団体を消費者契約法の適用主体から除外したことは、立法の最大のエラーであったと評価せざるを得ない(9)。そこで、本稿では、一九九八年の消費者利益の保護のための差止請求訴訟のためのEUガイドラインによって新たな段階を迎えつつあるEU消費者保護における団体訴訟の新動向に関して、ドイツにおける国内法化の過程における議論状況を中心に検討することによって、わが国における将来の団体訴訟の導入の可能性について若干の考察をしてみたい(10)

一  従来までのドイツにおける団体訴訟の位置付け


1  ドイツの団体訴訟の歴史
  いわゆる集団的な権利保護制度については、その起源は三〇〇年前のイギリスの裁判官法に由来すると言われている(11)。これに対して、ドイツの団体訴訟は、一見したところ、進歩的で、現代的な法制度であるかのように思われるが、実はすでにUWG(不正競争防止法)と共に一〇〇年の長い歴史を有している。すなわち、一八九六年のUWGが、競争相手の他、営業利益を促進する権利能力のある団体に対しても、UWG一条および三条による競争違反の差止に向けられた請求権を行使する権利を認めていた(12)。その後、団体訴権は、一九六五年に特定の消費者団体、一九八九年には商工会議所ならびに手工業会議所にも与えられるようになり、その間、一九七六年にはAGBG(普通取引約款法規制法)が改正され、AGBの内容審査は消費者および経済団体の訴権にまで拡大された(13)。かかるドイツ国内の団体訴権の拡大傾向は世界的な潮流であり、国際的な消費者保護のための集団的な権利保護制度は立法により拡大される方向性が顕著である(14)

2  ドイツ団体訴訟の法的性質論をめぐる判例・学説の動向
  ドイツの判例は、従前より提訴権限のある団体に独自の実体法上の請求権を認めることを前提としてきた(15)。その後、ドイツの判例は、UWG一三条二項二号の領域(営業利益を促進する権利能力のある社団)における疑わしい団体訴権者がかなり多くなってきたことにより、これを制限するために訴訟法的な手法を採用するようになった経緯がある(16)。さらには、訴権を職権によって上告審においても審査することができるようにするために、ドイツ最高裁は、UWG一三条が団体訴権に要求している基準、すなちわ、訴えの適法性の要件を分類して行くうちに、訴訟追行権や団体訴権自体が問題となり、最終的には訴訟上および実体上の請求権要件としての団体訴訟権限という両性説を採用するに至った(17)。他方、学説においては、たとえば、リンダッハーは、団体訴訟は権利者の訴訟追行権と他人の権利の第三者の訴訟追行権との中間形態であると評したり(18)、またアイケ・シュミットは、団体訴訟は、実体法および訴訟法上の非個人的な制度であり、民事法の救済方法に近いという理由から諸団体に割り当てられた審査権限を認めたものであるとしている(19)

二  ドイツにおけるEU消費者保護ガイドラインの国内法化


1  ドイツ国内での継子扱い的な立法作業
  さて、すでに指摘した通り、現在、EUにおいては、国境を越える取引における消費者保護を改善する努力が精力的に展開されており、これによって各加盟国の異なった民事訴訟法の規定をより一層強力に調整することも努力目標とされている。EUにおける消費者保護問題は、国内ばかりではなく、国境を越えた各地域においても発生し、常に渉外的な要素を内包している。そこで、欧州議会および欧州理事会は、一九九八年五月一九日に消費者利益の保護のための差止請求訴訟に関するガイドラインを発令した(20)。これによって、共同体内において加盟国の消費者保護団体は差止請求訴訟を国境を越えて自由に提訴することが可能となる。実は、このガイドラインの採用に対しては、ドイツ政府だけが反対の立場を表明していたが(21)、他の加盟国の賛成多数で可決したという欧州連合内におけるガイドライン策定上の背景がある(22)。本来であればZPOの中に団体訴訟を明記するか、あるいは他の訴訟法上の付随法規を制定するべきところ、ドイツ通信販売法(Fernabsatzgesetz)三条によって、何らの関係もない普通取引約款法規制法(AGBG)二二条に無理矢理に押し込められたという立法過程に、ドイツの立法者の本ガイドラインに対する消極的な態度を伺い知ることができる(23)。確かに、立法学的に見れば、ZPOの体系の中に組み込まれずに、場違いの普通取引約款法に規定されており、法体系上は問題があると指摘されている(24)。何故ならば、団体訴訟をZPOに一般条項的に規定した方が、消費者にとっては便利であり、法的明確性や法的安定性に資するからである。しかし、学説の中には、AGBG二二条三項の規定は民事訴訟法上の団体訴訟ドグマを改革するだけの十分な意義を有している、という肯定的な見解も表明されている点に留意すべきであろう(25)

2  マックス・プランク研究所の鑑定意見書の提案内容
  ドイツでは、新たな法的問題が生じる立法作業については、しばしばハンブルク市に設置されている外国および国際私法のためのマックス・プランク研究所が、比較法的な観点からの鑑定意見書を提出している(26)。同鑑定意見書(27)によれば、まず立法者が必ず行わなければならないことは、第一に消費者利益の保護のための差止請求訴訟に関するガイドラインを国内法化し、第二にガイドラインに基づいて団体訴訟に関する法律の必要な改正を行うことである。次に、立法者として行うべきことは、第一に団体訴訟の適用領域の拡大を図り、第二にZPOに団体訴訟を明記し、第三に提訴機関たる諸団体に対する濫用対策を施し、第四に地方裁判所への管轄権を集中し、第五に手続非参加者に対して既判力を拡張し、第六に伝統的な集団形式訴訟を拡張することである。さらに、立法者が行いうるべきことは、第一に団体訴訟の権利保護目的として損害賠償を導入し、第二に特定の法領域(投資家保護や製造物責任など)に対して集団訴訟を導入することである。最後に、立法者がすべきではないことは、第一に大量不法行為において集団訴訟を導入し、第二に具体的な人的な利益と無関係な公の利益のために団体訴訟を導入し、第三に官公庁に対して民事訴権を付与することである。同鑑定意見書は、ドイツ、アメリカ、フランス、イギリス、ギリシャ、オランダ、スウェーデン、スペイン、カナダなどの世界の主要各国の集団訴訟や団体訴訟を丹念に比較法的に考察した上で、以上のような改正提案をドイツ連邦司法省に提出している(28)。これを受けた連邦司法省改正草案を概観する限りは、この提案の最低限度の法改正に留まっており、またその規定の仕方にも上述した通り問題点を積み残していることは否定し難い(29)

三  新EU消費者保護法ガイドラインの基本原則


1  濫用防止のための対策
  (1)  提訴機関の限定
  EUガイドラインは、原則として集団訴権の濫用に関しては特別な手当ては施さずに、専ら各加盟国の国内法に委ねている(30)。すなわち、同ガイドラインは、国境を越えた消費者保護違反を国外に対しても阻止することができるという目的の達成のために、各加盟国に対して第三条[提訴権限機関]において二つのオプションを用意している(31)。すなわち、一つは独立した公的機関による提訴であり、もう一つは民間の消費者保護団体による提訴である。ドイツの立法者は、ドイツでは民事訴訟法上は団体訴訟の規定が存在しないという理由から、後者の方法を選択したため、依然として私法的な審査権限を維持している。これには、公の利益において行使される審査権限の濫用に対する事前の措置が必要となる(32)
  EUガイドライン三条によれば、団体訴権は消費者保護を目的としている諸団体に限定されている。したがって、ドイツでは団体訴権が付与されている、いわゆる経済諸団体などは排除されている点に留意すべきである(UWG一三条二項二号、AGBG一三条二項二号等)。何故ならば、同ガイドラインは、集団的な消費者利益の保護を目的としているのであって、営業的な利益が問題となっている訳ではなく、経済諸団体に対しても団体訴権を付与することは利害対立を生み出すジレンマに陥るからである(33)
  これに対して、同ガイドラインには、団体訴訟の代案として集団訴訟またはクラス・アクション等は設けられていない。米国では、クラス・アクションの形式での集団訴訟は極めて重要な意義を有しているのに対して(34)、英国の代表訴訟を除けば、EU加盟諸国では殆ど知られていない。さらに、集団訴訟は必然的にアド・ホックに発生するものであり、同ガイドライン四条で定められているすべての適格機関の登録を欧州レベルで行うことは集団訴訟の場合には事実上不可能である(35)

  (2)  登録手続と適格機関
  さらに、EUガイドラインは、不誠実な団体による訴権の濫用を回避し、差止訴訟に関する審査の負担を軽減するための法制度として登録手続を導入している(36)。すなわち、同ガイドライン四条によれば、各加盟国は理事会に各加盟国に基づく提訴権限機関を報告し、理事会は各提訴権限機関のリストを作成し、かつこれをEUの官報に公表し、その他の加盟国の裁判所はかかる「適格機関」を提訴権限ありとして承認する法制度が設けられている。ドイツの立法者は、このリストアップ手続を内国の消費者保護団体による差止請求訴訟に対しても導入している(37)。すなわち、AGBG二二条aIによれば、ドイツの消費者保護団体は登録された時にのみ提訴権限を有し、国内においても連邦行政庁のリストが作成され、連邦官報に掲載される。
  しかし、リストアップ手続が行われても、諸団体がその提訴権限を濫用する可能性は否定できない。そこで、EUガイドライン四条一項二文は、適格機関の目的が具体的な事件における提訴を正当化できるか否かを審査する権利を裁判所にも認めている。すなわち、ドイツの立法者は、従来までUWG一三条五項に規定されていた濫用条項を一般的な消費者保護訴訟の規定にも採用した(AGBG二二条aW)。

  (3)  団体の差止請求権
  ドイツの立法者は、AGBG一三条二項により、提訴権限を有する諸団体に対して独自の差止請求権を認めている。この請求権は、違反者だけではなく、当該営業所の所有者に対しても向けられている(AGBG二二条六項)が、自由に譲渡できるわけではなく、その他の提訴権限を有する機関にのみ譲渡することができるに過ぎない(AGBG二二条六項、同二二条三項二文)。この差止請求権は請求権者が了知してから二年以内に消滅時効にかかり、絶対的な消滅時効は四年となっている(AGBG二二条五項)。

  (4)  事前の協議義務の問題
  EUガイドライン五条は、差止訴訟の提起前に被告当事者または裁判国の適格機関と協議を行うことができると明記している。しかし、ドイツの立法者は、訴訟を回避する規定の可能性は採用せずに、専ら費用問題に関する重要な警告実務に留まっている。また、新しく創設された差止請求権に対しても、諸団体には商工会議所に設けられた調停所への提訴の可能性が定められている(AGBG二二条六項参照(38))。

四  消費者団体による差止請求訴訟のための登録制度


1  登録義務
  上述した通り、団体訴訟によって追行されうる請求権は、将来的には、連邦行政庁または欧州委員会において適格機関のリストに登録されている消費者団体だけに認められる(AGBG一三条二項一文、二二条三項一文一号、UWG一三条二項三号)。ドイツの立法理由書によれば、ここでは実体法上の規定、つまり、請求権限(原告適格)が問題となっているのであり、訴訟要件が問題となっている訳ではない(39)

2  ドイツ内国登録手続
  内国レベルでは、適格機関のリストに登録された権利能力ある消費者保護団体または連邦行政庁に申立てを申請することができるが、その際には、啓蒙や相談によって消費者の利益を守ることがその団体の定款上の役割に属すること、および同団体がかかる役割領域に活動する諸団体を有するか、または会員として少なくとも七五名以上がいることを証明しなければならない(40)。但し、公的資金によって助成されている消費者センターやその他の消費者団体は反駁不可能な法律上の推定規定に基づいてかかる証明を免除されている(AGBG二二条a二項二号)。

3  欧州登録手続
  欧州レベルでは、EUガイドライン四条三項によれば、欧州委員会においても適格機関のリストが導入されている。このリストに登録することがその他の加盟国における団体訴訟の要件となる。登録手続は内国レベルと全く異なっている。すなわち、直接的にEUに対して登録を申請することはできず、各加盟国の届出に基づいて行われる(同ガイドライン四条二項)。EUガイドラインのコンセプトによれば、各加盟国は、団体が適格機関のメルクマールを充足しているかを確定した上で、これらの適格機関の名称および目的を当該加盟国が欧州委員会に伝えることになっている(41)。しかし、ドイツの立法者は同ガイドラインに定められている申立要件を採用しなかった(42)。AGBG二二条a一項二号によれば、連邦行政庁はむしろ毎年そのリストを一月一日に欧州委員会に送付することになっている。欧州委員会は、かかる届出に基づいて、EU官報に公表されるリストを作成する。

4  登録リストの効力
  (1)  ドイツ国内・国外裁判所におけるドイツ消費者団体
  ドイツ国内において当該消費者団体が連邦行政庁のリストに登録されている場合には、その消費者団体はAGBG一三条または二二条によってドイツ裁判所において自己またはその他の適格機関(その他の加盟国も)から譲渡された差止請求権を行使することができる。かかる権限は、無効な普通取引約款(AGBG一三条一項)の使用または推奨による差止および取消請求権ならびに消費者保護法(AGBG二二条一項)に対するその他あらゆる違反の阻止にまで及んでいる。
  これに対して、EU内の団体が連邦行政庁の通知により欧州委員会のリストにも登録された場合には、同ガイドラインによれば、その他の加盟国の裁判所は、当該地に由来する国境を越えた消費者保護違反に対して向けられた権利追求を不適法または理由なしという理由で取り扱ってならないので、その結果として当該団体は外国の団体としての団体訴権は認められないことになる(43)
  (2)  ドイツ裁判所における外国機関
  他の加盟国に設置されている機関は欧州委員会のリストに登録されなければならない。EUガイドライン三条によれば、消費者団体である必要はないので、たとえば、スウェーデンの消費者オンブズマンまたはイギリスの公正取引委員会も、スウェーデンまたはイギリスの消費者の利益がドイツの領土において由来する法違反によって侵害された場合には、ドイツの裁判所に訴えを提起することができる(44)。但し、EUガイドラインは、リスト登録の拘束力に関する例外を設けていないので、ドイツの裁判所が適格性の審査のために訴訟手続を停止することは、AGBG二二条a四項をガイドラインに則して解釈する限り不可能である(45)。また、AGBG二二条四項による濫用審査を除いて、ドイツの裁判所は、他の加盟国の適格機関の訴えが、権利追求はその設立の目的をカバーしていないという理由で却下することはできない(46)

五  民事訴訟上の差止請求訴訟の新しいドグマとその評価


  ドイツの立法者は、団体訴訟ガイドラインの国内法化において、団体訴権の要件が実体法に属するか、それとも訴訟法に属するか、という従来までの教義上の争いについては実体法に属すると判断し、議論に終止符を打った形となった(47)。すでに述べたように、判例および学説は、団体訴訟を民事訴訟法上のドグマに分類することに従来までかなり苦心してきた。すなわち、ドイツの立法者は、AGBG一三条二項は、原告適格に関する規定であるのか、それとも訴訟追行権に関する規定であるのかという教義上の争いについて、前者の意味で判断したわけであるが、これにより一部学説も同調している、両性説を採用する判例も立法者の明確な規定によってもはや維持できなくなるであろう(48)
  ドイツの立法者の判断により、団体訴訟も、通常の民事訴訟と同様に実体法上の請求権が主張されることになる。裁判所は、団体訴権を将来的にはもはや職権で審査する必要はないことは、むしろ司法負担の軽減として歓迎すべきである(49)。但し、すでに指摘した通り、法体系および立法技術的な観点から見れば、立法者の偏屈な態度のためにかなり問題を積み残している。したがって、将来的には包括的な消費者保護法を立法し、その中で団体訴訟の実体法上の要件も明記することが望ましいであろう。とりわけ、団体訴訟に関する訴訟上の規定は、効果的な消費者保護の実現を図るという意味からは、その法的性質の議論に関わりなく、やはり本来はZPOに帰属させて消費者団体および事業者団体にもアピールする必要があろう。尤も、ZPOへの団体訴訟の導入が従来までの訴訟原則との調和はどのようなものになるかについては議論すべき点は依然として残っている(50)

お わ り に−わが国における消費者保護のための団体訴権の可能性

  ドイツにおける団体訴訟の歴史で概観した通り、UWGの一〇〇年に及ぶ実務および学説の理論的な発展過程における蓄積の成果が、今回のEUガイドラインの国内法化についてもその根底には流れていると思われる。ドイツにおいて、団体訴訟が濫用されずに利用されてきた理由は、その法制度の目的や機能を明確にしてきた点にあると思われる(51)。すでにわが国の新民事訴訟法の改正においても、クラス・アクションや団体訴訟の導入の可能性については議論されてきたが、立法的手当てとしては選定当事者制度の拡充のみに甘んじている(52)。しかし、二一世紀初頭に到来するであろう大規制緩和時代において、消費者保護における訴訟上の救済方法の強化は必要不可欠なものである。今回のEUガイドラインの欧州各加盟国における国内法化の努力は、EUにおける国境を越えた消費者保護のための差止請求訴訟を相互に承認・執行し合うことが前提とされており、EU諸国内における民事訴訟法のより一層のハーモナイゼイションも期待されている。かかる民事訴訟法を統一しようとする、トランスナショナルな民事訴訟ルール策定は、現在、世界的に最も注目されているプロジェクトの一つでもある(53)。今回の内国民事訴訟法に対するEUガイドラインの与える影響は、全く異なった手続法の間におけるハーモナイゼイションの在り方として極めて注目すべき点がある。さらに、現代の情報社会においては、インターネット取引の発展により一般消費者が国際的な取引による消費者被害を被る可能性は爆発的に増大している(54)。したがって、今後は国内外における消費者保護問題も視野に入れて最も消費者保護に効果的な提訴手段を立法していく必要があろう。
  わが憲法三二条は「裁判を受ける権利」を保障しているが、同時に、かかる裁判制度は効果的な権利保護をも保障するものでなければならない。一定の適格性を有する消費者団体に団体訴権を認めていくことは、まさに消費者を代表する消費者団体に裁判を受ける権利を効果的に実現していくことを意味している(55)。現代的な消費者保護においては、確かに被害そのものの回復も重要であるが、国民経済的な観点からはより一層重要なのは予防的な救済が図れるか否かである。その点で、わが国においては、訴権の濫用や法的審問請求権の侵害の恐れが生じる、アメリカ法的なクラス・アクションのような集団訴訟形態ではなく、むしろ一定の政策目的に合致した公益重視の観点から消費者保護に明確に限定した団体訴訟の導入が望ましいと考える(56)。かかる意味において、今回のEUにおける消費者保護のための差止請求訴訟のガイドラインは、わが国の消費者保護における訴訟上の救済措置の立法形態を考える上で極めて示唆に富むものである。

  尚、本稿は、平成一二年度文部省科学研究費基礎研究C(課題番号一〇六二〇〇四五)の研究成果の一部である。

(1)  松本恒雄「規制緩和時代と消費者契約法」法学セミナー五四九号(二〇〇〇)六頁。司法制度改革審議会の議論との関係では、将来的には消費者保護団体等にも法曹資格者が常勤する体制が望まれよう。
(2)  裁判の長期化による消費者救済について問題点を指摘するのは、加賀山茂「消費者契約法の実効性確保と今後の展望」法学セミナー五四九号(二〇〇〇)四五頁以下参照。
(3)  消費者団体の脆弱性については、大村敦志「消費団体の活動−生協を中心に」ジュリスト一一三九号(一九九八)一三三頁参照。尤も、新法でも選定当事者制度の拡充は図られている。すなわち、共同の利益を有する第三者は訴訟開始後にも訴訟上の請求を追加して訴訟規模の拡大を図れることになっており(民事訴訟法三〇条三項、一四四条一項)、この点で拡散被害の救済についてある程度の進展はあったと言える。尚、小島武司「消費者保護と民事訴訟」民事訴訟法の争点第三版(一九九八)三二頁以下、松下満雄編「不公正な競争行為と民事救済」別冊NBL(一九九七)七四頁。Baetge, Das Recht der Verbandsklage auf neuen Wegen, ZZP 112 (1999) S. 329. 参照
(4)  加賀山茂「消費者契約法の実効性確保と今後の展望」法学セミナー五四九号(二〇〇〇)四八頁以下参照。立法学的な観点から実体法上の請求権と訴訟法上の法制度とは車の両輪であることを忘れてはならない。卑近な例としては、営業秘密については、平成三年六月一五日に施行された不正競争防止法一条三項の改正によって、実体法上営業秘密について差止請求権が認められたにも関わらず、訴訟において秘密保護手続が設けられていないために、事実上この差止請求権は絵に描いた餅と化していることが挙げられる。尚、拙稿「民事訴訟における秘密保護手続」立命館法学二四九号(一九九六)三〇〇頁以下参照。
(5)  国際的な観点から消費者保護を検討したものとしては、長尾・中坊編「消費者法の国際化」日本評論社(一九九六)、奥田安弘「国際化と消費者」ジュリスト一一三九号(一九九八)八八頁以下がある。
(6)  さしあたり、バウムゲルテル(竹下守夫訳)「団体訴訟(Verbandsklage)民訴雑誌二四号(一九七八)一五四頁以下、アーレンス(霜島甲一訳)「消費者保護における団体訴訟」民訴雑誌二四巻(一九七八)一八三頁以下、上原敏夫「ドイツの団体訴訟制度の動向」一橋論叢一一七号(一九九七)一頁以下、杉原丈史「フランスにおける集団利益擁護のための団体訴訟」早稲田法学七二巻二号九三頁以下、高橋宏志「紛争解決過程における団体」・「基本法学(岩波講座(2))−団体」所収(現代における新しい問題2)一九八三年二九六頁以下、その他注釈民事訴訟法(2)一三頁(上田)に掲載されている文献等ならびに Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, Die Bu¨ndelung gleichgerichteter Interessen im Prozeβ, 1999. S. 147 以下参照。
(7)  松本恒雄「規制緩和時代と消費者契約法」法学セミナー五四九号(二〇〇〇)九頁。韓国における立法状況については、金洪奎「韓国司法制度概要と最近の立法動向(四・完)」立命館法学二六二号(一九九八)三五四頁以下参照。
(8)  井田ほか「消費者契約法の実効性の確保に関する一提案(上)」NBL六六四号(一九九九)三二頁以下・同(下)NBL六六八号(一九九九)四八頁以下、上原敏夫「消費者契約法と消費者団体訴訟」別冊NBL五四号二四五頁以下参照。経済企画庁「消費者契約法について(平成一二年五月)」では、国民生活センターや全国の消費者生活センター等に寄せられた苦情・相談件数は平成一〇年度で約四二万件に達すると報告されており、消費者個人による提訴は国民経済的な観点からも不経済であり、消費者保護団体による団体訴権の必要性を物語っている。
(9)  加賀山「消費者契約法の実効性確保と今後の展望」法学セミナー五四九号(二〇〇〇)四八頁以下。
(10)  Vgl. Greger, Neue Regeln fu¨r die Verbandsklage im Verbraucherschutz− und Wettbewerbsrecht, NJW 2000, Heft 34, 2457. 本稿は同論文に負うところが多い。同ガイドラインのドイツ法への影響については、Baetge, ZZP 112 (1999) S. 329ff 参照。EUにおける団体訴訟の新たな可能性は、EU製造物責任ガイドラインの国内法化の時と同様に、輸出国である日本にとっては看過し得ない問題となりうる。尚、二〇〇〇年四月にハンブルクで開催されたドイツ民事訴訟法担当者会議においても、このテーマが取り上げられている。同学会誌ZZP編集委員・前理事長ディーター・ライポルド教授より同学会資料を提供して戴いたことを付記しておく。
(11)  Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, a. a. O, S. 12; 原強・紹介<Stephen C. Yeazell, From Medieval Group Litigation To The Modern Class Aktion, Yale University Press, 1987, pp. x+306>アメリカ法一九九三年一号三七頁以下は、クラス・アクションは八〇〇年にわたる長い伝統を持つとし、その体系分析には史料編集的作業の必要性を説く。
(12)  Vgl. Baumbach/Hefermehl, Wettbewerbsrecht, 21. Aufl. (1999), § 13 UGW Rdnr. 20.
(13)  Greger, Verbandsklage und Prozeβrechtsdogmatik−Neue Entwicklungen in einer schwierigen Beziehung, ZZP 113 (2000) 掲載予定。
(14)  世界各国において団体訴訟または集団訴訟の導入の動向については、一九九四年にはオランダが団体訴権を大幅に拡大し、一九九八年のスペインおよび一九九四年のギリシャは、それぞれ全く新しい団体訴権を立法化し、さらにはフランスにおいてもオランダ方式の団体訴訟の導入が検討されている。また、新しい集団訴訟を導入したのは、一九九三年のカナダ・オンタリオ州(同州法改正委員会については、山本和彦「カナダ・オンタリオ州法からみたクラス・アクションの検討」ジュリスト八四二号(一九八五)一五六頁以下が詳しい)および一九九五年ブリティッシュ・コロンビア州、今後、集団訴訟を導入しようと予定しているのは、イギリス、スウェーデン等のスカンジナビア諸国である(Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, 前注(6) S. 12ff.)。さらに、台湾でも一九九四年にドイツ型の団体訴訟が導入されている(松本恒雄「法実現のための監視体制」ジュリスト一一三九号(一九九八)一〇九頁注(21)参照)。
(15)  Vgl. RGZ 120, 47/49f.
(16)  Greger, ZZP 113 (2000) 掲載予定。
(17)  Greger, ZZP 113 (2000) 掲載予定。
(18)  Lindacher, Mu¨nchKommZPO, vor§ 50 Rndr. 73.
(19)  Eike Schmidt, Die Verbandsklage nach dem AGB−Gesetz, NJW 1989, 1194f. 法定訴訟担当において会員個人の利益を主張したり、他人の集団的権利に関する訴訟追行権、国家の差止請求権のための訴訟担当から、基礎となる実体法上の請求権を全く解き放したものまで、様々な理論が学説上唱えられている現状である(Greger, ZZP 113 (2000) 掲載予定参照)。
(20)  Richtlinie 98/27/EG v. 19. 5. 1998, AblEG Nr. L 166 v. 11. 6. 1998, S. 51. 同ガイドライン八条によれば、同ガイドラインは、施行後三〇ヶ月以内に、すなわち、二〇〇〇年末までに、各加盟国によって国内法化されなければならない。同ガイドラインの成立史については、Baetge, Das Recht der Verbandsklage auf neuen Wegen, ZZP 112 (1999), 331. 参照。
(21)  ドイツ最高裁も「団体訴権はZPOには馴染まない」とする(NJW 1983, 1061/1062)。
(22)  Greger, NJW 2000, 2458.
(23)  Greger, NJW 2000, 2458;Koch, Die Verbandsklage in Europa, ZZP 113 (2000) 掲載予定参照。Entwurf eines Gesetzes u¨ber Fernabsatzvertra¨ge und andere Fragen des Verbraucherrechts sowie zur Umstellung von Vorschriften auf Euro, BT−Drucks. 14/26/58;Andres Fuchs, Das Fernabsatzgesetz im neuen System des Verbraucherschutzrechts, ZIP 30/2000, S. 1273ff. 参照。
(24)  Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, a. a. O, S. 4.
(25)  Greger, ZZP 113 (2000) 掲載予定は、ドイツの立法者は、今回の法改正において、団体訴権の要件は明確に訴訟法に属するものと捉え、原告適格と訴えの理由具備性であることを表明したとする。
(26)  Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, a. a. O, S. 1ff.
(27)  Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, a. a. O, S. 3ff.
(28)  Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, a. a. O, S. 3ff. 因みに、わが国の今後の立法作業においては、ロースクール設立後はなおさらのこと、かなりの時間を大学での教育・行政に割いている大学研究者ではなく、ドイツ・マックス・プランク研究所のような、立法活動を専門的観点からサポートする産官学協力による国際比較法研究所の設立が必要不可欠であろう。
(29)  Koch, Die Verbandsklage in Europa, ZZP 113 (2000) 掲載予定も今回の法改正については、「頑なに」立法者はできるだけ目立たない場所に規定したと批判している。
(30)  この点は、上原敏夫「消費者契約法と消費者団体訴訟」別冊NBL五四号二五〇頁も指摘するように、団体訴訟は、専ら差止請求に留まり、提訴には高度な専門的な知識が必要となることから、その性格上訴権の濫用はそれほど多くは問題とはならないであろう。鎌田ほか「競争秩序の維持と「私訴」を考える(下)NBL六八一号(二〇〇〇)五三頁(高橋宏志発言)も経済界からの濫訴の懸念に対しては製造物責任の場合と同様に疑問を提起する。
(31)  Richtlinie 98/27/EG v. 19. 5. 1998, AblEG Nr. L 166 v. 11. 6. 1998, S. 52ff.
(32)  Greger, NJW 2000, 2458.
(33)  Baetge, ZZP 112 (1999) S. 336 以下参照。尚、スウェーデンでは、消費者オンブズマンが消費者利益の代表として擬制されているが、実際には団体訴訟それ自体は殆ど提起されていない(Baetge, ZZP 112 (1999) S. 337)。
(34)  原強・紹介<Stephen C. Yeazell, From Medieval Group Litigation To The Modern Class Aktion, Yale University Press, 1987, pp. x+306>アメリカ法一九九三年一号三六頁;Burbank, The Class Action in American Securities Regulation, ZZPlnt 4 (1999) S. 321ff;リテャード・マーカス/大村雅彦訳「アメリカのクラス・アクションー疫病神か救世主か」NBL七〇一号一五頁以下参照。因みに、The Japan Times August 24, 2000 によれば、第二次世界大戦期に日本国内の鉱山等で強制労働させられたとする中国人らが二〇〇〇年八月二二日、三井、三菱グループの計二十社を相手取り、損害賠償を求める集団訴訟を米カルフォルニア州ロサンゼルス郡上級裁判所に提起した。この種の訴訟はすでにナチス・ドイツによる強制労働に対する集団訴訟が米国で提起されており、六〇億ドルとも七〇億ドルもの損害賠償金で和解が成立している。この種のクラス・アクション訴訟の多くは和解で終了するが、米国の和解手続の法的性質との関係でドイツでの承認可能性について問題が提起されている。詳細は、Hess, Die Anerkennung eines Class Action Settelment in Deutschland, JZ 8/2000, S. 373ff. 参照。最近のアメリカにおける大量不法行為訴訟に関する資料としては、Symposium Mass Torts, Burbank, University of Pennsylvania Law Review, Vol. 148, June 2000, No. 6. p. 1851 以下参照。
(35)  Baetge, ZZP 112 (1999) S. 338;Basedow/Hopt/Ko¨tz/Baetge, S. 6. も大量不法行為に対する集団訴訟の導入には否定的である。
(36)  Greger, NJW 2000, 2458.
(37)  Greger, NJW 2000, 2458.
(38)  Greger, NJW 2000, 2458;Baetge, ZZP 112 (1999), 331 (349). 尚、岡崎克彦「ドイツにおける裁判外紛争解決及び法律相談制度の実情(1)」判例時報一七二四号二〇頁以下参照。
(39)  BT−Dr 14/26/58, S. 52.
(40)  Greger, NJW 2000, 2460.
(41)  Greger, NJW 2000, 2460.
(42)  Greger, NJW 2000, 2460.
(43)  Greger, NJW 2000, 2461.
(44)  Baetge, ZZP 112 (1999) 311 (344); スウェーデンの法状況については、Ellger, Die Bu¨ndelung gleichgerichteter Interessen im englischen Zivilprozeβ in:Basedow/ Hopt/ Ko¨tz/Baetge, Die Bu¨ndelung gleichgerichteter Interessen im Prozeβ, 1999. S. 103 以下、イギリスの法状況については、Dopffel/Scherpe,”Grupptalan−Die Bu¨ndelung gleichgerichteter Interessen im schwedischen Recht, 同書 S. 428 以下参照。
(45)  Greger, NJW 2000, 2461.
(46)  Greger, NJW 2000, 2461; EUガイドライン四条一項二文で、適格機関の目的審査の可能性を認めていたが、ドイツの立法者はこれを採用しなかった。
(47)  BT−Dr 14/2658, S. 52.
(48)  Greger, NJW 2000, 2462.
(49)  Greger, NJW 2000, 2463.
(50)  Greger, ZZP 113 (2000) 掲載予定。松下満雄編「不公正な競争行為と民事救済」別冊NBL(一九九七)七五頁も、団体訴権を導入する場合には、当事者主義原則や既判力の及ぶ範囲に再検討が必要であるとしている。
(51)  日本弁護士連合会「民事訴訟手続に関する検討事項」に対する意見書(一九九二)一七頁によれば、団体訴訟では消費者救済が不十分であるとするが、ヨーロッパでは消費者保護のために一般的にはかなり団体訴訟が導入されているようである(Koch, ZZP 113 (2000) 掲載予定参照)。
(52)  小島武司「消費者保護と民事訴訟」民事訴訟法の争点第三版(一九九八)三三頁参照。団体訴権導入に対する障害、理論的障害、民事訴訟法の一般原則との整合性、濫訴については、今回のEUガイドラインのドイツにおける国内法化の議論とかなりの程度オーバーラップしている(上原敏夫「消費者契約法と消費者団体訴訟」別冊NBL五四号二四九頁以下参照)。
(53)  小島武司「アメリカ法律協会「渉外民事訴訟ルール」プロジェクトについて」国際商事法務二七巻五号五一二頁参照。二〇〇〇年一〇月には立命館大学および慶応義塾大学において、本プロジェクトに対するスイス側からの見解についてベルン大学法経学部ゲルハルト・ヴァルター教授が講演を行った。その詳細は、Improving the Prospects of the Transnational Rules of Civil Procedure Project:Some Thoughts on Purpose and Means of Implemention, Ritsumeikan Law Review Nr. 18 (2001) 掲載予定参照。
(54)  米丸恒治「ネット通販と消費者保護規制の課題」法学セミナー四三巻一〇号一三一頁以下参照。
(55)  高橋宏志「紛争処理の諸制度」ジュリスト一一三九号(一九九八)一一五頁は、団体訴訟は消費者法の最後の守り神である、として導入に好意的である。
(56)  すでに立法論としては、井田ほか「消費者契約法の実効性の確保に関する一提案(上)」NBL六六四号(一九九九)三二頁以下・同(下)NBL六六八号(一九九九)四八頁以下がある。注釈民事訴訟法(2)一五頁(上田)は、集団訴訟への対応としては、さしあたりなお被害者団体・住民団体や消費者団体などを背景とした各紛争主体の共同訴訟方式が基本であり、さらに、選定当事者への授権のほか、個人を越えて運動主体たる被害者団体、住民団体や消費者団体など当該紛争に関与している団体への各紛争主体による授権に基づく任意的訴訟担当を認めるべきであるとする。しかし、国境を越えた消費者被害の場合には共同訴訟方式も任意的訴訟担当も事実上は不可能であり、EUガイドライン方式は渉外的な消費者保護を射程に入れている点において優れている。