立命館法学  一九九六年六号(二五〇号)一四七五頁(一三五頁)




電気通信事業における相互接続規制の法制度的検討


土佐 和生






目    次




は  じ  め  に

  電気通信事業に対し、各国において競争が導入され、法制度的にもマルチキャリア体制が進展しているのは周知の事柄である。また、この事業の法制度と政策の検討・再編成という文脈で、「規制緩和」、「NTT分割」、「公正有効競争」、「独禁政策の強化」といった問題が論じられていることは一般に理解され、社会的な関心も高い。しかし、電気通信事業における相互接続規制という問題については、それが余りに技術的・専門的な議論に亘るためか、社会的関心は全体として未だ十分とはいえない。だが、ユーザーの利便の向上という点からいって、また今後の規制装置の中軸の一つになるであろうという、規制体系上の位置づけからいっても、相互接続規制は今後益々重要性を増すであろう。
  ところで、相互接続はどうして、どのような意味で、最近の電気通信規制にとって重要な課題となってきたのであろうか。第一は、マルチキャリア体制の下でのネットワーキングの利益という問題である。各々の事業者ごとにユーザーの島ができているが、それぞれが他の事業者のネットワークに相互接続できないとなればネットワークの外部性(1)は働かない。それよりは相互に接続が可能である方がユーザーの便益は高まり、当該サービスの魅力も向上する。もっとも、であればこそ相互接続問題に各事業者が一層の戦略的意義を置くことにもなり、またしたがってそれが競争保護という問題を惹起する所以でもあるのだが。第二に、相互接続は、公正な競争基盤の確保という意味からも重要である。わが国のNTTにつき言われるように、誰もがそれを用いないと事業が遂行できないような設備(不可欠設備 essential facilities)を有するものが市場に存在する場合、事業構造に競争的部門と非競争的ないし独占的部門が生じると共に、両者の間に、例えば内部相互補助が起こったり、独占部門の情報の競争部門への流用等が起こり得る。しかし、各々の事業者がこの不可欠設備を対等の立場・同等の条件で使用することができれば、構造的な意味での競争部門における不公正な競争問題は生じにくくなる。このように、公正な競争基盤の確保という視点からも相互接続問題は重要な課題となっている。第三に、フロンティア産業たる電気通信事業に対する新規参入の促進という意味からも接続問題の重要性を語ることができる。すなわち、参入企図の段階で十分に練り上げられた事業計画の作成を可能にし、新規参入についての事前の予測可能性をもっと高めるためにも、広義の接続費用が事業収入に占める割合がどの程度なのかをはっきりさせることが有益なのではないかという問題意識である。現在、NCCs(新規参入事業者)は、その収入の相当部分(例えば、四割)をNTT足回り回線に対する使用料に支払っているが、しかし一体どれほどの事業規模で、どういうサービスをすれば、初期費用を含む広義の接続費用がどの程度になるかが不確定で、実際に参入してみないと本当のところがわからない面がある。これを明確にすることが一定の参入促進効果をもつのではないかと考えられるわけである。
  このような意味合いをもつ相互接続問題も、しかしながら、従来は、どちらかといえば事業者問題に過ぎず、ユーザーや社会には直接関わりのない事業者サイドに閉じられた問題であるという捉え方が少なくなかったように思われる。この受け止めは、実際の相互接続交渉が現行制度上事業者間協議を主体に組み立てられ、事柄の本質が外部から一見明らかでないという事情によっても増幅されていたように思われる。しかし、今後は、一体どういう性格の、どのような電気通信ネットワークを社会的インフラとして整備してゆくのかという視点を自覚的にしつつ、この相互接続問題の、またそれに対する規制制度のあり方の社会的意義を検討してゆく必要があろう。さらに、そもそも経済法学や行政法学等において、相互接続規制の制度的あり方それ自体を考究する議論は、事柄が現在進行中の極めて実務的範囲に属するという事情からか、わが国は言うに及ばす米国、EU等にもほとんど存在しないといって過言でない。
  このような背景事情から、本稿は、右のような相互接続に関する規制制度について、その意義、概要等を略述すると共に、できるだけ客観的な立場から今後のわが国の相互接続に係る法制度上の課題と論点を示すことを目的とする。その際、極めて簡単ではあるが、米国とEUにおける相互接続規制のあり方にも触れることで法制度比較の観点も意識しておきたい。なお、筆者の能力と紙幅の関係上、各々の論点ないし事柄の詳細に十分に立ち入ることはできない。それ故、本稿は相互接続問題の法制度分析に関する簡単な見取図であるとご理解頂きたい。

一  米 国 法 の 現 状

  米国において、相互接続に関する連邦規制の基本的枠組は、一九九六年電気通信法(2)によって与えられている。電気通信法は、まず、すべての通信事業者に対し、他の通信事業者の設備・機器との間に直接・間接の相互接続義務を一般的に確認する。しかし、通信事業者といっても不可欠設備を有する事業者から単なるVAN事業者までその実体は千差万別であり、すべてを一律に扱うには無理があることから、電気通信法は、不可欠設備の持ち具合に応じて通信事業者を二つに大別し、各々に異なる具体的義務を課す。すなわち、一方で、一般の電気通信事業者には設備・機器に対する直接・間接の相互接続義務(二五一条a項一号)および公衆や身障者の電気通信サービスに対するアクセス確保のための技術標準への準拠義務(同二号)を課すに止める。他方、不可欠設備を有する地域交換事業者(Local Exchange Carriers;LECs 電話交換サービスないし交換アクセスを提供する事業者)に対しては、自己の提供する電気通信サービスの再販売の拒絶や差別扱い等の禁止(二五一条b項一号)、番号ポータビリティ(加入者が通信事業者を変更しても元の番号をそのまま使い続けることができる制度)の提供義務(同二号)、競争者に対するダイヤルパリティ(自社に加入していない利用者であってもその者の指定するサービス提供者に特別のダイヤリングをすることなく自動的に接続させる制度)の提供義務(同三号)等を課すことで、その義務の内容を加重する。加えて、この地域交換事業者のうち、既存の(incumbent)事業者に対しては、自己のネットワークとそれへの接続を望むすべての他事業者の設備・機器との間で、電話交換サービスないし交換アクセスの伝送およびルーチングのため、技術的に可能なすべてのポイントにおいて、適正・合理的かつ無差別の条件で、自己使用と同等の品質での相互接続を追加的に義務づけている(二五一条c項二号)。同時に、これら既存事業者には、他事業者との間の相互接続交渉に誠実に臨む義務(同一号)、各々の網機能・網構成要素をアンバンドル(ネットワークの機能や構成要素を細かく分解して必要とされるものだけを供給するという、いわばアラカルト方式の接続形態)して提供する義務(同三号)、他事業者に対する電気通信サービスの卸価格での再販売義務(同四号)、コロケーション(他事業者の局舎内等への交換機等の設置)の義務(同六号)等も加重されており、先の一般の通信事業者のそれと比較してその相互接続義務の具体的内容はまことに広範かつ重大である。なお、BOCs(Bell Operating Companies AT&T分割で独立した地域電話会社。これらは当然に既存のLECsでもある)には、またさらに事業者間での公正・対等を期すための法定の競争チェックリスト(二七一条c項二号B)を満たす義務等が付加されており、もはや極めて厳格かつ硬質の規制というほかない。
  ところで、このような米国の相互接続規制には前史(3)がある。一九八二年修正同意判決(4)によって旧AT&TがBOCsと現AT&Tに分割されたとき、競争保護の見地から、新規に創出されたBOCsが地域の不可欠設備をかつての身内のAT&Tだけでなく誰に対しても同等に使用させなければならないという原則が打ち立てられた(同等な交換アクセスの実現(5) Equal Exchange Access)。その後、この原則は、一九八六年、FCC(連邦通信委員会)の第三次コンピュータ調査に関する報告および命令(6)という行政規則の中で、CEI(Comparably Efficient Interconnection 同等に効率的な相互接続)という暫定規制措置を経て、ONA(Open Network Architecture)という一般的規制措置に包摂された。これは網構成要素や機能を一括してリセールするのではなく、網構成要素や機能を細かく切り出して(アンバンドル)自己の望むサービス構築に必要な機能だけを抽出して受け取るという制度である。またこの際、ネットワークの高度化や展開の方向性につき社会的な透明度を高めるという観点から、一九九二年以後、ONA修正規則を通じて、既に網に実装された機能、交渉が積み残しで今後検討する必要のある機能など、事業者間交渉を整理してアンバンドルされた機能ごとの進捗状況と今後の計画を明示するONA年次報告書の公表という情報開示システムが設けられていた。一九九六年電気通信法の規制枠組は、以上のような従来の政策展開を法制度的にも後づけると共に、今日のマルチキャリア体制の時代にあって必要と思われる諸制度(例えば、番号ポータビリティ、コロケーション等)をも新たに盛り込んだ規制制度であると評価できよう。

二  E U 法 の 現 状

  EUの場合、電気通信事業も、一九九三年末の経済統合を目指しての一連の経過の中で自由化されてきた(7)。しかし、たとえ各加盟国がEU指令にもとづき事業法ベースで平準化や規制緩和を行っても、現実に相互接続ができなければ共通市場は成り立たない。法律上は各キャリアが相互参入できても、実際に技術的にできなければ自由化の効果はなきに等しい。そこで、相互接続の技術的な実現可能性を確保し、技術情報の開示や料金表等の統一性を保つために各加盟国の規制制度が統一される必要があったわけである。この要請に応える規制上の考え方が、EUの共通規則としてのONP(Open Network Provision)である。ONPとは、一般的に言えば、EU域内での公衆ネットワークに対するアクセスが各加盟国の行政規制の違いにより不当に制限的にならないように、アクセスの技術的条件、料金表原則等を共通化するための定義概念であり、これを通じてEUワイドで各事業者は公正な競争条件を確保すると共に、ユーザーはEU域内のどこにいても同一のアクセス条件を保証される。現在、ONPは、ETSI(8)(欧州電気通信標準化協会)等の活動とも密接に連動しつつ欧州レベルでのオープン・ネットワーキングを目指しており、その延長上にパン・ヨーロピアン・ネットワークの構築が照準されている。
  かかるONPは、EU法令の体系上、規制対象やスケジューリング等を整理するフレームワーク指令(9)と、これにもとづき、各規制対象の技術的・経済的事情の隔たりを考慮して、例えば専用回線、パケット交換等、音声通話、ISDN、移動体通信など個別具体の各サービスごとの具体化指令ないし指令案(10)から成る。具体的には、例えば専用線では、提供されるべきサービスのミニマムセットと提供が促進されるべきサービスという区分けをしている。前者には、通常品質の音声帯域の専用線、高品質の音声帯域の専用線、六四キロビット・デジタル専用線、二メガ・デジタル専用線が含まれ、各々の品目ごとに国際標準たるCCITTの各標準に準拠する形でインターフェイス規格とパフォーマンス規格を定めている。後者には、三四メガ・デジタル専用線、一三九メガ・デジタル専用線等が挙げられ、市場の需給動向や標準化の動向等を十分に勘案しつつ各加盟国が歩調を合わせて提供を促進してゆくよう図られている。ともあれ、ONPの場合、先のONAとは異なり、各加盟国間の横断的な相互接続の円滑化・平準化に関心が集中しており、EU共通市場でも将来成立するであろう、開かれた一元的市場におけるマルチキャリア体制の下でのアンバンドルな形での相互接続の規制という点については必ずしも十分でないと評価できる。米国やわが国とEUの置かれた情勢の違いというべきである。もっとも、この間の事情が共通する英国では、このような形の相互接続規制につき参照すべき政策展開が認められる。

三  わが国での接続問題の経緯

  電気通信市場への競争的参入を許容する現行の電気通信事業法は当然に相互接続を予定し、規制上もその備えを用意している。現行法上、公衆的にサービスを提供する電気通信事業者が相互接続を行おうとする場合、その可否・条件に関する当事者間の交渉・協議を前提に、当該相互接続協定につき郵政大臣の認可を得る必要がある(電気通信事業法三八条)。もっとも協議が不調に至り、しかし当該相互接続により実現されるサービスの提供が社会全体から見て「公共の利益を増進するため特に必要でありかつ適切」であると見られる場合もあろうから、そのような場合に限って当事者の申立にもとづき郵政大臣が接続命令を下す。当該命令発出の後、負担すべき金額等の接続条件に関して事業者間協議が再び不調に至れば、当事者の申請にもとづき郵政大臣が裁定を下す(裁定手続)という仕組(三九条)を採用している。このように、相互接続に係る現行規制の特徴は個別の事業者間協議を原則とし、行政の関与を公益確保のための最終手段・例外措置と考える点にある。しかし皮肉なことに、基本理念において各事業者の自由な創意と起業の発揮を期待し行政の過干渉を避けようとするこの現行制度の不備ないし間隙が、従来の相互接続を困難にしてきた面がある。すなわち、第一に、独占部門たる不可欠設備を有する特定の有力な事業者が、同時に競争部門も保有するという構造的な市場特性から、当該事業者が自己の競争優位を図るため不当に接続交渉を拒絶し、あるいは遅延させているのではないかとの批判。第二に、相互接続が成立したとしても、前記特定事業者の網改修や機器増設に要すると称する初期費用が法外であり、また接続料金も過大ではないかという批判。第三に、電気通信サービスが単なる音声通話から次第に多様化・高度化し、かつ一層ユーザーオリエンティドな多彩なサービスの提供を可能にすることを通じて、電気通信市場のフロンティアを開拓してゆくためにも相互接続の円滑化・容易化が必要となるが、従来型の規制方式ではこの要請を全く満たしていないという批判等が、ことにNCCsから主張された。また、以上のような事業者間紛争的な性格をもつ相互接続に係る論点よりも、一層重要な点は、事業としてのかかる相互接続の遅れが日本の経済社会、ひいては産業の国際競争力に及ぼす影響である。わが国では、幾つかの新しいサービス類型が英米と比べて数年遅れでないと提供されてこなかった。また、相互接続の不調だけが原因では決してないが、各種電気通信料金の水準が海外との比較で割高であるとの直感は一般に強い。これらは、総体として、日本の電気通信インフラを使いにくいものにし、日本社会全体のコストアップのプッシュ要因の一つになっていると考えられる。こうした課題のブレークスルーのためにも相互接続の円滑化を図る必要が次第に認識されてきたわけである。
  こうした認識の象徴的表現が、平成八年二月二九日付電気通信審議会答申(11)である。答申は、NTT地域網のような不可欠設備についてはサービス多様化や料金低廉化の実現の観点から合理的かつ無差別な条件での迅速な接続の実現を図るという視点から、事業者間協議を原則とする現行制度を改め接続の基本的ルールを定めるべきとした。なおこの際、基本的ルールの骨子として、((1))接続の義務化、((2))接続条件の料金表・約款化、((3))接続会計の創設、((4))コロケーション、((5))番号ポータビリティ、((6))網機能提供計画の開示等が挙げられていた。この答申にもとづき、電気通信審議会に接続の円滑化に関する特別部会が設置され、平成八年九月二〇日付「接続の基本的ルール案(12)」(以下、ルール案)が公表された。以下、この報告書を手掛かりに、わが国における相互接続規制の課題と論点を探ることにしたい。

四  課題と論点

  ここで、相互接続規制の今後のあり方を考えるにあたり、その制度設計上の根本的な視座として、予め幾つかのポイントを挙げておきたい。第一に、ユーザーの利便をいかに高めるかを基本的視点とすべきである。新たな接続規制の枠組は、前記サービスの多様化と料金低廉化およびエンドエンドのシームレスなサービス提供の実現に資するものでなければならない。第二に、全体としての今後のネットワーク・インフラの発展動向や市場の展開方向をも考慮した中長期的視点から接続規制のあり方が構想されなければならない。このとき同時に、中長期的に見て、公正かつ実質的意義のある競争を一層促進するためにいかなる制度が望ましいかという点も併せて考慮される必要があり、透明かつ公正な行政過程の構築および相互接続の円滑化を阻害する反競争的行為の防止という視点が強調されるべきである。第三に、現行制度の基本理念でもある行政の過干渉の抑制は、その実質的機能において保持されるべきである。今日、いかなるサービスが市場から求められているか、またそのためにいかなる形態の接続の実現が必要か等の事柄の調査・判断は基本的に事業者サイドの課題であって、規制当局が市場に成り代わって決定すべき筋合いにない。その意味で、新たな規制枠組はできるだけ市場中立的な性格であることが望ましく、また行政的強制の契機を押さえて各事業者の創意・工夫がビジネスの問題としても自律的に自己回転してゆく制度であるべきである。ところで、紙幅の関係上、以下で採り上げられる論点は極めて限られており、また叙述も簡便である点は、あらかじめご容赦願いたい。
1  接続義務の名宛人
  接続義務を課すとして一体誰に課すべきか、その範囲確定の基準は何か。この点、ルール案は、電気通信回線設備を有する第一種事業者(電気通信事業法六条)すべてに対し、一般ルールとして接続義務等(正当な理由がない限り他事業者に対する接続協定の締結の義務づけ、接続協定の閲覧等)を課すと共に、不可欠設備を有する事業者に対しては加重的義務(内容後述)が課されるべきとする(特別ルール)。そして、この加重された義務の名宛人(特定事業者)の対象範囲を、一定の市場(都道府県単位が適当とされる)において加入者回線総数の五〇%を超える規模の加入者回線を有する事業者とする。
  現在の(単に事業者数が多いというだけでなく、固定系だけでなく無線系、CATV系など多様なプロバイダとそのネットワークが様々な方向から急速に進展してきているということも含めての)マルチキャリア環境の下での相互接続(13)を考えるとき、二以上の事業者を複雑に経由する接続が増加してゆくことが予想される。その場合、不可欠設備を有する事業者に対するだけでなく、電気通信ネットワークを設置する第一種事業者すべてに対して接続義務を一般的に課したという点は全く妥当である。ルール案では、米国法のごとくすべての電気通信事業者に対する一般的接続義務までは予定されていないものの、政策の基本的な方向性という点で軌を一にするものといえよう。ただし、特定事業者に対する特別ルールに関しては幾つか指摘したい点もある。第一に、社会経済生活圏としての一体性および現在のネットワーク構成を考慮し、一定の市場を都道府県単位とすることが適当とされているが、今後の地域網への競争的参入の進展度合い如何によっては、例えばある都市の範囲などというように当該グリッドの枠を狭めてゆくことも考えられてよいのではないだろうか。第二に、無線系の移動体通信事業は固定系通信事業者への依存度が高いことを理由に、特別ルールの適用対象を当面固定系通信事業者に限定している。なるほど米国法でも、商用移動体通信事業者はFCCの認定がない限りLECsに包摂されず(一九九六年電気通信法三条四四号)、したがって接続義務も一般的なものに止まる。だが、先の指摘と同様、移動体事業での自前のネットワーク構築の進展の度合いや固定系事業での競争の進展の度合いに応じて、地域によっては前記依存度の低下が生じる余地もないではない。FCCの認定という米国法制度のように、そのような場合にも柔軟に対応できる仕組は構想に値するであろう。以上要するに、電気通信市場の実状・実態に合わせて柔軟に、また必要に応じて、ここ当分の間は別段、少なくとも将来的には特別の接続ルールの対象となる事業者の範囲を拡大することが求められる場合もあり得るという点は留意されてよいと思われる。
2  接続義務の具体的内容
  まず一般ルールの内容は、ルール案によれば、接続の一般義務化である。利用者利便の増進と公正有効競争を促進する観点から、公益事業特権(公道等の優先利用や他人の土地等に対する強制使用権等の総称)を認められて構築される第一種事業者のネットワークの公共性に鑑み、利用者に対する役務提供義務と同様に、正当な理由がある場合を除き、他事業者に対する接続の義務化が図られる。なお、この義務違反に対しては、業務改善命令(三六条)による対応が予定される。こうして締結され、認可された接続協定は、不当な差別的取扱いの防止と透明・公平・迅速な接続実現の観点から、閲覧に供される。以上の仕組を通じて、従来は前記接続命令が前置されていることで料金など接続条件に関する郵政大臣への裁定申請が時間的に遅滞することとなっていた裁定手続が活性化されるとする。さて、この一般ルールを評価するに、当該義務の根拠をネットワークのインフラとしての公共性に求める点は妥当としても、ユーザーと一種以外の事業者を同視して公益事業特権の付与如何を前記公共性の源泉とする点はどうか。むしろこの場合、公共性の源泉は、端的に社会制度としての電気通信通制度の公共性、すなわち誰から誰へも、どこからどこでも、どんな種類の役務でも、ユーザーが望む形態で提供する法制度の確保(社会のコミュニカビリティをトータルな意味で確保する法原理(14))にあると論理づけるべきではないか。余談ながら、私見では、少なくとも規制緩和の視点からすれば、一種事業に対する参入の認可制度を公益事業特権の付与で正当化するのにかなり無理があるのと同様、ネットワークの公共性の源泉を公益事業特権の付与から説明するのは論理的に適切でないと思う。
  次に、特別ルールにつき、ルール案は、透明性・公平性・迅速性・合理性の観点から、接続料金、技術条件等につき約款を作成の上、認可を得ることとされる。また、約款作成上の基準として、((1))技術的に可能なすべてのポイントにおける接続の提供(不可欠設備への伝送路設置に必要な建物・菅路・電柱の提供、コロケーション(15)、不可欠設備から他事業者の要請するポイントまでの伝送路設置を含む)、((2))接続会計にもとづく接続料金の適正な算定、((3))アンバンドルされた網機能・網構成要素の提供、((4))自己使用のサービスと同等の条件、((5))技術的事項の必要的記載、((6))相互提供を前提にした番号ポータビリティの提供等が挙げられている。さらに、接続会計制度の新設や特定事業者のネットワークの開発段階における網機能提供計画の公表の義務づけ等も義務の内容とされる。この制度を米国法と比較するに、前記誠実交渉義務(二五一条c項一号)、ダイヤルパリティの直接的保証(同b項三号)を除き、既存のLECsに対する接続規制とほぼ同水準の義務内容といえる。この点、わが国の特定事業者の市場における経済的地位をBOCsと類似すると捉えれば、なお米国法には足らざる規制という評価になり、また競争部門専業の他事業者と比べれば、競争部門と独占部門を併せもつ事業者に対する規制としては酷に過ぎるという評価もできよう。米国と比較して現時点でのわが国の電気通信市場、ことに市内通信での動態的競争圧力の弱さ、BOCsがLATA(米国での連邦規制の地理的管轄範囲のこと。従来、前記修正同意判決によってBOCsは提供できなかった)間通信分野や情報サービス分野(同前)に進出可能となったこと等の事情を総合考慮すれば、筆者はルール案の義務水準を現状でのミニマム・スタンダードと評価したい。ところで、接続約款の認可手続では、申請約款の閲覧、これに対する意見申立制度、当該意見に対する特定事業者の反対意見申立制度、これらにもとづく郵政大臣の業務改善命令制度、認可後の事情変更ないし苦情申告にもとづく郵政大臣の業務改善命令制度など利益対立の調整システムが、透明性と公正さの観点から格段に改善されている。このようにルール案は、実体法的な面だけでなく行政手続の整備という側面からも注目すべきものがある。この点、業務改善命令手続や事業者間紛争の裁定手続が今後実際にどう整備・機能してゆくかにも係るが、大きな前進というべきである。ともあれ、ここで止まらず、規制当局たる郵政省には、今後共一層、電気通信事業の公共性と市場競争の確保のため、国際レベルでも通用するだけの、公益を代表するグランドキーパーおよび市場行動の真正の審判者としての役割が引き続き求められる(16)
3  約款上の必要的記載事項としての技術条件とアンバンドル
  相互接続が必ずしも円滑に進まない一因は、接続交渉で技術条件の明確化と公開が十分でないことにもあった。したがって、接続の円滑化には、新規参入や新サービスの提供を具体的に企画できるに足るだけの技術条件を約款に記載させることも重要である。このことは、また、特定事業種の側の技術条件の一方的変更や他事業者の意見反映にも資するであろう。さて、ルール案によると、約款の必要的記載事項として、((1))接続形態、((2))接続対象範囲、((3))番号方式、((4))網構成、((5))信号方式、((6))接続シーケンス、((7))課金方式、((8))試験方式、((10))物理的・電気的条件、((11))その他接続に必要な事項が挙げられている。また、アンバンドルの仕方として、現時点において他事業者がサービス提供上必要であり、またこれを利用できない場合にサービス提供が阻害されるおそれがあると判断されるものにつき当初からアンバンドルとし、特定事業者に提供を義務づけるものとする。この場合、接続の分界点において技術的に明確に区分することが可能である網構成設備に着目し、当面、最低限のものとして、((1))加入者側終端装置、((2))加入者回線、((3))加入者交換機、((4))中継交換機、((5))市内伝送設備、((6))中継伝送設備、((7))信号網を挙げる。純粋に技術的な問題は置くとして、重要な点は、ここでも新規参入や新サービス提供の促進という視点が貫かれていることである。自由で創意あふれる事業環境と市場ないし顧客オリエンティッドな市場空間を創出するためには、またその手段的措置としての相互接続を円滑化させてゆくためには、やはり実際のビジネスの現場において必要かつ十分な企画・構想を組み上げて行くことができるだけの情報を開示することが重要である。わが国の電気通信事業に構造的に残っている、この事業者間での情報の非対称性を克服するルールづくりが望まれる。
4  接続会計制度と接続料金
  現在、例えば、NTTの接続料金は、接続会計制度が整備されていないので、電気通信事業会計規則および料金算定要領等のユーザー料金に係る基準を準用して、あるいはそのままユーザー料金額を接続料金に適用している。このことが、事業者料金(端的に、卸料金)としての接続料金というものがあるべきではないか、接続料金原価への配賦が特定事業者の内部的な恣意的判断で行われているのではないか、接続に関連のない費用まで負担させられているのではないか等々の批判の余地を生み、結果として接続交渉の円滑化を阻害する一因ともなってきた。したがって、ルール案では、適正な接続会計制度を創設することもいわれている。ルール案は、接続会計の方式を二分し、特定事業者の収益・費用の総額から他事業者との接続に関わる部分を抽出した接続収支を示す方式と、特定事業者の会計を不可欠設備を管理運営する部門とその設備を利用してユーザーにサービス提供する部門とに分け、前者が自社の営業部門と他事業者に対して不可欠設備を同一条件(料金)で提供する方式があるとする。そして、後者の方法は、網使用料が不可欠設備部門の費用を基礎に算定される点、自己使用と他事業者提供の条件の同一性が会計的にも明確になる点、設備に着目しているのでアンバンドルされた料金算定のための費用の集計・区分が容易になる点を上げて、後者の方法を採用する。この方式の下、不可欠設備部門の収益とは自社営業部門および他事業者からの接続料金収入であり、費用とは当該設備の維持管理に係る償却・除却費、保守費等の費用、接続に関連する他部門との共通費・間接費および資本コストである。なお、この共通費・間接費の計上に関しては接続との関連性を反映した費用帰属方式として、ABC(Activity Based Costing)手法(17)を導入するとしている。
  この接続会計制度にもとづく具体的な接続料金制度はどうなっているか。ルール案では、前記接続会計との連携を前提に(つまり、営業費や試験研究費など接続と関連のない費用を除いた設備の区分ごとに集計・区分された費用を基礎に)、新たに郵政大臣の定める接続料金の算定要領にもとづき算定された料金によるとする。なお、ルール案では、米国実務が採用しているいわゆる長期増分費用方式(18)は、将来的なコスト・データの迅速・確実な入手、十分に現実性のある経済・技術モデルの作成等を含めて、引き続き検討するとされており、当分の間、わが国では接続会計と連携した修正型の総括原価準拠方式で行われることとなる。さて、前記アンバンドルを前提にした接続料金の体系は、設備のうち接続に利用した部分ないし機能の費用だけを負担すれば足りるよう、設備の構成要素や機能をアンバンドルしたものとなる。またこれは、回線数ごと、通話回数ごと、通話時間ごとの費用発生の態様を考慮して、適正に算定されるべきものともする。
  このルール案を評価するに、ユーザー料金に対する会計制度に加えて、初めて正面から接続会計といういわば事業者向け会計制度を創設しようとする意義は大きい。前述の接続条件の約款化および網機能・網構成要素のアンバンドル化と相まってこれが機能することで、従来の批判の大半には、対応する制度的対処が可能となろう。また、料金算定にあたって、差し当たり長期増分費用方式の採用を禁欲したことも、私見では、むしろ慎重な判断である。米国でも、あるいは英国でも、この方式の具体的実行をめぐってはかなりの困難を伴うとの見方もある。問題は、接続と関連性の低い費用を可能な限り厳密に排除するための前記ABC手法の確実な運用であり、またそれを会計規則上担保する新たな接続料金算定要領の具体的規律の基準である。その成果の如何は、ここ数年、今しばらくの実務展開を待ってから判断、評価するのが妥当であろう。

お  わ  り  に

  相互接続規制の制度的枠組の構築にあたっては、以上述べた事柄だけでなく、例えば、網機能提供計画の公表とそこへの他事業者の意見反映をどのように行うべきか、費用負担の問題を含めて番号ポータビリティの実現方式をどうすべきか、接続実務における反競争的行為を防止するためには郵政大臣の業務改善命令制度をどのように見直すべきか、ダイヤルパリティを含む全体としての番号計画の基本的考え方と方法をどうすべきか、独禁法による相互接続実務に対する監視と規制をどのように考えるべきか、いかに強化すべきか等々、残された課題は大変多い。また、このルール案自体が中間報告であり、今後の最終報告(19)でどうなるかはオープンである。さらに、そもそも電気通信審議会答申が法律改正に至るまでの立法段階で、ルール案の精神と内容が、どこについて、どの程度まで生かされ得るかなど、もとより筆者の予測の限りでない。
  しかし、その際にあっても、一貫して先に強調してきた、終局的にはユーザーの利益の一層の増進(具体的には料金の引き下げ、あるいはサービスの多様化・高度化、さらにはCATVその他を含めたエンドエンドのワンストップショッピングの実現等)のためにこそ接続規制の基本骨格が構想されなければならないという点だけは、広く社会的に自覚され維持される必要があろう。従来、事業者間紛争の外皮をまといがちであった相互接続問題が、今後公正有効競争の確立・維持と並んで、競争環境下での規制制度の中軸になるであろうという含意もここにある。公正有効競争の促進も相互接続の円滑化も、決して個別事業者の利益のためでも、あるいはサプライサイド全体の利益のためでもなく、まして官僚制度の利益のためでもなく、公正かつ自由な産業ないし市場秩序の実現とそこでの確保を期待される消費者・ユーザーの利益のためであるからである。そして、このような基本的理解こそが、電気通信に対する法規制とそれを手段として将来成立するであろう高度情報社会と呼ばれるものに対する現実的・実務的な法制度戦略(規制制度のデザイン)を真に社会的に意味あるものたらしめる前提となる。

(1)  一般には、同一の財・役務を消費する者が増えれば増えるほど、当該財・役務の個々の消費者にもたらされる便益が増大する現象をいう。電気通信ネットワークの場合、加入者数の多寡が当該電気通信役務の品質(通信可能な相手方加入者の範囲)に直接に影響を及ぼす。例えば、John T. Wenders, 井出秀樹(監訳)・電気通信の経済学(NTT出版、一九八九年)三六頁以下、林紘一郎・ネットワーキングの経済学(NTT出版、一九八九年)一七八頁以下等を参照。
(2)  Telecommunications Act of 1996 この法律は一九三四年通信法(Communications Act of 1934, 47 U. S. C. 151 et seq.)を改正する法律であって、いわば同法の上に乗る形で、同法の一部規定はなお現行法である(一九九六年通信法一条二項)。
(3)  米国法の歴史的展開につき、拙稿「政府規制緩和の意義と競争政策−アメリカの電気通信事業を素材として−」神戸法学雑誌三八巻一号一二九頁以下を参照。
(4)  1982 Consent Decree, 1982-2 Trade Cas. (CCH) 73, 071 (D. C. D. C. 1982)
(5)  Id., at 73, 123-73, 128
(6)  Third Computer Inquiry, Report and Order, 104 F. C. C. 2nd 958 (1986)
(7)  EU法の歴史的展開につき、拙稿「ドイツ電気通信事業法における規制改革と競争政策(下)」(香川法学一一巻一号八三頁以下)第三章・ECの電気通信政策の影響、「ECにおける電気通信規制の法と政策−規制と競争の相互連関−」香川法学一二巻四号四三頁以下を参照。
(8)  この機関は、共同体レベルでの標準化と仕様・規格の統一を目指して、当時のEC委員会が一九八七年に発出した「ダイナミックなヨーロッパ経済を目指して」と題された緑書(グリーンペーパー)によって設置がうたわれたものである。現在、これは電気通信分野における欧州での標準化活動の中心的役割を果たしており、世界の標準化活動におけるその位置づけは重い。
(9)  Directive, 90/387/EEC O. J. 1990 L 192/1.
(10)  例えば、専用線につき、92/44/EEC.  パケット交換データ・サービスにつき、92/382/EEC ISDNにつき、92/383/EEC
(11)  「日本電信電話株式会社の在り方について−情報通信産業のダイナミズムの創出に向けて−」電気通信審議会答申(平成八年二月二九日)
(12)  「接続の基本的ルール案」電気通信審議会・接続の円滑化に関する特別部会(平成八年九月二〇日)
(13)  この環境下での一つの問題は、当然のことながら、接続相手が、その数において増大し、その事業の性格において多様化する点にある。すなわち、通常の固定系通信事業者だけでなく、無線系事業者やCATV通信事業者も相手となり得るということである。今一つの問題は、接続対象設備が、電気通信ネットワークの階層構造のいずれのレベルにも広がり得るという点である。すなわち、従来からの中継伝送設備はいうに及ばず、加入者交換機や、中継交換機、市内伝送設備、信号網等々にまで接続要望が寄せられ得るということである。このように、今後の接続問題は多様かつ複雑なアスペクツをもち、その規律は精緻化・複雑化せざるを得まい。
(14)  この点、拙稿「規制緩和の意義と競争政策の役割−電気通信事業に関する法の比較−」経済法学会年報一六号一五五頁を参照。
(15)  ルール案では、他事業者の側が接続用設備を設置する、いわゆる物理的コロケーションだけでなく、他事業者との相互接続のために特定事業者の側が接続用設備を設置する(この場合、法律関係としては当該設備の賃貸借ないしリースに近いと思われる)、いわゆる仮想的コロケーションの両方を提供可能にするよう求めている。
(16)  この点、拙稿「電気通信と法」現代の法一〇巻「情報と法」(岩波書店、一九九七年)所収「4  規制スタイル」を参照。
(17)  企業における諸活動(アクティビティ)から生じるコストを個々に集計し、この活動量を計量的に表現するコスト・ドライバにもとづいて製品や役務の原価計算対象に付加する手法。
(18)  接続によるトラヒックの増加により追加的に必要となる設備の増加額等の将来的かつ経済的な費用(長期増分費用)を計算し、これを基礎として接続料金を定める方式。
(19)  本稿脱稿後、電気通信審議会答申「接続の基本的ルールの在り方について(平成八年一二月一九日)が出された。ルール案と比べて、本稿との関連で、答申は、((1))特別の接続義務の名宛人の範囲につき、「特定事業者の定義については、接続ルールの見直し時に、実態を踏まえて見直すことが適当である」(一〇頁)とするが、この点、個別具体の市場の実態に合わせて義務負担者の対象範囲を柔軟に設定するという、本文中に述べた筆者の問題意識と合致している。なお、見直し時期は、接続会計制度による接続料金の算定が平成一一年度に行われる見込みであることから、平成一二年度を目途に行うことが適当とされている。次に、((2))接続料金制度における長期増分費用方式の検討・採否につき、答申は、「外国モデルの解析、設備に関するフォワード・ルッキング(将来指向的)なコスト・データの収集、技術モデルの構築等の作業を行うこととする。その上で、長期増分費用方式の扱いについて、ルール見直し時に決定することが適当である」(一八頁)とし、「引き続き検討を行う」というルール案よりも一歩踏み込んだ表現となっている。この点は、ABC手法の導入による「接続関連費用」の把握といっても、終局的には過去原価にもとづくものであることに変わりはないという点、モデル値の試算だけでも競争促進の効果をもつという点、諸外国の規制実務との調和という点、前記ルール案に対しほとんどの事業者が検討の時期やスケジューリングを明確にするよう要望意見を提出したという点等によるものと思われる。確かに、理論的には長期増分費用方式の方が筋が通っており問題はその実行可能性にあることから、答申のスタンスは妥当であろう。
    ところで、平成八年一二月六日、いわゆるNTT分割問題につき、郵政省は,NTTを純粋株式会社(以下三社の株式のすべてを保有し、基盤的な研究開発を推進する)の下に、長距離通信会社(基本的に県を超える通信を扱う民間会社で、国際通信にも進出しうる)と二つの地域通信会社(東日本と西日本をエリアとする特殊会社で、当該エリアにおける電話をあまねく確保する責務を負う)に再編成するという方針を定めた(郵政省「NTTの再編成についての方針」)が、たとえこのような構想が実現するとしても、本稿で述べてきた相互接続規制の意義と重要性はいささかも変わらない。なお、この再編成がもたらす電気通信市場の構造は、地域通信と長距離通信の分離という意味で、米国において一九八二年修正同意判決を通じて創出されたそれにやや類似する面がある。したがって今後、米国規制実務が経験してきた、例えば非対称的規制、料金上限規制、分割後の地域社会の県内通信からの業務分野拡大等といった事柄が、わが国の規制においても正面から論じられる余地があろう。