立命館法学  一九九八年三号(二五九号)一〇三頁(一頁)


契約法における「消費者保護」の意義(一)
― 適用範囲限定に着目して ―

谷本 圭子


目    次

序    章

  T  問題意識

  U  考察対象

第一章  ドイツにおける適用範囲限定

  T  序論

  U  法律規定の概観

  V  特徴

  W  人的適用範囲限定基準の内容確定

  X  最近の法改正

  Y  小    括          (以上本号)

第二章  立法理由

第三章  従来の契約法との関係

第四章  検    討

第五章  学    説

終    章


序      章

T  問題意識

  現在「消費者保護」が、我が国のみならず世界中で叫ばれている状況にあり、法律の分野においても然りである。

  この状況は、契約法においても同様であり、世界各国において次々と消費者保護を目的とした立法が実現されており、我が国においても立法に向けた作業が現実に進み始めている。

  「消費者保護」は、当然実現されるべき目的として一般的に信じられているように思われる。しかし、「消費者保護」が真に契約法分野において有意義な目的として機能しうるかどうかにつき、十分に議論がし尽くされているか疑問である。というのも、第一に、「消費者保護」につき議論されるに際して、「消費者」とは誰なのか、その定義についての議論がほとんどなされず、漠然とした「消費者対事業者」という契約主体が念頭に置かれているにすぎない(1)。第二に、我が国の議論においては「消費者保護」という理論前提の下にどのようにすれば消費者が保護されるかという方法論に重点が置かれており、従来の契約法との関係如何については議論されることはあまりない(2)。今一度、「消費者保護」の問題を特別視せず、一般的に捉え直してみる必要があるのではなかろうか。

  では、「消費者保護」の問題は、一般的に契約法上いかなる意味を持つものなのか。「消費者保護」という言葉は、「消費者対事業者」間での契約(3)においては消費者が保護される必要がある、ということを示している。これは換言すれば「一定人物」間の契約に限って特別な規律を適用するということであろう。ここから当然、「なぜ、この一定人物間の契約に限って特別な規律が必要となるのか」に答える必要が生じてくる。すなわち、「誰に対しても」ではなく「一定人物」に限定される正当性が要求されるのである。その場合には、「一定人物」が「特別な規律」を理由づけているという関係が要求されるであろう。

  このように消費者保護の問題を捉えることにより、従来あまり意識されることのなかった事柄が浮かび上がってくる。すなわち、消費者保護に関する法は、適用範囲を限定する法として定義することができるという点である。ここから、消費者保護に関する複数の法につき、適用範囲の限定に着目して総合的な検討をおこなうことが可能になろう。

  実質的な検討方法としては、「一定人物」すなわち「人的適用範囲」と「特別な規律」との関係を解明すべきことになる。さらに、その関係には、「従来の規律」と「特別な規律」との関係、「従来の人的適用範囲」と当該「人的適用範囲」との関係が、無言のうちに含まれているはずである。そこにおいて従来の契約法からの変更が存在するのであれば、その変更についての根拠をも解明する必要があろう。

  しかし、他方において、実際のいわゆる消費者保護法においては、人的適用範囲が問題とされると同時に、「物的適用範囲」が問題とされる場合も多い。従来、「人的適用範囲」が「特別な規律」の正当根拠として持ち出されることはあったが、「物的適用範囲」が持ち出されることはあまりなかった。しかし、同じく「適用範囲」を限定するものであるならば、この「物的適用範囲」が「特別な規律」を理由づけている関係が要求されるであろう。その結果、「人的適用範囲」と同様に、「物的適用範囲」と「特別な規律」との関係、そして、「従来の物的適用範囲」と当該「物的適用範囲」との関係を解明する必要も、生ずるであろう。

  以上より、消費者保護について考えるにあたっては、「(人的及び物的)適用範囲」と「特別な規律」との関係、そして、それらの従来の契約法との関係を解明することが必要不可欠と考え、以下これにつき検討していきたい。

  ところで、「物的適用範囲」及び「人的適用範囲」という言葉は、一種の慣用的な呼称と言うことができる。「物的適用範囲」という場合には、それは例えば「売買契約」「信用契約」「事業所以外で締結された契約」などの契約の性質であるし、他方、「人的適用範囲」という場合には、それは例えば「商人」「法人」「自然人」などの人物の属性・性質である。もっとも、「人的適用範囲」という場合でも、「商業目的で行為する者」などのように、人物の属性・性質とはいえない主観的行為目的が問題とされる場合もある。このため、「物的適用範囲」および「人的適用範囲」という用語自体の意味を明確にする必要も存在すると考えられる。しかし、本稿において問題とすべきなのは、用語自体ではなく、この用語により包摂されるところの、具体的な適用範囲の限定基準である。そう考えると、本稿においてこの用語自体の意味を明確にする緊急の必要はなく、したがって、慣例通りの「人的適用範囲」および「物的適用範囲」の言葉にしたがい適用範囲の限定基準をふりわけ、検討を進めることにしたい。

U  考察対象

  我が国の契約法分野において、消費者保護を目的とした法律として挙げることができるのは、割賦販売法と訪問販売法の二つであろう。これらの法律は一定範囲においていわゆる消費者保護について成果を挙げてきたといえる。また、現在、契約締結過程の適正化および不当な契約条項規制を目的として、「消費者契約法(仮称)」の制定へ向けた立法作業が進行している段階にある(4)

  このような我が国における状況は、一般的に世界の動向と比較して非常に遅れたものとして受け止められている。実際、消費者保護をめぐっては、ヨーロッパにおいては数々のEC(EU)指令が出されており、加盟諸国においても消費者保護法といわれる一群の法律が成立・施行されている。

  そこで、外国の法状況を明らかにした上で分析を試みることは、我が国における消費者保護法ひいては適用範囲限定の問題を考えるに際して有意義と考える。本稿においては、消費者契約法に関して、EC(EU)の法状況も視野に入れながら、その加盟国であるドイツの法状況について検討していく。

  考察に際して、以下の点を考慮に入れる。

  第一に、本稿においては考察対象とする法領域を契約法に限定する。その理由としては以下の点を上げることができる。一、消費者保護が問題とされる法領域は非常に広きにわたっているが、実際、問題が多発しているのは契約に関わってであること、二、契約法が物権法や家族法に比べて一国の風土や歴史に影響されにくく普遍的な性格を有しており、そのため、外国の法状況を我が国への参考として易く、かつ、分析結果は他の法領域につき考察する際の原則としても利用可能であることなどである。したがって、従来消費者保護法の代表的法律として挙げられてきた「製造物責任法(5)」などは考察の対象に含めない。

  第二に、本稿において考察の対象とするのは、消費者保護法と言われる法律群の中でも、「人的適用範囲」を限定するものに絞る。というのも、本稿は、消費者保護の問題を人的適用範囲限定の問題として捉え、その意味を問うものだからである。よって、実際上消費者保護に役立っているかどうか、実際上消費者保護を目的としているかどうかは、本稿の考察においては主たる意味をもたない。したがって、「通信教育者保護法(6)」や民法典における「旅行契約法(7)」は考察の対象としない(8)

  第三に、これは検討を進めるに当たっての主要部分に関わるものであるが、既に述べたように、「消費者保護」という問題の核心部は、一定の人物間の契約に限ってある特別な規律を適用するという点にある。したがって、適用範囲の限定と具体的な規律(例えば、撤回権付与、一定の事項の契約書面への記載の義務づけなど)との関係を解明することが重要となる。

  また第四に、適用範囲が特別な規律を理由づけているかだけではなく、従来の規律との関係をも解明すべきことは、既に述べたとおりである。

  第五に、ドイツの学説において、いわゆる消費者保護法につきどのように考えられているか、我が国において言われるように消費者保護が自明の法理としての地位を確立しているかを検討していく。詳しくは後述するが、ドイツでは消費者保護について現在でもその有用性につき疑問が提起されている。これは我が国において消費者保護(または消費者保護に着目した法的処置)について全くといってよいほど疑問視されていないこととは対照的であり、我が国の法状況について考える際には非常に有益なものといえる。

  以上の諸点を顧慮しながら、以下の考察においては、まず第一章で、ドイツにおいて人的適用範囲及び物的適用範囲双方を限定する法律群は、いかなる基準により適用範囲を限定しているかを明らかにする。第二章においては、適用範囲を限定する規定のみならず、「特別な規律」すなわち「具体的規律」をなしている規定の立法理由を明らかにし、第三章においては、第二章で検討対象とした規定が従来の契約法規律といかなる関係に立つかを明らかにする。その上で、第四章では、「人的適用範囲」及び「物的適用範囲」の限定が契約法の中で「特別な規律」を真に理由づけているかを具体的に検討していく。また、第五章においては、ドイツの学説が消費者保護につきどのような態度を示しているかを検討する。

  以上の考察により、現実の法律において適用範囲がいかなる役割を果たしているかを明らかにし、「消費者保護」が契約法において一つの目的となりうるかを検討していきたい。

(1)  我が国の法において「消費者」についての定義はなされていない。消費者概念については、長尾治助教授が詳細な分析を行っておられるが、教授自身は消費者概念に幅をもたせるべきことを主張されている(長尾治助「法上の消費者概念」立命法学201、202号308頁以下(1989年)。

(2)  この点につき指摘するものとして、大村敦志「契約と消費者保護」星野英一他編『民法講座別巻2』(1990年・有斐閣)所収112頁及び119頁以下。同論文においては、「契約の基本原理あるいは私法の体系というものの実体は何か(何であったか)ということを検討することが、『消費者保護と契約』という問題を考える上では不可欠である」(102頁)旨が強調され、「消費者保護と契約理論の相互関係いかん」という問題に関連する学説につき詳細な整理・分析が行われている。

(3)  一般的には「消費者対事業者」間での契約、と言われるが、その内容はEU法やドイツ法においては具体的に規定されていることは後述するとおりである。

(4)  我が国においては周知のように、1998年1月に経済企画庁国民生活審議会消費者政策部会より「消費者契約法(仮称)の具体的内容について」と題する中間報告が出されており、同法制定に向けた作業が進行している状態にある。

(5)  Gesetz u¨ber die Haftung fu¨r fehlerhafte Produkte (Produkthaftungsgesetz − ProdHaftG) vom 15.12.1989 (BGBl. I S.2198).

(6)  Gesetz zum Schutz der Teilnehmer am Fernunterricht (FernUSG) vom 24.8.1976 (BGBl. I S.2525)

(7)  Gesetz zur A¨nderung des Bu¨rgerlichen Gesetzbuchs (Reisevertragsgesetz) vom 4.5.1979 (BGBl. I S.509).

(8)  人的適用範囲が限定されていない法について「消費者保護法」と呼ぶこと自体、問題とも言える(Vgl.M. Dreher, Der Verbraucher-Das Phantom in den opera des europa¨ischen und deutschen Rechts? JZ1997, S. 167ff.)。


第一章  ドイツにおける適用範囲限定

T  序    論

  既述のように、ドイツにおいては消費者保護法と呼ばれる多くの法律群が存在している。その成立経緯を見ると、国内の要請に基づいて成立したものも存在するが、近年、EC指令の影響を受けて、あるいはEC指令の国内法化を目的として成立したものが多い。

  さらに、ごく最近では、複数の法律改正(仲裁手続法の改正、商法の改正)が実施される中で、これらのうち国内の要請に基づいて成立した法律の内容に変化が生じている。

  そこで以下では、まずは最近の法改正以前の状況に関して、消費者保護法につきいかなる基準により物的適用範囲および人的適用範囲が限定されてきたかを、国内の要請に基づいて成立したものとEC指令の影響下で成立したものとに分けて概観し(U)、適用範囲を限定する基準の特徴を導きだし(V)、かつ、これら概観した規定内容の意味を確定していく(W)。その上で、最近の法改正により、法状況にいかなる変更が生じているかを確定していきたいと思う(X)。

  Uの法律の概観に際しては、既に廃止された法律(割賦取引に関する法律)や、契約法とは言えない民事訴訟法の規定についても、新たな法律との対比にとって有用である点、および、民事訴訟法の規定といっても当事者間の合意が問題となるため、契約法との類似性が認められる規定である点から、対象に含める。もっとも、V以降の検討に際しては、その対象を現行の契約法の規定に限定し、それ以外の規定については必要な限りで言及するにとどめる。

U  法律規定の概観(1)

  以下では、いわゆる消費者保護法につき、国内の要請に基づいて成立したものとEC指令の影響下で成立したものとに分けて、物的適用範囲および人的適用範囲を限定する規定を概観する。また、EC指令の影響下で成立した法律については、EC指令の規定内容も概観の対象とする。

  1.国内の要請に基づき成立した法律

@  1894年5月16日「割賦取引に関する法律(2)

 1条【解除の場合の返還】

(1)  売買代金が分割で支払われる動産の売却において、その動産が購入者に引き渡され、売主は購入者の義務不履行に基づき契約を解除する権利を留保していた場合、解除がなされたときには、当事者それぞれは相手方に受領した給付を返還する義務を負う。反対の合意は無効である。
(2)  売主が購入者の義務不履行に基づき法律により契約解消を要求することができる場合、解除権の留保に等置する。


 8条【商人に関しては保護がない】

本法の規定は、商品の受領者が商人として商業登記簿に登記されている場合には、適用がない。


A  1933年10月27日「民事訴訟法の変更に関する法律(3)

 ZPO1027条【仲裁契約の方式】

(1)  仲裁契約は明白に締結されねばならず、かつ、書面方式を要する;仲裁裁判所の手続に関するもの以外の合意を証書に含むことは許されない。方式の瑕疵は、主要事実に関する仲裁裁判所の審理への応訴によって治癒される。

(2)  1項の規定は、仲裁契約が当事者双方にとって商行為であり、かつ、当事者のうちいずれもがHGB4条に挙げられている営業者には属さないとき、適用がない。

(3)  仲裁契約が2項により書面方式を要しない限りで、当事者それぞれは、契約に関する書面による証書の作成を要求することができる。


B  1974年3月21日「民事訴訟法の変更に関する法律(4)

 ZPO29条【履行地の特別裁判籍】

(1)  契約関係から生じた争い及びその存在に関する争いについては、争いある義務を履行すべき地の裁判所に管轄権がある。
(2)  履行地に関する合意が管轄権を理由づけるのは、契約当事者がHGB4条に挙げられている営業者に属さない商人、公法の法人または公法の特別財産であるときのみである。


 ZPO38条【許される裁判籍の合意】

(1)  第一審裁判所は、それ自体としては管轄権なくとも、契約当事者がHGB4条に挙げられている営業者には属さない商人、公法の法人または公法の特別財産であるとき、当事者の明示又は黙示の合意により管轄権を得る。

(2)  さらに、第一審裁判所の管轄権は少なくとも契約当事者の一方が国内に一般的裁判籍を有しないとき、合意することができる。この合意は、書面により結ばれるか、またはこれが口頭でなされる場合には書面により確認されねばならない。当事者の一方が国内に一般的裁判籍を有するとき、国内については、この当事者がその一般的裁判籍を有しているか、または特別の裁判籍が理由づけられている裁判所しか選択することができない。

(3)  その他の場合、裁判籍の合意が許されるのは以下の場合のみである。すなわち、合意が明示的かつ書面により、
1.争いの発生後、または、
2.訴訟において請求されるべき当事者が契約締結後その住所もしくは常居所を本法の適用範囲から移しているか、あるいは、その住所又は常居所が訴訟提起の時点で知られていなかったときのために、結ばれている場合。


C  1976年12月9日「普通取引約款法の規制に関する法律(5)

 1条【概念規定】

(1)  AGBは、多くの契約のために予め作成され、かつ、契約当事者の一方(利用者)が契約締結に際して相手方に設定する全ての契約条件である。その定めが、契約のうち外見上分離された構成部分となっているか、それとも契約証書自体の中に取り入れられているか、どの範囲の領域にわたっているか、どの様な種類の書面の中に記載されているか、及び契約がいかなる方式をとっているか、は問題とならない。

(2)  契約条件が契約当事者間で個別に交渉(aushandeln)されている限りで、AGBは存在しない。


 23条【物的適用範囲】
   ・・\\省略

 24条【人的適用範囲】

(1)  2条、10条、11条及び12条の規定は、以下のAGBには適用がない。
1.商人に対して利用されるAGBであって、契約がこの者の商業の経営に属するとき;
2.公法の法人または公法の特別財産に対して利用されるAGB。

(2)  9条は、一文の場合、10条及び11条に挙げられている契約上の定めの無効を9条が導く場合であっても、適用するものとする;商取引に適用される習慣及び慣習を適切に考慮しなければならない。


D  1986年7月25日「経済法、消費者法、労働法及び社会法規定の変更に関する法律(6)

 BGB609条a【受信者の解約権】

(1)  債務者は、以下の場合に、一定の期間について固定利率が合意されている消費貸借を全部又は一部解約告知することができる。すなわち、
1.利息の拘束力が返済期以前に終了し、かつ、利率に関する新たな合意がなされない場合、利息の拘束力の終了日の経過につき早くとも一月の解約告知期間をもった上で;ただし、一年以内の一定期間毎に利率の調整が合意されているときは、債務者は、利息の拘束力の終了日の経過につきそのたびに解約することができる。

2.消費貸借が自然人に提供されかつ土地担保権又は船舶担保権により担保されていない場合、完全な受領後六月の経過後三月の解約告知期間をもった上で;ただし、消費貸借の全部又は大部分が営業活動又は職業活動を目的としていたときはこの限りではない。

3.完全受領後10年の経過後は、六月の解約告知期間をもった上で、いつでも;消費貸借の受領後、返済時期又は利率に関して新たな合意がなされたときは、この合意の時点が支払いの時点に代わる。

(2)  債務者は、変動利率による消費貸借を、三月の解約告知期間を持った上で、いつでも解約することができる。

(3)  1項及び2項による債務者の解約は、債務者が解約の効力発生後二週間以内に債務額を返済しないときには、なされなかったものとみなす。

(4)  1項及び2項による債務者の解約権は、契約により排除又は軽減をなすことはできない。ただし、連邦、連邦の特別財産、ラント、共同体又は共同体組織への消費貸借については、この限りではない。


  2.EC法の影響により成立した法律

@  1986年1月16日「訪問取引及び類似取引の撤回に関する法律(7)

 1条【撤回権】

(1)  有償の給付に関する契約締結に向けられた意思表示は、それを表意者(顧客)が、
1.その職場または私的住居における口頭での交渉によって、
2.少なくとも契約相手の利益にもなるよう契約相手または第三者により行われた休暇行事を契機として、あるいは、
3.交通機関や公衆の立ち入り可能な通路において不意に話しかけられたのに続いて、
決定した場合には、顧客がそれを一週間以内に書面により撤回しないとき、はじめて有効となる。


(2)  撤回権は、以下の場合には存在しない。

1.1項1号の場合において契約締結の基礎となっている口頭での交渉が、先行する顧客の注文でなされた場合、または、
2.給付が交渉締結に際して即座になされ、かつ、その対価が80ドイツマルクを超えない場合、または、
3.意思表示が公証人によって公証されている場合。


 6条【適用範囲】

本法の規定は、以下の場合には適用がない。

1.顧客が独立の取得活動の実施において契約を締結するか、または契約相手が取引として行為していない場合、

2.保険契約を締結する場合。


A  1990年12月17日「消費者信用法(8)

 1条【適用範囲】

(1)  本法は、営業活動もしくは職業活動の実施において信用を供与する人(与信者)、または信用を仲介もしくはあっせんする人(信用仲介者)と、信用が契約内容によれば既に実施されている営業活動もしくは独立の職業活動を目的とするときを除き、自然人(消費者)との間の信用契約及び信用仲介契約に適用する。

(2)  信用契約とは、与信者が消費者に金銭消費貸借、支払猶予、またはその他の融資援助の形態で、有償で信用を供与する、もしくは、供与を約束する契約である。

(3)  信用仲介契約とは、信用仲介者が消費者に対価と引換に信用を仲介すること、または信用契約締結の機会をあっせんすることを引き受ける契約である。


 3条【例外】

・・\\省略


B  1996年7月19日「AGBG及び倒産法の変更に関する法律(9)

 24条a【消費者契約】

自己の営業活動または職業活動の実施において行為する人(事業者)と、営業活動にも独立の職業活動にも帰せられない目的で契約を締結する自然人(消費者)との間の契約については、本法の規定は以下の条件で適用するものとする。

1.AGBは、事業者により設定されたものとみなす。ただし、それが消費者により契約の中に採り入れられた場合にはこの限りではない。

2.5条、6条及び8条ないし12条は、予め作成された契約条件に、それが一度だけの利用を目的とする場合であっても、予め作成されたために消費者がその内容に影響を及ぼすことができなかった限りで適用する。

3.9条により不当な不利益を判断するに際しては、契約締結に伴う事情も考慮しなければならない。


  3.EC法

@  1985年12月20日「事業所以外で締結された契約における消費者保護に関するEC理事会指令(10)

 1条

(1)  本指令は、

−事業者によりその事業所以外で準備された日帰り旅行の間に、または、
−その訪問が消費者の明白な希望でなされている場合は除いて
  (i)  消費者の住居もしくは別の消費者の住居内での消費者への
  (ii)  消費者の職場での消費者への

事業者の訪問を契機として、商品提供またはサービス給付をなす事業者と消費者との間で締結される契約に適用する。

(2)  本指令は、消費者が事業者にそのために訪問を希望したものとは異なる商品提供またはサービス給付に関する契約にも適用する。ただし、消費者がその希望の時点で、このような異なる商品やサービス給付の提供が事業者の営業活動または職業活動に属することを、知っていたかもしくは責に帰すべき理由から知り得なかった場合には、この限りではない。

(3)  本指令は、消費者が1項または2項で挙げられている条件と類似した条件で申込みをなした契約にも適用する。消費者がその申込みによって事業者による承諾の前には拘束されていなかったことは、この妨げとはならない。

(4)  本指令は、消費者が1項や2項に挙げられている条件と類似した条件でなす契約申込みにも適用する。ただし、消費者がその申込みによって拘束されていない場合にはこの限りではない。


 2条

本指令の意味において、

−「消費者」とは、本指令が規律する取引に際して、自己の職業活動または営業活動には帰せられない目的で行為する自然人を、

−「事業者」とは、当該取引の締結に際して、自己の営業活動または職業活動の範囲内で行為する自然人もしくは法人、ならびに、事業者の名においてその計算で行為する人を、

意味する。


A  1986年12月22日「消費者信用についての加盟国の法規定及び行政規定の調整に関するEC理事会指令(11)

 1条

(1)  本指令は信用契約に適用する。

(2)  本指令の意味において、

(a)  「消費者」とは、本指令が規律する取引に際して、自己の職業活動または営業活動に帰せられない目的で行為する自然人を、
(b)  「与信者」とは、自己の営業活動または職業活動の実施において信用を認容する自然人または法人、もしくは、そのような人のグループを、
(c)  「信用契約」とは、与信者が消費者に、支払猶予、消費貸借、またはその他類似の融資援助の形態で信用を供与する、もしくは供与を約束する契約を、
意味する。

(d)\・・\省略
(e)・・・・省略


B  1993年4月5日「消費者契約における濫用条項に関するEC理事会指令(12)

 1条

(1)  本指令の目的は、事業者と消費者間での契約中の濫用条項に関する加盟国の法規定及び行政規定を調整することにある。

(2)  拘束力ある法規定、または、加盟国もしくは共同体が−特に運送領域において−当事者となっている国際協定の規定あるいは原則に基づく契約条項は、本指令の規定には服さない。


 2条

本指令の意味において、

(a)  濫用条項とは、3条の定義する契約条項を、

(b)  消費者とは、本指令が対象とする契約において、自己の営業活動または職業活動に帰せられない目的で行為する自然人を、

(c)  事業者とは、本指令が対象とする契約において、その活動が公法領域に入るときも含めて自己の営業活動または職業活動の範囲内で行為する自然人または法人を、
意味する。


V  特徴

  消費者保護法と呼ばれる法律群において適用範囲を限定する規定を概観してきたが、そこには1定の特徴が存在することが明白である。

  これは人的適用範囲に関して見られる特徴である。

  第一に、1986年頃までEC法の影響を受けていない法律においては、人的適用範囲の限定は契約当事者一方の側、すなわち、保護される側についてのみなされてきた。これに対して、1986年頃からは契約当事者双方について限定がなされることとなっている。

  第二に、人的適用範囲の限定基準としては、1986年頃までは「商人」や「商行為」など商法典の概念が用いられてきた。しかし、1986年頃からはこのような限定基準が採られなくなっている。EC法を国内法化した法律とまでは言えないがEC法を視野に入れて1986年に成立した訪問取引撤回法も、「独立の取得活動の実施」という概念でもって、物またはサービスの提供者につき限定しているし、保護される側については、「取引として行為している」かどうかを限定基準としている。さらに、EC指令を国内法化した法律においては一律に、保護される側につき「契約目的が営業活動または職業活動」に帰せられるかどうか、および「自然人」であるかどうかを限定基準とし、相手方についても「営業活動または職業活動の実施」において行為しているかどうかを限定基準としている。

  第三に、EC法を国内法化した法律が成立する以前は(訪問取引撤回法も含めて)人的適用範囲の限定が適用除外という形でなされていたが、EC法を国内法化した法律においては、EC法と同様に、人的適用範囲がはじめから限定されている。

  他方、物的適用範囲としては、割賦取引、仲裁契約、合意管轄、普通取引約款、訪問取引、消費貸借契約、信用契約、が規律対象とされており、個々の法律により規律対象は異なっている。

W  人的適用範囲限定基準の内容確定

  既述のように、1986年頃を境として人的適用範囲限定の方法につきいくつかの変化が生じている。中でも限定基準の変化に焦点を合わせてみると、多様な、しかし類似した概念が、時には別個の規定において同じ概念が、限定基準として採られていることが分かる。以下では、実際採られている限定基準につき、その内容を確定し、類似した概念相互の異同を明らかにする。表面上類似している概念につき、実際内容において同じか異なっているかを確定することは、第二章以下での考察における前提となるからである。

  検討に際しては、保護を受ける側とその相手方とで区別し、法律の成立順序に従うことにする。

  1.保護を受ける側

@  HGB中の概念

  AGBG24条では、保護を受ける側が「商人」であり、かつ契約がその「商業の経営」に属する場合には、一定の規定の適用がない旨が規定されている。

  また、現在廃止されている割賊取引法8条では、「商人」として「商業登記簿に登記されている」場合には適用がない旨が規定されていた。さらに契約法ではないが、ZPO1027条においては、仲裁契約が当事者双方にとって「商行為」であり、かつ、当事者双方が「小商人」でない場合には同条の適用がない旨が、ZPO29条及び38条においては、当事者双方が「完全商人」である場合にのみ、管轄の合意が可能であることが規定される(13)。これらの概念は、すべて商法典(Handelsgesetzbuch(14).  以下ではHGBと略称)に規定される概念である。

  そもそもHGB自体が、人的適用範囲を限定する最も古い法律として挙げられる(15)。つまり、HGBの適用範囲は、「商人」さらには「商行為」概念により限定されているのである。ここにおいては、HGBが適用範囲の限定基準として用いる「商人」及び「商行為」概念が、後に成立した法律における人的適用範囲の限定基準としても用いられていった、という史的流れを確認することができるであろう。

  以下では、関係するHGBの規定のうち特に重要なものを挙げる(16)

 HGB1条【Muβkaufmann】

(1)  本法の意味での商人は、商業(Handelsgewerbe)を経営する者である。

(2)  以下で挙げる種類の取引のうち、その一を目的とする営業(Gewerbebetrieb)は、商業とみなす。すなわち、
  1  ・・\\(省略)
  2  ・・\\(省略)


 HGB2条【Sollkaufmann】

 その営業が1条2項によってはまだ商業とはみなされないが、方法及び規模によれば商人的に設備された経営組織(Gescha¨ftsbetrieb)を必要とする、手工業またはその他の企業(Unternehmen)は、企業者が商業登記簿にその商号の登記をなしたときに限り、本法の意味での商業とみなす。企業者は、商人の商号登記につき適用される規定に従い登記をなす義務を負う。


 HGB4条【小商人】

(1)  商号、商業帳簿、及び支配人に関する規定は、その営業が方法または規模によれば商人的に設備された経営組織を必要としない人には、適用がない。
(2)  1項にあげる規定の適用がない営業との合併により、合名会社または合資会社を設立することはできない。


 HGB343条【商行為の概念】

(1)  商行為は、商人の行為でありその商業の経営に属する行為すべてである。

(2)  1条2項にあげる行為は、商人が通常は別の行為を目的とする商業の経営において締結した場合でも、商行為である。


 HGB344条【商行為の推定】

(1)  商人がなす法律行為は、疑わしいとき、その商業の経営に属するものとみなす。

(2)  商人が署名した債務証書は、そこから反対のことが明らかではない限りで、その商業の経営において署名されたものとみなす。


  以上のHGBの規定から、「商行為」は「商人」がなすことを前提としていることが分かる。ここから、AGBG24条の限定基準は、結局HGB343条および344条に基づき、当該契約が「商行為」であることを示すものと言える(17)。しかし、条文のみからは、本稿において問題となる「商人」、「商行為」、及び「小商人」の概念の具体的な内容は明らかではない。

  そこで以下においては、それぞれの概念の具体的内容を検討していく。

  a.「商  人」

  HGB1条1項によれば、商人とは「商業(Handelsgewerbe)を経営する(betreiben)者」である。これがHGBにおける商人概念の核心部分であり、何が商業かは、1条ないし4条から導かれる。

  「営業(Gewerbe)」とは、「企業(Unternehmen)」からの切り抜きであり、「特定の取引範囲から流動的な収入源を獲得する意図で実施される、継続的、経済的、職業的な活動すべて」とされる。すなわち、メルクマールとしては、「経済的活動の存在」「その計画的・継続的な経営」「活動が外へ出ていること」「そこから継続的な収入源を獲得する意図」である(18)

  これらのメルクマールの中でも、「利潤獲得意図」というメルクマールは実務により従来から要求されてきたものである。このメルクマールが機能するのは公的事業に関してである。従って、利潤獲得意図ではなく、単なる費用補填を目的としているか公益的目的で経営されている場合には、HGBの適用範囲から除外されることになる。しかし、これが要求される実質的な根拠は不明であり、このメルクマールの放棄が要求されている(19)

  さらに、精神的、学問的、芸術的な職業は、長年、慣習法により営業とは見られていない。その結果、多くの自由業に従事する者は、商人とは見なされない。限界事例において問題となるのは結局、「精神的かつ学問的な給付」と「技術的かつ商人的な経営の構造」とのどちらが優勢かであり、例えば、助手と共に普通の実務を実行している医師は商人ではないが、利潤獲得意図をもって大規模サナトリウムを経営する医師は、商人であるとされる(20)

  また、「経営(Betrieb)」において問題となるのは、「その名において」営業を実行していることである。それによれば、事業(Gescha¨ft)の保有者(Inhaber)が経営しているかどうかは問題とならない。したがって、例えば受託者は、事業を自己の名において経営している場合には、寄託者の計算で経営している場合でも、商人とされる(21)

  b.「商行為」

  HGB343条1項によれば、商行為とは、「商人が関与する」「商業の経営に属する」「行為」である。

  「商人が関与する」というのは、1条ないし6条により商人である当事者の一方が、行為に関与していることである(22)。「行為」概念については、広く理解されるべきであり、法律行為のみでなく法的行動や、訴訟行動も含まれるとされる(23)。また、行為が「商業の経営に属する」というのは、行為が商人の企業の経営と関連しており、かつ、その企業の推進に直接または間接に役立っているということである。これに対立するのは、商人の私的行為、例えば、商人またはその家族の個人的な需要のための消費物品の購入や、私的住居の賃借である。他方、行為の無償性や親切行為であることは、これに対立するものではないとされる(24)

  c.「小商人」

  HGB4条1項によれば、「その営業が方法または規模によれば商人的に設備された経営組織を必要としない」人すなわち小商人については、HGBの一定の規定が適用されない。

  4条は、1条が規定する商人(Muβkaufleute)について、商法が常に無限定に適用される完全商人と、4条の小商人とを区別している(25)

  小商人であるかどうかの基準となるのは、「商人的に設備された経営組織の必要性」が、「営業の方法によっても規模によっても」存在しているかどうかである。問題となるのは、「商人的な組織が不必要かつ費用のかかる負担にすぎないような、全く単純な構造の、かつ、簡単に見通し可能な企業」が問題となっているのか、それとも、「強化された商人的な組織によってのみ、見通し可能であり、制御可能であり、かつ計画可能であるという、複雑、広範、かつ面倒な経営」が問題となっているのかどうかである(26)

A  「公法の法人または特別財産」

  AGBG24条においては、保護を受けるべき者が「公法の法人または特別財産」であることをも、適用範囲限定の基準としている。また、ZPO29条および38条においても同じである。

  公法の法人とは、国家、州や市町村などの地方公共団体、弁護士会や公証人会のような公法上組織された強制的法人、水道団体及び土地団体など目的団体、ドイツ連邦銀行やその他の公法上組織された銀行、社会保険団体、放送施設、大学、宗教団体、並びに、公法上の施設及び財団法人である。公法の法人の特徴は、公法上の行為によって設立されること、及び高権的(hoheitlich)な権限を有しているかあるいは特別の公的な目的を追求していることである。

  公法の特別財産とは、特別の管理体として組織されているが公法の法人ではない。これにあたるのはドイツ連邦郵便である(27)

B  「取得活動」

  訪問販売撤回法6条1号において用いられている「取得活動」という概念は、HGBにおける概念でもなく、EC法で用いられている概念でもない。既に述べたように、訪問取引撤回法は、EC法の影響を受けつつもそれを国内法化したものではないという点で、中間的な位置にある法律と言えよう。

  「取得活動」という意味は、利益またはその他の収益の獲得のために活動を展開している者の、あらゆる計画的かつ継続的活動である。これには、商人的な活動及びその他の営業的な活動、農業、商法及び営業法の規律には服さない自由職業の活動も含まれる(28)

  自由職業の取得活動に入るのは、継続的かつ計画的に収益の獲得のためになされる、特別の人的、経済的、または芸術的な給付に基づく、高度のサービスまたは労務給付である。これには、医師、弁護士、経営コンサルタント、税理士、建築家、宣誓した専門知識ある者、通訳などの活動が含まれる(29)。これに対して、フリーの芸術家及び研究者は、活動の動機付けとしての取得目的が欠けている(注文によってではなく独自の動機に基づいて、かつ、その後の需要が存在するかどうか及びそこから家計維持のために必要な収益を得るかどうかとは関係なく、彼らは仕事をしている)ため、自由職業者には入らず、本条の適用がない(30)

C  「独立性」

  「独立性」という概念も、訪問取引撤回法6条1号、消費者信用法1条1項、およびAGBG24条aにおいて、人的適用範囲を限定するメルマークとして用いられている。もっとも、それが問題となるのが「取得活動」か「職業活動」か、という違いは存在する。

  訪問取引撤回法6条1号については、「独立性」という概念は、商法及び営業法の「営業(Gewerbe)」概念に一致しているとされる(31)。決定的であるのは、「自己の名において、自己の計算において、かつ、自己の責任において」取得活動が実施されることである(32)。したがって、依存的に働いている者が将来の独立の活動を準備するために契約を締結する場合には、なお6条1号が介入することはない(33)。また、消費者信用法1条1項については以下のようにいわれる。「独立」しているのは、HGB84条1項二文にならって、本質的に自己の労働期間を自由に決定することができる者である。したがって、問題なのは職業活動の実施における「人的な自由」である(34)

  この「独立性」というメルマールは人的適用範囲限定に際して重要な役割を果たすものであるにもかかわらず、法律相互間でその意味を照合することは行われていない点には疑問が残る。

D  契約目的が「職業活動または営業活動」に帰せられない

  「職業活動または営業活動」という概念は、EC法を国内法化した法律(消費者信用法1条1項、AGBG24条a)において一律に用いられている概念であり、遡っては、EC法が人的適用範囲を限定する際に一律に用いている概念である。

  消費者信用法1条1項については、この概念において決定的なのはもっぱら活動が私的領域の範囲ではなされていないことであるといわれる(35)。EC法を国内法化した規定ではないにも関わらずこの概念を用いている唯一の規定、BGB609条a1項2号においても、本質的なのは、私的領域にしか属さない活動に対立するものとして、全体として職業活動または営業活動が現れていることであるとされる(36)

  この概念に対しては、営業活動または職業活動という概念は実際同じものを規律しており、二つの概念でもって内容上同じことを言い換えることは不必要に画定を困難にし、不明確さを生むだけであるとの批判がある。そもそも営業活動と職業活動との間で区別をなす意味は不明確であり、むしろこれら双方を含む「取得活動」という概念を用いる方が適切であるとする(37)(38)

E  「自然人」

  この基準も、EC法によりもたらされた基準であり、EC法を国内法化した法律において一律に用いられている。「自然人」か「法人」かで保護に差を設けるという方法は、EC法の影響を受けるまでは採られていなかった。

  2.相  手  方

@  「取引として行為」

  訪問取引撤回法6条1項においては、相手方が「取引として行為していない」場合には法の適用を否定する旨が規定されている。

  「取引として」の意味は、価格記載命令(Preisangabeverordnuug(39))1条1項に含まれている「営業として」との区別から導かれる。すなわち、利潤獲得意図の有無が区別の基準となり、そこから、「取引として」行為するとは、それと結びつく収益の獲得とは無関係に、同種の活動を繰り返しかつそれによってその活動をその仕事の継続的または反復的な構成要素とすることを意図することとされる(40)

A  「職業活動または営業活動」の実施において行為する

  既に述べたようにこの概念は、保護を受ける側を限定するために用いられているのみならず、その相手方を限定するためにも用いられている。

  言葉の意味については、前述したところと同じことが妥当すると言えよう。

  ところで、保護を受ける側においては「契約目的」が問題とされるのに対して、相手方においては「実施において」が問題とされているという点についてはどのように考えるべきか。相手方として予定されているのは物またはサービスの「提供者」であるため、「実施において」が問題となる。これに対して、保護を受ける側として予定されているのは、「受領者」であり、そのため、「契約目的」が問題とされるにすぎないのである。

  3.ま  と  め

  以上の検討の結果、一見異なる人的適用範囲の限定基準の実質的異同を確定することが可能となった。

  (1)  その前にまず、現行ドイツ契約法の中のいわゆる「消費者保護法」において用いられている人的適用範囲の限定基準を整理しておく。

  すなわち、まず第一に、AGBG24条において用いられているように、保護を受ける側のみについて、その者が「商人」でありかつ契約が「商行為」であること、あるいは、公法の法人または特別財産であることを限定基準とする方法、第二に、BGB609条aのように、保護を受ける側のみについて、「自然人」及び「職業活動または営業活動」という概念を限定基準とする方法、第三に、訪問取引撤回法6条において用いられているように、保護を受ける側については「独立の取得活動」という概念を、相手方については「取引として行為」しているという概念を限定基準とする方法、第四に、EC法を国内法化した法律全てにおいて用いられているように、保護を受ける側については「自然人」および「独立の職業活動または営業活動」という概念を、相手方については「職業活動または営業活動」という概念を限定基準とする方法、以上四つの方法である。

  (2)  これらの方法につき、その実質的な内容上の異同を確定していく。

  まず、第一の方法と、その他の方法との決定的な違いは、相手方について限定がなされていない点は別として、保護を受ける者について、「商人」でありかつ「商行為」であることと、「独立の取得活動」および「(独立の)職業活動または営業活動」との差異、すなわち、前者は「利潤獲得意図」を構成要素とするのに対して、後者においてはそれは問題とならない点に存在する。そのため、前者においては自由職業が含まれないのに対して、後者においては含まれることになる。その結果、保護を受ける者の範囲は、第一の方法においてその他の方法に比べて広いものとなる。

  また、保護を受ける者として法人も含むかどうかという点では、第一の方法によれば、公法の法人または特別財産以外は含むことになり、第三の方法によれば、限定なく含むことになり、第二及び第四の方法によれば完全に法人を除外することになる。その結果、保護を受ける者の範囲は、第三の方法において最も広く第二及び第四の方法において最も狭いものとなる。

  相手方については、第三の方法と第四の方法において用いられている概念は、「取引として」と「職業活動または営業活動の実施において」というように異なるが、その実質的な内容に差がないことは、先の検討から明らかである。もっとも、第一及び第二の方法は相手方について限定していないため、結果的に保護を受ける者の範囲としては第一及び第二の方法が最も広いものとなる。

  (3)  ところで、以上のように、ひとくくりに「消費者保護法」と呼ばれる規律の中で、契約法に限っても異なった人的適用範囲限定基準が同居している現状をどのように評価すべきであろうか。一方では、同じく消費者保護を目的とするのであれば同じ基準が妥当すべきであるとの考えが、他方では、同じく消費者保護といってもそれぞれの規律毎に具体的に問題となる場面は異なるため、異なる基準を用いるのが妥当であるとの考えが成り立ちうるであろう。

  この問題は、今後我が国において消費者保護法を制定するに際しても、既存法との調整の中で必ず考慮されるべき問題である。

  この問題に対しては、以下で検討する最近の法改正が一つの答えを出していると言えよう(後述V参照)。

X  最近の法改正

  既に述べたように、ドイツにおいてはごく最近、二つの重要な法改正が実施された。一つは仲裁手続き法の改正であり、一つは商法の改正である。双方の法改正により、本稿で考察対象としている人的適用範囲を限定する法規定に変更が生じている。順に見ていく。

  1.仲裁手続法の改正(41)

  この改正により、ZPOの第10章が全面的に改正された。これにより、本稿で考察対象としたZPO1027条の規定も廃止され、仲裁の合意の方式に関する規定として新たな1031条が成立している。

 新ZPO1031条【仲裁の合意の方式】

(1)  仲裁の合意は、当事者が署名した文書の中に、または当事者間で交換される覚え書き、コピー(Fernkopien)、電報もしくは合意の証明を担保するその他の情報伝達(Nachrichtenu¨bermittlung)方式の中に、含むことを要する。

(2)  1項の方式は、仲裁の合意が当事者の一方から他方に、または第三者から当事者双方に引渡された文書の中に念まれており、かつ文書の内容が適時に異議が提起されないときには取引慣行によれば契約内容と見られる場合でも、充足しているものとみなす。

(3)  1項または2項の方式要件に合致する契約が仲裁条項を含む文書に関係するとき、このことは、この関係がこの条項を契約の構成要素とするほどである場合、仲裁の合意を理由づける。

(4)  仲裁の合意は、用船契約の中に含まれる仲裁条項が船荷証券の中で明白に引用されているとき、船荷証券の発行によっても、理由づけられる。

(5)  仲裁の合意の基礎となっている取引においてその営業活動に帰すことのできない目的で行為している人が関与している仲裁の合意は、当事者が自署した証書の中に含むことを要する。仲裁裁判所の手続きに関するもの以外の合意は、証書に含むことは許されない;このことは、公証人による証明作成の場合、適用しない。

(6)  方式の瑕疵は、主要事実に関する仲裁裁判所の審理への応訴により治癒する。


  新たな1031条5項は、従来の1027条1項とほぼ同じ規律を内容としている。すなわち、一定の者については、法的紛争を国家の裁判所による判断へと持ち込むことを自分は放棄するということを明白にするために、当事者により自署された証書の中に仲裁合意が含まれており、かつこの証書には仲裁裁判所による手続きに関するもの以外の合意を内容として含むことは許されないとする規律が必要となるとされる(42)

  ただ、「一定の者」の決定基準が、従来の基準とは異なるものとなっている。すなわち、従来の1027条2項は適用除外規定として、「仲裁契約が当事者双方にとって商行為であり」、かつ、「当事者のうちいずれもがHGB4条に挙げられている営業者ではない」場合には、1項の保護規定の適用がないとしていた。これに対して、新たな1031条5項は、はじめから適用範囲を限定して、「営業活動に帰すことのできない目的で行為している人」のみが保護を享受できることを規定している(43)

  政府草案理由によれば、従来の1027条2項が基準としていた「商行為」概念は、不明確であり、とりわけ国際的領域において信頼されていないため、これを基準とすることは必要ではないとされる(44)

  さらに、従来採られていたHGB4条による「小商人」であるかどうかという基準については、後述するHGBの改正との関連を問題とする必要があろう。すなわちHGBの改正により同法4条は廃止されており、したがって同条を引用することは不可能となっている。さらに、従来の小商人であるかどうかの基準とされていたところの「その営業が種類または規模によれば商人として準備される行為経営を必要としている」かどうかという基準は、改正された新HGB1条2項において、ある営業が商人性を決定するための基準としての商業にあたるかどうかを決定する基準として表れているにすぎない。したがって、新たな1031条5項の規定する「営業活動」には従来小商人とされていた者の活動も含まれることになる。

  2.商法の改正(45)

  今回の改正により、HGB中の多くの規定が改正され、これに合わせてAGBGの規定も改正されている。これにより、本稿において採り上げているHGB1条、4条、及び343条の規定が、さらにはAGBG24条及び24条aの規定が改正ないし廃止された。

 HGB1条【Muβkaufmann】

(1)  (改正なし)

(2)  商業とは営業すべてをいう。ただし、その企業が方法及び規模によれば商人的に設備された経営組織を必要としないときはこの限りではない。


 HGB2条【Sollkaufmann】

 その営業が1条2項によってまだ商業ではない営業的企業は、企業者が商業登記簿にその商号の登記をなしたとき、本法の意味での商業とみなす。企業者は、商人の商号登記につき適用される規定に従い登記をなす権限を有し、かつその義務を負う。登記がなされたとき、商号の登記抹消は企業者の申請に基づいても行われる。ただし、1条2項の要件が生じているときにはこの限りではない。


 HGB4条【小商人】

 廃止


 HGB343条2項【商行為】の概念

(1)  (改正なし)

(2)  廃止


 AGBG24条【人的適用範囲】

(改正なし)
1.契約締結に際して自己の営業活動または独立の職業活動の実施において行為する人(事業者)に対して利用されるAGB;

2.(改正なし)

(改正なし)


 AGBG24条a【消費者契約】

 事業者と、営業活動にも独立の職業活動にも帰せられない目的で契約を締結する自然人(消費者)との間の契約については、本法の規定は以下の条件で適用する。

1.

2.(改正なし)

3.


@  HGB改正−商人概念の変更

  従来のHGB1条2項は、商業とみなされる営業として、一定の種類の取引を目的とする営業を個別に挙げていた。これに対して、新HGB1条2項は、原則として営業全てを商業とし、例外的に「方法及び規模によれば商人的に設備された経営組織を必要としない」営業は商業でないとする。

  改正法によれば、商人と非商人の区別は、営業を営む限り「方法及び規模によれば商人的に設備された経営組織の必要性」の存否というメルクマールによってのみ、決定されることになる。このメルクマールは、従来のHGB4条1項における(基本的商業の場合の)完全商人と小商人との区別基準、およびHGB2条における(その他の営業の場合の)完全商人と非商人との区別基準に一致している(46)

  また、今回の改正法により4条が廃止された。4条の廃止と1条2項の改正により、従来小商人とされていた者が、完全に商人の中から除外されることとなったのである。

A  AGBG改正−24条の変更

  前述のように、今回のHGB改正により従来の小商人は商人概念から除外されることになる。したがって、AGBG24条1文1号をこのまま維持した場合には、同規定はもはや従来の小商人には適用されないことになる。すなわち、小商人もAGBGの完全な保護下に置かれることになり、また、小商人に対するAGBは従来の範囲では使用できなくなってしまうという、実務において重大な不都合が生ずるとされる(47)

  そのため、「商人性」にかわって、「営業活動または独立の職業活動」が新たなメルクマールとされている。まず、AGBに対する保護の必要性が少ないことを考慮して全ての営業者を等しく扱うべきであるし、また、弁護士、医者、建築家のような独立した自由業者も同様にAGBGの適用から除外すべきとされる。これにより、AGBG24条aや、消費者信用法、訪問取引撤回法、前述の新ZPO1031条5項において予定される人的適用範囲に適応することになるとする(48)

  3.従来の規律への影響

  以上の法改正が従来の法秩序に及ぼす影響として、まず、仲裁の合意に関する方式規定及びAGBG双方が共に従来人的適用範囲の限定基準として用いてきた「商人」及び「商行為」概念とは決別している点をあげることができる。また、保護の範囲は、まず仲裁の合意に関して、ZPO新1031条5項により従来よりも狭いものとなっている。従来小商人として保護されてきた者が除外されることとなるのである。さらにAGBGに関して、新24条1文1号により従来保護されてきた自由業者も除外されることとなり、ここでも保護範囲は従来より狭いものとなっている。

  いずれにせよZPO、HGB、及びAGBGの改正により、従来の消費者保護法における人的適用範囲の限定基準は統一の方向へと一歩進んだと言えよう。特にAGBG24条における人的適用範囲は、消費者保護契約法において唯一、HGBの概念を基準としていただけに、これがEC法の影響により成立した契約法と同じ基準を規定することになった点は非常に重要と言えよう。

Y  小    括

  以上、ドイツにおける物的・人的適用範囲双方から限定する法律を概観し、その適用範囲限定に関する特徴を示し、さらに、人的適用範囲限定基準の内容を画定した。

  その結果、現在、ドイツにおける消費者保護契約法においては、人的適用範囲の限定方法として四つが存在していることが明らかとなった。第一に、AGBG24条において用いられているように、保護を受ける側のみについて、「独立の職業活動または営業活動」の実施において行為しているかどうか、あるいは、公法の法人または特別財産であるかどうかを限定基準とする方法である。第二に、BGB609条aにおいて用いられているように、保護を受ける側のみについて、「自然人」及び「職業活動または営業活動」という概念を限定基準とする方法である。第三に、訪問取引撤回法6条において用いられているように、保護を受ける側については「独立の取得活動」という概念を、相手方については「取引として行為」しているという概念を限定基準とする方法である。そして第四に、EC法を国内法化した法律全てにおいて用いられているように、保護を受ける側については「自然人」および契約目的が「独立の職業活動または営業活動」に帰せられないことを、相手方については「職業活動および営業活動」の実施において行為していることを限定基準とする方法である(これら四つの基準の差異については、前述W3参照)。このように、人的適用範囲の限定方法として、多様なものが混在している状況にある。

  もっとも、最近の仲裁手続法改正や商法改正において見られるように、人的適用範囲の限定基準に関して、EC法を国内法化した法律ひいてはEC法が採っている基準に合わせようという動きが存在する。

  他方、物的適用範囲に関しては、各々の法律において様々な対象が問題とされている。物的適用範囲については人的適用範囲のように統一的な基準を抽出できるものではない。これは事柄の性質上当然の帰結である。

  本章での適用範囲の限定基準を明確化するという作業も、適用範囲が果たしている役割を解明するための前提作業であった。そこで、第二章においては、適用範囲を限定する規定のみでなく、具体的な規律に関する規定をも検討対象として、それらがいかなる目的ないし理由の下制定されたのかを明らかにしていきたい。

(1)  以下でとりあげる条文は、特に記していない限り冒頭で示す法律の条文である。また、法律名称の前に付した年月日は当該法律(または指令)の成立年月日である。

(2)  Gesetz betreffend die Abzahlungsgescha¨fte vom 16. 5. 1894 (RGBl. I S. 450). 以下では同法について割賦取引法と略称する。なお、同法は後述注(8)に挙げる「消費者信用、民事訴訟法及びその他の法律の変更に関する法律」10条により1991年1月1日をもって廃止されたが、同法の規定は「消費者信用法」の中に受け継がれている。

(3)  Gesetz zur A¨nderung der Zivilprozeβordnung vom 27. 10. 1933 (RGBl. I S. 780). 以下では Zivilprozeβordnung についてZPOと略称する。

(4)  Gesetz zur A¨nderung der Zivilprozeβordnung vom 21. 3. 1974 (BGBl. I S. 753).

(5)  Gesetz zur Regelung des Rechts der Allgemeinen Gescha¨ftsbedingungen vom 9. 12. 1976 (BGBl. I S. 3317). 以下では同法についてAGBG、普通取引約款(Allgemeine Gescha¨ftsbedingungen)についてAGBと略称する。同法に関する邦語文献は多数あるが、河上正二『約款規制の法理』(1988年・有9854閣)山本豊『不当条項規制と自己責任・契約正義』(1997年・有9854閣)、石田喜久夫編『注釈ドイツ約款規制法』(1998年・同文館)を挙げておく。

(6)  Gesetz zur A¨nderung wirtschafts, verbraucher, arbeits, und sozialrechtlicher Vorschriften vom 25. 7. 1986 (BGBl. I S. 1169).

(7)  Gesetz u¨ber den Widerruf von Haustu¨rgescha¨ften und a¨hnlichen Gescha¨ften vom 16. 1. 1986 (BGBl. I S. 122). 以下では同法について訪問取引撤回法と略称する。同法に関する邦語文献として、岡孝=山本豊「西ドイツ訪問取引法の批判的検討−日本法への示唆を兼ねて−(一)」判タ648号53頁(1987年)がある。

  同法は後述する「事業所以外で締結された契約における消費者保護に関するEC理事会指令」が採択される以前から立法手続きに入っており、指令の採択直後に成立している。したがって、同法をもって指令を国内法化したものと性格づけることはできない。ただ、同法は指令を予定してそれに合わせたものと見られてはいる(Vgl. Beschluβ empfehlung und Bericht des Rechtsausschusses, BT-Drucks. 10/4210, S.9.)。

(8)  Verbraucherkreditgesetz vom 17. 12. 1990 (BGBl. I S. 2840). 同法は、「Gesetz U¨ber Verbraucherkredite, zur A¨nderung der Zivilprozeβordnung und anderer Gesetze」の1条において制定された。同法に関する邦語文献として、泉圭子「ドイツ消費者信用法(1990年)について(一)−(三・完)」民商107巻4・5号229頁以下、108巻1号  頁以下、同巻2号80頁以下(1993年)がある。

(9)  Gesetz zur A¨nderung des AGB-Gesetzes und der Insolvenzordnung vom 19. 7. 1996 (BGBl. I S. 19). 同法に関する邦語文献として谷本圭子「ドイツでの『消費者契約における濫用条項に関するEG指令』国内法化の実現−約款規制法(AGBG)改正法の成立・施行−」立命法学247号1頁以下(1996年)がある。

(10)  Richtlinie des Rates vom 20. 12. 1985 betreffend den Verbraucherschuntz im Falle auβerhalb von Gescha¨ftsra¨men geschlossenen Vertra¨gen (85/577/EWG), ABl. Nr. L372/31 vom 31. 12. 1985.

(11)  Richtlinie des Rates vom 22. 12. 1986 zur Angleichung der Rechts-und Verwaltungsvorschriften der Mitgliedstaaten u¨ber den Verbrancherkredit (87/102/EWG), ABl. Nr. 42/48 vom 12. 2. 1987. なお、後に1990年2月22日には同指令の「変更指令(Richtlinie des Rates vom 22. 2. 1990 zur A¨nderung der Richtlinie 87/102/EWG zur Angleichung der Rechts- und Verbraucherkredit (90/88/EWG), ABI. Nr. L61/14 vom 10. 3. 1990)」も採択されている。

(12)  Richtlinie des Rates vom 5. 4. 1993 u¨ber miβbra¨uchliche Klauseln in Verbrauchervertra¨gen (93/13/EWG), ABl. Nr. L95/29 vom 21. 4. 1993.

(13)  これらZPOの規定においては、保護される人物が契約当事者双方であるため、適用範囲限定についても当事者双方について問題とされている点に注意する必要がある。

(14)  Handelsgesetzbuch vom 10. 5 1897 (RGBl. S. 219).

(15)  Vgl. U. Preis, Der Perso¨nliche Anwendungsbereich der Sonderprivatrechte, ZHR(1994), S. 567ff.

(16)  HGBの条文訳については、烏賀陽然良=斉藤常三郎編『外国法典叢書(六)−ドイツ商法〔T〕(復刊版)』(1956年・有9854閣)を参照した。

(17)  P. Ulmer/H.E. Brandner/H.-D. Hensen (P. Ulmer), Kommentar zum AGB-Gesetz, 8. Aufl. (1997), § 24 Rdnr. 11.

(18)  V. Emmerich, Heymann HGB, Bd. 1, 2. Aufl. (1995), § 1 Rdnr. 5f.

(19)  V. Emmerich, a. a. O., § 1 Rdnr. 8f.

(20)  V. Emmerich, a. a. O., § 1 Rdnr. 18ff.

(21)  V. Emmerich, a. a. O., § 1 Rdnr. 13ff.

(22)  N. Horn, Heymann HGB, Bd. 4 (1990), § 343 Rdnr. 3ff.

(23)  N. Horn, a. a. O., § 343 Rdnr. 7ff.

(24)  N. Horn, a. a. O., § 343 Rdnr. 10ff.

(25)  V. Emmerich, a. a. O., § 4 Rdnr. 1.

(26)  V. Emmerich, a. a. O., § 4 Rdnr. 3ff.

(27)  M. Wolf/N. Horn/W.F. Lindacher (N.Horn), AGB-Gesetz, 3. Aufl. (1994), § 24 Rdnr. 8. 連邦鉄道も従来特別財産とされてきたが、1994年1月1日からドイツ連邦株式会社となったため、株式会社法3条1項によりHGB6条1項を準用して形式商人となる。

(28)  P. Ulmer, Mu¨nchener Kommentar zum BGB, Bd. 3, 3Aufl. (1995), § 6 HausTWG Rdnr. 5.

(29)  P. Ulmer, a. a. o., § 6 HausTWG Rdnr. 6.

(30)  P. Ulmer, a. a. o., § 6 HausTWG Rdnr. 7.

(31)  「営業」概念については前述@a参照。

(32)  P. Ulmer, a. a. o., § 6 HausTWG Rdnr. 8.

(33)  OLG Karlsruhe NJW-RR 1993, 1274.

(34)  F. G. von Westphalen/V. Emmerich/F. von Rottenburg (F. G. von Westphalen), Verbraucherkreditgesetz 2. Aufl. (1996), § 1 Rdnr. 20.  具体的には、有限会社の業務執行者や株式会社の理事については「独立性」は認められないことになる (U. Preis, ZHR 158 (1994), S. 567, 591)。

(35)  P. Ulmer, Mu¨nchener Kommentar zum BGB, Bd. 3, 3Aufl. (1995), § 1 VerbrKrG Rdnr. 27.

(36)  K.J. Hopt, Staudingers Kommentar zum BGB, Bd. 3, 12. Aufl. (1989), § 609 a Rdnr. 23f.

(37)  U. Preis, ZHR158(1994), S. 567, 586f.

(38)  R. Ga¨rtner, Zivilrechtlicher Verbraucherschutz und Handelsrecht, BB1995, S. 1753, 1756. は、この概念は、特別な消費者概念を展開するためにあるのではなく、商法が適用されるところの「職業的または営業的な領域の境界を示す」ためにあるとする。そこから、消費者法は、一般的な市民法とは別に存在する法領域ではなく、まさに一般市民法の中に位置づけられるべきものであるとする。

(39)  Preisangabeverordnung vom 14. 3. 1985 (BGBI. I S. 580)

(40)  P. Ulmer, a. a. o., § 6 HausTWG Rdnr. 14.

(41)  Gesetz zur Neuregelung des Schiedsverfahrensrechts (Schiedsverfahrens-Neuregelungsgesetz - SchiedsVfG) vom 22. 12. 1997 (BGBI. I S. 3224).

(42)  BT-Drucks. 13/5274, Begru¨dung zu § 1031 ZPO.

(43)  もっとも、新1031条は1項ないし4項において、ドイツ法の完全商人も仲裁の合意については口頭で締結することはできず、旧1027条よりは軽減された方式での締結を要する旨を規定している(Vgl. BT-Drucks. 13/5274, Begru¨ndung zu § 1031 ZPO)。

(44)  BT-Drucks. 13/5274, Begru¨dung zu § 1031 ZPO.

(45)  Gesetz zur Neuregelung des Kaufmanns und Firmenrechts und zur A¨nderung anderer handels und gesellschaftsrechtlicher Vorschriften (Handelsrechtsreformgesetz - HRefG) vom 22. 6. 1998 (BGBI. I S. 1474).

(46)  BR-Drucks. 340/97, Begru¨ndung zu Artikel 3 (A¨nderung des HGB).

(47)  BR-Drucks. 340/97, Beru¨ndung zu Artikel 2 (A¨nderung des AGB-Gesetzes).

(48)  BR-Drucks. 340/97, Beru¨ndung zu Artikel 2 (A¨nderung des AGB-Gesetzes).