立命館法学 1999年1号(263号) 251頁(251頁)




ルイ一四世一六七〇年刑事王令

中 村 義 孝



は し が き

  ここに訳出するのは、ルイ一四世の治世に制定された「一六七〇年刑事王令」(Ordonnance criminelle)である。原文は、Isambert;Recueil ge´ne´ral des anciennes lois, depuis l’an 420 jusqu’a` la Re´volution de 1789, tome XIIX, p. 371 et suiv. による。
 この刑事王令は、一六六七年の民事王令(Ordonnance civile touchant la re´formation de la justice(1))と同一の編纂事業に属するものである。刑事王令編纂事業の準備作業は、既に一六六七年五月に始まっており、その準備作業が終わったのは、一六七〇年の半ばであった(2)。
 エスマン(Esmein)によれば(3)、刑事王令の編纂委員は、国王顧問会議(conseil)の委員から大法官(chancelier)以下一〇人とパルルマン(Parlement)の代表二八人である。会議は七回しかもたれず、最終の会議は一六七〇年七月八日であった。司法顧問会議における修正の後、刑事王令は一六七〇年八月サン・ジェルマン・アン・レ(Saint−Germain−en−Laye)において確定され、八月二六日にパリのパルルマンで登録された。施行日は、一六七一年一月一日とされた。
  一一世紀の半ばに衰退の極に達したとされるフランスの王権は、一三世紀以降次第に回復する。そして王権が絶対性をもちその頂点に達するのはルイ一四世の治世であったことは有名である。
  絶対王政の時期はそれまであるゆる点で分散的であった社会が、中央集権的にまとめられる時代である。したがって、その時期の国王の重要な任務は、各地を支配していた領主(貴族)の統治権をできる限る中央に集中させることであった。このような状況の下で制定された王令(国王立法)の一つが以下に紹介する刑事王令である
  絶対王政の時期には、王権の側から支配権の統一が進められた。絶対王政の下での「統一」とブルジョワジーによる近代の「統一」とは、形において似ているが、その内容については異なっていることに注意しなければならない。近代における「統一」の根底には商品交換を円滑に行い得るためという要求が存する。したがって近代の「統一」は、ブルジョワジーの利益確保のために、ブルジョワジー主導で進められる。彼らは、従来の第一身分、第二身分という特権身分を法的に否定し、彼ら特権身分の者をブルジョワジーと同じ秩序の下に置くことに努力している。これがフランス革命の時期にいわれた「平等」の主要な内容であるが、ここではこの問題とは直接に関係がないのでこれ以上の論述はしない。
  絶対王政期にめざされた国王支配権の統一の中身は、封建社会の中で多くの地域に分散していた領主(貴族)の支配権を国王が奪取することであった。近代的な言い方をするならば、国王が立法・行政・司法の三権の源を国王自らの手に集中することである。そのためには、先ず地域的な慣習法に代えて国王立法を制定しその効力を全国に及ぼす必要がある。その役割を担ったのが、ordonnance とか e´dit とかあるいは de´claration などの名称をもつ国王立法(王令)である。
  エリュル(Ellul)によれば(4)、一七世紀には編纂された形での慣習法も存在するけれど、この時期の唯一の法源は、現実には、王令(ordonnance)で表された国王の意思である。国王は非常に広範な立法権を持っており、一般的で恒久的な決定をなすことができたのである。王令は、原則として、司法や財政といった公法(droit public)に関する問題に限って規定しており、私法(droit prive´)に関しては慣習に委ねられていた。しかし一七世紀以降次第に、国王も私法の領域に干渉するようになってくる。
  国王立法を全領土に徹底させるためには、さらに行政制度と裁判制度を統一することが必要になる。司法制度を統一するための改革に大きな役割を果たしたのが、民事裁判の手続きに関する一六六七年の民事王令であり、また以下に紹介する刑事裁判手続きを定める一六七〇年の刑事王令である。
  司法についての王令は一六七〇年以前にもしばしば制定されている。たとえば(5)、一五二八年一月一三日のパリのパルルマン(parlement)での訴訟手続きを定める王令(ordonnance)、一五四〇年六月一日の貴族、国王の役人、僧侶のパリのパルルマンにおける刑事手続きを定める王令(e´dit)、一五四〇年一二月のノルマンディーにおける司法行政に関する王令(e´dit)、一五四一年一一月の刑事事件の上訴はパリのパルルマンになされるべきことを定めた王令(de´claration)、一五四七年七月の人殺し(meurtrier et assassin)を車責めの刑(supplice de la roue)に処する王令(e´dit)、一五六六年二月の司法改革に関する王令(ordonnance)など多くのものがある。
  また国王は、制度の統一だけでなく、法そのものの統一にも努めている。その現れの一つは、一六七九年四月の王令(e´dit)であって、それは大学において王令や慣習法に含まれるフランス法(droit francois)の教育とそのためのフランス法学の諸原理(les principes de la jurisprudence francaise)を教える教授の任命について定めている(6)。
  一六七〇年の刑事王令は、国王が命じる裁判手続きを王国内の多様な裁判機関に遵守させることにより刑事司法の統一を図る役割をもっていた。手続きの統一が命じられたけれども、当時はまだ何が犯罪とされる行為であって、その犯罪行為にどんな刑罰が科せられるのかを定めた刑法典は存在していなかった。犯罪と刑罰を定めていたのは地域的な慣習法や教会法または個別の法規であるか、あるいは裁判権者の恣意により犯罪行為が決定されていたこともあろうと考えられる(7)。刑事王令自体の中にもいくつかの罪名が示されているが、それがどのような内容の行為を指すのかは明らかにされていない。
  一六七〇年の刑事王令の特徴としては、裁判所の種類の多さと複雑な裁判管轄、多様な種類の捜査・裁判・刑罰行政関係者、身分による管轄裁判所の違いにみられるような身分制度の刑事司法への導入、密室における糾問手続き、予備的拷問や尋問台における尋問にみられる残忍なまでの手続きの厳しさ等である。
  このことに関して、オリヴィエーマルタンは次のように指摘している。一六七〇年の刑事王令は「殊に、騒乱の諸時期に危険にも増加していた犯罪の迅速な弾圧を目指すものである。それは、ローマ=カノン起源の糾問手続を最終のところにまで推し進めるものである。拷問と秘密との大幅過ぎる使用は、被告人を、審理の責を負う司法官に、殆ど無防禦のままに引渡すものである(8)。」
  また次のような指摘もある。「被告人の防禦よりも、訴訟方法を統一するための一つの模範たらんとする熱意が示されていることによって特徴づけられるこの刑事王令は、最も重要なものとして糾問訴訟手続き(proce´dure inquisitoire)を推進し、その手続きを秘密の厚い壁で包み隠し、弁護人を法廷から遠ざけてしまい、恐ろしい且つ無益でもある拷問(torture)を用いた手続きを確立した。さらに、中世的な回想をもその中に盛り込んでいる。その第二二章は死体(cadavre)に対してなされる訴訟手続きを定めているではないか!  しかし、この王令はその技術的な完全性を理由に、一二〇年間手をつけられないでそのまま放置されねばならなかったのである(9)。」
  近代以降の目で見ると多くの欠陥をもつものであったとしても、この王令は社会的進化の中にあって一世紀以上もその効力を持ち続けたのは事実である。
  刑事王令は司法権を中央に集中しようと努力したが、それも完全に成し遂げられた訳ではない。たとえば領主のもっていた裁判権を国王の手に集中しようとしたのもこの刑事王令であったが、絶対王政期を通じて領主裁判権はまだ残存していた。フランス革命の全くの初期、一七八九年八月の封建的特権廃止のデクレ(10)により、やっと領主裁判所が廃止され、さらに裁判の無償化が定められることになったのである。
  国民議会は、被告人の弁護人選任権などを定めた刑事裁判の改革に関する一七八九年一〇月八日=一一月三日のデクレ(11)を制定するが、その最終の条文(二八条)において、一六七〇年の王令および刑事事件に関するその他の王令等は、別に規定するまで、本デクレに反しない限りすべて遵守されるべし、と定めている。革命の初期の段階には、一六七〇年の刑事王令はまだ部分的に効力を有していたのである。続いて一七九〇年一月二一日のデクレ(12)は第一条で、「同じ犯罪は、犯人の地位や身分にかかわらず、同じ刑罰に処する」旨を定めて、遂に封建的な身分制度の廃止を刑事法の中に取り入れた。一七九〇年八月一六=二四日の司法組織について定めたデクレにより、司法組織全体の改革・整備がなされ、裁判官の公選制が採用された(13)。
  このように近代的な制度の漸次的な整備の流れの中においても、一六七〇年の刑事王令による手続きは依然として部分的にではあるが効力をもっており、それが新しい手続きに完全に取って代わられるのは一七九一年九月のいわゆる刑事訴訟法(14)によってである。そしてフランスで罪刑法定主義が取り入れられたのは、一七九一年刑法典(15)制定以降のことである。
  一六七〇年の刑事王令は各章毎に第一条から始まっているが、訳出に際しては本来の条文番号の後にカッコで通算番号を入れている。また、読み易さを考慮して、必要と思われる原語は初出に限って示した。訳出に際しては十分な検討をしたつもりであるが、なお誤訳とされる部分がないとは言い切れない。この点は、読者の皆さんからのご指摘を待ちたい。
  社会が統一の方向に向かって進んでいたとはいえ、この刑事王令がはたして実際の裁判においてどのように統一的に適用されていたのかは別の問題である。それは、王令の浸透度も中央と地方では必ずしも同一ではなく、また多種多様な裁判所の存在という状況の中で裁判手続きの統一がどれ程実質的に実現されていたかということが疑問視されるからだけではなく、手続き法(刑事王令)は制定されていたけれども、何が犯罪とされその犯罪にどのような刑罰が科せられるのかを定めた刑事実体法がなかったからでもある。刑事王令で用いられる刑罰は二五章一三条で列挙されているが、現実にはそれ以外の刑罰もありまたその執行方法となると多様であったことを示す記録も残っている(16)。
  これらの問題を解明するためには、パリの国立古文書館や各県の古文書館に保存されている当時の裁判記録・裁判書を丁寧に調べる必要がある。その機会を作りたいものだと考えている。

(1)  一六六七年の民事王令の訳は、塙  浩著作集  六  『フランス民事訴訟法史』(信山社)六六七頁以下参照。
(2)  A. ESMEIN;HISTOIRE DE LA PROCE´DURE CRIMINELLE EN FRANCE, p. 206 et suiv.
(3)  Ibid.
(4)   J. Ellul;Histoire des institutions, 11e e´dition, tome 4, p. 160
(5)  以下に引いた王令は、すべて Isambert;Recueil ge´ne´ral des anciennes lois, depuis l’an 420 a` la Re´volution de 1789 による。各王令が収録されている巻は次の通り。
  Ordonnance sur l’abre´viation des proce`s et la forme de proce´dure au parlement de Paris , le 13 janvier 1528:tome XII, p. 307 et suiv.
  E´dit portant re`glement pour l’instruction des proce`s criminels des nobles, officiers royaux et des clercs au parlement de Paris, le 1er juin 1540:tome XII, p. 681 et suiv.
  E´dit sur l’administration de la justice en Normandie, de´cembre 1540:tome XII, p. 707 et suiv.
  De´claration portant que les appellations en matie`re criminelle seront porte´es au parlement de Paris, le 20 novembre 1541:tome XII, p. 759 et suiv.
  E´dit portant que les meurtries et assassins seront punis du supplice de la roue, sans commutation de peine, et indiquant les mesures a` prendre pour saisir les coupables, juillet 1547:tome XIII, p. 26 et suiv.
  Ordonnance sur la re´forme de la justice, fe´vrier 1566:tome XIV, p. 189 et suiv.
(6)  E´dit touchant l’e´tude du droit civil et canonique, et du droit francais, et les matricules des avocats:op. ci. tome XIX, p. 199
(7)  佐伯千仭「啓蒙時代と犯罪類型」(法学論叢  第三九巻第三号)三六九頁以下参照。
(8)  Fr. OLIVIER−MARTIN;HISTOIRE DU DROIT FRANC_AIS des origines a` la Re´volution, p. 354 オリヴィエーマルタン著、塙  浩訳『フランス法制史概説』(創文社)  五二四頁
(9)  J. Portefaix;Histoire de la justice, p. 29
(10)  De´cret portant abolition du re´gime fe´odal, des justices seigneuriales, des di^mes, de la ve´nalite´ des offices, des privile`ges, des annates, de la pluralite´ des be´ne´fices, etc., les 4, 6, 7, 8 et 11 aou^t 1789:Duvergier;Collection comple`te des lois, de´crets, ordonnances, re´glemens, et avis du Conseil−d’E´tat, tome 1, p. 39 et suiv.
(11)  De´cret sur la re´forme de quelques points de la jurisprudence criminelle, 8 et 9 Octobre=3 Novembre 1789:Duvergier;op. cit., tome 1, p. 56 et suiv.
(12)  De´cret concernant les condamnations pour raison des de´lits et des crimes:Duvergier;op. cit., tome 1, p. 112
(13)  De´cret sur l’organisation judiciaire, 16=24 aou^t 1790:Duvergier;op. cit., tome 1, p. 361 et suiv.
(14)  De´cret concernant la police de su^rete´, la justice criminelle et l’e´tablissement des jure´s, 16=29 septembre 1791:Duvergier;op. cit., tome 3, p. 331 et suiv.
(15)  Code pe´nal, 25 septembre=6 octobre 1791:Duvergier;op. cit., tome 3, p. 403 et suiv. 一七九一年刑法典の翻訳は、内田・中村「フランス一七九一年刑法典」(立命館法学  第九六号  一七六頁以下)参照。
(16)  中村  「トゥルーズのパルルマンについての一考察」(立命館法学  第二〇一・二〇二号  七二七頁以下)参照。
  注で引用した文献のほか、翻訳にあたって参考にした文献
Marcel Marion;Dictionnaire des Institutions de la France aux XVIIe et XVIIIe sie`cles
Adolphe Che´ruel;Dictionnaire historique des institutions, premie`re partie et deuxie`me partie
Jacques Godechot;Les institutions de la France sous la Re´volution et l’Empire, 2e e´dition
ピエール・ディヨン著、福井憲彦訳『監獄の時代』(新評論)
石井三記著『一八世紀フランスの法と正義』(名古屋大学出版会)
   (一九九九年二月記) 

一六七〇年刑事王令

目    次

  第一章  裁判官の権限について(一−二二条)
  第二章  フランスの憲兵司令官、副バイイ、副セネシャルおよび短服の刑事代理官に固有の訴訟手続について(二三−五〇条)
  第三章  告訴、告発および起訴について(五一−五八条)
  第四章  裁判官の調書について(五九−六〇条)
  第五章  医師および外科医の報告書について(六一−六三条)
  第六章  予審について(六四−八二条)
  第七章  召喚状について(八三−九三条)
  第八章  刑事事件における文書および署名の確認について(九四−一〇七条)
  第九章  主たるまたは付随的偽造の罪について(一〇八−一二四条)
  第一〇章  決定、決定の執行および釈放について(一二五−一四八条)
  第一一章  被告人の弁解または裁判出頭免除事由について(一四九−一五三条)
  第一二章  仮払金の判決について(一五四−一六一条)
  第一三章  監獄、監獄の記録係、牢番および獄吏について(一六二−二〇〇条)
  第一四章  被告人の尋問について(二〇一−二二三条)
  第一五章  証人の検真および対質について(二二四−二四七条)
  第一六章  免刑状、赦免状、出廷するための許し状、王侯の発する追放赦免状、苦役船労働の赦免状、減刑状、復権状および再審状について(二四八−二七五条)
  第一七章  欠席および欠席判決について(二七六−三〇七条)
  第一八章  唖者、聾者および答弁を拒む者について(三〇八−三一八条)
  第一九章  判決、拷問調書および拷問について(三一九−三三〇条)
  第二〇章  民事訴訟から刑事訴訟への変更および通常訴訟としての受理について(三三一−三三五条)
  第二一章  都市共同体、町および村落の共同体、団体および協会に対する訴訟の方法について(三三六−三四〇条)
  第二二章  死体または死者の名誉に対する訴訟を行う方法について(三四一−三四五条)
  第二三章  刑事事件における示談、証拠書類および訴権喪失の廃止について(三四六−三四八条)
  第二四章  国王の代訴官または領主裁判所の代訴官の最終論告について(三四九−三五一条)
  第二五章  判決について(三五二−三七五条)
  第二六章  上訴について(三七六−三九一条)
  第二七章  故人の追憶を浄化するための手続について(三九二−三九八条)
  第二八章  違法阻却事実について(三九九−四〇七条)

公 布 文

  ルイ、ほか。我々が、一六六七年四月および一六六九年八月の王令により民事手続を改革するのに尽くした配慮を我が臣民が受けたことは大きな利益である。その利益は、個人がその財産を平穏に且つ真に私的に(世俗的に)所有することができるようにするのに重要であると同時に、公共の平穏を維持するのに一層重要であり、また臣民の義務を考慮することによっては阻止できないことを刑罰の不安により抑止する刑事訴訟の規則にも応用するように、我々を導いた。
  これらのために、我々は以下のことを命令し、またそれは我々の望むところである。

第一章  裁判官の権限について
(De la Compe´tance des juges)

第一条
  犯罪(crime)の審理は、犯罪が行なわれた場所の裁判官に係属し、被告人(accuse´)の移送(renvoi)が請求されたときは、被告人はそこに移送される。同様に、囚人(prisonnier)は、損害賠償請求人(partie civile)がいる場合にはその費用で、そうでない場合には国王のまたは領主(seigneurie)の費用で移送(trnsfe´rer)される。
第二条
  ある裁判官の前に告訴(plainte)をなした者は、別の裁判官の前に移送を請求することはできない。たとえその別の裁判官が、犯罪(de´lit)の場所の裁判官であっても移送の請求はできない。
第三条
  被告人もまた、対質(confrontation)に際して証人(te´moin)の証言(de´position)について被告人に対して読み聞かせがなされた後は、その移送を請求することはできない。
第四条
  第一審の裁判官(premier juge)は、自己に管轄権(compe´tance)がない訴訟(proce`s)および被告人を、それを審理しなければならない裁判官の前に、請求がなされてから三日以内に移送しなければならない。これに違反したときは、請求(re´quisition)以後になされた手続(proce´dure)は無効とされ、裁判官の職務の停止(interdiction)およびその移送を要求した当事者(partie)の損害賠償が科せられる。
第五条
  予審の太字で記載された正本(grosse)、訴訟を構成しまたは訴訟に結合したその他の証拠書類(pie`ces)および手続は、訴追(accusation)に関して他の裁判官の前でなされたあらゆる予審、証拠書類および手続と共に、書記課によって命令された場合は、自己の前に被告人が移された裁判官の書記課に届けられる。
第六条
  囚人の移動(translation)のための費用、予審および手続の送料(port)は、損害賠償請求人がいるときはその者により支払われ、損害賠償請求人がいないときには国王の領地のまたはその者を審理しなければならない裁判所の領主の収税吏(receveur)により支払われる。そのために、その移送または証拠(charges)および予審の送料を命じた裁判官によって、訴訟費用支払い命令書(exe´cutoire)が交付される。
第七条
  国王裁判所の裁判官は、裁判官の間でいかなる優先裁判権(pre´vention)ももたない。但し、犯罪が行なわれてから三日以内に、国王の通常裁判官(juge ordinaire)が予審をせずまた決定をしなかったときは、上級裁判官(juge supe´rieur)が審理することができる。
第八条
  たとえその者が優先裁判をなす(pre´venir)としても、国王が領主の裁判官の間で行なわれることを望むのは、上級裁判官および他の管轄地域の裁判官である。
第九条
  国王のバイイ(bailli)およびセネシャル(se´ne´chal)は、犯罪が行なわれた後二四時間以内に、その管轄内の下級裁判官(juge subalterne)で且つ国王裁判官(juge royal)でない者が予審をし且つ決定をしたときは、それらの裁判官に優先して裁判することはできない。しかし、国王は、これに反する慣習(coutume)にもまたパリ上座裁判所(Cha^telet de Paris)の慣用(usage)にも違反する(de´roger)ことは望まない。
第一〇条
  国王のプレヴォ(pre´vo^t)裁判官は、貴族(getilhomme)または司法官職にある者(officier de judiciaire)の行なった犯罪を審理することはできない。但し、領主裁判所(juridiction de seigneur)に関しては、なんらかの改革がなされる。
第一一条
  国王のバイイ、セネシャルおよび上座裁判所(pre`sidial)の裁判官は、国王裁判所のその他の裁判官および領主裁判所の裁判官の裁判権を排除して、君主の生命に対する大逆罪(crime de le`ze−majeste´ en tous ses chefs)、家宅侵入を伴った涜神(sacrile`ge avec effraction)、国王または国王の一般官の発した命令書(mandemen)に対する反抗(re´bellion)、武器の所持に関する取り締まり(police)、不法な集会(assemble´e illicite)、人民の反乱や暴動(se´dition, e´manation populaire)、公然の暴力(force publique)、偽貨の製造・変造または提示(fabrication, l’alte´ration ou l’exposition de fausse monnoie)、国王の一般官の懲戒(correction de nos officiers)、国王の一般官によって職務上犯された公金横領(malversation)、異端の罪(crime d’he´re´sie)、神への奉仕に対してなされた公の暴動(trouble public)、武力または暴力を用いた誘拐(rapt)および身柄の奪取(enle`vement des personnes)といった国王事件(cas royaux)、および国王の王令(ordonnances)または規則(re`glements)により定められたその他の事件を専属的に審理する。
第一二条
  フランスの憲兵司令官(les pre´vo^ts de nos cousins les mare´chaux de France)、短服の刑事裁判官代理(les lieutenans criminels de robe courte)、副バイイ(les vice−baillis)、副セネシャル(vice−se´ne´cahaux)は、浮浪者(vagabond)、住所不定で主君のない者(gen sans aveu et sans domicile)および身体刑、追放刑(bannissement)、加辱刑(amende honorable)の言い渡しを受けたことある者によって犯されたすべての犯罪を、終審として審理する。同様に、行軍中、宿営地、行軍中の集会や滞在地における兵士(gens de guerre)によって犯された虐待(oppression)、暴行(exce`s)またはその他の犯罪、武装した脱走兵(de´serteur d’arme´e)、武器を所持した不法な集会、国王の委任のない兵士の召集、大道(grand chemin)でなされた盗罪(vol)を審理する。同様に、その駐在地でない都市において、家宅侵入を伴って、武器を所持しておよび暴力を伴ってなされた盗罪、ならびにすべての人に対する家宅侵入を伴った「フ36」94c6神、計画的な殺人(assassinats pre´me´dite´s)、人民の反乱や暴動、偽貨の製造・変造または提示を審理する。但し、これらの犯罪がその駐在する都市の外で犯された場合に限る。
第一三条
  前条により、聖職者が慣習として享有する特権に反することは望まない。
第一四条
  憲兵司令官(les pre´vo^ts des mare´chaux)、副バイイおよび副セネシャルは、いかなる場合にも、上訴を条件としなければ、判決することはできない。
第一五条
  国王の上座裁判所の裁判官は、憲兵司令官、短服の刑事裁判官代理、副バイイおよび副セネシャルより先にまたは同じ日に決定をしたときは、彼らより先に、前数条に定められた人および犯罪を終審として審理する。
第一六条
  上記の国王事件またはプレヴォ事件(cas pre´vo^taux)の犯人(coupable)が現行犯(flagrant−de´lit)として逮捕されたときは、その場所の裁判官は、犯人に対して予審をし、命令を発し且つ尋問することができる。但し、常に、国王のバイイ、セネシャル、または刑事裁判官代理に、それぞれの書記課に宛てた文書によってそのことを通知しなければならない。その後、彼らは訴訟と被告人を求めなければならないが、この請求は拒否されることはない。これに違反したときは、裁判官、書記および牢番(geolier)には、停職(interdiction)および三〇〇リーヴル(livres)の罰金が科せられ、その半分は国王に、他の半分は貧しい人々と国王のバイイおよびセネシャルの法廷の必要ならびに彼らによって命じられるように供される。
第一七条
  上座裁判所所在地の刑事裁判官代理は、前記第一二条で定められた場合において、終審として判決によって、その管轄権を判断させなければならない。またそのために、上座裁判所の評議部(chambre du conseil)に、証拠および予審を提出しなければならず、且つすべての裁判官の面前で供述を聞かれるために被告人をそこに連れて行かなければならず、その供述は、管轄権を判断するための根拠となっている動機とともに、その判決の中に記載されなければならない。
第一八条
  判決は直ちに被告人に宣告され、写しが与えられ、それから尋問に取りかかる。その開始に当たってもう一度、この訴訟は被告人にとって終審としてなされることが告げられる。
第一九条
  しかし、これは国王のパリ上座裁判所の慣用にとってなんらの改革をもたらすものではなく、その裁判官は、訴訟の後に証拠がでてきたことによりまたは被告人の自白により、被告人が前科者(repris de justice)、浮浪者、主君のない者であるらしい場合には、最終の尋問のときに、尋問台(se´lette)にある被告人に対して、被告人は終審として判決されることを宣告することができる。
第二〇条
  裁判官、商事審判官(consul)、下級および中級の裁判権者(bas et moyen justicier)を除くすべての裁判官は、自己に係属中の事件に対する付随的偽造の申し立て(faux incidentes)の登録および判決の執行に対してなされた不服従(re´bellion)を審理することができる。
第二一条
  聖職者、貴族および国王の秘書官(secre´taires)は、訴訟の状態の如何にかかわらず、すべて、訴訟が係属するパルルマンの大審部(grand’chambre)で裁判されることを要求することができる。但し、それは裁判官の意見表明(opinion)がまだ始まっていないときに限られる。彼らが、大審部で裁判されることを要求したときは、刑事交替部(Tournelle)への移送を請求することはできない。このことは、その刑事訴訟が国王のパルルマンの大審部で裁判されるのが慣例となっている裁判官吏(officiers de justice)に対しても適用される。
第二二条
  パリ会計院(Chambre des Comptes)の部長(pre´siden)、審査官(mai^tre ordinaire)、徴収官(correcteur)、傍聴官(auditeur)および国王の弁護士(avocat)と代訴官長(procureur ge´ne´ral)は、刑事に関する事件については、パリのパルルマンの大審部以外では訴追されない。しかし、パリの都市(ville)、プレヴォ裁判所(pre´vo^te´)およびヴィコント裁判所(vicomte´)の外で犯された犯罪については、国王のバイイおよびセネシャルは、予審を行なうことができ、また、それが死罪(capital)にあたるときは、手続を大審部に移送することを条件として、上記の者に対して、予審および判決がなされることを決定することができる。当事者が、自分の意思でバイイおよびセネシャルの前で手続を行なったときは、当事者は、控訴によらなければ、大審部で不服申し立てをする(se pourvoir)ことはできない。


 第二章 フランスの憲兵司令官、副バイイ、 副セネシャルおよび短服の刑事代理官 に固有の訴訟手続きについて
(Des proce´dures particulie`res aux pre´vo^ts des mare´chaux de France, vice−baillis, vice−se´ne´chaux et lieutenans criminels de robe−courte)

第一条(二三)
  フランスの憲兵司令官は、裁判官の権限に関する章の第一二条で定められた場合のほか審理すべきでない。これに違反したときは、停職、訴訟費用(de´pens)、損害賠償および三〇〇リーヴルの罰金が科せられ、三〇〇リーヴルの半分は国王に、他の半分は当事者に供される。
第二条(二四)
  フランスの憲兵司令官は、管轄区域外ではいかなる告訴も受理することはできず、予審を行なうこともできない。但し、その決定の執行に対する不服従についてはこの限りでない。
第三条(二五)
  裁判所の決定および命令書(de´cret et mandement)は、それが国王の裁判官により請求され、国王の代訴官(procureur)または当事者により求められたときは、執行されなければならない。これに違反したときは、停職および三〇〇リーヴルの罰金が科せられ、三〇〇リヴルの半分は国王に、他の半分は当事者に供される。
第四条(二六)
  現行犯人または追跡の叫び声をあげられた(a` la clameur publique)犯人を逮捕することを、上記の者に厳命する。
第五条(二七)
  憲兵司令官に対しては、その下級警察官(archer)、公証人(notaires, tabellions)およびその他のいかなる者にも、予審を行なうための委任を与えることを禁ずる。これに違反したときは、手続は無効であり、憲兵司令官は停職に処せられる。
第六条(二八)
  憲兵司令官の下級警察官は、憲兵司令官の決定にしたがって逮捕された(arre^te´)囚人を収監する(e´crouer)ことができる。
第七条(二九)
  逮捕された囚人に対しては、逮捕(capture)および収監(e´crou)の調書が交付されなければならない。これに違反したときは、第一条に定められた罰を科す。
第八条(三〇)
  憲兵司令官がその者に対する告訴を受理し、予審を行いおよび決定をした被告人は、犯罪の場所の上座裁判所の監獄に入れられ、そこで管轄権を裁判される。そのために、上座裁判所の判決にしたがって、証拠および予審を書記課に伝えさせる。憲兵司令官は、このことを常になさねばならない。
第九条(三一)
  憲兵司令官は、被告人を逮捕し(arre^ter)たときは、逮捕(capture)の場所の最も近くに居合わせた住民二人の面前で、被告人が所持する金銭(argent)、衣類(hardes)、馬匹(chevaux)および書類(papiers)の目録(inventaires)を作成しなければならない。この住民は、目録に署名するものとする。そうでないときは、すべてのものを遅くとも三日以内に逮捕地の書記課に渡すために、彼らが拒否した理由を宣言してこれを注記するものとする。これに違反したときは、憲兵司令官には、二年の停職、訴訟費用、当事者の損害賠償および五〇〇リーヴルの罰金が科せられ、その罰金は上記の通り供される。
第一〇条(三二)
  被告人は、逮捕地に監獄があるときは逮捕後直ちにそこに連行され、その場所に監獄がないときは、遅くとも二四時間以内に、最寄りの監獄に連行されるものとする。憲兵司令官は、自宅またはその他の場所で私証書(chartre prive´e)を作成することを禁じられる。これに違反したときは免職(privation de leurs charges)に処される。
第一一条(三三)
  すべての憲兵の職にある者(officiers de mare´chasse´e) は、被告人が所有しまたは差押えられたいかなる動産(meubles)、武器または馬匹をも留置することを禁じられ、また自己または他人の名においてそれらのものの落札者となることも禁じられる。これに違反したときは、免職、五〇〇リーヴルの罰金および四倍額(quadruple)の返還に処される。
第一二条(三四)
  被告人は、逮捕後二四時間以内に、陪席者(assesseur)の面前で、憲兵司令官により尋問される。これに違反したときは、国王に二〇〇リーヴルの罰金を納めねばならない。但し、逮捕時においては、陪席者なしで尋問することができる。
第一三条(三五)
  憲兵司令官に対して、第一回尋問の開始時に、憲兵司令官により被告人を裁判するつもりである旨、被告人に言い渡し且つその記録をとるよう厳命する。これに違反したときは、手続を無効とし且つすべての訴訟費用および損害賠償を科す。
第一四条(三六)
  その犯罪が憲兵司令官の管轄権に属さないときは、二四時間以内に犯罪地の裁判官にその審理を委ねなければならない。その後は、上座裁判所の判断によらなければ、それをすることはできない。
第一五条(三七)
  管轄権は、たとえ被告人が無管轄の抗弁(de´clinatoire)を申し立てない場合でも、逮捕がなされた地を管轄する上座裁判所において、おそくとも三日以内に、判断される。
第一六条(三八)
  憲兵司令官に対してなされる忌避(re´cusation)は、管轄権の判決の前に、それを提出する当事者の選択により、憲兵司令官補佐(assesseur en la mare´chausse´e)または裁判所の裁判官の報告に従い、上座裁判所において裁判される。補佐に対する忌避もまた当該裁判所の一般官の内の一人によりなされる。管轄権の判決以降なされる忌避は、刑事訴訟が裁判されるべき裁判所において裁定される。
第一七条(三九)
  被告人は、その理由がいかなるものであるにせよ、管轄権の判決以前には釈放され得ないし、上座裁判所またはその訴訟を確定的に裁判しなければならない裁判所の判決によらなければ釈放され得ない。
第一八条(四〇)
  管轄権の判決は、少なくとも七名の裁判官によらなければなすことはできず、そこに立ち会った者は、その原本(minute)に署名しなければならない。国王は、裁判長および憲兵司令官にこのことについて監視するよう厳命する。これに違反したときは、それぞれ停職、国王に対する五〇〇リーヴルの罰金および当事者の損害賠償を科す。
第一九条(四一)
  管轄権は、被告人が法廷において(en la chambre)、判決に記載さるべき全裁判官の面前で、管轄権の理由全体(ensemble du motif de la compe´tence)を尋問されなかった場合にだけ、判決され得る。これに違反したときは、裁判長(pre´sident)に対しては前条に定める罰を科し、管轄権の判決の後になされた手続は無効とする。
第二〇条(四二)
  管轄権の判決は、直ちに、被告人に対して宣告され、通告され且つ写しが与えられる。これに違反したときは、手続は無効とされ、すべての訴訟費用および損害賠償が、管轄権が判決された裁判所の憲兵司令官および書記に科せられる。
第二一条(四三)
  憲兵司令官が管轄権なしと宣告されたときは、被告人は、犯罪が行なわれた場所の裁判官の監獄に移送され、証拠および予審、被告人の逮捕および尋問の調書、その他の書類および手続はその裁判官の書記に引き渡されなければならない。このことは、管轄権なしとする判決の後遅くとも二日以内になされることを要す。これに違反したときは、憲兵司令官に対し、三年間の停職、国王に対する五〇〇リーヴルの罰金、および訴訟費用、当事者の損害賠償を科す。
第二二条(四四)
  管轄権ありと宣告された憲兵司令官は、裁判長によりそれに関してなされた配置に従って、その陪席者と共にあるいは訴訟が裁判されるべき場所の裁判官(conseiller)と共に、直ちに訴訟の作成(confection du proce`s)を進めなければならない。
第二三条(四五)
  憲兵司令官の管轄に属する犯罪についての訴訟が開始された後に、憲兵司令官の管轄に属さない犯罪についての裁判所への告訴がなされていなかった新たな訴追がなされたときは、その訴追は併合して(conjointement)予審され、且つ憲兵司令官によりに判決される。
第二四条(四六)
  憲兵司令官のいかなる予備的判決(sentence pre´paratoire)、中間(interlocutoire)判決または終局(de´finitive)判決も、少なくとも七名の裁判官によらなければ、またはその裁判所に判決に十分な人数がいないときは一般官(officier)か学士(gradue´)を加えて七名によらなければ言い渡され得ない。出席した者は、原本に署名しなければならず、これがないときは無効であり、書記は彼らにそれを促さなければならない。これに違反したときは、書記および拒否した者それぞれに対して五〇〇リーヴルの罰金を科す。
第二五条(四七)
  裁判官により署名された憲兵司令官の判決原本は二通作成され、その一通は訴訟が判決さるべき裁判所の書記課に保存され、他の一通は憲兵司令官の書記課に保存される。これに違反したときは、憲兵司令官に対しては三年間の停職と五〇〇リーヴルの罰金を科す。二名の書記に対しては、二通の原本の登録および受理に際していかなる手数料(droits)も受け取ることを禁じ、これに違反したときは同様の罰を科す。
第二六条(四八)
  被告人が拷問(question)にかけられるときは、拷問(torture)の調書は、その裁判所の裁判官および憲兵司令官の面前で訴訟報告官(rapporteur)によって作成される。
第二七条(四九)
  憲兵司令官の判決によって認容された(adjuge´)訴訟費用は、訴訟報告官の面前で、憲兵司令官によって査定されるが、憲兵司令官はこれにつていかなる手数料も請求することはできない。その控訴がなされたときは、判決をなした裁判所が、終審としてその審理を行なう。
第二八条(五〇)
  副バイイ、副セネシャルおよび短服の刑事代理官に対して、憲兵司令官について定められたことを遵守するよう厳命する。さらに手続については、彼等はその他の王令を遵守するものとする。但し、国王のパリ上座裁判所の短服の刑事代理官の職務と手数料に関しては何も改革することを望まない。

 第三章  告訴、告発および起訴について
  (Des Plaintes, De´nonciations et Accusations)

第一条(五一)
  告訴は請求によりなすことができ、裁判官または裁判官が不在のときはその場所の最古参の実務家(praticien)がそれを受理したときにはじめて日付をつけられる。
第二条(五二)
  告訴はまた裁判官の面前で書記によって書き記され得る。但し、執達吏(huissier)、下級役人(sergen)、下級警察官および公証人はそれを受理することを禁じられる。これに違反したときは無効であり裁判官は告訴を彼らに送付してはならず、これに違反したときは停職に処せられる。
第三条(五三)
  しかし、国王のパリ上座裁判所の親任官(commissaire)の職務については、何等の改革も望まない。親任官が告訴を受理したときは、これを二四時間以内に親任官によってなされた予審および手続と共に、午前であれ午後であれ、書記課に引き渡さなければならない。そのことは、書記により謄本(expe´dition)の下部に記載される。これに違反したときは、一〇〇リーヴルの罰金を科し、その半分は国王に、他の半分は告訴をした者に供される。
第四条(五四)
  告訴状の全葉は、裁判官により且つ告訴人(complaignant)が署名することを知りまた署名できるときは告訴人により署名され、または特別の委任(procuration)にもとづいてその代訴官(procureur)により署名されるものとし、細字で記した書類および太字で記した正本(la minute et la grosse)に、その署名または拒否について特記しなければならない。このことは、パリ上座裁判所の親任官によっても遵守されねばならない。
第五条(五五)
  告訴人(plaignant)は、告訴によりまたは訴訟のすべての状態においてなされ得る後続の文書(acte subse´quent)によりそのことを正式に宣言しない限り、損害賠償請求人とはみなされない。告訴人は、二四時間以内にそれを取り下げることはできるが、その後は取り下げることはできない。取り下げの場合は、それが通告されてからの費用は免除されるが、当事者の損害賠償はこの限りでない。
第六条(五六)
  国王の代訴官および領主の代訴官は、告発(de´nonciation)を受理し且つ記載させるための登録簿(registre)を備えるものとし、その告発は詳述され(circonstancie´e)、且つ告発人が署名できるときは告発人が署名し、できないときは告発人の面前でそれを受理する裁判所の書記が告発を記述するものとする。
第七条(五七)
  正当な根拠をもたない告訴人(accusateur)および告発人(de´nonciateur)は、訴訟費用、被告人の損害賠償を言い渡され、必要な場合にはさらに重い罰が科せられる。このことは、当事者にならない者に関しても、また当事者であってもその告訴が誹謗的(calomnieuse)だと判断されて取り下げをした者にも適用される。
第八条(五八)
  損害賠償請求人がいないときは、訴訟は、国王の代訴官または領主裁判所の代訴官の請求により且つその名において訴追されるものとする。

 第四章  裁判官の調書について
  (Des Proce`s−Verbaux des juges)

第一条(五九)
  裁判官は、直ちに且つ場所を移動することなく、負傷者(personne blesse´e)または死体(corps mort)が発見されたときの状態について、犯罪が犯された場所および被告人に有利な証拠(de´charge)または証拠(conviction)に役立ち得るすべてのことと共に調書に作成すべきものとする。
第二条(六〇)
  調書は、証拠として役立ち且つ訴訟資料の一部となる凶器(armes)、家具(meubles)および身の回り品(hardes)と共に、二四時間以内に書記課に引き渡されるべきものとする。

 第五章  医師および外科医の報告書について
  (Des Rapports des Me´decins et Chirurgiens)

第一条(六一)
  負傷者は医師および外科医の診察を受けることができ、医師および外科医は真実の報告をなすものとする。このことは、死亡した者のために行動する者に関しても行なわれる。報告書は訴訟に添付されるものとする。
第二条(六二)
  裁判官は、職権により任命された医師または外科医に再診を命ずることができる。医師、外科医は宣誓をしその文書が交付される。診察の後、直ちにその報告書を作成し署名し、報告書は書記課に引渡され、訴訟に添付されるものとするが、いかなる調書も作成されることはない。これに違反したときは、裁判官に対して一〇〇リーヴルの罰金を科し、その半分は国王に、他の半分は当事者に供される。
第三条(六三)
  裁判において命じられたすべての報告には、その場所に国王の最初の医師に委任された外科医が居るときは、少なくともその内の一人が出席するものとし、これに違反したときは報告は無効とする。

第六章  予審について(Des Informations)

第一条(六四)
  証人は、国王の代訴官または領主の代訴官および損害賠償請求人により提出される。
第二条(六五)
  婚姻年齢(l’a^ge de puberte´)以下の男子および女子の子供も、その証言(te´moignage)の必要性と正確さ(solidite´)に対して判断力(raison)ありと裁判官によって判断されさえすれば、証言することが認められる。
第三条(六六)
  証言の聴取、検真または対質のために召喚された者はすべて、その召喚(assignation)の義務を果たすために出頭しなければならない。そして俗人(lai¨c)は、最初の欠席(premier de´faut)に対して罰金に処せられ、欠席判決(contumace)の場合には身柄を拘禁される。聖職者(eccle´sias−tique)であっても罰金に処せられ、その支払いには聖職者収入(temporel)が差押えられる。上級の修道士(supe´rieur re´gulier)に対しては、その修道士(religieux)を出頭せしめることを厳命し、これに違反したときは、その聖職者収入を差押え且つ国王が彼らに認めた特権を停止(suspension)する。
第四条(六七)
  証人は、聴取される前に、証言するために与えられていた令状(exploit)を証明し、その供述にそれを記載するものとする。但し、現行犯の場合には、裁判官は職権で且つ召喚状(assignation)なしに尋問することができる。
第五条(六八)
  証人は、宣誓をし、その姓名、あだ名(surnom)、年齢、身分、住所、および証人が奉公人または召使い(serviteur ou domestique)か否か、当事者の親族(parens)または姻族(allie´s)かどうか、およびその親等が尋ねられる。これらのすべてのことは記載されるものとする。これに違反したときは、証言は無効とし、裁判官に対しては訴訟費用ならびに当事者の損害賠償が科せられる。
第六条(六九)
  裁判官は、国王の法院の裁判官であっても、書記が居るか書記課の職務に任ぜられた下級官吏(commis)が居るときは、彼らが不在か病気であるかまたは彼らに正当な障害事由がある場合でなければ、その裁判所の内部または外部で行なう予審の記述を裁判官見習い(clerc)またはその他の者に委任してはならない。
第七条(七〇)
  但し、国王の発する委任(commission)を執行する者は、彼らが告知する前記の者に対しては宣誓をすませた上で、委任をなすことができる。
第八条(七一)
  予審においては、ナントの勅令(e´dit de Nantes)により定められた場合の外、補佐人(adjoint)を用いてはならない。
第九条(七二)
  供述は、裁判官の面前で書記によって記入され、裁判官および書記が署名し、また証人が署名することを知り且つ署名できるときは証人も署名し、それができないときはその旨記載するものとする。各頁は整理番号を付し、裁判官により署名されるものとする。これに違反したときは、訴訟費用および損害賠償を科す。
第一〇条(七三)
  各証人の証言は、被告人に不利な証拠(charge)のためにも有利な証拠(de´charge)のためにも作成される。
第一一条(七四)
  証人は、秘密に且つ各別に尋問され、その供述が読み聞かされて証人がそれに相違ないと確認した後に、その供述に署名し、そのことが書記により記述されるものとする。これに違反したときは、上記第五条に定められた罰を科す。
第一二条(七五)
  行間の余白にはいかなる書き込み(aucune interligne)もすることはできない。書記は、証人および裁判官に削除(rature)を確認させ且つ訂正箇所に署名させなければならない。これに違反したときは、同じ罰を科す。
第一三条(七六)
  証人の費用と報酬(salaire)についての査定(taxe)は、裁判官によってなされる。国王の代訴官、領主の代訴官および当事者は、そのように命じられない限り、証人に対して何物をも与えてはならない。
第一四条(七七)
  形式の欠陥の故に無効と宣せられた供述は、裁判官の命令にしたがい、反復され得る。
第一五条(七八)
  書記に対しては、国王の代訴官または領主の代訴官の手に渡す場合を除いては、予審および訴訟のその他の秘密書類を伝えまた原本を手放す(se de´saisir)ことを禁ずる。これらの代訴官は、それを登録簿に載せ、且つできるだけ速やかに、遅くとも三日以内に戻すために日時を記入するものとする。これに違反したときは、書記に対しては停職および一〇〇リーヴルの罰金を科し、その半分は国王に、他の半分は当事者に供される。
第一六条(七九)
  訴訟報告官もまた訴訟の点検(visite du proce`s)に際してそれを利用するために原本を取り出すことができるが、判決の後二四時間以内にそれを戻さなければならない。これに違反したときは、同じ罰を科す。
第一七条(八〇)
  国王の法院の一般官によって委任された書記は、手続がその裁判所または一〇リユー(lieue)以内の場所でなされたときは、手続が終了した後三日以内に、その原本を、書記を委任した法院に戻さなければならない。この期限は、一〇リユー毎に一日増すものとする。これに違反したときは、四〇〇リーヴルの罰金を科し、その半分は国王に他の半分は当事者に供され、さらにすべての訴訟費用と損害賠償を科す。これは、たとえまだ報酬を受け取っていない場合でも、委任された書記によって執行されるものとする。そしてこの場合、親任官の査定に従って、常勤の書記によってその支払い命令書が委任された書記に交付されるが、常勤の書記はいかなる費用も請求することはできない。
第一八条(八一)
  書記、国王の法院の一件書類袋保管人(garde−sacs)、大顧問会議(grand conseil)、および租税法院(cour des aides)に対しては、綴じて頁番号を付し、それに含まれる全頁の数を第一頁に書き記した特別の登録簿をつけることを厳命する。これは、上座裁判所、バイイ裁判所、セネシャル裁判所、憲兵司令官裁判所、プレヴォ裁判所およびその他すべての国王裁判所ならびに領主裁判所においても行なわれ、その登録簿は全頁に刑事裁判官(juge criminel)が花押を書く(parapher)ものとし、そこには国王の法院の書記およびその他の書記が、そこで行なわれたまたはそこに提出された(apporte´e)すべての手続およびその日付を、裁判官および当事者の氏名と資格(qualite´)と共に、続けて余白を残さないように記載するものとする。その理由は、書記がいかなる手数料も費用も請求することのできないようにするためである。また書類の伝達をしなければならない一般官は登録簿に被告人の有罪および無罪を証明しなければならない。
第一九条(八二)
  プレヴォ裁判所および国王のシャトゥラン裁判所(cha^tellenie)の書記および領主の書記は、毎年六月と一二月に、その上訴を直接または間接に管轄するバイイ裁判所およびセネシャル裁判所の書記課に、その刑事裁判記録簿(registre criminel)の抄本を送付しなければならない。これは、費用なしで書記に与えられる。また、バイイ裁判所、セネシャル裁判所および憲兵司令官裁判所の書記は、毎年の始めに、国王の代訴官に、各自その管轄に従い、その寄託物(de´pot)の抄本および各裁判所で認可された死刑減刑状(lettre de gra^ce)または免刑状(lettre d’abolition)の報告書(e´tat)をも、赦免の手続および判決と共に、且つ前年下級裁判所の書記により彼らに渡された抄本の写しをも送付しなければならない。

 第七章  召喚状について(Des Monitoires)

第一条(八三)
  すべての裁判官は、教会裁判所の裁判官でも領主裁判所の裁判官でも、召喚状(monitoire)を得ることが許される。それは、たとえいかなる証拠の端緒(commencement de preuves)がない場合であっても、また証人による供述拒否の場合であっても許される。
第二条(八四)
  宗教裁判所裁判官に対し、裁判官が得ることを許した召喚状を承認するよう厳命する。これに違反したときは、その聖職者収入(temporel)を差し押さえる。
第三条(八五)
  召喚状は、それを得ることを許した判決に含まれたもの以外の事実を含まない。これに違反したときは、召喚状もその結果なされたことも無効とする。
第四条(八六)
  なに人も、召喚状により任命されることも指名されることもできない。これに違反したときは、当事者に対して一〇〇リーヴルの罰金および必要な場合にはそれ以上の罰金を科す。
第五条(八七)
  主任司祭(cure´s)およびその助任司祭(vicaires)は、最初の請求に際して、召喚状の公告(publication)をしなければならない。これに違反したときは、その聖職者収入を差し押さえる。但し、公告が拒否された場合は、裁判官が職権で任命した他の司祭(pre^tre)によりなされ得る。
第六条(八八)
  宗教裁判所裁判官、主任司祭または助任司祭の聖職者収入の差押えが彼らに通告された後に、彼らが召喚状を認めることおよび公告することを拒否したときは、国王の裁判官は、彼らの収入を病院またはその場所の貧者に分配することを命じることができる。
第七条(八九)
  宗教裁判所裁判官は各召喚状のために三〇ソル以上を、その書記は公印(sceau)の手数料を含んで一〇ソル以上を、主任司祭または助任司祭は一〇ソル以上を要求することも受け取ることもできない。これに違反したときは、四倍額の返還に処される。但し、慣用によりこれより少額を与える地域においては、手数料は増額されることもある。
第八条(九〇)
  召喚状の公告に異議のある者は、居所の取得を許可した裁判官の裁判所の地域内に居所を選ばなければならない。これに違反したときは、その異議申し立ては無効とし、異議を申し立てた者は、教会の権限濫用に対する上訴(appel comme d’abus)がなければ、おそくとも三日以内の特定の日時に出頭するために、委任も命令書もなしに、裁判所に召喚され得る。
第九条(九一)
  異議申し立ては召喚の日になされ、下される判決は、異議申し立てまたは権限濫用に対するものであっても上訴に関係なく執行される。国王の法院およびその他のすべての裁判官に対しては、予審および召喚状を検討した後でなければ且つ国王の代訴官の論告にもとづかなければ、弁護(de´fense)や猶予(surse´ance)を与えることおよびそれを執行することは禁じられる。取得され得るすべてのものは無効と宣告される。その取消の請求を必要とせずに、判決(arre^ts, jugemens et sentences)が執行されるものとし、且つ弁護または猶予のために請求を提出する当事者およびそれを担当する代訴官は、各々一〇〇リーヴルの罰金に処され、それは返還されることも減額されることもできず、その半分は国王に、他の半分は当事者に供される。
第一〇条(九二)
  主任司祭または助任司祭によって受理された秘密情報(re´ve´lation)は、封印した上、彼等によって訴訟が係属中の裁判所の書記課に送付されるものとする。必要な場合には、旅費(frais du voyage)が裁判官によって支給される。
第一一条(九三)
  刑事事件(matie`re criminelle)においては、国王の代訴官および領主の代訴官、教会裁判所の検察官(promoteurs aux officialite´s)は、証人の秘密情報の伝達を受ける。損害賠償請求人は、その氏名および住所に限って伝達を受ける。


 第八章  刑事事件における文書および署名の確認について

(De la Reconnoissance des e´critures et signatures en matie`re criminelle)

第一条(九四)
  証拠になり得る私的な文書および署名は、被告人の宣誓の後に被告人に提示され、被告人がそれを書いたかまたは署名したかどうかを確認する(reconnoitre)ように促される。その後、それらの文書は、裁判官および被告人により花押を書かれるものとする。但し、被告人が花押を望み且つそれができるときに限って花押が書かれ、そうでないときは、そのことが記入され、その書類は予審に添付される。
第二条(九五)
  被告人がそれらの文書を書きまたは署名したことを確認したときは、その書類は、被告人に対して証拠となり(faire foi)、それについてはなんらの立証(ve´rification)も要しない。
第三条(九六)
  被告人により確認された第三者の手による文書および署名も、同様に証拠となる。
第四条(九七)
  被告人が書類の確認を拒否しまたはそれを書かなかったこともしくは署名しなかったことを宣言したときは、裁判官は、それらの書類が、筆跡鑑定のための書類(pie`ces de comparaison)にもとづいて確認されるよう命ずるものとする。
第五条(九八)
  筆跡鑑定のための書類は、本人の書いたものまたは被告人が確認したものとする。
第六条(九九)
  国王の代訴官または領主の代訴官および損害賠償請求人は、筆跡鑑定のための書類を提出することができる。
第七条(一〇〇)
  筆跡鑑定のための書類は、それを認めまたは異議を申し立てるために、裁判官により被告人に提示されるが、被告人に与えられることはない。それ故に、期限も補佐人も必要ではない。且つ、被告人がこれを認めた場合は、被告人および裁判官によって花押が書かれ、裁判官はその書類の受理を命ずる。
第八条(一〇一)
  書類が被告人によって異議を申し立てられまたは被告人がそれを認めることを拒否したときは、裁判官はそのことにつき調書を作成し、国王の代訴官または領主の代訴官および損害賠償請求人にそのことを伝えた後に、それを与える。
第九条(一〇二)
  筆跡鑑定のための書類にもとづく立証は、裁判官が職権で任命した専門家(expert)および大作家(maitre e´crivain)によってなされる。
第一〇条(一〇三)
  裁判官が筆跡鑑定のための書類の却下(rejet)を命じたときは、国王の代訴官または領主の代訴官および損害賠償請求人は、定められた期限内に、他の書類を提出しなければならない。さもなければ、先に立証を命じられた書類は、訴訟から排除されるものとする。
第一一条(一〇四)
  筆跡鑑定のための書類および立証さるべき書類は、時間をかけてじっくりと検討し調査するために、各別に各専門家に委ねられるものとする。
第一二条(一〇五)
  専門家は、各別に尋問され、検真され、対質させられるものとし、他の証人についても同様とする。
第一三条(一〇六)
  専門家の検真を行なうに際して、筆跡鑑定のための書類および立証さるべき書類は専門家に提示され、且つ対質に際してはそれらの書類は専門家と被告人に提示される。
第一四条(一〇七)
  被告人の証拠に役立ち得る書類を書いたり署名したりするのを見た者または他のなんらかの方法でそのことについて知っている者は、証人として尋問され得る。

 第九章  主たるまたは付随的偽造の罪について

  (Du crime de faux, tant principal qu’incident)

第一条(一〇八)
  偽造の罪の告訴、告発および訴追、ならびにその他の手続は、他のすべての罪と同一の手続と方法でなされるものとする。予審は、裁判官により職権で任命された証人および専門家によって行なわれる。
第二条(一〇九)
  偽造され(falsifie´es)たと主張されている書類は、その状況の調書を作成するために、裁判官に渡され、損害賠償請求人がそれに花押を書くことを望み且つできるときは裁判官の面前でそれに花押を書くよう損害賠償請求人に提示され、そうでない場合はその旨記載されるものとする。次いで裁判官が花押を書いた後、その書類は書記に渡される。
第三条(一一〇)
  その書類は、偽造(falsification)を知っている証人にも提示されるものとする。
第四条(一一一)
  刑事事件において、文書および署名の確認について定められた手続は、主たるまたは付随の偽造の証拠について、専門家の供述によりなされる予審においても遵守されるものとする。
第五条(一一二)
  偽造申し立て録取(inscription de faux)における請求人(demandeur)は、金銭を供託し(consigner)且つ請求に当たってその文書を添付しなければならない。即ちその金額は、国王の法院においては一〇〇リーヴル、それに直属する裁判所においては六〇リーヴル、その他の裁判所においては二〇リーヴルとする。その金額は、受領された後、罰金の受領者がある場合はその者により、それがいない場合は裁判所の書記により、裁判官の命ずる者に交付されるものとする。この書記は、手数料も費用もなしに受託者としてこの任務をなし、且つ偽造申し立て録取の判決の後にその所有者に費用なしで返却または交付されるために、この金額を収入として使用することもその金額が終局的に認容さ(adjuger)れるまではそれを放棄する(se dessaisir)こともできない。
第六条(一一三)
  付随的偽造においては、偽造であると主張された書類を利用せんとするときは被告人によって宣言させるために、請求人の請求は、請求人または請求に関する特別の権限をもった代訴官によって署名されるものとする。
第七条(一一四)
  裁判官は、請求の下部に(au pied de la reque^te)、書記課において録取がなされるよう命ずる。被告人が偽造と録取された書類を利用せんとするときは、被告人は、その住所の距離に応じて、管轄権のある期限内に(dans un de´lai compe´tent)宣言しなければならない。
第八条(一一五)
  被告人がその書類を利用することを望まないと宣言するときは、その書類は訴訟から排除される。但し、当事者の損害賠償を与えること、および国王の代訴官または領主の代訴官により偽造を特別に訴追することは留保される。また聖職録事件(matie`re be´ne´ficiale)においては、被告人が偽造文書を作成しまたは作成させたときまたはその偽造たるを知っていたときは、被告人から異議を申し立てられた聖職録を剥奪することは留保される。
第九条(一一六)
  被告人がその書類を利用することを望むと宣言するときは、その書類は書記課に渡され、交付文書は被告人に通告され、二四時間以内に録取がなされる。裁判官は、場所の距離に応じて定められる期限内に、原本が書記課に送達されるよう命じる。このことがなされなければ、その書類は訴訟から排除される。
第一〇条(一一七)
  請求人またはその補佐人は、移動することなく、書記の手から書類の伝達を受ける。
第一一条(一一八)
  偽造の攻撃防禦の方法(moyens)は、遅くとも三日以内に書記課に渡されなければならないが、被告人にはその写しも通知も与えられない。
第一二条(一一九)
  裁判官は、訴訟の性質と状態に応じて、それらを併合することができる。
第一三条(一二〇)
  もし攻撃防禦の方法が本案と関連があるものまたは許容し得るものであるならば、その証拠は標題ごとに、証人ごとに且つ筆跡および署名の鑑定ごとに、同一の判決によって任命された専門家により整理される。但し、忌避された場合は除く。
第一四条(一二一)
  判決は許容し得るものと宣告された攻撃防禦の方法および事実をも含むが、その他のいかなるものも証拠にはならない。
第一五条(一二二)
  偽造と記載された書類および鑑定の書類は、宣誓の後に専門家の手に交付される。専門家の報告は、一六六七年四月の王令の現場検証(descente sur les lieux)に関する第二一章一〇条の定めるところに従って、裁判官に引き渡される。
第一六条(一二三)
  被告人に不利な証拠があるときは、裁判官は専門家に対して、他の証人と同様に、各別にその報告を繰り返えされ、検真されまた対質されることを決定し且つ命じることができる。
第一七条(一二四)
  偽造の請求人が敗訴し(succomber)たときは、国王の法院に対しては三〇〇リーヴルの罰金、それに直属する裁判所に対しては一二〇リーヴルの罰金、およびその他の裁判所に対しては六〇リーヴルの罰金が言い渡され、その三分の二は国王または請求人が属する領主に、他は当事者に供されるが、その中から供託額(somme consigne´e) が控除され、必要な場合には裁判官はこれよりも多額の罰金を言い渡すことができる。

 第一〇章  決定、決定の執行および釈放について
  (Des De´crets, de leur exe´cution et des e´largissemens)

第一条(一二五)
  すべての決定(de´cret)は、国王の代訴官または領主の代訴官の論告(conclusion)にもとづいて下される。
第二条(一二六)
  犯罪、証拠および個人の性質に従って、当事者は尋問のために召喚され、自分で出頭しまたは逮捕されて呼び出されることが命じられる。
第三条(一二七)
  尋問のための召喚は、当事者が出頭しない場合は、本人呼び出し命令(de´cret d’ajournement personnel)に替えられる。
第四条(一二八)
  本人呼び出しは、民事事件における呼び出しの場合と同様に、場所的な距離に従って本人呼び出し命令に定められた期限内に被告人が出頭しないときは、逮捕命令に替えられる。
第五条(一二九)
  国王の法院の所長および裁判官(conseiller)の調書は、逮捕について発せられ得るが、国王のその他の裁判官(juge)の調書は、その立ち会い(assistans)が請求されてはじめて本人呼び出しのみについて発せられ得る。
第六条(一三〇)
  下級役人または執達吏の調書は、国王の法院の下級役人または執達吏のものでも、裁判不服従(re´bellion a` justice)の場合を除いては、本人呼び出しについてしか発せられ得ない。但し、調書が請求され且つそれが記録された後に、裁判官は、必要な場合は、逮捕を命じることができる。しかし、河川森林監督署(mai^trise de nos eaux et fore^ts)の慣用を改めることは一切望まない。河川森林監督署においては、森林監督官(verdier)、河川監督官(garde)および下級役人の調書は逮捕についてさえも発せられる。
第七条(一三一)
  尋問のための召喚命令を受けた者または本人呼び出しを命じられた者は、新たな証拠がないときまたは国王の法院の秘密決議(de´libe´ration secrette)により出頭と同時に逮捕されることが決定されないときは、囚人として逮捕されることはない。このことは他のいかなる裁判官によっても命じられることはない。
第八条(一三二)
  決闘の罪については単なる周知の事実(notorie´te´)だけで身柄の拘束が命じられるし、浮浪者に対しては国王の代訴官の告訴にもとづいて、また使用人の重罪、軽罪につては主人の告訴にもとづいて、身柄の拘束が命じられる。
第九条(一三三)
  現行犯としてまたは追跡の叫び声(clameur publique)で身柄を拘束された被告人が拘置された後、裁判官は、被告人を逮捕し収監することを命じ、収監は被告人自身に口頭で言い渡される。
第一〇条(一三四)
  尋問のための召喚命令は、裁判官および裁判所の吏員に対しては、停職をもたらすことはない。
第一一条(一三五)
  本人呼び出しまたは身柄の拘束の決定は、当然に停職をもたらす。
第一二条(一三六)
  すべての決定は、それが身柄の拘束の決定であっても、すべての上訴に関係なく、たとえば管轄権のないあるいは忌避された裁判官のものであっても、あるいはそれ以外のすべてのものでも、許可も執行命令書(pareatis)も求めることなしに執行される。
第一三条(一三七)
  その者の請求にもとづいて決定が執行される者は、執行がなされる場所に住居を選定しなければならない。但し、選定された住居の裁判官にはいかなる裁判管轄も割り当てられない。
第一四条(一三八)
  執達吏、下級役人、下級警察官および裁判所のなんらかの決定または命令を執行すべきその他の一般官は、自らに対して反抗、暴行または暴力がなされたときは、それぞれの調書を作成しなければならない。その調書は直ちに裁判官に届けられ、そこに備えつけられ、その複本は国王の代訴官長に送付さる。しかし、予審と判決が延引されることはない。
第一五条(一三九)
  すべての地方総監(gouverneur)、地方および都市(province et ville)の総代官(lieutenant ge´ne´ral)、バイイ、セネシャル、メール(maire)、参審人(e´chevin)に対して、裁判の決定および命令の執行に協力することを厳命する。さらに、憲兵司令官、副バイイ、副セネシャルおよびそれらの者の代行官ならびに下級警察官に対しても同様のことを厳命する。これに違反して拒否した者は、解職(radiation de leurs gages)とし、この場合は、裁判官、執達吏または下級役人によって調書が作成され、それが各自の管轄区域における国王の代訴官長に送付され、そこに保管される。
第一六条(一四〇)
  逮捕された被告人は、連行(conduite)中でない場合は個人の家(maison particulie`re)に拘禁されることはなく、直ちに監獄に連行されるものとする。奪取の危険があったときは、逮捕と連行の調書に記録され、憲兵司令官、執達吏または下級役人に対しては休職にし、国王に一〇〇〇リーヴルの罰金と当事者に損害賠償を支払うものとする。
第一七条(一四一)  すべての裁判官および一般官に対しては、悪評(scandale)もないのにいかなる当事者をも連行するよう命じることを禁止する。
第一八条(一四二)
  必要があるときは、その者の着衣(habit)の明示およびその他の充分な明示により、またそれについてなされる指示をして、未確認の者に対して逮捕令状を発することができる。
第一九条(一四三)
  定まった住所にいる者に対しては、体刑または名誉刑で処罰さるべき罪の場合を除いては、逮捕令状は発せられない。
第二〇条(一四四)
  普通裁判所の国王の代訴官は、各自その管轄地域において、毎年一月と七月に、その前の六月間における各自の裁判所の監獄について、刑事裁判官代理および代訴官自身により署名されている収監記録(e´crous)および拘禁更新(recommendations)の報告書(e´tat)を国王の代訴官長に送付しなければならない。その収監記録および拘禁更新は、終局判決がなされていないもので、そこに決定、収監記録および拘禁更新の日付、被告人の名前、あだ名、身分、住所および概略的に訴追の標題、手続の状態が記されているものとする。このために、すべての文書および収監記録は、書記と牢番(geolier)によって無料で交付され、報告書は伝達夫(messager)によって無料で運ばれる。これに違反したときは、書記および牢番は停職と一〇〇リーヴルの罰金を国王に支払うものとし、伝達夫に対しても同額の罰金とする。このことは、同様の刑罰をもって、その領主裁判所を管轄する裁判所の国王の代訴官に関して、領主裁判所の代訴官についても適用される。
第二一条(一四五)
  はじめから身柄拘束命令を出さないでよかった被告人は、その自白によりまたは新たな証人の供述により、被告人に不利な新たな証拠が出てこないときは、尋問の後釈放される。
第二二条(一四六)
  犯罪を理由とするいかなる囚人も、たとえ彼が自ら進んで監獄に入ったときでも、予審、尋問、国王の代訴官または領主の代訴官の論告および損害賠償請求人があるときはその反論または反論の催告が検討されなければ、国王の法院およびその他の裁判官によって釈放されることはできない。
第二三条(一四七)
  犯罪を理由とする囚人は、たとえ国王の代訴官または領主の代訴官および損害賠償請求人がそれに同意しても、裁判官によって命じられなければ、釈放されることはできない。
第二四条(一四八)
  被告人は、身体刑(peine afflictive)の宣告を受けまたは国王の代訴官または領主の代訴官が上訴をしたときは、たとえ損害賠償請求人が同意し、罰金、宗教上の罰金(aumo^ne)、補償(re´paration)が供託されても、判決後釈放されることはできない。

 第一一章 被告人の弁解または裁判出頭免除 事由について
(Des Excuses ou Exoines des accuse´s)

第一条(一四九)
  病気または負傷のため裁判に出頭できない被告人は、公証人立会いの下で作成された特別の委任状によってその弁解を提出しなければならない。その弁解には被告人が拘禁される市町村(la ville, bourg ou village)名、教区(paroisse)名、通り(rue)の名および家の名を記入しなければならない。
第二条(一五〇)
  委任状は、資格が認可された医師の報告書を添付しなければ受理されない。医師は、病気または負傷の性質と症候を申告し且つ被告人が生命の危険なしには道中できないことを申告し、その申告が真実である旨その場所の裁判官の前で医師の宣誓によって証明し、その調書が作成されて委任状に添付されなければならない。
第三条(一五一)
  裁判出頭免除事由(exoine)は国王の代訴官または領主の代訴官に提示され且つ損害賠償請求人があるときはこれに通知される。損害賠償請求人は、単なる文書にもとづいて裁判出頭免除事由が提出され受理される法廷にいなければならず、書類の運搬人は書類の提出のために特別に派遣されたことおよび被告人を見たことを宣言する必要はない。
第四条(一五二)
  裁判出頭免除事由の理由が正当と見なされたならば、国王の代訴官または領主の代訴官および当事者は、各別に、速やかに、裁判出頭免除事由の真実性または不真実性について通知することを命じられる。
第五条(一五三)
  通知のための期限がきれたら、提出されているものについての裁判出頭免除事由の異議申し立ては認められる。

 第一二章  仮払金の判決について
(Des Sentences de provisions)

第一条(一五四)
  裁判官は、必要な場合には、一方の当事者に、食料(alimens)および医薬品(me´dicamens)の必要を満たすために若干ドゥニエ(denier)を与えることができる。このことは、国王の代訴官または領主の代訴官の申し立てなしになされ得る。
第二条(一五五)
  同一の裁判官は、一方および他方の当事者の双方に仮払金(provision)を認めることはできない。これに違反したときは、その職務停止およびすべての訴訟費用、損害賠償が科せられる。
第三条(一五六)
  必要と判断されたときは、第一回目と第二回目の仮払金の間に少なくとも二週間あるときに限り、且つ当事者のいずれからもまた結果として生じるであろういかなる付随のものからもいかなる利益も受けることなく、第二回目の仮払金だけを与えることができる。
第四条(一五七)
  仮払金の判決は、それを与えた同一の裁判官によって、中止したり訴訟に合併したりすることはできない。これに違反したときは、同様の罰が科せられる。
第五条(一五八)
  仮払金として与えられた金銭は、裁判費用のためその他いかなる理由と口実のためにも差押えることはできないし、書記課またはその他に供託されることもできない。これに違反したときは、その供託は無効であり、これを受理した書記およびその下級官吏に対しては停職に処し、且つあらゆる差押えおよびいわゆる供託とは関係なく、有罪を言い渡された者は支払いを強制される。
第六条(一五九)
  仮払金の判決は、有罪を言い渡された者の財産の差押えと身柄の収監により、保証金なしに執行される。
第七条(一六〇)
  バイイ、セネシャルおよび明かに国王の法院の管轄に属するその他の裁判官によってなされた仮払金の判決で二〇〇リーヴルの金額を超えないもの、またはその他の国王裁判官によってなされた仮払金の判決で一二〇リーヴルの金額を超えないもの、また領主裁判所の裁判官によってなされた仮払金の判決で一〇〇リーヴルを超えないものは、上訴とは無関係に且つ上訴を妨げることなく執行される。
第八条(一六一)
  国王の法院は、証拠、取り調べ、医師および外科医の報告書を見ないで、且つすべてのことが国王の代訴官長に伝えられることなしに、仮払金の判決の執行を延期したり禁止したりすることはできない。禁止または延期は、それが上級裁判所の判決によって明らかに命じられるのでなければ、仮払金に対してはいかなる効力ももたず、この上級裁判所の判決に対して裁判官はいかなる謝礼も要求してはならない。

 第一三章  監獄、監獄の記録係、牢番および 獄吏について
(Des Prisons, Greffiers des geoles, Geoliers et Guichetiers)

第一条(一六二)
  監獄は安全であり且つ囚人の健康が監獄によって損なわれないように整えられていなければならない。
第二条(一六三)
  すべての監獄の守衛(concierge)および牢番は、下級官吏に頼ることなく自身で職務を遂行し、読み書きができなければならない。彼らがそれができないときは、六週間以内に他の者が任命されなければならない。これに違反したときは、領主に対してはその権利を剥奪する。
第三条(一六四)
  いかなる執達吏、下級役人、下級警察官または裁判所のその他の吏員も、監獄の記録係、監獄の守衛、牢番、獄吏となることはできない。これに違反したときは、国王への五〇〇リーヴルの罰金に処し、必要あるときは身体刑に処す。
第四条(一六五)
  牢番には、獄吏および牢番によって囚人の監視を担当させられたその他の者に対して相当の報酬を与えることを厳命する。
第五条(一六六)
  領主の監獄には監獄の記録係をおいてはならず、また国王の監獄にも新しくそれを設置してはならない。
第六条(一六七)
  監獄の記録係がいる所では記録係は、あるいは牢番および監獄の守衛は、綴じられて、整理番号が付された記録簿をおかなければならない。そのすべての頁は裁判官によって花押が書かれ、身柄の収監と拘禁更新、釈放と証拠のための二つの欄に分けられる。
第七条(一六八)
  前条の者は、さらに、整理番号を付され裁判官によって花押が書かれた別の登録簿を備えるものとする。そこには、囚人が差し押さえられた書類、身の回り品および家具を目録の形式で記入し、拘禁を実施した執達吏、下級警察官または下級役人はその調書を作成しなければならない。これには二名の証人を立て、彼らと共に調書に署名しなければならない。訴訟の証拠として役立ち得る書類、身の回り品および家具は、直ちに書記課に引き渡されなければならない。残余のものは、被告人に返還され、被告人は目録と調書に署名するものとする。そうでないときは、双方の上に、拒否の旨を記入するものとする。
第八条(一六九)
  記録係および牢番は、その登録簿にいかなる余白も残してはならない。
第九条(一七〇)
  記録係および牢番に対しては、現在入獄中でない者に収監記録を交付すること、および裁判官により整理番号が付され且つ花押が書かれた登録簿によらないで、紙片、帳面その他のものによって収監しまたは放免することを禁ずる。これに違反したときは、漕役刑(peine gale`re)に処す。
第一〇条(一七一)
  記録係および牢番に対しは、拘禁、拘禁更新または放免のために、いかなる手数料をとることも禁ずる。但し、それらのことについて交付する抄本に対してだけは、裁判官によって定められた手数料を受け取ることはできるが、その額を超過してはならない。即ち、国王のすべての法院および裁判所においては一〇ソルとし、領主の裁判所においてはその半額とする。しかし、この額以下の慣行がある所においては、増額することはできない。
第一一条(一七二)
  裁判官は、牢番、監獄の記録係および獄吏に属する食糧費(vivres)、日用品費(denre´es)、監獄の守衛に支払う囚人の保護監督のために手数料(gi^tes)、牢番に支払う入出獄の手数料(geolages)、釈放または放免の抄本の手数料を定め、それらの表または料金表を作成し、それを監獄の最も目につく、また最も衆目の届く場所におかなければならない。
第一二条(一七三)
  囚人の拘禁更新は、本人自身に口頭で且つ写しを与えて通知され、その拘禁更新を行なう執達吏の記録簿に記入されなければ、無効である。
第一三条(一七四)
  収監記録および拘禁更新記録には、収監や拘禁が執行されることになった判決(arre^ts, jugemens)およびその他の文書、囚人の名前、あだ名、身分およびそれらを作成させた当事者の名前等、ならびに監獄の所在地において囚人が自身で選んだ住所が記載される。これに違反したときは同様に無効である。拘禁の理由が複数あってもただ一回の収監だけがなされる。
第一四条(一七五)
  すべての牢番、記録係および獄吏に対して、また長老(doyen)とか牢名主(pre´vo^t)と呼ばれている入獄者の最古参者に対して、歓迎(bien−venue)という口実で、たとえそれが入獄者から自発的に提供されたものであっても、入獄者から金銭、食糧その他何物も要求することを禁じ、また入獄者の身の回り品を隠したり、彼らをいじめたり虐待したりすることを禁じる。これに違反したときは、見せしめの罰(exemplaire)に処す。
第一五条(一七六)
  牢番または監獄の記録係は、できるだけ速やかに、遅くとも二四時間以内に、国王の代訴官または領主の代訴官に、罪を犯した結果なされた収監記録および拘禁更新の写しを提出しなければならない。
第一六条(一七七)
  牢番および獄吏に対して、何人といえども罪を犯して拘禁中の囚人との連絡をその尋問以前に許可すること、および裁判官によって命じられたときは尋問の後であっても連絡を許可することを禁じる。
第一七条(一七八)
  独房(cachot)に拘禁されている囚人に対しては、いかなる連絡も許されないし、いかなる手紙またはメモを渡すことも許されない。
第一八条(一七九)
  囚人は、裁判官が命令しない限り、独房から出されない。裁判官が命令したときは、囚人は、直ちに且つ牢番や獄吏による引渡しがなくても独房から出され、いかなる手数料または報酬も、たとえそれが自発的に提供されたのであっても、受け取ることはできない。
第一九条(一八〇)
  牢番に対しては、借金(dettes)によるまたは犯罪による囚人を徘徊する(vaguer)ままにしておくことを禁ずる。これに違反しときは漕役刑に処す。また、裁判官が署名した命令書により命じられたときでなければ、囚人を独房に収容しまたは囚人の足に鉄鎖(fers)をつけることは禁じられる。これに違反したときは、見せしめの罰に処す。
第二〇条(一八一)
  男性の囚人と女性の囚人はそれぞれ別の部屋に収容される。
第二一条(一八二)
  牢番および獄吏に対しては、毎日少なくとも一回、独房に収容されている囚人を点検する(visiter)ことを厳命する。且つ、病気にかかった者については、監獄医師(me´decins et chirurgiens ordinaires des prisons)がいればその医師および外科医に診察して(visiter)もらうために、監獄医師がいないときは裁判官によって任命された者に診察してもらうために、また必要な場合には部屋に移すために、国王の代訴官または領主の代訴官に報告することを厳命する。回復後は、再び独房に収容される。
第二二条(一八三)
  牢番および獄吏は、囚人から食糧費、監獄の守衛に払う手数料および牢番に払う手数料のためのいかなる前払い(avances)も受け取ってはならず、また牢番および獄吏に支払われたすべてのものの領収書を渡さなければならない。
第二三条(一八四)
  債務者を逮捕させまたは拘禁更新させた債権者は、裁判官によってなされた査定に従い債務者に食糧費を提供しなければならず、且つ債権者の間に不服申し立てがないときは、判決後は民事の損害賠償のためだけに拘禁されている犯罪による囚人について行われるとされることが連帯して強制される。但し、訴訟費用支払い命令は、すべての債権者に優先して囚人の財産から返済されるべく、債権者および損害賠償請求人に交付される。
第二四条(一八五)
  囚人への食糧の供給が遅延している債権者に対して別々の日になされた二回の催告(sommation)にもとづき、且つ最後の催告から三日後に、裁判官は、現在の当事者または適法に呼び出された当事者にその釈放を命じることができる。
第二五条(一八六)
  犯罪を理由とする囚人は、損害賠償請求人によって食事を供給してもらえると期待することはできない。彼らには、法規にしたがって、牢番により、良い状態にあるパン、水および藁(paille)が供給される。
第二六条(一八七)
  国王の代訴官または領主の代訴官により囚人にパンを供給するように委任された者は、罰金を積み立てた金(fonds des amendes)で十分であればそこから返済を受け、それがないときは、国王領地の収入(revenue de nos domaines)から返済を受け、また国王の領地が抵当に入っているときは抵当権者はそれを強制され、その他の場合は、上級裁判権をもつ領主(seigneurs hauts−justiciers)、国王の領地の収税吏(receveurs)および徴税請負人(fermiers)、抵当権者および上級裁判権をもつ領主の収税吏や徴税請負人も、異議申し立てまたは上訴、いわゆる積立金不足、前払い金およびあらゆる差押えにかかわらず、それぞれ上のことを強制される。但し、次年度の収税吏の蓄えは留保し、徴税請負人に対しては彼らの賃借料は差し引くものとする。
第二七条(一八八)
  牢番は、教会によって禁止されている日には囚人に肉を売ることはできないし、また外部から肉が持ち込まれることを許すこともできないし、いわゆる改革宗教(R. P. R.)の日についても同様とする。但し、病気のとき医師の命令による場合は、この限りでない。
第二八条(一八九)
  独房に監禁されていない囚人は、牢番、居酒屋の主人(cabaretier)またはその他の者から買うことを強制されないで、外部から食糧、薪、木炭および必要とするあらゆる物を持ってこさせることができる。しかし、彼らに持ってこられた物は検査されるが、減らされたり傷められたりすることはない。
第二九条(一九〇)
  国王の法院の書記および領主裁判所の書記はすべて、無罪放免または釈放の判決(arre^ts, sentences et jugemens d’absolution ou d’e´largissement)を、それがなされたその日の内に、被告人に言い渡さなければならない。また二四時間以内に国王の代訴官または領主の代訴官による上訴がなされないときは、被告人を監獄から出し、そのことを牢獄の登録簿に記載しなければならない。罰金刑および金銭賠償のみを言い渡された者が、罰金、宗教上の罰金(aumo^nes)および損害賠償について認められた額を書記に供託したときも同様とする。裁判官への謝礼の支払いがないことまたは判決を引渡してもらえなかったことで、判決言い渡しまたは釈放が延期されることはない。これに違反したときは、書記は、停職、三〇〇リーヴルの罰金、訴訟費用、当事者の損害賠償に処される。但し、囚人が他の理由で拘禁されているときは、釈放されることはない。
第三〇条(一九一)
  牢番、監獄の記録係、獄吏および居酒屋の主人またはその他の者は、費用、食費、監獄の看守に支払う手数料、牢番に支払う手数料あるいはその他の費用を理由として、囚人の釈放を妨げることはできない。
第三一条(一九二)
  借金の故に拘禁されている囚人は、彼を逮捕させまたは拘禁更新させた当事者の同意により、公証人(notaire)の手続を経て、釈放される。この同意は、牢番または監獄の記録係に送達されるだけで、いかなる判決を得ることも必要ではない。
第三二条(一九三)
  前条の規定は、拘禁の原因となった金額を牢番または監獄の記録係に供託した者に対しても遵守される。そのことが命令される必要なしに、囚人は獄外に釈放されるものとする。
第三三条(一九四)
  監獄の記録係、国王の監獄の牢番または領主の監獄の牢番は、それが自発的に提供されたものであっても、供託のいかなる手数料も受け取ることはできない。供託された金銭は全額当事者に引き渡されるものとし、収入、供託、保管、謝礼、判決の費用および謄本、食費、監獄の守衛に支払う手数料、牢番に支払う手数料、その他囚人に要したあらゆる費用等に対する手数料という口実で、供託金からいかなるものも差し引いてはならない。これに違反したときは、公金横領(concussions)となる。
第三四条(一九五)
  刑事代理官およびその他のあらゆる裁判官に対して、上記の諸規定を遵守しおよび遵守させることを厳命する。国王により定められた形式をふまないで、いかなる釈放を命ずることも禁ずる。これに違反したときは、停職およびすべての費用の支払い、当事者への損害賠償に処される。
第三五条(一九六)
  国王の代訴官および領主の代訴官は、毎週一回その監獄を視察し、囚人の苦情(plainte)を聞かなければならない。
第三六条(一九七)
  監獄の記録係、牢番および獄吏は、同様に国王のこの規定を執行しなければならない。これに違反したときは、記録係に対しては停職および三〇〇リーヴルの罰金を科し、その半分は国王に他の半分は囚人の必要に供されるが、場合によりさらに増額されることがある。牢番および獄吏に対しては免職および三〇〇リーヴルの罰金を科して上記のように適用し、また身体刑を科す。
第三七条(一九八)
  裁判官に対しては、監獄の記録係、牢番、獄吏によってなされた不当徴収(exactions)、暴行、暴力、虐待およびこの規定に対する違反について取調べることを厳命し、その証拠は、たとえ各人が異なった且つ別個の事実を供述した場合でも、また彼らがそれに利害関係を有した場合であっても、六人の証人があれば完全なものとする。
第三八条(一九九)
  仮獄舎(prisons emprunte´es)に入れられている囚人は、できるだけ速やかに移監されるものとする。
第三九条(二〇〇)
  領主の監獄の農地の賃貸借(baux a` ferme)は、その管轄地における国王の裁判官の面前で行なわれる。裁判官は、賦課租(redevance)の年額を査定し、その賦課租は領主によってその額を超ることはできないし、また他の者に賃貸し(affermer)されない。これに違反したときは、彼らは上級裁判権(roit de haute justice)を完全に喪失するものとする。

第一四章  被告人の尋問について
(Des Interrogatoires des accuse´s)

第一条(二〇一)
  犯罪を理由とする被告人(prisonnier)は、できるだけ速やかに尋問される。尋問は、遅くとも拘禁後二四時間以内に開始されなければならない。これに違反したときは、尋問をしなければならない裁判官に対しては、すべての訴訟費用と損害賠償の支払いを科す。またその裁判官が尋問を行うことができないときは、他の者が、名簿の順に従って、尋問を行なうものとする。
第二条(二〇二)
  裁判官は、自身で、尋問を行わなければなければならない。尋問は、いかなる場合にも、書記によって行われてはならない。これに違反したときは、その尋問は無効とし、裁判官および書記は停職に処され、且つそれぞれに対して国王へ五〇〇リーヴルの罰金を科し、彼らはその罰金を免除されることはできない。
第三条(二〇三)
  国王の代訴官、領主の代訴官および損害賠償請求人は、予審によって記載された事項およびその他の事項について、裁判官がそれを利用し、告知するように、被告人尋問のために裁判官に趣意書(me´moires)を提出することができる。
第四条(二〇四)
  尋問は、裁判がなされる場所で、評議部(chambre du conseil)または牢獄の部屋(chambre de la geole)において行なわれる。裁判官がその自宅で尋問をなすことは禁じられる。
第五条(二〇五)
  しかし、現行犯逮捕された被告人(accuse´)は、適当だと判断される最初の場所で尋問され得る。
第六条(二〇六)
  さらに、被告人が複数の場合でも、裁判官および書記以外の者の立会いなしに、各別に尋問されるものとする。
第七条(二〇七)
  被告人は尋問に先立って宣誓をなし且つそのことが記録にとられる。これに違反したときは無効とする。
第八条(二〇八)
  被告人は、いかなる身分の者でも、対質の後であっても、また反対の慣行があっても、彼らに与えられてはならない補佐人の協力なしに、自分の口で答えなければならない。もし、公金詐取(pe´culat)、公金横領、詐欺破産(banqueroute frauduleuse)、財務または銀行業務の雇い人または会員(commis ou associe´s)の盗み、書類の詐称(faussete´ de pie`ce)、出産偽称(supposition de part)の罪、および当人の地位が問題となり、その者に対しては裁判官が必要なときには被告人は尋問の後補佐人またはその雇い人と交通することを命じることができるその他の罪でさえなければ、反対の慣行は廃止される。判決に先立って、手続に無効がないか否かを検討することは、裁判官の義務で且つ神聖な義務に委ねられるものとする。
第九条(二〇九)
  裁判官は、犯罪が死罪でない場合は、尋問の後、被告人が自分にとって良いと思われる者と相談することを許可することができる。
第一〇条(二一〇)
  証拠として役立つ衣類、家具および書類は、尋問に際して被告人に提示され、文書および証拠書類は裁判官および被告人によって花押が書かれる。そうでない場合は、拒否の理由が記載されなければならない。尋問は、衣類、家具および書類に基因する事実と帰結について続行され、被告人は、前記第八条に定められた場合以外ならば、尋問がなされた後にも、本件について他の通告が与えられることなしに、直ちにそのことに返答しなければならない。
第一一条(二一一)
  被告人がフランス語を理解できないときは、専任の通訳(interpre`te ordinaire)が、または専任の通訳がいないときは裁判官が職権で任命した者が、宣誓をした後、裁判官によってなされる尋問を被告人に説明し、被告人の答弁を裁判官に説明し、そのすべてをフランス語で書き留め、これに裁判官、通訳および被告人が署名する。そうでない場合は、拒否の旨記録されなければならない。
第一二条(二一二)
  尋問の原本にはいかなる削除も行間への書き込みもしてはならない。被告人がなんらかの変更をしたときは、尋問調書の続きにそのことを記録しなければならない。
第一三条(二一三)
  尋問調書は、各開廷期の終わりに、被告人に読み聞かせ、各頁に整理番号を付して花押が書かれ、裁判官によりまた被告人が望みまたは署名できるときは被告人によっても署名される。そうでない場合は、拒否の旨記録されなければならない。これに違反したときは、すべてを無効とし、裁判官に対しては全訴訟費用と損害賠償を科す。
第一四条(二一四)
  国王のパリ上座裁判所の親任官は、現行犯逮捕された被告人、雇主によって告発された使用人および本人呼び出し命令のあった者についてのみ、最初に尋問することができる。
第一五条(二一五)
  尋問は、それが要求されるたびごとに反復され、各尋問は各別の書面に書き取られる。
第一六条(二一六)
  国王の裁判官および領主の裁判官は、尋問のためまたは被告人(prisonnier)によって申し立てられた他のいかなる手数料のためにも、被告人からいかなる物も要求し、受取り、前取りしてはならない。但し、損害賠償請求人があるときは、その者に手数料を支払わせるのはこの限りではない。
第一七条(二一七)
  尋問は、国王の代訴官または領主の代訴官により手数料を要求するためまたは彼らが告知することを要求するために、直ちにそれらの代訴官に伝えられなければならない。
第一八条(二一八)
  尋問は、すべての罪について、損害賠償請求人にも伝えられなければならない。
第一九条(二一九)
  身体刑に当たらない罪の被告人は、尋問を受けた後、職権により手数料を要求することができる。
第二〇条(二二〇)
  国王の代訴官または領主の代訴官および損害賠償請求人が尋問によって手数料を受け取ることが許されているときおよび被告人が職権によって手数料を受け取ることが許されているときは、損害賠償請求人は要求を含んだ申請を出すことができ、被告人は命じられた期限内に返答することができる。この期限を経過した後は、たとえ申請または返答が提出されないでも、判決手続が進められる。
第二一条(二二一)
  もし第一審の裁判官の立会いの下における国王の代訴官または領主の代訴官の論告、および国王の法院における上訴のもとになった判決、または国王の代訴官の論告が、身体刑の言い渡しを含むときは、被告人は尋問台(selette)の上で尋問される。
第二二条(二二二)
  その場所の裁判官の立会いの下に尋問台でなされた尋問は、上訴がなされた場合は、訴訟と共に国王の法院に送られなければならない。これに違反したときは、書記に対して一〇〇リーヴルの罰金を科す。
第二三条(二二三)
  財産管理人(curateur)および通訳は、たとえ論告および判決が被告人に対して身体刑を含むときでも、弁護士席(barreau)の後ろで尋問されるものとする。

 第一五章  証人の検真および対質について
(Des Re´colemens et Confrontations des te´moins)

第一条(二二四)
  訴追が予審されるべきときは、裁判官は予審において尋問された証人およびさらに尋問されることができる他の者に、その供述について検真することを命じ、必要な場合には被告人との対質を命じ、このために、その場所の距離、人物および事件の性質を考慮して、権限を有する期限内に召喚されることを命じる。
第二条(二二五)
  欠席した証人(te´moins de´faillans)は、最初の欠席で罰金を言い渡される。欠席判決の場合は、裁判官により命じられたところに従い、身柄を拘束されるものとする。
第三条(二二六)
  判決によって命じられない限り、証人の検真は行われ得ない。但し、証人が高齢者、病人、虚弱者、旅行に出かける用意ができているときまたはその他の緊急を要する要件のあるときは、検真を命じる判決がなされる前に、証人は繰り返し呼び出されることがある。欠席被告人に対する検真のための証人の反復呼び出しは、欠席被告人の欠席判決によって命じられた後でなければ効力がない。
第四条(二二七)
  証人は、国王の法院の裁判官(conseillers de nos cours)の内の一人によって尋問されたとしても、また検真がその一人の面前でなされるべきものとはいえ、検真されることがある。
第五条(二二八)
  証人は各別に検真され、且つ宣誓とその供述の読み聞かせの後、供述に追加または削除をするか否かを表明するように促され、それを強く希望するならば、証人が追加または削除を望むことを書留めなければならない。検真の読み聞かせが証人になされたときは、証人が署名できるかまたは署名を望むときは、裁判官と証人による花押と署名が全頁になされる。そうでない場合は、証人が拒否した旨記載されなければならない。
第六条(二二九)
  検真は、被告人が不在の間になされまた訴訟が数回にわたって予審されまたは複数の被告人があるときでも、繰り返してなされない。
第七条(二三〇)
  証人の検真は、その他の手続とは別の帳簿に記載されるものとする。
第八条(二三一)
  証人が検真されまた対質されることが命じられたときでも、対質させられなかった証人の供述は、被告人が欠席の間に証人が死亡しなかったときは、証拠とはなり得ない。
第九条(二三二)
  身体刑が科せられる犯罪の場合は、証人の供述が相当重要な証拠となるならば、裁判官はまだなされていない証人の検真および対質を命じることができる。
第一〇条(二三三)
  訴訟の点検においては、被告人側の証人で検真も対質もなされていない証人であっても、裁判官がそれを考慮するために、その証人の供述が朗読される。
第一一条(二三四)
  検真以降その供述を取消しまたは本質的な事情について供述を変更する証人は、虚偽の証人(faux te´moins)として訴追され且つ処罰される。
第一二条(二三五)
  はじめから逮捕命令が出ている被告人は、対質の期間中監獄に入れられ、手続にそのことを記入するものとする。それが国王の法院による上訴判決においてのみのときは、別の命令がなされる。
第一三条(二三六)
  対質は各別の帳簿に記入されるものとする。各対質は個々に、各頁ごとに、裁判官および署名することができ且つそれを望むときは被告人および証人が花押を書き署名をする。そうでない場合は、彼らが拒否した理由を記入しなければならない。
第一四条(二三七)
  証人の対質を実施するためには、被告人が召喚され、お互いの面前で証人および被告人の宣誓がなされた後、裁判官は、彼らが相互に知り合っているかどうかを述べるように促す。
第一五条(二三八)
  続いて、証人の供述の最初の部分が被告人に読み上げられる。そこに記されている事項は、証人の氏名、年齢、身分および住所、彼が当事者と知り合っている関係および彼がそれらの血族または姻族かどうかである。
第一六条(二三九)
  次いで、被告人が証人に対して異議を述べることがあれば直ちに異議を述べるように裁判官によって促され、異議がないときは、その供述の読み聞かせを聴いた後はもはやそれを認められないことが通知され、その旨記載される。
第一七条(二四〇)
  証人は異議が真実か否をか尋ねられ、証人および被告人が述べたことは書き留められる。
第一八条(二四一)
  被告人が異議を述べるかまたは異議を述べない旨を宣言した後、証人の供述と検真の読み聞かせが被告人に対してなされ、それが真実か否かまた被告人が供述や検真において述べられている通りの者であるかどうか宣言するよう促され、被告人および証人の述べたことは同様に文書に書き留められる。
第一九条(二四二)
  被告人は、証人の供述の読み聞かせを聴いた後は、証人に対して異議を述べることは認められない。
第二〇条(二四三)
  但し、その異議が文書によって証明されているときは、訴訟の状態がいかなるときでも異議を申し述べることができる。
第二一条(二四四)
  裁判官は、予審以降証人によってなされた表明(de´claration)で、その表明が無効だと宣告されるものを斟酌することを禁じられる。これらの表明は訴訟から排除されるものとする。但し、それをなした証人およびそれを生ぜしめた当事者には、各自国王への四〇〇リーヴルの罰金を科し、必要な場合にはさらに重い他の刑罰を科す。
第二二条(二四五)
  被告人が証人の供述の中に事実を解明しまた自己の無実を証明することができる矛盾や事情を指摘するときは、被告人は、証人にそれを承認させるために証人の尋問を裁判官に請求することができる。但し、自ら証人に質問することはできない。指摘、質問、承認および答弁もまた書面で作成される。
第二三条(二四六)
  上記のすべてのことは、複数の被告人相互の間の対質においても行なわれるものとする。
第二四条(二四七)
  手続になんらかの無効があって、証人が再度尋問されることが命じられまたは改めて訴訟がなされることが命じられたときは、その原因を作った裁判官は、それを引き起こした費用およびその手続を行なった者の報酬ならびに全当事者の損害賠償の支払いを言い渡される。

 第一六章  免刑状、赦免状、出廷するための許し状、王侯の発する追放赦免状、苦役船労働の赦免状、減刑状、復権状および再審状について
(Des Lettres d’abolition, re´mission, pardon, pour ester a` droit, rappel de ban ou de gale`res, commutation de peine, re´habili−tation et re´vision de proce`s)

第一条(二四八)
  国王の法院および他の裁判官に対し、それらの法院および裁判官に宛てられた免刑状(lettre d’abolition)が証拠および取り調べに合致している限り、それを常に有効と認めることを命じる。但し、国王の法院は国王に、他の裁判官は国王の大法官(chancelier)に、罪の残虐性(atrocite´)について発見したことを提出することができる。
第二条(二四九)
  赦免状(lettre de re´mission)は過失の殺人罪(homicide involontaire)のみに認められ、または生命についての正当防衛(le´gitime de´fense)の必要からなされた殺人のみに認められる。
第三条(二五〇)
  許し状(lettre de pardon)は、死刑にはならずしかし宥恕されない場合に、国璽を押される。
第四条(二五一)
  いかなる免刑状も、決闘(duel)、計画的な殺人(assassinat pre´me´dite´)については、主犯(principal auteur)またはこれを幇助した者に対しても与えられることはなく、喧嘩の復讐をする(venger leurs querelles)ためまたはその他のためであれそれらがいかなる原因または口実のもとになされたかを問わない。また殺人をし、侮辱し、暴行を加えまたは犯罪による囚人を裁判所から奪取するために、金銭その他のものと引き換えに雇われまたは引き受ける者に対しても与えられない。またそれを行うためにそれらの者を雇いまたは唆した者に対しても与えられず、たとえそれを陰謀(machination)し企図(attentat)しただけであっても、暴力によって犯された誘拐罪(crime de rapt)についてはその結果が実現しなくても、与えられない。また裁判官または執達吏および裁判所のなんらかの文書を執行し、作成しまたは仕上げる下級役人のいずれかに対して暴行を加えたまたは侮辱した者にも与えられない。上記の場合に、なんらかの免刑状または赦免状が交付されたときは、国王の法院は国王にそれについて意見を申し述べることができ、国王のその他の裁判官はそのことに関して自己の判断するところを国王の大法官に提出することができる。
第五条(二五二)
  免刑状、五年間の欠席の後に出廷するための許し状、王侯の発する追放赦免状、苦役船労働の赦免状、減刑状、受刑者の財産と名誉の復権状および再審状は、国王の大法官府(grande chancellerie)においてのみ国璽が押される。
第六条(二五三)
  有罪の判決(l’arre^t ou le jugement de condamnation)は、王侯の発する追放赦免状、苦役船労働の赦免状、減刑状または復権状の紋章印(contre−scel)のもとに添付される。それがないときは、赦免状等を受けた者(impe´trans)はそれらの赦免状を利用することはできず、且つ裁判官はそれを考慮することを禁じられる。
第七条(二五四)
  国王の裁判官および国王の法院に対して、それらの裁判官および法院に宛てられた王侯の発する追放赦免状、苦役船労働の赦免状、減刑状または復権状が証拠と取り調べに合致しているかどうかを調べることなしに、それらの有効性を認めることを厳命する。但し、そのことに関して国王の法院が適当と判断したことを国王の法院により国王に提出することはこの限りでない。
第八条(二五五)
  再審状を手に入れるためには、有罪判決を受けた者は、申請書によりその状況と共に事実を陳述しなければならない。その申請書は、国王の顧問会議(conseil)に提出され、且つ適当と判断されたときはその意見を求めるために、王宮の審査委員(mai^tre des reque^tes de notre ho^tel)に送付され、さらに顧問会議に還付されるものとする。再審状が正当であるときは、顧問会議の判決により再審状が交付され国璽が押されることが命じられる。その結果、再審状は尚書局秘書官(secre´taire de nos commandemens)により署名される。
第九条(二五六)
  王宮の審査委員の意見および国王の顧問会議の判決は、再審状の紋章印のもとに添付され、訴訟が裁判された法院に宛てられる。
第一〇条(二五七)
  当事者は、再審状が送付される裁判官に対して、新たな証拠を提出することができる。この証拠は請求に添付され、当事者にはその写しが交付される。すべての証拠は請求によってこれに答えることになるが、その請求の写しも命じられた期間内に交付されるものとする。その期間が経過した後に、且つすべての書類が国王の代訴官に伝達された後に、提出されたことに関して再審状の判断がなされる。
第一一条(二五八)
  貴族によって得られた赦免状、出廷するための許し状、王侯の発する追放赦免状、苦役船労働の赦免状、減刑状、復権状および再審状は、そこにその姓名、身分を明示しなければならない。これに違反したときは無効とする。
第一二条(二五九)
  貴族によって得られた赦免状等は、それぞれの裁判管轄と事件の性質により、国王の法院だけにしか差し出されない。但し、損害賠償請求人がそれを要求し、国王の法院が適当と判断したしたときは、国王の法院は、直ちに予審をその場所に移送することができる。
第一三条(二六〇)
  自由人身分の者(personne de qualite´ roturie`re)によって得られた赦免状等の宛て先は、上座裁判所がおかれている場所のバイイまたはセネシャルとする。上座裁判所がおかれていない地方においては、宛先は他の者ではなく明らかに国王の法院の管轄に属する裁判官とする。これに違反したときは、判決は無効とする。
第一四条(二六一)
  しかし、貴族によって得られた赦免状等は、上座裁判所の管轄がそこで判断されたときは、上座裁判所に宛てられてもよい。
第一五条(二六二)
  免刑状、赦免状、出廷するための許し状および王侯の発する追放赦免状は、それを得た者が実際に入獄者でなく且つ収監されていないときは、その者により提出されることはできない。収監者記録がそれらの赦免状等に添付され、収監者は全予審の期間中赦免状等の終局判決まで獄中にいることが強制される。すべての裁判官は、保釈金その他により収監者を釈放することが禁じられる。これに違反したときは、その職務は停止処分にされ、且つ被告人に対して言い渡される宣告刑を彼等によって支払わせるものとする。
第一六条(二六三)
  赦免状等は取得の日から三月以内に提出されるべきものとする。それを過ぎたものについては、裁判官がこれを考慮することを禁じる。赦免状等の取得者は、新たにそれを取得することはできず、また経過した期間を回復することもできない。
第一七条(二六四)
  赦免状等の取得およびその伝達は、赦免状等の宛先となっている裁判官の監獄において被告人が拘禁の状態となるまで、決定の執行、予審、判決および欠席判決の執行を妨げることはできない。
第一八条(二六五)
  被告人に不利な証拠、取り調べおよびその他のすべての訴訟書類、赦免状等の取得以降になされた手続は、その宛先である裁判官の書記に直ちに伝達されなければならない。このことは、再審状についてもなされることを要する。
第一九条(二六六)
  赦免状等および裁判官の命令による召喚とともに与えられた写しは、損害賠償請求人が反対の抗弁を提出し且つ確認にとりかかるために、損害賠償請求人に伝達される。また一六六七年四月の王令により定められた形式と期限は、署名し適法に通達された文書によって損害賠償請求人が最終期限前に手続することに同意するのでなければ、遵守されるものとする。
第二〇条(二六七)
  赦免状等が訴訟全体とまとめて国王の代訴官に伝達されなければ、赦免状等の判決の手続は行われ得ない。
第二一条(二六八)
  免刑状、赦免状および許し状の請求人は、頭に被り物を着用しないで(te^te nue)且つ跪いて(a´ genoux)、それらの書状を法廷に提出しなければならず、それらの書状が請求人の面前で読み上げられた後に、書状の内容が真実であること、その書状を取得するために税を支払ったことおよびその書状を役立てようと望んでいることを主張する。その後に、書状の請求人は監獄に送り返される。
第二二条(二六九)
  国王の代訴官およびもし損害賠償請求人がいるときはその者も、赦免状および許し状が提出されたときであっても、追加して取り調べをすることができ、証人を検真させこれと対質させることができる。
第二三条(二七〇)
  刑事裁判官代理および他のすべての裁判官、書記および執達吏に対して、赦免状等に添えられた実施命令書、赦免状の朗読または交付のため、または赦免状取得者を法廷に入れまたは入れさせるために、たとえそれが自発的に彼らに提供されたときでも、またそれがいかなる口実であっても、いかなるものをも要求しまた受け取ることは禁じられる。これに違反したときは、公金横領の罪に処せられ且つ四倍額の返還が命じられる。
第二四条(二七一)
  赦免状等の請求人は、証拠および取り調べの結果もたらされた事項について、訴訟報告官により獄中で尋問される。
第二五条(二七二)
  すべての裁判官および国王の法院に対してさえも、すべての取り調べおよび証拠が国王の代訴官に持参され、伝達され、また裁判官によって検討され審査されるまでは、たとえ書記に対してそれを持参するために督促がなされたり、赦免状等の請求者が明白に証明できる請求があった場合でも、赦免状等の認可を行うことは禁じられる。但し、執行状を発行することまたは遅延の責ある書記に対してその他の刑罰を決定することはこの限りではない。
第二六条(二七三)
  赦免状等の取得者は、判決の前に部屋の中で尋問台の上で尋問され、尋問調書は書記により書類に作成され、上訴の場合には訴訟と共に国王の法院に送達されるものとする。
第二七条(二七四)
  赦免状および許し状が、赦免できない場合に取得されたときまたは証拠に合致しないときは、取得者は赦免状等を却下される。
第二八条(二七五)
  敗訴した再審状の取得者は、国王に対する三〇〇リーブルの罰金および当事者に対する一五〇リーブルの罰金を支払うことが言い渡される。

 第一七章  欠席および欠席判決について
(Des De´fauts et Contumaces)

第一条(二七六)
  逮捕状が被告人に対して執行できないときは、被告人の家宅捜索(perquisition)がなされ、その財産は差し押さえられ、財産目録が作成され(annote´s)るものとする。但し、これを理由として、いかなる判決もなされることはない。
第二条(二七七)
  被告人が訴訟の予審が行われる場所に住所または居所をもっているときは、家宅捜索は被告人の通常の住所またはその居所において行われ、家宅捜索の調書の写しが残される。
第三条(二七八)
  被告人が裁判の行われる場所に住所をもたずまたは居住していないときは、令状の写しが法廷の入り口に貼り出される。
第四条(二七九)
  被告人の動産の差し押さえは、一六六七年四月の王令の「差し押さえおよび執行について(des Saisies et Exe´cutions)」の章に定められた方法で行われる。
第五条(二八〇)
  不動産の果実は差し押さえられ、供託物保管者(se´questre)および親任官について王令の定める手続により、その果実を保管するために親任官が任命される。
第六条(二八一)
  すべての裁判官に対して、徴税請負人の親族または使用人、押収物が帰属する国王財産の収税吏または領主を、保管人または親任官として任命することは禁じられる。
第七条(二八二)
  被告人が裁判の行われる場所に住所を有しまたは居住しているときは、被告人は二週間以内に出廷するよう召喚される。そうでないときは召喚状が法廷の入り口に貼り出される。
第八条(二八三)
  被告人が二週間以内に出廷しないときは、一回だけの行政官の口頭の布告(cri public)により一週間以内に召喚される。但し、召喚の日および最終日は猶予期間には含まれない。
第九条(二八四)
  口頭の布告は、慣行にしたがってラッパの音(son de trompe)で、公の広場および裁判所の入り口で行われ、被告人の住所または居所があるときはそこでも行われる。
第一〇条(二八五)
  被告人が監獄に向けての国王の顧問会議もしくは大法院の追求を受けまたはその訴訟の予審が行われる裁判所の場所に居りまたは移送される裁判所の道にあって出頭しないときは、被告人は、法廷の入り口で一回だけなされる布告によって召喚され、その布告の調書が同一の場所に貼り出され、訴訟の予審と判決に関するその他のことについては他の手続なしに処理される。
第一一条(二八六)
  裁判官に対しては上記以外の召喚または布告を命じることを禁止する。これに違反したときは、停職および当事者に対する損害賠償に処する。
第一二条(二八七)
  召喚の期限後、手続は国王の代訴官または領主の代訴官の代訴官局(parquet)で再開され、そこでその代訴官の論告がなされる。
第一三条(二八八)
  手続が有効になされたときは、裁判官は証人達がそれぞれの証言について検真され且つその検真が対質に値することを命じる。
第一四条(二八九)
  検真の後、訴訟は改めて国王の代訴官または領主の代訴官に伝達され、代訴官はその最終論告を行う。
第一五条(二九〇)
  同一の判決は、十分に予審を行った欠席判決を宣告し、その利益を認容し、被告人の有罪判決を含む。その判決においては、「もし捕らえられ、逮捕されるならば(Si pris et appre´hende´ peut e^tre)」という決まり文句を挿入することを禁止し、その文句の使用を廃止する。
第一六条(二九一)
  自然死(mort naturelle)の有罪判決だけは人ヒト形カタ(effigie)により執行され、漕役刑、加辱刑、永久追放刑、烙印刑(fle´trissure)および鞭打ちの刑(fouet)は単に立て札に書かれるだけで人形はない。人形も立て札と同様に公の広場に貼り出される。欠席判決によるその他のあらゆる有罪の言い渡しは、有罪判決の言い渡しを受けた者が裁判所の場所に住所または居所を有するときはその住所または居所に通達され、写しが渡される。但し、これができないときは、法廷の入り口に貼り出される。
第一七条(二九二)
  執行の調書は、書記だけが署名して判決文の下部に付される。
第一八条(二九三)
  欠席被告人が囚人として逮捕されたときまたは判決の後もしくは五年経過してからでも彼を有罪とした裁判官の監獄に再び現れたときは、欠席または欠席判決は、本王令により無効となる。この場合、判決の必要はないしまたは欠席判決の宣告を上訴する必要もない。
第一九条(二九四)
  欠席判決の費用は、本王令により査定された後、被告人によって支払われるものとする。但し、支払いのないときも、訴訟の予審および判決に対して猶予されることはない。
第二〇条(二九五)
  次いで、たとえ検真が対質に値すると命じられていても、尋問が行われ、証人の対質が進められる。
第二一条(二九六)
  検真の前に死亡した証人の供述は排除され、また証人が無実の証明をしていないときは、訴訟の点検に際して読み上げられることもない。無実を証明しているときは、供述は読み上げられる。
第二二条(二九七)
  検真された証人が欠席判決の途中に死亡しまたは民事死亡したときは、その供述は存続し且つ証人の対質について定められた形式にしたがって被告人に対してその文字による対質がなされる。この場合、証人が書類によって正当化されていないときは、裁判官は非難に対して何らの考慮を払うべきではない。
第二三条(二九八)
  同様の処置は、長期間の不在、漕役刑もしくは有期の追放刑の言渡し、または欠席判決の期間中のその他の正当な支障により、対質されることができない証人に関しても行われる。
第二四条(二九九)
  被告人が尋問以降監獄から脱走し(s’e´vader)ているときは、呼び出しもなされないしまた行政官の口頭の布告もなされない。但し、裁判官は証人が尋問され、尋問された証人は検真され、検真は対質に値することを命じる。
第二五条(三〇〇)
  脱獄(bris des prisons)の罪に問われている被告人に対しても、欠席および欠席判決により、訴訟が行われる。
第二六条(三〇一)
  有罪判決の言い渡しを受けた者が再び現れたときまたは欠席判決の執行の年に監獄に入れられたときは、その者の動産および不動産の差し押さえの解除がなされる。且つその者の動産の売却により得られた代金は、彼に言い渡されるべき罰金を供託し、諸費用が差し引かれた上、彼に返却される。
第二七条(三〇二)
  すべての裁判官、書記、執達吏、下級警察官またはその他の裁判所の吏員に対して、自分の住居および書記課に、有罪判決の言い渡しを受けた者(condamne´s)もしくは財産の差し押さえ命令(decret)しかない者に属するいかなる金銭、動産、衣類または果実を持ち込んだりまた持ち込ませたりすることを禁じる。またその名においてもしくはいかなる口実であってもその名を介在させて、それらのものの落札者になることを禁じる。これに違反したときは、停職および二倍の価格の処分を科す。
第二八条(三〇三)
  有罪判決の言い渡しを受けた者が欠席判決の執行後五年を経ても出頭しないときまたは入獄しないときは、金銭上の処罰、罰金および没収は対審による(contradictoire)ものとみされ且つ判決(arre^t)によって命じられたものとしての効力をもつ。但し、出廷するためにそれらを受け取りまた身の証をたてるために国王の書状を許可する権限は留保される。またもし判決が行われることになったら無罪放免(absolution)をもたらしまたは没収がなされないときは、彼らから没収された動産および不動産は原状のままで彼らに返還される。但し、罰金、民事の損害賠償(inte´re^ts civils)および不動産の果実の返却を主張することはできない。
第二九条(三〇四)
  欠席判決により死刑、終身漕役刑または王国からの永久追放の言い渡しを受けた者で、五年経過するまで出頭せずまたは入獄せずに死亡した者は、欠席判決の執行の日に民事死亡したものとみなされる。
第三〇条(三〇五)
  国王財産の収税吏、領主または没収財産が帰属するその他の者は、有罪の言い渡しを受けた者の財産から生じる果実および収益を、債務を負っている小作人および親任官の手から五年間は徴収することができる。但し、それらのものを自己の所有としまた自分の手で享受することは禁じられる。これに違反したときは、四倍額の処罰が適用され、その半分は国王に、他の半分はその土地の貧しい人々および諸費用ならびに当事者の損害賠償に供される。
第三一条(三〇六)
  欠席判決から五年間は、国王に帰属することになった没収財産のいかなる贈与(don)もしないものとする。このことは同様に、上級裁判権をもつ領主に対しても禁止される。国王から得られまたは領主によって与えられたものはすべて無効であることを宣言する。但し、不動産から生じる果実だけはこの限りでない。
第三二条(三〇七)
  五年の期間が過ぎた後は、没収財産が帰属する国王財産の収税吏、受贈者および領主は、それらのものを自己の所有とする許可を得るために、およびその後完全な所有権を享受する動産の性質と価格ならびに不動産の状態について調書を作らせる前に上訴をしなければならない。これに違反したときは、受贈者および領主は彼等の権利を失い、それはその土地の貧しい人々に与えられる。また国王財産の収税吏に対しては、一万リーブルの罰金が科せられ、その半分は国王に他の半分はその土地の貧しい人々に与えられる。

 第一八章 唖者、聾者および答弁を拒む者について
(Des Muets et Sourds, et de ceuxqui refusent de re´pondre)

第一条(三〇八)
  被告人が唖者(muet)であるかまたは聞くことができないほどの聾者(sourd)であるときは、裁判官は職権により被告人に読み書きのできる財産管理人(curateur)を任命する。
第二条(三〇九)
  財産管理人は、被告人を十分に且つ忠実に防禦する旨宣誓するもとし、それは記録に採られる。これに違反したときは無効とする。
第三条(三一〇)
  財産管理人は、身ぶり(signe)またはその他の方法で秘密に被告人と教え合う(s’instruire)ことができる。
第四条(三一一)
  書くことができる唖者または聾者は、証人に対するすべての答弁、発言および異議を書き且つ署名することができる。それらはさらに財産管理人により署名される。
第五条(三一二)
  唖者または聾者が書くことおよび署名することができないかまたはそれを望まないときは、財産管理人は、被告人の面前で、答弁し、証人に対する異議を提出し、また被告人がなすことができたと同様のすべての行為をなすことが認められる。被告人に対してなされる最終尋問、論告または判決のときは、いくらかの留保つきで、裁判官の面前で財産管理人が起立し脱帽するのと同一の形式が遵守されるものとする。
第六条(三一三)
  被告人が唖者もしくは聾者または唖者で聾者のときは、手続の全書類は財産管理人の同席について記述しておかなければならない。これに違反したときは無効となり、且つ裁判官に対しては費用および当事者の損害賠償が科せられる。但し、終局判決の主文には被告人の記述しかない。
第七条(三一四)
  答弁できるのに答弁を望まない被告人には、財産管理人は付けられない。
第八条(三一五)
  裁判官は、答弁できるのに答弁を望まない被告人に対し、即座に答弁すべき三つの尋問をし、その各々について、別の方法によるならば彼の訴訟は故意による唖者に対するのと同様に行われること、およびそれ以後はその面前でなされたことについて、被告人が答弁を拒む間は、答弁することがもはや許されないことを宣言する。但し、裁判官は、適当だと認めたときには、答弁のための期間を与えることができるが、その期間は二四時間を超えることはできない。
第九条(三一六)
  被告人があくまでも答弁を拒むときは、裁判官は、それを命令する必要なしに、その訴訟の予審を継続する。また被告人の面前で行われた尋問およびその他の手続の各項目において、被告人が答弁を望まなかったことが記録されるものとする。これに違反したときは、そのことが記録されていない文書は無効とし、且つ裁判官に対しては費用および当事者の損害賠償が科せられる。
第一〇条(三一七)
  手続の後に被告人が答弁することを望んだときは、その答弁までになされたことはそのまま存続し、被告人が異議を提出しなかった証人の対質についても同様とし、その異議が証拠により正当化されないときは、もはや答弁をすることは許されない。
第一一条(三一八)
  被告人が答弁をはじめて、答弁することを望まなくなったときは、上で命じられた通りに手続は継続される。

 第一九章  判決、拷問調書および拷問について
(Des Jugemens et Proce`s−Verbaux de Questions et Tortures)

第一条(三一九)
  死刑に値する罪でしかも罪が明らかな被告人に対して相当数の証拠があるときは、すべての裁判官は、証拠が十分でない場合に、被告人が拷問(question)にかけられることを命じることができる。
第二条(三二〇)
  裁判官は、拷問の宣告にもかかわらず、被告人に死刑以外のあらゆる種類の金銭罰または体刑を言い渡すために証拠が完全であると決定することができる。被告人が拷問にかけられても何も自白しないときは、死刑の言い渡しをすることはできない。但し、拷問の後、新たな証拠が現れたときはこの限りでない。
第三条(三二一)
  死刑判決によって、刑の宣告を受けた者は、共犯者(complices)を自供するために予め(pre´alablement)拷問にかけられることを命じられる。
第四条(三二二)
  プレヴォの判決で且つ終審の判決により死刑の言い渡しを受け予め拷問にかけられた者が、その共犯者を何人か自供し、共犯者が直ちに逮捕されたときは、プレヴォが共犯者を審理する権限があると宣言されていないときでも、その対質が行われる。但し、その権限は後に判断させなければならない。
第五条(三二三)
  国王の法院だけは除いて、すべての裁判官に対して、被告人が拷問を適用されることなくして、拷問の場に出るよう命じることを禁じる。
第六条(三二四)
  拷問を言い渡す判決は、その場で作成され且つ署名される。他の裁判官の一人に補佐された訴訟報告官は、拷問を言い渡す判決を被告人に対して宣告させるために、直ちに拷問の部屋(chambre de la question)に出向くものとする。
第七条(三二五)
  拷問を言い渡す判決は、国王の法院の判決(arre^t)により確認されなければ、執行することはできない。
第八条(三二六)
  被告人は宣誓をした後尋問され、拷問に付される前に尋問調書に署名する。但し、その拒絶の記述がなされたときはこの限りでない。
第九条(三二七)
  拷問は親任官の面前でなされる。親任官は、尋問の各項目について、拷問の状態、答弁、自白(confessions)、否認(de´ne´gations)および変更(variations)を調書に記入するものとする。
第一〇条(三二八)
  親任官には、被告人が自白するときは拷問の厳しさの一部を抑制させまた緩めさせ、または被告人が供述を変更するときは同じ厳しさに戻させることが許される。但し、被告人が拷問を解かれ且つ完全に拷問から解放されたときは、再びもとに戻すことはできない。
第一一条(三二九)
  被告人が拷問を解かれた後は、被告人は直ちに且つ再度その表明および彼が自白したまたは否認した事実について尋問される。その尋問調書は被告人により署名され、そうでないときは彼が拒否したことが記録に採られるものとする。
第一二条(三三〇)
  いかなる新たな証拠が出てきても、被告人は、同一事実について、再び拷問にかけられることはない。

 第二〇章  民事訴訟から刑事訴訟への変更および通常訴訟としての受理について
(De la Conversion des proce`s−civils en proce`s−criminels, et de la re´ception en proce`s ordinaires)

第一条(三三一)
  裁判官は、民事の方法により開始された訴訟を、もしその訴訟がなんらかの体刑と関係があると認めたときは、特別な方法で訴追することを命じることができる。
第二条(三三二)
  裁判官は、通常の訴訟の予審中に、必要があると認めたときは、証拠の性質によっては逮捕命令または本人呼び出し命令を発し且つ特別な予審を命じることができる。
第三条(三三三)
  証人の対質以前に、事件が刑事事件として訴追されるべきでないと思われるときは、裁判官は当事者を通常訴訟におけるものとして受け入れる。裁判官は、このために予審が調査(enque^te)に変えられることを命じ、被告人は調査のために定められた手続にしたがって、彼の側でもそれをすることが許される。
第四条(三三四)
  証人と対質後は、被告人はもはや通常訴訟におけるものとしては受け入れられない。但し、被告人は、その無罪放免または有罪の言い渡しについて最終的に宣告される。
第五条(三三五)
  当事者が通常訴訟におけるものとして受け入れられたとしても、事件の手はずが整えられていたなら、再び特別な方法がとられる。

  第二一章  都市共同体、町および村落の共同体、団体および協会に対する訴訟の方法につ いて
(De la manie`re de faire le proce`s aux communaute´s des villes, bourgs et villages, corps et compagnies)

第一条(三三六)
  なんらかの反抗、暴力またはその他の罪を犯した都市共同体、町および村落の共同体、団体および協会に対して訴訟が行われる。
第二条(三三七)
  この目的のために、都市共同体等は、裁判官の命じるところにしたがって、代表者または総代(syndic ou de´pute´)を任命しなければならない。それが拒否されたときは、裁判官は職権で財産管理人を任命する。
第三条(三三八)
  代表者、総代または財産管理人は、尋問および証人の対質を受け、同一の資格ですべての訴訟に用いられるが、判決主文においては用いられない。判決主文は共同体、団体および協会に対してだけ言い渡される。
第四条(三三九)
  刑の言い渡しは、民事上の補償、当事者に対する損害賠償、国王に対しての罰金、特権の剥奪およびその犯罪により共同体等が受けた刑を公然と示すその他の処罰に限られるものとする。
第五条(三四〇)
  共同体に対してなされる訴追のほか、訴訟は犯罪の主犯(auteur)および共犯(complice)に対してなされることを望む。但し、彼らが何らかの金銭罰に処せられるときは、彼らは共同体が言い渡された処罰には服さないものとする。

  第二二章  死体または死者の名誉に対する訴訟を行う方法について
(De la manie`re de faire le proce`s au cadavre ou a` la me´moire d’un de´funt)

第一条(三四一)
  死体または死者の名誉に対する訴訟は、神に対する大逆罪(le`ze majeste´ divine)または人に対する大逆罪(le`ze majeste´ humaine)についてでなければ行うことはできない。死者に対する訴訟がなされる場合は、決闘(duel)、自殺(homicide de soi−me^me)または裁判に対する暴力を伴った反逆(re´bellion a` justice avec force ouverte)で殺された場合である。
第二条(三四二)
  裁判官は、死者の遺体がまだ現存するときは遺体に対して、現存しないときは死者の名誉に対して、職権で財産管理人を任命する。もし親族の誰かが申し出てその役を務めるときは、死者の親族が望ましい。
第三条(三四三)
  財産管理人は読み書きができ、宣誓するものとし、訴訟は通常の形式で財産管理人に対して予審がなされる。但し、財産管理人は、最終尋問に際しては起立しているだけで尋問台にはあがらない。彼の氏名はすべての手続に含まれるが、有罪の言い渡しは死体または死者の名誉に対してだけなされる。
第四条(三四四)
  財産管理人は、死体または死者の名誉に対してなされた宣告につき上訴をなすことができる。財産管理人は、親族の誰かによって上訴を強制されることもできるが、この場合は上訴を強制した親族の誰かが費用を先払いしなければならない。
第五条(三四五)
  国王の法院は、上訴に関わる裁判官によって任命された者とは別の財産管理人を選ぶことができる。

  第二三章  刑事事件における示談、証拠書類および訴権喪失の廃止について
(De l’abrogation des appointemens, e´critures et forclusions, en matie`re criminelle)

第一条(三四六)
  忠実に供述を聞くこと(ouir droit)、減刑による防禦、無効の原因および手段または答弁を提出しまた与えること、真実の隠蔽方法およびそれを捜査する方法を提供すること、民事の結論を出すことに対する示談(appointemens)ならびにその他のあらゆる示談を廃止する。
第二条(三四七)
  同様に、民事の結論、防禦、予告(avertissemens)、目録(inventaires)、異議申し立て(contredits)、無効または上訴の原因および手段、不平(griefs)および答弁、法廷あるいは書記課でなされた訴訟または異議申し立ての命令または排除を提供する慣用も廃止される。
第三条(三四八)
  しかし、当事者は申請書を提出することができ、そこに自分が適当と思う証拠書類を添付することができる。その写しは被告人に与えられる。これ以外は、申請書も証拠書類も却下される。被告人は、それに対して申請書により答弁することができ、それもまた通達され、そこに添付された証拠と同様にその写しが与えられる。但し、それが被告人または当事者によって与えられないからといって訴訟の判決が遅らされることはない。同様に、これはまた上訴の係争中にも行われ、それはその管轄地の裁判官に提出されたものにもとづいて裁判されるものとする。

   第二四章  国王の代訴官または領主裁判所の代訴官の最終論告について
(Des conclusions deffinitives de nos procureurs ou de ceux des justices seigneuriales)

第一条(三四九)
  検真および対質が完了した後、国王の代訴官または領主裁判所の代訴官は、訴訟に対する最終論告をするために訴訟の伝達を受け取る。それらのことは直ちに行われなければならない。
第二条(三五〇)
  国王の代訴官または領主裁判所の代訴官は、訴訟の点検または訴訟の判決に立ち会うこと、またはそれに自分の声で最終論告を与えることを禁じられる。その慣用は廃止される。但し、パリ上座裁判所において遵守されていることに何らかの革新をもたらすことを望むものではない。
第三条(三五一)
  最終論告は書面により且つ封印されてなされるが、その論告がなされた理由は含まれない。

  第二五章  判決について

(Des Sentences, Jugemens et Arre^ts)

第一条(三五二)
  すべての裁判官に対しておよび国王の法院に対しても、刑事事件については、他のいかなる事件よりも優先的に迅速な処理に努めるよう厳命する。
第二条(三五三)
  刑事訴訟の予審および判決は、すべての上訴に関係なく、たとえば管轄権のないあるいは忌避された裁判官のものであっても、執行される。もし被告人が、上訴を口実にして、答弁を拒むときは、被告人に対する訴訟は最終判決に至るまで、答弁できるのに答弁を拒む者に対するものとして行われる。
第三条(三五四)
  上訴以降自ら進んでまたは異論なく被告人に対してなされた手続は、彼らに対しては不受理の理由(fin de non−recevoir)として対抗され得ない。
第四条(三五五)
  欠席裁判により予審がなされ且つ判決がなされた者は、弁論適状(mise en e´tat)にない第一審または上訴事件において、請求を提出することは認められない。但し、彼らは裁判出頭免除事由を申し出ることはできる。
第五条(三五六)
  刑事訴訟は、たとえ取り調べが行われなくても、もし尋問調書および権威ある書類による十分な証拠、または被告人によって認められた十分な証拠、および訴訟の他の推定および状況による十分な証拠があるときは、予審が行われ且つ判決がなされ得る。
第六条(三五七)
  以下のような金額の金銭罰しか含まない第一審裁判官の判決は、上訴にもかかわらず、保証金を提供して、仮払金の方法で執行される。すなわち、領主裁判においては、費用の他に金銭罰が他の当事者に対して四〇リーヴル、領主に対して二〇リーヴルの金額を超えないとき、明らかにパルルマンの管轄には属さない国王裁判所においては、金銭罰が他の当事者に対して五〇リーヴル、国王に対して二五リーヴルの金額を超えないとき、上座裁判所がおかれているバイイ裁判所とセネシャル裁判所で公爵(duche´s)および大貴族(pairies)が出席する裁判所および明らかにパルルマンの管轄に属するその他の裁判所においては、他の当事者に対して一〇〇リーヴル、国王に対して五〇リーヴルの金額を超えないとき。罰金の受領者は、供託の形式で国王に認容される金額を、費用も手数料もなしに、引き受けるものとする。国王の法院の判決によりそれらを返還したことが証明されないときは、刑の言い渡しから二年後にそれらの金額は収入として使われなければならない。
第七条(三五八)
  前条で定められた方法で仮払金により支払われた罰金は、判決により確認されないときは、何ら不名誉を伴うものではない。
第八条(三五九)
  国王の法院に対しては、上記の金額を超えない判決の執行を禁止しまたは猶予することを禁じる。これを行ったときは無効となることを宣言する。その取り消しの請求を必要としないで、判決文は仮払金により執行されることを要求する。また、判決執行の禁止または猶予を請求した当事者、およびその請求に署名しまたはその他の何らかの訴追を行った代訴官は、それぞれ一〇〇リーヴルの罰金に処され、それは免除されたり軽減されたりできないものとすることを要求する。
第九条(三六〇)
  もし国王の代訴官または領主の代訴官が、訴訟において死刑の論告をし、または自然死の刑(peine de mort naturelle)もしくは民事死亡または漕役刑もしくは有期追放刑の場合には、いかなる訴訟も午後に裁判することはできない。但し、この点に関しては国王の法院において遵守されてきた慣用を革新することを望むものではない。
第一〇条(三六一)
  国王の裁判官または領主の裁判官によって上訴を条件として裁判された訴訟であって、体刑に処する論告がなされる訴訟については、裁判所にその数がいるならば、少なくとも三人の一般官(officier)の資格をもった裁判官または学士の資格をもった者が出席するものとする。被告人が入獄者であるときは、裁判が実施される場所に移され、三人が最終尋問に立ち会うものとする。
第一一条(三六二)
  最終審における判決は、少なくとも七人の裁判官によりなされるものとする。もしこの数が裁判所に存在しないとき、または一般官の内の幾人かが不在であるかもしくは忌避されまたは裁判所により正当に判断された理由により票決に加わらないときは、学士の資格をもつ者が採用される。
第一二条(三六三)
  最終判決または予審の判決は、上訴を条件として裁判される訴訟においては、最も厳しい意見が一票優先するのでなければ最も寛大な意見に従うものとし、最終審として裁判される訴訟においては二票優先するのでなければ最も寛大な意見に従うものとする。
第一三条(三六四)
  自然死の刑に次いで最も厳しい刑は、全面的な証拠の留保を付けた拷問の刑(peine de la question)、終身漕役刑、終身追放刑、証拠の留保なしの拷問刑、有期漕役刑、鞭打ちの刑、加辱刑および有期追放刑である。
第一四条(三六五)
  上訴を条件としてなされた判決であれ、また最終審としてなされた判決であれすべての判決は、判決に加わったすべての裁判官により署名される。これに違反したときは、停職処分、当事者に対する損害賠償および五〇〇リーヴルの罰金に処す。但し、国王の法院の慣用を革新することを望むものではなく、法院の判決には訴訟報告官および裁判長が署名するものとする。
第一五条(三六六)
  執行に付される刑事事件のすべての判決は、刑罰に関しては、すべての場所において、許可状も判決裁判所の管轄外で判決を執行する命令書(pareatis)もなしに、執行される。
第一六条(三六七)
  裁判官は、損害賠償請求人がいるときは、訴訟の予審および判決の執行に必要な費用について、損害賠償請求人に対して訴訟費用支払い命令を発することができる。但し、その中に裁判官への謝礼(e´pices)、手数料および報酬も、また書記の手数料および給料も含めることはできない。
第一七条(三六八)
  損害賠償請求人がいないときまたは損害賠償請求人が訴訟費用支払い命令に満足しないときは、国王財産(notre domaine)が担保に入れられていない場合は、裁判官は、国王財産の収税吏に対して他の命令を発し、国王によってこの目的のために設けられている基金(fond)でこれらを支払うものとする。国王財産が担保に入れられているときは、国王財産の一部を所有する者(engagiste)、その収税吏および徴税請負人(fermier)は、裁判費用に充当される基金以上の額に対しても、支払いを強制される。領主裁判所においては、領主、その収税吏および徴税請負人は、同様に強制され、上訴にかかわらず訴訟費用支払い命令は、収税吏または国王財産の一部を所有する者および領主に対して仮払金によって執行される。但し、もし損害賠償請求人がいるときは、これに対する求償は別とする。
第一八条(三六九)
  第一審の裁判官に対しては、前二条に定められた内容を遵守することを命じる。これに違反したときは、一五〇リーヴルの罰金に処し、これに対しては違警罪(contravention)の場合は、第一審の裁判官は上級裁判官によって処罰されるが、免除されたり減刑されたりすることはない。さらに、上級裁判官によって同様の訴訟費用支払い命令が交付されることが望まれる。
第一九条(三七〇)
  国王の代訴官および領主の代訴官に対しては、死刑(crime capital)が定められている者または身体刑が科せられることになる者を常に訴追することを命じる。但し、当事者によってなされたすべての和解(transactions)および権利の停止(cessions de droits)はこの限りでない。その他すべてのものに関しては、国王の代訴官および領主の代訴官はそれについて何等の訴追もなし得ることなしに、和解が執行される。
第二〇条(三七一)
  民事事件において費用について命じられたことは、刑事事件においても執行されることを望む。
第二一条(三七二)
  判決は、それが宣告された日に執行されるものとする。
第二二条(三七三)
  加辱刑の言い渡しを受けた者が裁判に従うことを拒むときは、裁判官はその者に対して三つの異なった差し止め命令(injonction)をしなければならない。その後、裁判官はその者に対してより重い刑罰を宣告することができる。
第二三条(三七四)
  女子が死刑の言い渡しを受ける前または後に、妊娠しているように見えまたは妊娠していると表明たときは、裁判官は職権により任命された産婆(matrone)によってその女子が診察されることを命じる。産婆は、一六六七年四月の王令により専門家という表題に定められている形式にしたがい報告書を作成するものとする。女子が妊娠しているときは、その出産の後まで刑の執行は延期される。
第二四条(三七五)
  死刑の言い渡しを受けた者に対しては告解の聖体拝領(sacrement de confession)が提供され、刑場に至るまで一人の聖職者に付き添われる。

   第二六章  上訴について
(Des Appellations)

第一条(三七六)
  いかなる性質のものであれ予備的判決(sentences pre´paratoires)、中間判決(sentences interlocutoires)および終局判決(sentences de´finitives)についてのあらゆる上訴は、それぞれ、身体刑に値する罪についての訴追に関しては国王法院に直接に届けられ、その他の罪については、被告人の選択により、国王法院またはバイイ裁判所、セネシャル裁判所に届けられる。
第二条(三七七)
  取り調べ、決定およびその他のあらゆる予審の許可についての上訴は、国王法院および国王の裁判官の法廷に届けられるものとする。
第三条(三七八)
  いかなる上訴も、決定の執行、予審および判決を妨げまたは遅延させたりすることはできない。
第四条(三七九)
  国王の法院は、証拠および取り調べを確かめないでまた国王の代訴官長の論告なしには、刑事訴訟の予審の継続を禁止しまたは猶予することはできない。本人呼び出ししかないときは、代訴官長の論告は決定の中に記入される。禁止されたり猶予されたりしたものはすべて無効と宣言する。それを考慮に入れないで、またその取り消しを要求することを必要とせずに、予審が続行されることを望む。それを手に入れた当事者および代訴官長は、それぞれ一〇〇リーヴルの罰金に処され、その半分は当事者に、他の半分は貧者に充当され、これは免除されたり軽減されたりすることはできない。
第五条(三八〇)
  管轄地の裁判官の前に係属中の刑事訴訟は、国王の法院が証拠を調べた上で事件は軽微であってそれ以上詳しい予審に値しないと認める場合でなければ、国王の法院によって移審され得ない。その場合は、法廷で直ちにその事件を裁判するという条件で且つ決定により証拠および取り調べを記載するという条件で、事件を移審することができる。これに違反したときはすべて無効とする。
第六条(三八一)
  管轄地の裁判官によってなされた判決が、身体刑、漕役刑、無期追放刑または加辱刑をもたらすときは、それについての上訴があってもなくても、被告人およびその訴訟は共に且つ確実に国王法院に移送されるものとする。書記に対しては、それらを別々に移送することを禁じる。これに違反したときは、停職および五〇〇リーヴルの罰金に処す。
第七条(三八二)
  同一の重罪に複数の被告人があるときは、たとえ裁判される者が一人だけであっても、全員が国王法院に移送される。
第八条(三八三)
  一人が有罪の言い渡しを受けたときは、その者が刑の執行を受け、他の者は無罪放免される。
第九条(三八四)
  被告人および訴訟が刑務所の牢獄に到着後直ちに、監獄の記録係または牢番は、その訴訟を国王法院の書記に届けなければならない。国王法院の書記は、それを配分するために、そのことを裁判長に知らせる。
第一〇条(三八五)
  刑事の予審および訴訟は、国王の代訴官長によってその代理人に配分され、必要ならばそこでその報告にもとづいて論告がなされ、または国王の次席代訴官(nos avocats ge´ne´raux)の手に引き渡される。事件が法廷に持ち出され、代理人に配分される前に代理人が書記課で論告できなくても、同様とする。
第一一条(三八六)
  上訴がなされた判決が身体刑、追放刑または加辱刑を命じておらず、また国王の代訴官または領主裁判所の代訴官によってなされた上訴もなく、ただ損害賠償請求人の側からのみの上訴のときは、訴訟は、もし第一審裁判官の書記が国王法院の建物のある土地に住んでいるときは、彼がそれを命じられた三日後に、彼により国王法院の書記課に送られる。第一審裁判官の書記が、その土地以外に住んでいるときまたはそこから一〇リュー(lieues)の距離に住んでいるときは、一週間以内に書記課に送られるものとし、彼がそれ以上の距離に住んでいるときは期限は一〇リュー毎に一日延長される。これに違反したきは、書記に対しては停職および五〇〇リーヴルの罰金が科せられる。一六六七年四月の王令により定められた期間と手続は、本条についても遵守されるものとする。
第一二条(三八七)
  前条で定められた性質を有する訴訟がパルルマンに持ち込まれたときは、民事訴訟と同様に配分されるものとする。
第一三条(三八八)
  管轄地の国王の代訴官または領主裁判所の代訴官が上訴人であるときは、被告人が入獄者である場合には被告人およびその訴訟は国王法院に移送される。被告人が、上訴以前に、判決の言い渡し以来釈放されているときは、被告人は、国王法院における訴訟の判決の時、国王法院により命じられる通りの状態におかれなければならない。
第一四条(三八九)
  入獄者を連行する者または訴訟を届ける者に対して、国王法院により、訴訟費用支払い命令書が交付される。
第一五条(三九〇)
  被告人は、訴訟の判決の際、国王法院においては尋問台(sellette)の上でまたは弁護士席(barreau)の後ろで尋問される。
第一六条(三九一)
  判決の上訴についてなされた上級裁判所の判決が身体刑の言い渡しを宣告するときは、刑の言い渡しを受けた者は、適切且つ確実な監視のもとに、関係者の費用で、刑を執行するための場所に送られる。但し、国王法院によって、特別な事情を考慮して、別のことが命じられているときはこの限りでない。

   第二七章  故人の追憶を浄化するための手続について
(Des proce´dures a` l’effet de purger la me´moire d’un de´funt)

第一条(三九二)
  判決の執行の日から起算して五年内に死亡した欠席判決によって刑の言い渡しを受けた者の寡婦、子供および親族は、その判決について上訴することができる。その欠席判決の言い渡しが最終審における上級裁判所または下級裁判所の判決によりなされたときは、その判決をしたのと同一の法院または裁判官に対して上訴することができる。
第二条(三九三)
  欠席判決から五年の期間が経過した後は、大法官府(grand chancelier)による国王の令状なくしては、何人も故人の追憶を浄化することはできない。
第三条(三九四)
  国王の代訴官および損害賠償請求人がいるときは、その者は、令状により召喚され、その写しが彼らに交付される。民事事件について定められた期間内に手続がなされる。
第四条(三九五)
  いかなる手続をもなさない前に、裁判費用が納入されなければならず、また罰金が供託されなければならない。
第五条(三九六)
  故人の追憶を浄化するための訴訟手続の判決は、証拠および予審ならびに欠席判決により刑の言い渡しが行われることとなった手続および証拠にもとづいてなされる。
第六条(三九七)
  当事者は、適切だと判断する資料を各自新たに提出することができる。それらの資料は、当事者に送付される申請書に添付され、申請書および資料の写しが与えられる。いかなる示談もなされることはない。
第七条(三九八)
  当事者は、裁判官によって延期されないときは民事事件について命じられた期間内に、他の申請書によりそれに答弁しなければならない。その申請書は同様に送付され且つ申請書およびそれに添付される資料の写しが与えられる。

  第二八章  違法阻却事実について
(Des Faits Justificatifs)

第一条(三九九)
  すべての裁判官に対しおよび国王法院に対しても、訴訟の点検の後でなければ、いかなる違法阻却事実の証拠を決定することもまたそれに到達するいかなる証人を尋問することも禁止する。
第二条(四〇〇)
  被告人は、裁判官によって選択された事実および被告人が尋問と対質において明確に述べた数以外のいかなる違法阻却事実も証拠とすることは認められない。
第三条(四〇一)
  違法阻却事実は、その証拠を決定するのと同じ判決の中に加えられる。
第四条(四〇二)
  違法阻却事実の証拠を決定する判決は、裁判官によって、直ちにあるいは遅くとも二四時間以内に、被告人に宣告される。証人によって事実が正当化されるのを聞くために証人を指名するように被告人に促される。これらのことは直ちに行われなければならず、そうでなければ最早認められない。
第五条(四〇三)
  被告人は、一度証人を指名した後はさらに他の証人を指名することはできず、且つ違法阻却事実の証拠についての尋問の間は釈放されることはない。
第六条(四〇四)
  証人は、国王の代訴官または領主の代訴官の請求によって召喚され、裁判官によって職権をもって尋問される。
第七条(四〇五)
  被告人は、もしそれができるならば、違法阻却事実の証拠の費用をまかなうために、裁判官によって命じられた金額を書記課に供託しなければならない。そうでないときは、費用は、もし損害賠償請求人がいるならば損害賠償請求人により、損害賠償請求人がいないときは国王によりまたは国王領地の所有者あるいは上級裁判権をもつ領主により、各自それぞれの側で前納されなければならない。
第八条(四〇六)
  調査が終了した後は、代訴官が論告を行うために、国王の代訴官または領主の代訴官に、且つ損害賠償請求人がいるときは損害賠償請求人に、その調査が通知され、訴訟に添付される。
第九条(四〇七)
  当事者は、調査の事実について通知する資料を添付して、それぞれの請求をなすことができる。その請求および資料は個別に通達され、その写しが与えられる。このことを理由として、いかなる規則を定めることも、それ以上に詳しい予審を行うことも必要ではない。
  国王は、本王令が、翌一六七一年一月一日より、我が王国全土において、全領地においてまた我が支配下にある地方において、維持され且つ遵守されることを望むものである。本王令に含まれる諸規定と異なりまたはそれに反するすべての王令、慣習(coutume)、法律(loi)、規約(statut)、規則(re´glemen)、審理のやり方(stile)および慣行(usage)を廃止する。
  国王は、このように、命令書(mandement)によって伝える。