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近年、南北朝時代や室町時代の研究が活況を呈しています。その要因はいくつもありますが、関係史料の利用環境の整備が大きな原動力になっているように思います。それにより研究の精緻化や量的拡大が進む一方で、大きな枠組みとしてこの時代をどのように捉えるのか、という議論が後回しになっているように感じます。「中世後期」という時代区分が長らく使われてきたことから、この時代は「中世前期」との関係に目が向きがちですが、近世史との架橋という論点も必要と考えます。私が専門とする中世宗教史の分野について言えば、かつての「鎌倉新仏教」論も、現在通説となっている「顕密体制」論も、中世後期から近世にかけての説明は具体性に乏しく、いまに至るまで明確な時代像は打ち出されていません。室町時代史の進展は、中世から近世への宗教史の転換という大きな問題を考える上でも重要な鍵を握ると展望しています。 | ||