5月6日        渡辺 聡氏

 第三回目は、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)送信部の渡辺聡氏より「音楽配信の許諾と違法利用対策」をテーマに講義が行われた。(以下はその要約)

<はじめに>
 JASRACでは一年間の著作物使用料の分配額上位の作品権利者を顕彰するJASRAC賞を設けており、2005年JASRAC賞の金賞は「世界に一つだけの花」が受賞した。そしてこの「世界に一つだけの花」を例にして、権利関係について考えてみる。まず著作者人格権(作詞者・作曲者自身の権利)は作詞・作曲者である槙原敬之のものとなる。次に著作権においては作詞・作曲者の槙原敬之が著作者となり、株式会社ジャニーズ出版が著作権者となる。そして著作隣接権においてはレコード製作者のビクターエンタテイメント出版と実演家(歌唱)のSMAPが隣接権者となる。

<JASRACの仕事について>
 JASRACは「音楽の著作物の権利を擁護し、あわせて音楽の著作物の利用の円滑を図り、もって音楽文化の普及発展に資すること」を目的とし、1939年に設立された。JASRACの事業は著作権管理事業と文化事業の二つがある。前者では音楽著作権の許諾、徴収、分配が行われ、国内外の楽曲データ約200万曲を保有し95%以上をJASRACが管理しており、2005年度の徴収額は1128億円になる。後者ではJASRAC会員の会費により、寄附講座・公開講座・シンポジウムなどが実施されている。
 JASRACに権利を預けて音楽活動をしている国内権利者は14097人(2006年3月末)になる。
まず、“音楽配信の許諾”について説明する。インタラクティブ配信における音楽利用には、音楽配信(CD音源をPCや携帯電話に直接ダウンロード)やPC向けのカラオケやインターネット放送などがあるが、その中でも着メロ、着うた、着ムービー(携帯電話の呼出音をダウンロード)が82億円(89%)と大きな割合を占めている。著作権法の第2条の9の4で“自動公衆送信”は“公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く)をいう。”と定義されており、これがインタラクティブ配信にあたる。また9の5で“送信可能化”は“自動公衆送信し得るようにすることをいう。”と定義されており、これはネット上へアップロードすることにあたる。インタラクティブ配信に働く権利としては、作詞者・作曲者・音楽出版者の著作権とレコード製作者・実演家の著作隣接権があり、著作権には複製権・公衆送信権が含まれ、著作隣接権には送信可能化権が含まれる。インタラクティブ配信の許諾状況は、商用配信の契約が約750事業者(約5700サービス)で、非商用配信の申請は約9000サイトになり、使用料徴収額は2005年度で約92億円となっている。
次に“違法利用対策”を取り上げて説明する。JASRACでは違法利用対策として、J-MUSE(監視システム)を導入している。J-MUSEの機能としては、24時間インターネット上を自動巡回し、音楽ファイルの所在を把握したり、ファイル交換ソフトによる著作権侵害に対応している。また、歌詞掲載サイトの発見機能や収集情報のデータベース機能がある。
 JASRACでは適正な権利処理の実現へ向けて、次の3点を実施している。一つは許諾業務・違法監視を通じた著作権保護思想の普及、著作権教育の重要性の提唱、二つ目は権利者情報の迅速な提供、国境を越える許諾ルールの確立、三つ目は違法利用に対するNotice and Take Down(NTD)実施、刑事・民事的措置である。
以上述べてきたように、昨今の音楽コンテンツ産業のめざましい発展により、JASRACに求められる役割も大きいものとなってきている。

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