5月20日    田村 光広氏

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JASRAC寄付講座

コンテンツ産業論 I
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 第五回目は、株式会社エフエム東京MPX事業推進室長の田村光広氏より「ラジオはNEXT STAGEへ〜デジタル化で生まれ変わるラジオの未来予想図」をテーマに講義が行われた。(以下はその要約)

<ラジオの現状>

 首都圏ラジオ全局聴取率・全局到達率どちらのデータからも、5069歳男女は昔と変わらず高いパーセンテージを維持しているが、20代以下の若者では低いパーセンテージを示していて、若者がラジオを聴いていないことが明らかになり、これはラジオメディアの存在が危ないということにつながる。

<放送のデジタル化のメリット>

日本のラジオの歴史は1925年の社団法人東京放送局が放送開始したのが始まりである。関東大震災で、正確な情報がなかったために二次災害が発生したのがきっかけであった。そして1951年に民間放送の中部日本放送・新日本放送(現毎日放送)が放送を開始し、1969年にNHK、愛知音楽エフエム放送(現FM愛知)がFM放送を開始した。現在では2003年に地上デジタル音楽放送の実用化試験放送が東京と大阪で放送開始し、その後デジタル化が進んでいる。
 放送のデジタル化により色々なメリットがある。まずデジタルの圧縮技術により、高品質化が実現される。またデータ放送することによって通信と親和性のある言語を用いて、通信ネットワークと組み合わせたサービスが可能になる。そしてノイズ・ゴーストに強い変調方式により高品質の安定した音声・映像の放送が可能になる。

<マルチプレックスジャパン>

 マルチプレックスとは、一つの放送局でいくつものチャンネルを放送する複合型放送局のことである。株式会社マルチプレックスジャパンは、十分な放送エリアを確保し、マーケットニーズに合った放送サービスを提供することで、受信機の普及を促進し、新たな放送ビジネスを開発・設立させる目的で設立された。そして、デジタルラジオのインフラ整備、放送地域でのエリア確保、受信機の普及拡大、放送の維持・運用、チャンネル編成などの事業を行っている。

<放送と通信>

「放送と通信の連携」には、ブロードバンドが急速に普及したという事情、インフラが整備され、通信事業者としては魅了あるコンテンツを放送の枠組みで配信したいという事情、TV20117月にデジタル放送へ完全移行するという事情があった。そしてこの連携には著作権に関する課題がある。具体的には放送番組は放送を前提とした権利処理をしている点、通信による配信は個別に著作権者・著作隣接権者の事前許諾が必要で、権利処理に時間・手間がかかり採算が取れない点、ネット配信の安全性に不安がある点、「正当な対価」分からない点である。その他にも、放送局側からみたIP再送信の課題もある。具体的には伝送路を通信事業者に握られることへのアレルギー、放送の同一性保持への不安、著作権処理の煩雑さである。このように放送と通信には、解決すべき課題が多々あるが、デジタルラジオをきっかけに更なる連携を図りたいと考えている。