6月3日    稲垣 博司氏

トップ アイコントップページヘもどる

JASRAC寄付講座

コンテンツ産業論 I
直線上に配置
直線上に配置

 第七回目は、エイベックスマーケティング・コミュニケーションズ株式会社代表取締役会長の稲垣博司氏より「日本レコード産業史と課題」についての講義が行われた。(以下はその要約)

<時代背景とヒット曲>

 今までのヒット曲を時代背景と共に見ていく。
1914年・・・流行歌第一号の「カチューシャの唄」
1931年・・・世界的恐慌から立ち直った頃のヒット曲「影を慕いて」
1937年・・・日中戦争が始まった年のヒット曲「別れのブルース」
1946年・・・戦後に国民の頑張る意欲となった「リンゴの唄」
1946年・・・新聞小説の映画の主題歌である「青い山脈」
1951年・・・外国のカバー曲が流行った頃のヒット曲「テネシー・ワルツ」
1958年・・・神武景気でレコード会社が万能時代のヒット曲「有楽町で逢いましょう」
1962年・・・ラジオ深夜番組のヒット曲「風に吹かれて」
1963年・・・全米のみならず世界でヒットした唯一の楽曲「上を向いて歩こう」
1967年・・・ポップミュージックが多様化した頃のヒット曲「ブルー・シャトウ」
1969年・・・コンテンツ(ソフト)のロックが流行った頃のヒット曲「COME TOGETHER
1975年・・・シングル売上歴代第一位のテレビメディアヒット曲「およげ!たいやきくん」
1977年・・・黄金の70年代に出たモンスターアイドル、ピンクレディーの「UFO
1982年・・・80年代の繁栄ブームのヒット曲「赤いスイートピー」
1991年・・・パソコンやインターネットが普及し始めた頃のヒット曲「SAY YES
1994年・・・小室時代の始まりとなった「survival dAnce
1999年・・・アルバム歴代第一位の売上げを出した宇多田ヒカルの「Automatic
2003年・・・着うた100万ダウンロードの「さくらんぼ」


<レコード産業の現状>

 レコード産業の現状は次の4点に集約される。まず第一点目に、レコード産業はレコード再販価格維持制度という法律により定価販売が認められていて、全国のどこにいても同じ価格で販売されている。二点目に、販売カタログは世界で最も豊富なジャンルで、約14万タイトルの販売カタログがある。三点目は、レコード・レンタル制度がある点だ。日本は世界で唯一レコード・レンタル制度があり、売り上げ規模はオーディオソフト売り上げの12%にあたる。四点目は、ユーザー層についてである。1020代が全体の38.1%、3040代が42.8%を占め、メインの世代が1020代ではなく3040代となっている。

<日本の音楽産業の課題>

 日本の音楽産業の課題は六点挙げられる。一点目は『放送と通信の融合に於ける著作権の問題』である。放送と通信は送信相手が許諾しているかしていないかの違いであるが、融合するにあたっては許諾著作権についての問題が発生している。二点目は『日本音楽のアジア進出』の問題がある。今までに世界に進出して成功したのは「上を向いて歩こう」だけで、日本音楽の世界進出は今後の課題であり、その先駆けとしてアジア進出を成功させたい。三点目は『再販制度の維持』の問題である。逆輸入や新品の中古販売で再販制度に抜け道が出来つつある。四点目は『私的録音録画補償金制度の改定』の問題がある。コンテンツを作成したクリエイターに対してきちんとお金が還元されなければ、クリエイターの意欲を無くすことになる。五点目は『アーティストの発掘とスーター&ヒット曲の創出』の問題である。近頃、インディーズの存在が大きくなっていて、去年のインディーズは300億円を売り上げている。六点目は『人材育成の急務』の問題である。今まで挙げた五点の課題を解決できるような人材を見つけ出し、育成していくことが必要になっている。