6月17日    朝妻 一郎氏

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JASRAC寄付講座

コンテンツ産業論 I
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 第九回目は、株式会社フジパシフィック音楽出版代表取締役会長の朝妻一郎氏より「音楽出版社と国際ビジネス」をテーマに講義が行われた。(以下はその要約)

<音楽出版ビジネスは国際ビジネス>

 先進国であるかどうかという基準は、“オリンピックと国際条約(オリンピックを開いているか、国際条約を結んでいるか)”であると言われている。まず、オリンピックを開くには、必要な条件が3つある。1つ目は“ファンダメンタルな環境整備”という条件で、国内紛争が無く、安全であることが必要とされる。2つ目は“ホテルや競技場”という条件で、全世界の選手が宿泊できるホテルや競技場など、設備が整っていることが必要とされる。3つ目は“外貨準備”という条件で、国内通貨と国外通貨を変換できることが必要とされる。オリンピックを開くということは、この3つの条件を満たしている国であるということを証明することになり、先進国であると判断される。加えて、国際条約を結ぶことは“国内の著作権は守られていて、さらに国外の著作権も守ることができる”ということを意味し、合わせて先進国の条件となっている。

 著作権の権力は、世界的に見てアメリカがとても強く、産業競争力委員会の提言やWTOWIPOの立ち上げなどを行っている。また、日本にも多くの影響を与えていて、その有名な例を3点挙げる。一点目は“レコード保護期間延長”である。以前はレコードの保護期間は20年間で、20年を過ぎると特許は解除され、そのレコードを自由に使用できたが、現在では保護期間が50年間へ延長になった。二点目は“貸レの洋楽禁止期間”である。CDレンタルにおいて、日本の楽曲はCD発売後3週間でレンタルを開始できるが、洋楽はその期間が1年間と長い。三点目は“ビデオ陳列罪”だ。海賊版ビデオの販売が発覚した場合、以前は店舗側が「海賊版のビデオだとは知らなかった」と言えば、罪に問うことはできなかったが、現在では海賊版ビデオを陳列しただけでも罪を問えるようになった。

<音楽出版社とは?>

 音楽出版社は、音楽ビジネスにおける総合商社であり、作詞・作曲家と契約し、音楽著作権の管理・開発を行っている。そして、契約している音楽著作権者が1円でも多くの収入を上げるよう、あらゆる努力をしている。

 音楽出版社とレコード会社は、役割が重なる部分も多いが、レコード会社は“アーティストのレコードを売ること”を主にしている点が音楽出版社と異なる。例えば、ある男性ボーカルのレコードにおいて「この曲で、女性ボーカルが歌っているレコードが欲しい」という依頼があった場合、レコード会社では対応が難しい部分があるが、音楽出版社では対応が可能で女性ボーカルのレコードを提供できるという違いがある。このように音楽出版社は、対応できる範囲が大きいのが特徴である。