7月1日    山崎 芳人

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JASRAC寄付講座

コンテンツ産業論 I
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 第十一回目は、株式会社キョードー東京代表取締役社長の山崎芳人氏より「ライブ・コンサートのマネジメント・ビジネスの実情と国際契約」をテーマに講義が行われた。(以下はその要約)

<コンサートの運営について>

 コンサートの運営には「企画」から「実施」まで多くの段階がある。第一段階の「企画」では、プロモーター・サイドから出された企画が、アーチスト・サイドへアプローチされ、「いつ」、「どこで」、「どのくらいの規模」でコンサートを行うかが検討される。第二段階の「契約締結」では、基本的にアーチスト・サイドが契約書を提示するのだが、不平等な内容が多いこともあり、弁護士を起用し改定交渉に臨む。この時、弁護士の指摘する問題点で多いのは、訴訟の場合の適用地の選定である。通常、国と国との裁判は、訴えられた方の国のルールで裁かれるのだが、日本とアメリカの場合は、訴えても訴えられてもアメリカのルールで裁かれている。つまり、日本は外国と平等に契約締結ができていない。第三段階は「収支計画の作成」、第四段階は「会場押さえ」、第五段階は「宣伝計画の立案」と続く。この「宣伝計画の立案」では、メディアパートナーの選定が重要で、メディアを敵に回してしまうとチケットが売れなくなる。第六段階は「スポンサー(協賛)の獲得」である。スポンサーがつくことによって、例えばチケットが安くなったり、照明ライトが100個から200個に増えるといったプラスの面がある。第七段階の「諸官庁への申請」では、ビザの問題があり、来日ビザの取得は先進国の中では最も厳しいと言われている。第八段階は「宣伝パブリシティの実施」、第九段階は「券売」、第十段階は「実施当日の作業」で、これらの段階を経てコンサートが行われる。

<コンサートの収支計算について>

 出演料および収支計画においては、「売り上げ保証」と「保証プラス歩合」があり、後者のほうが損益分岐のパーセンテージが低いので、採用されることが多い。また、最近はアーチストサイドが自らリスクをとり、コンサートをプロモートする(手打ち興行)がある。この場合プロモーターは現地プロモーターとして業務委託を受けることになるが、源泉税の問題が発生するので、形式上主催者とならざるを得ない。
 コンサートの音楽使用料(JASRAC)について、日本のレートは諸外国に比べてとても低く、売り上げの1%(20063月)と定められている。例えば、4.5億円を売り上げたコンサートの場合の音楽使用料は、450万円となる。日本に比べ諸外国のパーセンテージは、アメリカで3%、イギリスで5%、フランスで78%となっている。日本でもこれらの諸外国を目標に活動しており、20064月に1.5%に上がった。
 今まで、音楽コンテンツは諸外国から日本へ輸入されてきた。そして今後は、日本から諸外国へ輸出する時代がやってくるだろう。しかし、音楽コンテンツは輸入・輸出するのではなく、共同制作をできるようにしていきたい。また、そうなることをこれからの世代に期待している。