JASRAC寄附講座

コンテンツ産業論

〜クリエイティブな現場からコンテンツのプロデュースを考える〜


5月1日

田中  義雄 「2004 音楽産業(レコードビジネス)の現状と課題−流通の現場から−」

田中氏が冒頭に述べた言葉は、本講座の核心を突く言葉だった。
「コンテンツを作る人の作品づくりにかける気持ちを大事にした仕事をしたい」。

オーディオレコード(CD、アナログ、テープ)の生産額は1998年をピークに、5年連続で減少を続けている。その大きな要因として、不正コピーと海賊盤の2つの問題を指摘した。両者ともパソコンによるCDのコピーが簡単にできるようになったことが主な原因である。さらに海賊盤対策の意味も含め、海外でライセンス契約を結んだところ、安価なCDが日本に逆輸入されるようになったことも述べ、「台湾では国内消費量の約2倍のCDが生産されている」と語った。

これまでレコード業界は、新しいメディアが出現するたびに危機感を抱いてきた。ラジオで聞くことができれば、レコードを買う必要がなくなるのでは。さらに、テレビでは音楽に加えて絵(画像)も見ることができる。また貸しレコードが増えれば、買わなくても借りてコピーすることができる。そして現在はダウンロードによる音楽配信に対する危機感がある。しかし田中氏は「レコード業界は、新しいメディアと共存し、利用して成長してきた。ブロードバンド時代は大きな危機だが、それを使ってやっていく新しい形が出てくるのでは」と前向きな予測を語った。

現在JEUGIAが主催するカルチャースクールでは、中国楽器の講座が人気らしい。沖縄音楽の人気がこれからも続きそうなことや、韓国のポップスが流行の兆しであることを述べ、音楽のグローバル化を感じさせた。
  また、DVDや着メロ・着うたの売り上げ増加や新人アーティストのデビュー増加などのデータを提示して、音楽業界の現在の姿が明らかにされた。

長年音楽業界を悩ませているのが、万引きの問題だ。東京のレコード商業組合の加盟店124店舗に対するアンケート調査によると、1店舗あたりの平均被害額は約200万円であり、総売上額の約0.9%に相当する。「最近では『万引きを見つけても、刺されたりするから無理に捕まえないでくれ』などど言われたという話も聞く」。「子どもの万引きを軽微に考える大人もいる」と嘆いた。

以上のような不正コピーや万引きなどの問題に対し、「コンテンツを大切にしてほしい。作った人に対する親近感を持ち、尊重がなされるべき」だと述べ、「会社として、利益追求だけでなく、そうしたことを訴えていきたい」と想いを熱く語った。



「昔は音楽を聴くのにお金と時間がかかった。今は身近になった分、コンテンツが軽んじられているのではないか」

「レコード業界は、新しいメディアに対する危機感から、大きなマーケットを作ってきた」

「コンテンツの製作者に対して『次のいい作品を作ってほしい』という気持ちを表してほしい」



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