映画『誰も知らない』(2004年)の是枝和裕監督が講義を担当する「専門特殊講義 映像論」。11月3日の講義テーマは「撮影することの暴力」。 日本のドキュメンタリー史にはかかせない原一男氏、土本典昭氏などの作品をふんだんに紹介しながら、ドキュメンタリー番組に「原罪」として潜む「撮ること の暴力」について解説した。
是枝教授は、最近のドキュメンタリー番組が、撮られている弱者に対し視聴者の同情や共感を誘う、言ってしまえば視聴者が「泣いて気持ちがいい番組」 が多く作られるようになってしまったと指摘し、その対極にある二つの作品(原 一男『ゆきゆきて、神軍』、大島 渚『忘れられた皇軍』)を紹介する。また 『阿賀に生きる』(佐藤 真)や『水俣の子は生きている』(土本 典昭)などでは、カメラと被写体との関係について言及。「人にカメラを向けるという行為 は本来とても暴力的な行為である」ことを前提に、撮る側と撮られる側の関係の新たな可能性を見い出した作品として取り上げた。
講義に参加した学生達は、ただの受け手として映像を見るのではなくその奥に潜む作り手の意図をカメラワークや編集技術を通して掴もうと1つ1つの作
品に熱心に見入っていた。