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CIIS報告 1

斎藤 由香(2007年度留学)


Jungian Psychology and East West spirituality


授業名を見た瞬間「これだ!」と思って、日本からすでに受講することを決めていたクラスです。かなり人気のあるクラスで、私が取っている3クラスの中では一番生徒の数が多く、先生と2人のティーチング・アシスタントを含めると総勢25人です。

先生は、「夜と霧」で有名なV・E・フランクルにも直接学んだことがあるというブレンダンという初老の紳士です。

CIISの先生にしては珍しく(?)いつもきっちりした服装をしています。シャツはアイロンがあたっているし、時々ネクタイもしています。

シャツの裾はもちろん(?)ズボンの中にしっかり入っていますし靴も革靴です。

こんな人はあまりCIISにはいないので、かえって新鮮な感じです。ユング派のセラピストでもあり、ユングについてかなり多方面にわたっての授業になります。


授業は毎週テーマが決まっていて、「ユングと錬金術」「ユングと禅」「ユングとシャーマニズム」など週によって学ぶテーマが違います。

先生の服装から見ても分かるように、かなりカッチリしたアカデミックな授業内容で、毎週のリーディングもかなりの量です。

しかもリーディングした部分ついて毎週リフレクション・ペーパーを書いて提出しなければならず、読んだり書いたりと明けても暮れてもユングの世界に浸らなければなりません。

一度など、この授業がある日の朝方に真っ白な部屋で真っ白な服を着て山盛りの雪見だいふくを食べている夢を見ました。

この雪見だいふくは食べても食べても減っていかず、次第に中のアイスクリームが溶け出して指にも机にもそこら中がベタベタする、という悪夢でした。

ユング的に解釈すれば何かおもしろい心理状況が説明されるのかもしれませんが、この場合ユングの力を借りるまでも無くほぼ間違いなくこの授業に対するプレッシャーだと思われます。

リーディング・アサイメントの一例をあげれば「来週までにかれこれの本を一冊」というようなアサイメントが出されそれについてのペーパーを書きます。

次の週にはまた違う本のアサイメントが出されそれについてのペーパーを提出します。これが12週間繰り返されます。

留学生でなくともあまりの多さに音をあげる事もしばしばです。

私はといえば、いくら努力してもこのリーディングを完了させるのは無理だと早々にあきらめ焦点を絞って読むことにしました。

未読の部分が多いために授業中にはかなりの演技力を要しますが(さも読んだかのような演技?)、今の所なんとか乗り切っています。

しかしこのクラスの特徴はリーディングの量ではなく毎回行われるグループ・ディスカションです。

(なぜなら他にも同様のリーディング・アサイメントが課されるクラスがあるので)

生徒の人数が多いため、3グループに分かれてそれぞれディスカッションを行います。

ディスカッションの内容は当日の授業のテーマでも良いし、リフレクション・ペーパーの内容でも良いし、またその時の自発的なテーマでも構いません。

しかし少人数になればなるほど発言の有無が顕著になるため、何か言わなければと毎回かなり緊張します。

しかも、クラスに日本人は一人だけなので、あたかも東洋思想の代表者のようになってしまい「何かおもしろい事をいうのではないか」「自分達の思いもつかない思想や発想をもっているのではないか」という暗黙の期待を背負っているように感じます。

日本人的感覚からか「皆をがっかりさせてはいけない」という妙なプレッシャーがかかってしまい、時どき大言壮語を吐いてしまいそうになりますが、うっかりそんな事をしようものなら後々後悔することも目に見えており、毎回が自分との戦い(虚栄vs.誠実さ?)になっています。

そんな訳で、特に東洋思想が絡むような授業内容の時には一段と無口を心がけてしまいます。けれどもこの「何も言わない」という態度も、このクラスでは何故か「東洋的」と理解してくれるようでちゃっかり助かっているような次第です。

次回はIntegrative Health Scienceというクラスについてお伝えします。お楽しみに。


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立命館大学応用人間科学研究科