2005年度第5回暴力論講演会
人文科学研究所主催
「暴力論研究会第5回講演会」報告
10月7日(金)、カリフォルニア大学バークレー校のキャサリン・ギャラガー、マーティン・ジェイ両教授をお招きして、本学末川記念会館ホールにて暴力論研究会第五回講演会が開催されました。
ギャラガー教授は「他の世界から見た第二次世界大戦」の論題で、「代替歴史小説」(alternate history novels)が示す「反対の事実」(counterfactuals)の世界を「他の世界」とみなし、そのなかで(同時にそれと対比しつつ)第二次世界大戦を描き出そうとする試みの意味を問題にされました。そのうえで、「反対の事実」を作り上げることが、勝者の罪悪感を和らげると同時に、憂鬱も生み出していくことを議論されました。
ジェイ教授は、「恩寵の場にあらず―庭園にある暴力―」の論題で、西洋の幾何学的庭園に限らず、日本の庭園もまた、通常考えられているような神(や自然)から人間に与えられる恩寵の場では決してなく、自然の「力」と道具的「暴力」と人間の「権力」の間のバランスを追求する実験室であり、それゆえそこには暴力が介在せざるをえないことを議論されました。
どちらのご講演も、人間に運命として不可避的に与えられている「暴力」の問題を考えるうえで、非常に示唆に富んだものあったと思います。
講演会終了後は、末川記念会館カルムにてレセプションが開催され、参加者の間で活発な議論が展開されました。
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キャサリン・ギャラガー教授 | マーティン・ジェイ教授 |
2005年10月7日(金)末川記念会館ホールにて |

Catherine Gallagher(キャサリン・ギャラガー教授) |
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カルフォルニア大学 バークレー校 英文学部教授ニュー・ヒストリシズムの代表的研究者。ディケンズやエリオットについての研究で著名。 |
Martin Jay(マーティン・ジェイ教授) |
カリフォルニア大学バークレー校 史学部教授フランクフルト学派や、現代フランス思想についての思想史的研究で、世界的に知られる。邦訳書多数。 |