訂正版
 
 
 
顧客満足論
-第二回 Ⅱ.顧客満足の基本的考え方-
 
 
 
注意:テキスト指示の誤りに対応するため、講義要項およびスケジュールを次のように修正します
 
(1)テキスト
 テキスト:和田充夫『関係性マーケティングの構図』有斐閣 主に第5回~第7回で使用
 サブテキスト:嶋口充輝『顧客満足型マーケティングの構図』有斐閣 主に第2回~第4回で使用
 
(2)スケジュール
4/ 9 Ⅰ.イントロダクション~『顧客満足』の時代(終了)
4/16 Ⅱ.顧客満足の基本的考え方(終了)
4/23 Ⅲ.戦略としての顧客満足 (1)顧客満足をどのようにとらえるか
4/30 Ⅳ.   〃       (2)顧客満足のマーケティング
5/ 7 Ⅴ.関係性マーケティング(1)なぜ「関係性」マーケティングか 
5/14 Ⅵ.   〃      (2)関係性マーケティングの構図
5/21 Ⅶ.   〃      (3)関係性マーケティングの展開
5/28 Ⅷ.CRM:Customer Relationship Management
6/ 4 Ⅸ. 顧客満足の実践~顧客満足度調査など
6/11~7/ 9 顧客満足の現状と課題 受講生によるレポート(最後の講義でまとめ)
 
 
 
1.そもそも「顧客」とは
(1)「顧客」と「消費者」
 顧客=customer  ※「消費者」とどうちがうのか?
  顧客:サービスや物財を生産する側にとって、それらを購入する対象となる存在
  消費者:客観的に、サービスや物財を購入し消費する存在
    ・・・視点が違うことに注意。
       最終消費者1)だけでなく、中間的な存在も含む。
 
(2)現代的な「消費」と「顧客」という捉え方
 消費 = 人間が自分の欲望を充たすために生産された物財やサービスを利用すること。
 「欲望」は、客観的なその人の存在条件に規定されているので2)、ほんらいは客観的に把握できるものである。しかし、今日のように多様化した社会においては、個々人の「欲望」は、客観的に規定されたものを背景としては持ちつつも、具体的な現象としては主観的な選択として現れる。
 したがって、サービスや物財を生産する側は、客観的に把握できる「欲望」の内容ではなく、自分たちにとっての個々の「顧客」が自分たちを「選択」するようにする必要に迫られることになる。
 
(3)「顧客」満足の必要性
 顧客 = サービスや物財を提供する側から見て、自分たちの提供するものごとを消費(購入)
      する可能性がある存在。
        ※一般的な「消費者」ではなく、自分たちにとっての「顧客」
        ※「可能性」であることに注意
           ①競争がある場合は、顧客の「消費」が他へいってしまうことがある。
           ②どの程度「消費」が行われるかは「顧客」の選択にかかっている。
              →これが顧客「満足」が必要となる客観的条件
 
2.ディスサティスファクションからアンサティスファクションへ
(1)1970年代-顧客の「不満」への対応
  顧客の声に耳を傾けることを企業が迫られた最初の時代
  急成長の「ツケ」がまわってくる→欠陥商品、環境問題など消費者運動などがもりあがる
      ~不満(dissatisfaction)への対応が必要になる
企業に対するマイナスの感情への対応が求められる。
 
 (5)1990年代-顧客の「満足でない」への対応
   「不満」はない-「満足していない」
             →積極的に購買しない/仕方なく購買する
   「満足」を積極的に仕掛けることで、顧客の支持を獲得できる可能性
表3-1
(『顧客満足型マーケティングの構図』p50)







 
        dissatisfaction     unsatisfaction
性格
 
・「不満」「怒り」
・マイナスの満足
・「満足ではない」
・ゼロの満足
顧客行動
 
・コンシューマリズム
・公害告発運動、他
・これしかないから仕方なく
・よくないので買い控え
企業対応

 
・消費者相談窓口
・オンブズマン制度
・公害防止対策
・戦略的に仕掛ける満足
・満足推進
 
顧客効果
 
・マイナスをゼロにする
(怒りの鎮火)
・ゼロをプラスに
 (喜びの創出)
企業効果 ・顧客の維持(企業の存続) ・顧客の創造(企業成長)
3.戦略的顧客満足の必要性-なぜ戦略か?
 
限られた経営資源のなかで企業の成長をめざすために顧客満足を追求するためには、戦略3)が必要である。では、ここで戦略とはなにをさすのか? 
 (1)選択性:不確実な環境のもとで最適と考えられるひとつの代替案に「かける」
        →「あれもこれも」ではない
 (2)競争優位性:常にライバル企業との相対的な競争優位のための顧客満足として考える
          ※「ドリルか、穴か」の問題がここで関わってくる
         同時に、dissatisfactionへの対応とは異なる、選択的な判断が必要
 (3)投資発想:コストではなく投資として追求される →未来志向と言い換えてよいかも
          例)スカンジナビア航空の1980年代の経営改革、ヤマト運輸の例
 ※加えて、「正しい方向付け」を「正しく行っていく」こと
 
       表3-2
       『構図』p56を一部改訂



 
選択性
 
・いくつかの「よい代替案」からの選択
・適度のリスクをもつ
競争優位
 
・「独りよがり」でない顧客満足活動
・革新的な仕掛け
投資発想
 
・コストとの違い
・「損して得取れ」
 

1)購入したものを消費して使い切ってしまう存在。購入したものを用いてさらに何かを生産したりサービス活動を行う場合は厳密には消費者とはいわないが、日常用語ではものやサービスを購入すること一般を「消費」ということがあるので、あえて区別する場合にこのようにいう。
2)片方で人間の根源的な欲求として衣食住などがあり、一方にはそれを具体的にどのように充たすことができるかという社会的な生産の状態がある。これのむすびついたところに具体的な消費がある。
3)「戦略」:もともとは20世紀初頭のドイツの軍人クラウゼヴィッツが著した『戦争論』で示された概念。今日経営学においてはでは、「企業の将来像とそれを達成する道筋」あるいは「環境適応のパターンを将来志向的に示す構想であり、企業内の人々の意思決定の指針となるもの」などと定義される。一般に目標(または理念)-戦略-戦術という階層で捉えられる。