顧客満足論 質問への回答
(第3回)
 
1.全般
●「サービス」の定義とは?
 「ある主体が、他の主体にとって有用な、人、「もの」、およびシステムの機能または活動のみを提供すること」と定義しています。
 
●顧客満足が主観的な感情によるものなら、全ての顧客満足を得ることに限界がありますか。
 まず、「主観的な感情」とは決して把握不可能なものではありません。第一に主観的な感情とは言ってもその基礎にはある程度客観的評価があります。「この絵は美しいが自分の好みではない」とか「この店の味はあの店よりはよい」などです。第二に、同じ製品やサービスの購入者は当然類似のニーズ、評価軸、価値観などを持っている場合が多いと考えられるので、感情といってもいくつかに類型化したり、共通の要素をとりだしたりできるわけです。マーケティングリサーチや感性評価法といった講義でとりあげている統計的手法は、こうした「主観的感情」も含めて定量化しようとするもので、効果をあげています。
 もうひとつは、「全ての」という言葉に関わります。いずれにせよある製品やサービスをもって万人の要求に応えることはできませんし、逆に一人の人のすべての要求に応えることはできません。つまり、ターゲット・セグメンテーションは何らかの形で行われているのであり、それは議論の大前提です。
 
2. 機能充足仮説と対応
●サービスが充実すると、表層サービス→本質サービスへと転化することがありますか。   
●本質サービスと表層サービスの区別が困難になっているのではないですか。
 従来表層部分と位置づけられてきた機能やサービスの要素を、それを不可欠と考えるようなニーズ、ウォンツに対応するものとして新たに再構成することはありうるでしょう。そうした意味では本質と表層は相対的ですが、個々の製品やサービスにおいてはグレーゾーンがあるにせよ二つの要素を区別して考えていくことが必要なのは、戦略的な方向性についてふれたとおりです。
 
●本質機能で評価の大部分を占めるサービスはありますか。
 ごく基本的な製品やサービス、たとえば鉛筆や公衆電話などはそうでしょう。
 
●本質サービスを果たしている時点で満足は「ゼロ」の位置になるのですか。
 本質部分が最低限を満たした段階です。
 
●表層サービスがなくとも満足度がゼロ以下にならないというのは違うと思うのですが。
 なぜそう思うのかがわからないと答えようがないので、再質問をお願いします。。
 
●消費者の期待水準をはかるためには具体的にどのような方法があるのでしょうか。
 大量の消費者について的確に把握しようとすれば統計的な手法を用いることになります。コンサルタントなどはそうした手法をもっています。
 
3. 機能代償仮説と対応
●表層機能が多ければいいというわけではないと思うのですが。
 ものには限度があるのは当然です。
 
●機能代償仮説を戦略的に使うとしたら、どのように使えばよいですか。
 統合戦略で示したように、製品やサービスの表層的機能・サービスについては、自分たちが潜在的競争者に対してより競争優位を実現しやすい要素や、顧客が重要視する要素などに集中して強化し、逆に優位が保てないものや十分に顧客の期待に応えられないものについては期待を少なくする方向性をとり、全体として効率的に満足度を高めると言うことになります。
 
●予め期待をもたれない事業では、その期待度の調整はどのように行えばいいのですか。
 統合戦略で示したように、その内容に満足が達成される可能性が高ければ期待を引き上げる努力をし、そうでなければ事業そのものを見直すことです。
 
●本質機能ですべてをつぶした場合、どのような手段なら効果的に克服できるのでしょうか。
 本質機能で決定的に低い顧客の評価を受けた場合に回復するのは困難ですが、顧客に大きな損害を与えていなければ、うまくリカバリーすることによって、そのリカバリーを高く評価してもらうことで満足度を高めることができる場合もあります。。
 
4. 知覚矯正仮説と対応
●期待<評価といった場合、どういった作用が働くのでしょうか。
●期待より評価が高い場合、評価を下げようとするのはなぜですか。
 再三言ったとおり、人間の心理には「自分が間違っていない」というふうに思いたいという作用があると考えられています。事前の期待より事後の評価が高い場合は、事前に自分が実際より低い評価をしたという誤りを犯したと考えることが可能で、そうするとすでに完了している事前の期待を改めてあとから引き上げるのは困難(そうしてしまうこともありますが)なため、評価を客観的評価より引き下げて自分を納得させようとするのです。
 
●期待を変化させるのに、広告、口コミ以外でどんなものがありますか。
 反復購入される製品・サービスなら前回購入時に対する評価があります。その他プロモーション手段はすべて役割を果たす可能性があります。
 
5. 顧客満足化の方法と統合戦略
●低プライオリティ戦略をとることは効果があるのですか。
 あります。機能代償仮説で示したように、特に表層機能・サービスは代替性があるからです。
 
●期待上昇戦略とは、メディアを通じてアピールするということなのでしょうか。
 メディア以外の手法ももちろんあります。マーケティングにおけるプロモーションを復習してください。
 
●統合戦略の各戦略が理解しにくかったです。
 図をよく見てください。