顧客満足論
-第6回 関係性マーケティングの構図-
※テキストは認知心理学やその他のいろいろな要素をごった煮にしているので用語法などがたいへんむつかしいが、言っていることはそんなに複雑なことではない。
著者が、まだ問題を整理し切れていないことがうかがえる。
1.「関係性」をどうとらえるか
(1)関係性の対象範囲と形態
①一般的な意味での「関係性」の範囲(図3.1)
②とりわけ直接的・特定的なケース ・生産財メーカー
・サービス業一般
(2)従来のマネジリアル・マーケティングと関係性マーケティングの違い
①潜在需要から需要の「共創」へ(表3.1)
②マイ・カスタマーとマイ・ブランド
長期継続的、リピート取引の重要性
2.関係性マーケティングの枠組みと内実
(1)枠組み:コミュニケーション・プロセスとしてマーケティングをとらえる
①説得的コミュニケーション・モデルからの脱却
「説得される消費者」から「自ら需要を作り上げる消費者」へ
②情報処理アプローチから体験主義アプローチへ(表3.2)
※この表では「対象」が対比のためにまったく分割されているが、実際には一般の財・サービスでも体験主義的アプローチが必要な場合もあり、娯楽やレジャーでも情報処理アプローチが適切な場合もある(前回講義の「生活基盤形成」と「豊かさ形成」の対比を参照)
③Two Staged Communication Process
説得的コミュニケーションとインタラクティブ・コミュニケーションの複合が必要
演劇の例~
a)劇場に足を運んでもらう:説得的コミュニケーション
主にはトライアル(お試し)への誘導
b)リピーターになってもらう:インタラクティブ・コミュニケーション
観客自身のサービス活動への参加を含めた双方向性
このために、「明日の糧」のための取り組みが必要になる
注:a)の場合でも、生活基盤形成のための財についての説得とは考え方が異なる。
トライアルを誘導するためには「あいまいさ」「想像」「期待」が必要
(2)内実:信頼と融合
①非認知的な「信頼」概念の重要性
交換(取引)の繰り返しによって積み重なる信頼ではない。
パフォーマンス・リスクを覚悟した、より感情的な「信頼」による関係性構築
※こんなことがほんとうにあるのか?
→高い事前期待
→プロフィールの類似性は、感情的信頼の発生源になる
(価値観の類似性、経験の共有などが期待できる)
→その他の要素、相性(これは統御不可能だが)
②主体と客体の「融合」
著者は「感動」などを強調しているが、それほどおおげさに考えなくてよい。
プロセスとしては
場や経験の共有→共感→両者が共同でなにかにとりくむ→新しい創造
要は、ソリューション満足における「ワークショップ型」に似ている
(3)まとめ
①今日における交換(取引)においては、その結果得られる便益それ自体よりも、消費プロセスに重点がおかれる傾向がある。
最終消費者においては、「生活の豊かさ形成」部分における快楽的消費
企業・組織相互間においてはワークショップ型ソリューションの重要性
②また、上記のようなケースにおいては、往々にして消費する側も何を自分が求めているのかわかっていない。よってトライアルへの誘導と、トライアルでの経験を高いリピートにつなげる活動が必要である。
トライアルでは説得的コミュニケーション
リピート促進にはインタラクティブ・コミュニケーション
③サービス商品が一般にそうであるように、プロセスそのものの消費は、事前にその品質を確認できないので、いずれにせよ事前の「信頼」が選択や評価において決定的になる。
この場合の「信頼」は価値観の共有や事前期待の高さによってもたらされる。
事前の検証や実績の積み重ねで生じるものではない。
④「信頼」をふまえて共同でつくりあげていく作業が、長期・継続的な取引の実現においては重要である。
図はいずれもテキスト(「関係性マーケティングの構図」)所収