2001/04/16
顧客満足論
−第二回 企業成長と顧客満足−
T.そもそも「顧客」とは
1.「顧客」と「消費者」
顧客=customer ※「消費者」とどうちがうのか?
顧客:サービスや物財を生産する側にとって、それらを購入する対象となる存在
消費者:客観的に、サービスや物財を購入し消費する存在
・・・視点が違うことに注意。
最終消費者1)だけでなく、中間的な存在も含む。
2.現代的な「消費」と「顧客」という捉え方
消費 = 人間が自分の欲望を充たすために生産された物財やサービスを利用すること。
「欲望」は、客観的なその人の存在条件に規定されているので2)、ほんらいは客観的に把握できるものである。しかし、今日のように多様化した社会においては、個々人の「欲望」は、客観的に規定されたものを背景としては持ちつつも、具体的な現象としては主観的な選択として現れる。
したがって、サービスや物財を生産する側は、客観的に把握できる「欲望」の内容ではなく、自分たちにとっての個々の「顧客」が自分たちを「選択」するようにする必要に迫られることになる。
3.「顧客」満足の必要性
顧客 = サービスや物財を提供する側から見て、自分たちの提供するものごとを消費(購入)
する可能性がある存在。
※一般的な「消費者」ではなく、自分たちにとっての「顧客」
※「可能性」であることに注意
@競争がある場合は、顧客の「消費」が他へいってしまうことがある。
Aどの程度「消費」が行われるかは「顧客」の選択にかかっている。
→これが顧客「満足」が必要となる客観的条件
U.企業成長の条件(テキスト第1章)
1.はじめに−事業の成長原則
企業3)や事業4)の成長には原則がある
2.事業成長の条件−効果的効率主義の原則
(1)効果と効率
いかなる事業であっても成長する事業の運営は「効果」と「効率」で支えられる。
効果:事業環境5)に適合している状態
もっとも重要な環境は市場6)あるいは顧客ニーズ7)。
したがって・・・
効率:事業に投入した経営資源8)と、そこから得られるリターン(一般には利益)の比率。
両方が必要・・・事業を活かしてくれる顧客に喜んでもらえる効果的事業運営
効率的な事業運営
しかし、これらを同時並行的に追求するのはむつかしい
(2)効率主義から「効果的効率主義」へ
効率優先時代の終焉
効果的効率主義とは
※「効率」否定論ではない
3.原則実行の困難性
なぜ「効果的効率主義」の実行が困難なのか
〜既存の経営資源を効率化すれば、少ないリスクで安定的に利益を生み出せる
〜いっぽうで「効果」はとらえにくい
4.ひとつの事例−病院経営の常識と原則実行の困難性
5.当たり前の成長原則と実行
病院経営の常識→効率的だが患者にとっては?
なぜそれが常識になってしまったのか:
これからの病院〜「患者が病院を生かす」時代へ 例)篠ノ井総合病院(長野県)
※注:病院の収入は「診療報酬」の規定に拘束されるので、「よい病院」でありさえすれ
ば経営的に成功するとはいえないという問題があるが、テキストではとりあえず無
視している。ここでの要点は、あくまで「患者本位の病院」という考え方が効果を
生むということ。詳しくは、「医療ビジネス論」などでどうぞ
6.困難克服と投資発想
必要なのは「投資」という発想、「コスト」ではない。
いわば「喜びの投資」(ちょっと表現がカルトっぽいが)
例)宅急便
7.効果的効率主義とマーケティング
「喜びの投資」と同時に「捨てる思想」が必要
※マーケティングとは
一般的定義「個人や集団が価値のあるプロダクト(製品やサービス)を創造し、
提供し、交換することによって、各々のニードやウォント9)を満たす
社会的、管理的プロセス」
8.マーケティングの思想と実践
マーケティングの本質的役割は「売れる仕組み」や「成長の仕組み」を事業単位10)ごとにつ
くること。
このために・・・@市場のニーズの芽を探索、発見、確認する
A売れる仕組みをつくる
→結局は戦略11)の問題となる
9.まとめ
講義ホームページ:http://www.ritsumei.ac.jp/ba/~kondok/cs/c_index.htm
1)購入したものを消費して使い切ってしまう存在。購入したものを用いてさらに何かを生産したりサービス活動を行う場合は厳密には消費者とはいわないが、日常用語ではものやサービスを購入すること一般を「消費」ということがあるので、あえて区別する場合にこのようにいう。
2)片方で人間の根源的な欲求として衣食住などがあり、一方にはそれを具体的にどのように充たすことができるかという社会的な生産の状態がある。これのむすびついたところに具体的な消費がある。
3)企業:厳密な定義はそれとして、ここでは利益を直接の目的としてなんらかの事業活動を行う組織、と考えておいてよい。さらにいえば、利潤を直接の目的としない非営利組織においても、顧客満足の考え方は有効であるが、それについては後ほどふれる。
4)事業:企業などの組織が行うものの生産やサービスなどの活動。
5)環境:ここでは事業を取りまくさまざまな条件のこと。たとえば法律、制度、市場の動向、顧客ニーズ、社会的風潮など。
6)市場(しじょう):商品やサービスが取り引きされる場。ここでは抽象的な概念。
7)ニーズ(needs):基本的な満足がえられていないと感じる状態(need)の複数形。→ウォント
8)経営資源:俗にいう「ヒト」「モノ」「カネ」。事業を行うのに必要なものの総称。
9)ウォント(want):ニーズを満たす具体的な事物への願望。たいていは複数形(wants)。
10)事業単位:企業などの組織は、実際には複数の事業活動を行っていることが多い(家電メーカーを考えよ)。その一つ一つの事業を行う単位(製品、地域、事業部など)をさす。もちろん、一つの企業で一つの事業しか行っていないときには企業が事業単位である。
11)戦略(strategy):一般には「組織がその環境に適応して活動していくための指針」。実際的には、企業などの組織がどのような分野で、どのような活動(製品の生産やサービスの提供など)を行って存続・発展していくのか、の大計画。