2001/05/21
顧客満足論Q&A−第5回(5/14)分−
一 権限委譲、 ピラミッド型について
1 逆ピラミッド型組織作りが重視されるのは、「現場・顧客との接点」を重視するからなの?顧客満足を考えた場合の組織?ほかの場合にも当てはまるの?
「現場・顧客との接点」を重視するからです。他の場合とは? 顧客満足をほとんどあらゆる企業が考える必要がある今日では、この考え方は非常な普遍性があります。ただ、リーダーシップが不要だと言っているわけではありません。
2 逆ピラミッド型は今までとは異なり、TOPの役割が変わると思うが、そこの点はどうなるの?
その通りです。どのように変化するのかは業種にもよりますが、一般的に言われるのは理念や企業文化を創ったり、あたらしい分野へ切り込んでいく際のリーダーシップや戦略的決断、ということです。現場や顧客の接点から流れてきた情報をもとに、判断し、方向性を指し示すということになるでしょう。考えてみれば、少なくない偉大な経営者は、すでにそういうことをやってきているんですよね。
4 顧客満足を実行するときの組織対応として、逆ピラミッドの組織作りをする傾向にあるか、なぜこの現場から、TOPへ情報を伝えることが難しいのだろうか?
5 現場の判断の重視というのはわかるが、逆ピラミッド型の組織とは言い過ぎでは?
6 会社の組織体系をピラミッドから逆ピラミッドにするのはなぜ20年かかった今も移れないのか?逆ピラミッドに何か問題があるからではないのか?
11 逆ピラミッド型組織作り、改善した管理・評価システムは、今、特に望まれていることなのに、なぜ企業は、変革することができないのか?
従来のピラミッド型の組織は、上層部が決めたことを現場が実行する、という考え方に沿ったものです。従って、情報は常に上層部から現場へ流れで、逆のルートはありませんでした。組織にはある種の慣性があり、組織図を変更したくらいではあり方はなかなか変わりません。「逆ピラミッド」というくらいの言い方をしないと、従来のやり方がなかなか変わらないのです。ちなみに「逆ピラミッド」という言葉自体は、アメリカの経営コンサルタント、カール・アルブレヒトの『逆さまのピラミッド』という80年代に一世を風靡した本に由来しています。
7 権限委譲が顧客との接点に事業全体の主軸を置くのはわかったが、「真実の瞬間」というものは何?接客のこと?
「真実の瞬間(moment of truth)」は、もともとスペインの闘牛の用語で、とどめをさすときのような決定的瞬間をさしていうようです。これを、スウェーデンの経営コンサルタント、ノーマンがサービス提供者のシステム全体が、従業員と顧客とが接触する点に集中的に表現される、ということの比喩として使ったものです。これを、1980年代に非常な話題を呼んだスカンジナビア航空の経営改革を主導した当時同社CEOのヤン・カールソンが自著のタイトルに使ったため、よく使われるようになりました。
8 本質的なサービスにおいて、なぜ満足度をグラフにできるのか?本質的なサービスを金銭で購入しているのだから、本質的なサービスに関して満足度を図るというのはおかしいのでは?本質的なサービスは、いわば満たしていて、「あたりまえ」なので、0か、それ以下不満になるのではないのか?
たとえばレストランの料理の場合、一定以上の「味」が当然であるという意味でこれは本質サービスです。しかし、その一定以上、というのはall or nothingではなく、「以上」の上には幅があるはずです。そして、それが上に行けば当然満足度には反映します。
9 逆ピラミッド型の組織が実現されている具体的な企業や組織はどこ?
10 逆ピラミッドの場合、一番下の現場の従業員が少なくなるために、じかに顧客に接する機会が減少し、顧客満足が低下するのでは?
12 現場の声を生かすために、図をひっくり返しただけ?それとも中間の意思決定の人をできるだけ除く、というもの?
13 権限委譲はメーカーにとっても他人事ではないというのはどういうこと?
15 流通の変化によって、メーカーと顧客との接点は多くなったと思うが、これによって権限委譲の重要性もさらに高まるのだろうか?
14 権限の委譲に関して、ピラミッドの形は状況に応じて、変化しないのか?状況に応じて形を変化させているようでは権限委譲が行われていないとみなされるのでは?
二 理念と組織ビジョンに関して
1 理念イコール組織ビジョン?
2 従業員満足が顧客満足につながるのはわかるが、言い方を変えるとトップが従業員を「つる」ということではないのか?従業員にもトップと同じ意識が備えていれば、問題ないのだが。
3 従業員を意欲的に働かせるということがなぜ顧客満足に通じるのか?従業員のやる気が上がるからなの?
「つる」というのがいまひとつどういう意味かわかりませんが、従業員が内発的に意欲的に仕事をすることが必要であり、そのためには上から仕事を指示するのではなく、従業員自身がやりがいや満足を感じることが必要だと言うことです。そのためには、トップと同じ意識ということではなくて、その企業の理念やビジョンと、従業員自身のやりがいや満足感をだぶらせることができるようにすることが重要です。宗教団体やボランティア組織がなぜ自発的な勤労に支えられているのかを考えてみてください。
三 全般に関して
1 知覚矯正のメカニズムはなに?「対比」とは何か?
2 知覚矯正仮説のこと、期待を高めすぎては、顧客にがっかり感を生じさせる、または大きくさせるということは、宣伝などでも張り切りすぎないほうが得策なのでは?
3 表層のサービスの優先順位は業種によって変化するのだろうが、そのタイプとしてはどのぐらいあるだろう?
4 トップの管理能力を改善していくに必要なことは何?
5 知覚矯正は無意識にやっているが、一部意識的にやっているなどはっきりしなければサービスの徹底はできないのでは?同業他社で競い合いしてサービスが区別つかない場合はどうしてもCMも含めた対外的アピール戦略が欠かさないものとなってくると思われるがそう考えるとこういったものも表層サービスの一環になるのではないだろうか?また、本質表層とも高いといわれる会社がその環境を作るためにマニュアルを導入して管理しているのであればそれは従業員満足が高いとの矛盾が生じているのではないなのか?
知覚矯正は基本的に無意識に行われ、矯正したこと自体を顧客は認識しません。また、意識的に行われる場合でも、「期待を下げた」「評価をあげた」というように認識されるのではなく、「他の人がいいと言っているので、やっぱりいいのかな」など間接的にしか認識されません。
表層であれ本質であれ、サービスや機能というのは、実際に顧客に提供されているものごとそれ自体であり、宣伝は全く違います。表層サービス・機能、本質サービス・機能というものがなにをさしているのかよく理解してからもう一度質問してください。最後の質問はちょっと意図がつかめません。具体的に質問してもらった方が良さそうです。
6 顧客満足の実行で、権限委譲、組織対応やコントロールシステムなどが必要というが、一番重要なのはなんなんだろうか?
7 顧客が満足を得るといっても人によってそれぞれ満足度が違うと思うのだが、その満足度は誰が基準を定め、顧客にアピールするのか?
8 事前期待を少し低めに設定するっていってたが低いと人が寄らないのでは?
9 期待と評価を近づけようとするA−B、事前の期待に評価を近づけようとするB−Cはおなじ「同化」であるが、顧客にとってはどちらが満足するのか?これも個人の問題なのか?
これは概念図ですから、どちらが、とか個人の、とかではなく、一般的な人の心の動き方の傾向を示しています。グラフのラインも当然具体的なものではありません。7,の質問もそうなのですが、「満足」をいかに達成するのかについてのここでは基本的な捉え方を講義しているのであって、具体的にある事業を通じて顧客の満足をどのように達成するのか、は個別具体的にしか考えることはできません。個々の顧客における捉え方の違い、といった問題はその次元で初めてでてくる課題です。
10 顧客満足の捕らえ方は、あるひとつの決まった形で標準とか基本みたいに考えなくてはならないのか?それぞれ自由な考えで顧客満足実現する行動を進めていったのでは意味はないのか?
好きずきに考えたければそうしたっていいですが、そういう主観的なやり方で成功するでしょうか? 顧客満足をどのようにとらえるべきか、ということを実際の経営実践と心理学の研究をつきあわせたところで、「顧客の心理とはこう動く傾向にあるから、満足を達成するとはこういうことなのか」というのを明らかにしてきているのです。
11 メーカーが顧客との接点を持とうとしたのは、今に始まったことなのか?
接点それ自体は昔からありますが(お客様相談室のようなものはどこにでもある)、たいていは苦情対応や、せいぜい新製品モニター程度でした。そうではなくて、顧客との接点から得られた情報によって、次になにをすべきか、今なにをすべきかを考えるべきだと言われるようになっているのです。
12 満足のピラミッドに関して、表層の部分のa、b、c、のうちたとえばaとbがかけている場合、すべて満たしている場合に比べて満足度は下がるのでは?
これは概念図です。説明したように、表層機能・サービスは積み上げではなく並列した存在で、相互に代替可能だとということを図示したものです。したがって、たとえばいまある表層機能・サービスのいくつかが突然失われる、というようなことを示しているわけではありません。
四 事例や体験に関して
(1)アイスクリーム
1 顧客満足を高めるサービスは全体的に行うもので、個人的に行われたものは別にないのか?
2 ほかのお客さんから不満は出るのでは?
3 ほかのどの顧客にもするわけじゃないので、顧客を選ぶ、差別することになっているのではないか?
4 おごることはサービスにならない?
5 味を求めていったら、アイスのサービスは表層サービスということになるのか?
(2)その他の経験
1 モスとマックどちらが顧客満足をより実践していると思われるのか?
2 最近、家電メーカーはオープン価格にする傾向が強いが、それは顧客主観的評価を下げさせないためというのもあるのだろうか?
3 新幹線の特急券あるいは乗車券の話で、買った空間の途中までしかいけなかった場合に関するチケット代金の返金についてよく知らない人が多いはず。このようなときには、返金が可能となるといったことをもっと大きな声でそのサービスを言うのが顧客満足につながるのでは?それとも知らない人の分の代金をもらうことの利益を優先しているのだろうか?
ほんとうに途中までしか行けなかったときには案内しているはずです(もしやっていなかったら重大なミス)。ただし、迂回やバスによる代行運転が行われてとにかく目的地まで到達できる場合や、多少の遅れの場合はこの対象にならないので、めったなことではおこらないため、日常的には案内していないのでしょう。
4 松下の場合は今日意味がないというのはどういうこと?
5 ホテルの場合、いくら顧客満足をさせたくても、お客さんがこなければ、何もできない気がする。だから、どのようにお客を呼ぶかがポイントになってくると思うが、そこにも顧客満足は発生するのか?
第一に、顧客満足とは単に来たお客さんにいい思いをしてもらうと言うこととは根本的に違うと言うことです。戦略について話したことを思い出してください。そして、顧客満足が達成されている、あるいは達成できるホテルにお客さんが集まるのです!
6 コンビニで客が求めるサービスとはどんなものなのか?
7 ユニクロのような店があるから、街でばったり同じ服の人が多くなるということが起こりやすいという点で、CSピカイチとはいえないのではないだろうか?
世の中全体として、あるいは自分の好みとしていいか悪いか、という価値観の問題と、ある企業の事業活動がその企業の顧客に満足を与えているかどうかはまったく別な問題です。もし、多くの顧客が「他の人と同じ服はイヤだ」と思ったなら、早晩ユニクロの手法は行き詰まり、その時点で顧客満足の達成に失敗したと評価されるわけですが、いまのところそうはなっていないですね。
五 その他
1 グループレポートの体裁も個人レポートの体裁を同じで4000字以上8000字以内A4横書きでいい?
2 グループ発表のレポートのテーマをもしグループで話し合っているときに変えたいという意見が出たとすると変えることはできるのだろうか?
六 その他の要望
QandAの回答はとても大切だが、一日進む授業の量もう少し増やしてください
進め方の不手際については改善の努力をしますが、、最初にも述べたようにこの講義では基本的なことをきっちり理解してもらうことに重点をおいています。したがって、理解不十分なところはしつこくやりますし、やみくもにたくさんの内容をもりこむことは考えていません。