2002年11月14日
 
マーケティング論
第7回 製品戦略
 
 
 
 
 
Z 製品戦略 (テキスト第6章)
 
1.製品とは何か
(1)あなたは、何を買っているのか
 もう一度T.レヴィットの議論に立ち返る。「ドリルを買いに来た人は、ドリルが欲しいのか?」
 
 
(2)「製品」という概念は重層的である
 @「製品」のもつ多様な要素
 「製品」のイメージを考えてみよう。
例えば「携帯電話」なら?
   「ラーメン」なら?
   「地下鉄」なら
 A中核となるものはなにか
製品の中核としての便益・サービス:これがなければ商品として成立しない
 B具体的な製品像をかたちづくる実体
見た目やブランド、品質が実際の製品についてのイメージを形成する
 C製品に付随するさまざまなサービス(「拡大された製品」)
購買選択において時に決定的である。
 
(3)製品ミックス
 製品ミックス:「製品ライン*1」と「アイテム」の組み合わせ
   製品ライン:共通した何らかの要素でまとめられる製品群
         ラインの数を「製品ミックスの幅」という
   アイテム:製品ラインのなかの、独立した製品品目。
        これが多いほど「品揃えが豊富」=製品ミックスが「深い」
   製品ラインがばらばらではなく、相互に関連性が高ければ「製品ミックスに一貫性がある」
 製品ミックスをどのように組みあわせるかは
  メーカーにとっての製品政策の基本
  小売業にとってはマーチャンダイジングの基本
 
(4)フルラインかショートラインか
 フルライン政策(戦略):製品ラインを増加させ、製品の領域についてできるだけ完全なラインを
             保有しようとする政策。たくさんのセグメントを対象とする。
             市場支配力は強まるが、コストもかかる。
 ショートライン政策(戦略):ラインの縮小やアイテムの絞り込みを図る動き
 
 
2.ブランド
(1)ブランドとはなにか?
 高級ブランドだけが「ブランド」ではない
ブランドとは、「売り手の製品を識別し、競争相手と差別化するための、名前、用語、デザインなどおよびそれらの組み合わせ」
 ・識別を製品アイテム単位で行うことを意図すれば、製品名=ブランドとなる
 ・識別を製品群を単位で行うことを意図すれば、ブランドによってある製品群を表す
    例)WILL
 ・企業名も、その企業の製品全体を代表するブランドとなりうる
 
(2)誰がブランドを発信するか    
 @ナショナル・ブランド
    大手メーカーが自社の製品をブランドとしたもの。 例)PANASONIC(松下電器)
 Aプライベート・ブランド(PB。ストア・ブランドともいう)
    小売(または卸売)業者が自社の仕様でメーカーに発注してつくらせたもの。
     例)セイバーズ(ダイエー)、無印良品(良品計画)
    ※なぜPBは安いのか?
 
(3)なぜ「ブランド」で買ってしまうのか
 無名の製品にもいいものはいっぱいある。なのになぜ・・・?
  例:OEM(Original Equipment Manufactureing=相手先ブランド生産)の不思議
 @ブランドは品質保証の表現である
 
 Aブランドは一貫性の保証でもある   例)「無印生活」
 
 Bブランドそのものが消費の対象にもなる
    →この点、詳しくは石井淳蔵『ブランド−価値の創造』岩波新書、を参照
 
(4)売り手の側から見た「ブランド」
 @ブランドの持つ意味
   「ブランド・ロイヤルティ」の重要性
 
 Aブランドが「資産(エクイティ)」としての価値をもつ
 
 
(5)ブランドに関する決定のプロセス (テキストにはありません)
 @ブランドか、ノーブランドか
 A誰のブランドにするか
 Bブランドの名前をどうつけるか
 C既存ブランドの拡張で行くのか、新規のブランドにするのか
 D既存ブランドはこれでよいのか〜リポジショニングの必要性
 
 
<質問への回答>
 
○第5回講義に関して
 
1.ブランド・マネージャー制について具体例を上げて詳しく説明して欲しい。
    別紙コピーのGMの例参照。
 
2.ターゲティングについて教えて欲しい。どういうことですか?
 市場細分化(セグメンテーション)を行った上でどのセグメントを対象に製品やサービスを提供するかを決めることです。実際には、自社の経営資源からしてどのような製品やサービスを提供できるか、ということからターゲットを定めることもあります。
 
3.3つの基本戦略のところがよくわかりません。2つを同時にできないのですか。なぜ、コスト・リーダーシップと差別化が同時にできないのですか?どうして無理なのかがわかりません。また、どれを使うかはどのように決定されていくのでしょうか? 
 差別化には一般にコストがかかるため、コスト・リーダーシップとの両立が難しいのです。両方を同時に追求しようとすると、判断基準が分散し、経営上の意思決定が混乱しやすくなります。
 どの戦略をとるのか、はまさにこれまで説明した戦略的な意思決定のプロセスにそって判断されます。
 
4.SWOTの分析についてのところがわかりにくかったです。例をあげて説明して欲しいです。また、具体的に応用できるものは何でしょうか?
   →別紙コピー参照
 
○第6回講義について
 
1.外国も市場のひとつであり、そこで日本企業が外国を相手にどのようなマーケティングを行っているのか。また、外国市場も日本と同じようなセグメントに分別されているのでしょうか。
    前半は自分で調べてみましょう。後半はその通りです。
 
2.製品特定型と市場特定型の弱点は何ですか。
 対象が限定されるので、その特定された対象で強力な競争相手が生まれたり、その市場がなくなったりすれば、厳しい状況におかれます。
 
3.認知の方法について詳しく知りたいです。
 認知プロセスの具体的なものは心理学に近くなります。参考文献を探してみます。
 
4.規模の小さい企業はポジショニングとしてどのような活動をしているのですか。
 いちがいにいえませんが、何らかの形で特定化を図る場合が多いでしょう。
 
5.多品種を販売している店舗では、どの標的選択のパターンに当てはまるのですか。
 「多品種」という場合の品種構成がどのようなものかによって違います。ある店舗をとりあげて、どれがどのようなパターンにあてはまるか考えてみませんか。

*1ライン:この場合は「線」ではなく、もともとは「(型・大きさ・値段・品質に差のある)在庫商品、仕入れ品;その種のもの」(小学館プログレッシブ英和中辞典)という意味から来ている。