2002年12月19日
 
 
 
 
マーケティング論
−第11回 流通システムとチャネル戦略−
 
 
 
 
 
 
]T チャネル政策
 
1.流通チャネル
(1)流通チャネルとマーケティング・チャネル
 4Pのなかの”Place”がチャネル。マーケティングにおける「場所」と「移動」に関わる問題。
@流通チャネル
     生産者から消費主体(生産的消費、個人的消費を問わず)までの製品の流れに介在
する多様な事業者や機関を、製品の流れに沿ってとらえたもの。
中核となるのは卸売りや小売り事業者などの中間機関。
※なぜ中間機関が必要なのか・・・「中抜き」問題とも関連して
 
Aマーケティング・チャネル
流通チャネルを、マーケティング主体の側から見た呼称。
 
(2)チャネルの段階数とタイプ
@ゼロ段階:ダイレクト・マーケティング(通販、訪問販売など)
A第1段階:a)強力な小売り事業者
          b)系列販売店
B第2段階:卸売業者の介在(一般的)
C第3段階:卸売業者が複数存在(農産物などのケース)
 
(3)垂直的マーケティング・チャネル(VMS)
   VMS=Vertical Marketing Systems :生産者、卸売業者、小売業者を一体化したシステム
   今日では、個別企業というよりもVMS同士の競争が激しいといえる。
@企業型VMS:生産者・流通業者が企業統合しているもの。
例)メーカーの系列販売会社、小売業のPB
A契約型VMS:相互に独立した生産者、流通業者が契約関係によって統合しているもの。
例)ボランタリー・チェーン*1
  フランチャイズ・チェーン*2
B管理型VMS:チャネルを構成する事業者のうちの一つが、その持てる力によってチャネ
           ル全体を指導的に組織していくタイプ。セブンイレブンの例が有名。
 
(4)チャネル・キャプテンと流通システム
   チャネル・キャプテン:チャネル構成員をまとめて主導権を発揮する存在
@生産者主導型:大規模メーカーが主
A卸売業主導型:生産者・小売業者とも多数の場合。出版など
B小売業主導型:大手小売業(大型スーパーなど)が主
C消費者主導型:生協など
 
(5)メーカーのチャネル政策
@開放的チャネル政策:チャネルを特定しない。多数の消費者との接点が必要な場合。
   メーカーの支配力は弱い。
A選択的チャネル政策:自社製品を取り扱う中間業者を選別し、支配力の強化をねらう。
B専属的チャネル政策:特定の小売業者にのみ取り扱いさせる。
 
2.物的流通と情報システム
(1)実際の物流システム
物流:文字通り物の流れ。これをどう効果的・効率的に構築するかが重要。
       以下の要素からなる
         輸送
 保管
 荷役
 包装
 
(2)物流と情報
物流の効率化のために、情報システムが活用される。
    もっとも特徴的なのがPOSシステム*3
<質問への回答>
 
○コスト志向型価格設定法で「適正な利潤」が問題となった。利潤を多くすると後で言い訳ができない。ならば、このような時に「適正な利潤」の決め手は何か。
 決め手がない、のが問題なのです。
 
○鉄道運賃がコスト+利潤の「適正な利潤」というふうに、なぜ設定されるのか。そして、そのように設定した理由を発表されているのでしょうか。この理由は消費者に知らされなければならないと思います。
 公式の説明では、鉄道は公共性が高いので、安全かつ安定的に運行してもらうよう事業者にインセンティブを与える必要があり、そのために一定の利潤を保証しなければならないという考え方です。しかし、この仕組みには今日企業側からも利用者側からも問題が指摘されています。
 
○現状の経済は、不完全競争市場であり、価格が企業によって操られていることがあまり理解できなかった。企業が提示した価格を消費者が受け入れているとも考えられますが、しかし、消費者の需要が無ければ企業は利潤を得られないと思います。ならば、消費者が価格を決めていると考えられるのではないでしょうか。
 一つには、情報の非対称性。すなわち、消費者は原価についての情報を十分に得ることは不可能なので、価格競争があったとしてもそれがそもそも適切な水準での競争なのかどうか判断できないということ(不当に高い、だけでなく不当に低い、すなわちなんらかの品質低下などが背後にあるかも知れないが、それもはっきりわかるとは限らない)。第二には、価格競争自身もなんらかの形で企業側が仕掛けているということ。つまり、価格それ自身がマーケティングの手段なのですから、消費者側に主導権はないということです。
 
○他社と差別化するために価格を下げたとしても、市場で受け入れられなければ、企業はどうするのでしょうか。
 別な手法で市場にアプローチするしかないでしょう。差別化を図るなど。
 
○「管理価格どうしの競争」といえども、開発した会社に利益があったとしても、その下請けには利益が出ずに苦しんでいる会社も多いと思いますが。
 管理価格同士の競争だからこそ、下請けが苦しむのです。上の質問にも答えたように、価格は不当に低く操作されることもあり、その場合しわ寄せは従業員なり、下請け業者なり、中間業者なりに転嫁されることになります。
 
○価格の管理・カルテル・紳士的協定は資本主義の考えに反することだが、ならば理想的な価格競争はどのようなものか。
 完全市場でしょう。しかし、それがほとんどあり得ないことは説明したとおりです。ここに、資本主義システムのひとつの原理的な矛盾があります(だからといって計画経済がよい、というわけではありません)。
 
○完全競争の条件として、消費者がより知識を必要となるのはなぜか。商品は同質であるならなぜ知識が必要なのか。
 上の質問でも答えたように、価格が適正な水準で競争が行われているかが消費者が判断できないといけないからです。
 
○国内と国外では、同じ商品に対しての消費者の見方や価値が異なると思いますが、企業はどのように対処しているのでしょうか。
 この質問は一般的すぎます。個々の企業がその製品やサービスの特質に応じて行っている、としかいいようがありません。
 
○今回、消費者金融というサービスについてレポートを行うことを考えていますが、ファイナンスインスのサービスについてのレポートは対象となるでしょうか。
 けっこうです。

*1 ボランタリー・チェーン:独立した小売業者が組織化・協業化を図るもの。ロゴの統一、共同仕入れ、共同販促などによって効果的なマーケティングと効率化を図ろうとする。
*2 フランチャイズ・チェーン:典型的にはコンビニ。形式的には独立した小売業者が、一定の加盟料と手数料(ロイヤリティ)の支払いを条件に、本部の提供する経営指導、商品提供、共同販促などのサービスをうけるもの。実際には本部のサービス提供が十分でない場合やロイヤリティが高額でほとんど小売業者の利益が残らないチェーンもあり、しばしば問題になっている。
*3 POSシステム:Point of Salesの略。日本語では販売時点情報管理システム。すべての商品にラベリングされたバーコードをレジで読みとるなどの方法によって、店頭の在庫や商品の売れ行きを、店舗ごとに時々刻々把握し、それに基づいてもっとも効率的な発注や輸送などを指示する仕組み。日本ではセブンイレブンが大規模に導入して成功したことから普及した。