2002年12月26日
 
 
 
 
マーケティング論
−第12回 コミュニケーション戦略と販売促進−
 
 
 
 
 
]U プロモーション政策
 
1.プロモーションの基本
(1)プロモーション概念とコミュニケーション概念
  プロモーション(promotion):
従来は狭い意味での「販売活動」であったが、今日では実際の取引に先行する販売活動(事前販売=広告など)と取引以後の販売活動(事後販売=アフターサービスなど)の諸活動を含む概念。
  コミュニケーション(communication):最近はこちらをよく使う
直接的には「誰が、どのようなチャネルを通じて、誰に対して、何を伝え、どのような効果をあげるか」。しかし、コミュニケーションの語源を考えれば、単に情報を一方的に伝えるというよりは情報を「共有する」ということに重点があり、まさにこの点が「プロモーション」から「コミュニケーション」が使われるようになった大きな理由である。
 
(2)プロモーションの本質的性格
  需要の刺激・創造、維持
    ・ニーズやウォンツを刺激して自己の商品を購買するようし向ける
    ・商品の購買後は買い手の反復購買や口コミなどによる拡販をめざす
    ・ブランド・ロイヤリティの確立・強化なども
 
(3)プロモーションの機能
  @報知
  A説得
 
2.プロモーション戦略
(1)プロモーション目標の設定
消費者の購買意思決定プロセスに即して、どうすれば「購買」を決定するかを知る
 ex)誰も知らない製品と、競争の激しい製品の違い
    ※AIDAまたはAIDMAモデル
 
(2)メッセージのデザイン
    プロモーション目標に沿ってどのような効果をねらうかによってメッセージは異なる
 
(3)プロモーション・チャネルの選定(p164表5)
  @人を媒介するか否かの分類
人的チャネル:口コミや、店頭などでの接客時。 ※オピニオン・リーダーの重要性
非人的チャネル:主に広告
  A個別的か否かの分類
    個別的チャネル:面談、電話、手紙、電子メールなど
    非個別的チャネル:メディア(印刷媒体、放送媒体、電子媒体、展示媒体)、イベントなど
 
(4)プロモーション予算の配分
プロモーションの効果を正確に測定するのは難しいので、予算配分も慎重を要する。
 
(5)プロモーション・ミックスの決定(p165表6)
広告、人的販売、セールス・プロモーション*1をどう組みあわせるか。
製品のタイプ、プロダクト・ライフサイクル上の位置、企業規模、標的によって異なる。
 
(6)プロモーション効果の測定
アンケートなどで測定する。
 
3.広告
(1)広告とはなにか
「広告とは、身元のはっきりした主体が対価を払って行う、アイディア、商品やサービスの非個別的な提示と推奨である」(コトラー、1997)
  ※あくまで事前販売・事後販売であり、売上に直結はしない
 
(2)広告の種類
製品広告:その企業が販売する製品またはサービスそのものの広告
制度的広告:企業自体を広告し消費者などの好意を得ようとするもの
 
(3)なぜこんなに広告が発達してきたのか
 @生産と消費の矛盾(過剰生産)
 A限られた消費をめぐる企業間競争の激化
 B価格競争から非価格競争への重点の移行
 C大企業(メーカーであれ小売りであれ)による流通支配の強まり
 
(4)広告の役割
 @知らせる
 A説得する
 B想起させる
(5)広告戦略の実際
 @クリエイティブ戦略
   クリエイティブ:コトバ(コピー)、絵(ヴィジュアル)、音(サウンド)の3要素
   これらの要素をくみあわせて「誰に、何を、どのように伝えるか」がクリエイティブ戦略
     誰に:セグメンテーションとターゲティングが基本
     何を:いわゆる「広告コンセプト」。なにを「訴求」したいのかを明確に
     どのように:広告表現はセンスだけではないことに注意
 A媒体ミックス
   実際に広告はなんらかの媒体(p169表7)によって対象に伝達される。
   媒体をその特性に応じて組みあわせるのが媒体ミックス。
   考慮すべき要因〜広告目標、媒体の分布、メッセージの条件(ラジオは絵がでない、など)
           購買決定の時間や場所、媒体の費用
     ※インターネット広告について
 
4.人的販売
(1)人的販売とは
販売員による人的接触による販売。販売活動の中でも売上に直結することから重視されてきた。
 
(2)販売員の業務
  @販売創造
  A販売遂行
  B企業イメージ創造
  C専門的・技術的遂行
 
(3)人的販売の重要性
  @顧客情報に直結する
  A個別対応が可能
  B信頼関係の形成
 
(4)販売員管理
  従来的発想は経済的動機付けによる管理が中心だった。
  今日では、「従業員満足」が重視されるようになっている
 
<質問への回答>
 
○VMSの中で、チャンネル・キャプテンがうまくいかなければ、小売にまで影響がでるという弊害はないのでしょうか。
それはありうるでしょう。
 
○レジャー産業か健康産業のサービスには流通チャンネルがなくplaceだけでマーケティング活動を行っているのか。
○サービスの物流はどのようになっているのだろうか。無形な物に保管などは関係がないので、どう扱うのだろうか。
○サービス業にとっての「チャンネル」とはどういうことなのでしょうか。また大学という教育サービスにおいてチャンネル政策とはどのようなものでしょうか。例えば、立地の問題はチャンネル政策に含まれますか。
前回あまり説明しませんでしたが、サービスにもチャネルはあります。第一に、どこに立地するのかも、消費者に製品やサービスを提供するプロセスのうえで重要な問題であり、その点では店舗やサービス施設をどこにおくのか、はチャネル戦略上の位置づけが必要です。第二に、たとえば航空券は航空会社から旅行代理店を通じて発券されることがあるように、サービス提供に関わる情報や権利(この場合は所有権でなく利用権)の流通はあるのです。
 
○流通において商社はどこに属するのですか。また流通の方法で消費者に届くときに商品の価格に違いはあるのだろうか。
商社は中間業者のひとつです。
 
○「中抜き」問題では卸売りが一番損害を受けてしまうが、卸売りの対応策は何か。卸売りの立場として自らが役割や長所をどのように強調するのか。
卸売りの情報力を生かして、製品開発まで含めた戦略的なコーディネートを主導することが構想されていますが、必ずしも簡単ではありません。
 
○消費者としての私見であるが、消費者は安いものを求めることが多いことを前提に考えるとゼロ段階はうまくいくと思われるが、実際に行っている企業が少ないのは何故か。また、チャンネル政策を決定する際、消費者の心理(ここでは価格の安価なものを求めるという)を考慮していくと仲立ちを少なくせざるをえないと考えられるのではないだろうか。
第一に、消費者が必ずしも低価格だけを求めていないこと、第二に、ゼロ段階が低コストとは限らないこと(なぜ中間業者がうまれたのかをもう一度考えてみて下さい)、第三に、小売りや中間業者による商品構成力は無視できないこと(たとえば、蛍光灯一つ買うのにいくつもの家電メーカーのサイトをみてまわるより、家電店にいくほうが安くて自分の要求を満たす品物をてっとりばやく探すことができる)などが理由としてあげられます。ただ、中抜きが起こっているのは説明したとおりです。

*1 セールス・プロモーション:消費者や中間業者に対して商品やサービスの購買を奨励するための直接的な方策。販促情報(消費者の注意をひくもの。サンプルの提供、実演販売など)、誘因(購買を促すもの。クーポン、ノベルティなど)、勧誘(ただちに購買行動をとるようしむけるもの。値引きなど)がある。