2003年10月23日
 
マーケティング論
−第四回 市場の選択(2)事業領域の選択(2章)−
 
 
<質問に答えて>
(1)先週の講義内容に関して
0.前ふりの話題から
吉野家やマクドナルドは「安さ」をウリとしていますが、最近の傾向としては「安さ」よりも「高品質、安全」が消費者は重要視しており、私自信もファーストフードに行く時は「安さ」のマクドナルドよりも少々高くても「おいしく安全」なモスバーがを選んでいます。やはり最近の消費者は、少々高くてもおいしくて安全な物を食べたいという思いが生まれていて、このままのマクドナルドや吉野家のやり方では世間に通用しないのでしょうか。
 「高品質」「安全」が全体的な傾向なのか、それとも一部のものなのか。あるいは、一人の消費者が「安さ」と「高品質・安全」を時と場合で使い分けているのことはないのか。それを、自分の主観ではなく客観的に探索するのがマーケティングです。
 
京都のある地域で、吉野家と松屋が隣同士なのですが、場所選びのミスではないですか。
 そんなことはありません。競争に勝てばいいわけです。
 
良いものを安く売るのと、良いものを高く売るブランド志向よ、日本ではどちらの方がニーズがあるでしょうか。
 このように問題を単純化してはいけません。複雑な状況を的確に把握することがマーケティングの任務なのです。
 
1.事業創造への道
○ニーズと需要の違いはなんですか。
 ニード(need)は、人間の基本的な満足に関する欲求。「おなかがすいている」「勉強したい」など。通常、複数形ニーズ(needs)と表現されます。
 ウォント(want)はニードを充たす具体的な要求。「ラーメンが食べたい」「大学に行きたい」など。通常、複数形ウォンツ(wants)と表現されます。
 需要はwant が実際に製品やサービスに対する消費として現れるものです。
 
人々の潜在的な市場の発見には何か有効な手段はあるでしょうか。例えば、ソニーの「アイボ」は開発者達以外はソニーの社内でも売れると考えていた人はほとんどいなかったと聞きました。しかし、実際は、ネット上で3,000台を売り出したところ約20分で完売しました。このように、人々の潜在的なニーズを見抜くのはやはり難しいでしょうか。
 あの価格の商品で3千個売るというのはそうとうなものです。実際に3千個売り出した、ということからしても全く売れないとは思っていなかったということの証明ではないかと考えます。というわけで、潜在的なニーズは見抜かれていたと思いますが。
 
○市場の選択で、なぜ、「市場との関わり」を考える前に、「どのような市場」と関わりを持つのか、を考える必要があるでしょうか。
 彼氏または彼女との「つきあい方」を考える前に、「誰と」つきあうのか考え、その人につきあうことをOKしてもらわなくてはならないでしょう。それと同じことです。
 
○企業としては少数ニーズに応えることは自社の利益にならないのでしょうか。
 そこに十分な利益があがる市場があるかどうかです。数ではなく利益が基準なのです。
 
モースバーガーで一個500円くらいの「匠味」というハンバーガーが売られており、それは、いつも完売されています。他のハンバーガーは安くしているのに、モスバーガーは高くなっている。これも矛盾結合でしょうか。
 矛盾結合だけではないですが、そうした側面はあるでしょう。
キリンビールが最近になってチューハイ事業に参入したり、アサヒビールも発泡酒は出さないと言ってたのに、出しているように、どうして他の事業にも進出していかねばならないのか。それはブランド力があるからでしょうか。既存の商品では勝負できないからか。それを考えるのがマーケティングなのでしょうか。
 これはぜひみなさんで考えてみてください。
 
キリンとアサヒについてですが、アサヒのスーパードライがキリンに勝った理由として、宣伝効果の影響が大きかったと思いますが、どうでしょうか。宣伝効果は市場への影響が大きいでしょうか。
 宣伝の効果が大きいのは当然です。
 
コンセプトの転換の際に、他社と同じようなものだから別の価値を提供しようとして、失敗した場合、ブランドイメージが低下し、元の転換前の価値の評判が悪くなることはあるでしょうか。
 それはありうるでしょうね。
 
○新事業探索のポイントとして、基本価値への回帰より、コンセプト転換の方が、より新規需要の開拓が求められると思うのですか。
 おおむねそのとおりです。
 
○成熟市場に製品を出す時に、最低限の機能で勝負している会社と付加機能の付いた製品で勝負する会社ではどちらが有利とお考えですか。
○成熟市場において付加機能を加えて行こうとするのは、それなりのニーズがあるからなのでしょうか。
 一般的には成熟市場においては付加機能に対するニーズが生まれてきます。これはフォードとGMの例でもお話ししたとおりです。ただ、付加機能が過剰になっていれば「機能を極力縮小した」こと自体がある種の付加機能になります。
 
まったく新しいもの、誰もが考えなかったものを製品やサービスとして作り出さなければ、シェアを獲得するのは難しいでしょうか。
 そんなことはない、という話を前回行ったはずですが。
 
「Will」などの異色業種による新製品の開発は、どういうメリットがあってやっているのでしょうか
 ブランド力の共有が第一のねらいです。うまくいっていませんが。
 
チョークバッグとは、本体、ロッククライマーが腰に付けて、中に手が滑らないようにするための粉を入れておくものである。昨年あたりから、これが小物入れという形で一つのファッションとして出回っているが、これは、市場拡大にあたるでしょうか。また、この場合、市場拡大戦略を行ったのは、ファッション業界と思われるが、その生産において、以前からチョークバッグを作っていた業界との提携が必要になるでしょうか。
 市場浸透戦略の変形ですね。提携戦略は必ずしも必要ではないですね。
 
2.企業成長のベクトルづくり
市場浸透戦略ではあまり効果がなさそうな気がするのですが、具体的な商品の例があれば教えてください。
 焼酎でしょう。従来中高年男性だけのものと思われていた製品を、多くの人が飲むアルコール飲料にするためには、宝酒造をはじめとするメーカーの努力があったのです。
 
新製品を開発し、新しい市場で売るとリスクが高いと話されましたが、具体的に成功した例はどんなものがあるのですか。
 いくらでもあります。自分たちの身の回りにある製品がなぜ成功したのか考えてみませんか。
 
○携帯電話の回転スタイルは確かに過剰な機能だと思いますが、デザイン面からの開発と過剰な機能の搭載はやはり少数でも絶対数の需要があるからですか。
 基本的には、製品の性能で他社との違いをきわだたせようとすることが過剰になると考えられます。
 
「製品・市場のマトリックス」の4つの他に企業成長はないでしょうか。
「製品・市場マトリックス」の4つのうち一つだけではやはり成功しないのでしょうか。4つ全てを行うことはどうでしょうか。
 この4つが基本であり、例外はありません。ただ市場浸透戦略以外は、理論的には成長の限界が存在しないので、4つ全て行わなければ成長できないと言うわけではありません。
 
3.事業戦略のポートフォリオ
商品のシェアを得るためにはニーズに応えるのが一番ですか。
 そういう単純なモノではありません。
 
 
(2)今後の講義で考えてみてください
アンゾフの製品・市場マトリックスの1つの多角化戦略は、ある程度それまでの事業が成功した大きな企業でないと踏み込めない方策だと思うが、小規模な企業だと、どんな多角化ができるのだろうか。
なぜ企業は危険度の高い多角化戦略を行うのですか。
多角化戦略で、新たなリスクが発生するにも関わらず、それでも新製品を新市場へ参入させようとするのは、他の既存の製品でもうけた企業のみがしているでしょうか。
多角化戦略なんですが、売れるかどうか分からなくて、大きなリスクを伴うなら、企業にとって、とても危険なのではないでしょうか。
 多角化の可能性は大企業のほうが豊富です。小企業の場合投資資金が限定されることなどから、多角化には慎重さが要求されます。今日の講義も聞いて考えてみてください。
 
吉野家の牛丼280円という価格は市場ではどう思われている価格なのか。消費者が心配にならない価格というのはどのように決められているのか。
 価格政策のところで講義します。
 
商品開発をされてからマーケティング調査をするでしょうか、それとも、市場があることを確認してから商品開発をするでしょうか。
 製品政策のところで講義します。
 
(3)その他興味深い質問
父親がトヨタへ車を買いに行きましたが、値引きを一円もしてくれず、余裕がなければ無理やりに買わなくてもいいじゃないか、という態度を取られ、車を買うのをあきらめましたが、父親が欲しがった車は生産が需要に追いつかないほど、売れていた商品でした。商品がヒットし、生産が追いつかないくらいでしたら、企業は消費者の需要を抑えようとするでしょうか。
 需要と供給のバランスが崩れれば、いわゆる「売り手市場」になり、価格その他で売り手の側が優位に立ちます。需要が非常に強力な場合、自分に有利な状況をつくるためにわざと供給をおさえることはもちろんあります。たとえば農産物などの場合値崩れを防ぐために出荷調整を行うのはふつうです。
 
私は、MACを使っていますが、Windows製品と違い、どの店でも基本的に同じ価格で販売されており、売っている店も限られています。これは2社のマーケティングの違いだと思いますが、正しいマーケティング、誤ったマーケティングというのは、あるでしょうか。
 法律や社会的な倫理規範にもとらない限り、「誤った」マーケティングというものはありません。ただし、結果として「成功した」マーケティングと「失敗した」それとがあるだけです。
 
日本のメーカーは一つのものを作り続けるという例が少ないですよね。例えば、システムキッチン。本来ならその部分だけ買い換えられるというところに意味があるのに、こんなに早い回転率で製品が変わってしまえば、結局新製品を買わざる得ないと思います。つまり、わざわざ新製品を作ることをしなくても、ずっと良いものを作り続けるのは、不可能なのでしょうか。
 これは簡単に答えられない問題です。一消費者としては私も不満を感じることは多々ありますが、こうした新製品展開が企業の成長を支えていることが少なくないのも現実です。従来製品のユーザーを大切にすることは非効率になることがままあり、それは価格に反映するのも確かです。
はじめに
 
 
1.事業領域の定義〜「企業ドメイン」の戦略
(1)戦略とは
 「戦略」の定義:
 「企業戦略」と「事業戦略」
 
(2)企業ドメインの作成
 企業ドメインとは:
 エイベルとハモンドによる事業領域設定の枠組み
領域・・・who、what、how
範囲(scope)
 
2.事業多角化の基本方針
(1)経営資源の活用
 経営資源とは:
 多角化の三つの方向 @垂直統合
   A集約型
   B連鎖型
  非関連多角化(ナベカマ)
  関連多角化(イモヅル)
 
(2)企業のアイデンティティ作り
 ・企業アイデンティティとは
技術立脚型
市場立脚型
 ・企業アイデンティティを確立する意味
 
3.企業アイデンティティと企業イメージ
4.企業イメージの形成と構造 
5.企業戦略とマーケティング
(1)さまざまな戦略とマーケティングの関係・・・p.54:図2-3
 
 
(2)ドメインとアイデンティティ
 
 
(3)ドメインとイメージ
 ドメイン=イメージではない
 
(4)企業イメージの持つ意味
 イメージはコミュニケーションの結果である