2003年11月20日
 
マーケティング論
−第八回 市場への対応(1)製品対応(8章)−
 
 
 
<質問への回答>
1.消費者行動の分析(つづき)に関して
本などは初期に発売されてから発展することはありませんが、パソコンなどは発売されてからより良く、安くなっています。こういうものには発展ステージごとにイノベーターとオピニオン・リーダーがいるのですか。
 そう考えた方がよいかと思います。
 
テレビの番組の中、衣服の様々なブランドが衣服を芸能人に提供したりしていますが、あれは芸能人をその商品の市場でのオピニオン・リーダーとして企業が位置づけているからでしょうか。
 どちらかといえば広告に近いとは思いますが、期待される役割はそういうことです。
 
準拠集団の影響というものが純日本的な集団における協調性重視の考え方だと思うのですが、他の国でもこの考え方は存在し、有効なのですか。
 大なり小なりあります。準拠集団という概念自体アメリカから輸入したものです。
 
準拠集団による影響が小さい商品の場合、製品の性能以外で、どういうことが影響されるのでしょうか。
 基本的には個人的な理由になります。たとえばブランドイメージなどです。
 
必要なものを買いに行き、自分の目的と違うものも買ってしまったことがあります。それは、店の商品の配置や広告に、自分がはまってしまったと思いますが、今日「快楽的消費」という言葉を聞きましたが、これは、「快楽的消費」によるもので、「はまる」ということと、何かつながりがあるのでしょうか。
 「買うこと自体が楽しみ」「はまること自体が楽しみ」となると快楽的消費といえるでしょう。
 
ポストモダン消費者行動分析というのは、欲求の下層が基本的に満たされている状態で、余裕があるからこそ、買うこと自体に価値を見出すことが、買ってからそれを使用するというプロセスよりも、大切だということなのでしょうか。現代の日本のようなある程度豊かだからこそできることなのでしょうか。
 必ずしも「豊か」ではない状況のもとでも、部分的には「快楽的消費」がみられることはあります。しかし、マーケティングの対象として念頭におかなければならないような規模に達するのは一定の経済規模に達した地域でのことでしょう。
 
2.競争構造に関して
集中度が高ければ高い程、競争は厳しいのですか。ある商品において売上が集中してもGMとフォードのように、急にコロッと状況が急変するということもありえるということですか。
 集中度が高い場合、独占あるいは寡占的な企業が従来の枠組みで安住していると、大胆な新規参入者がいっきに市場状況を転換してしまうことはあります。
 
集中度で独占的でないテレビは新規参入しやすいと言っていましたが、テレビは独占的ではないけど、その分様々なたくさんの会社が売ろうとしている分、もっと参入が難しくなるのではと考えましたが、違いがよくわかりません。
 参入が容易かどうかと、参入した後の競争で一定の地位を占めることが容易かどうかは別です。テレビ市場への参入は容易ですが、競争は厳しいでしょう。
 
業界構造分析において、集中度と参入障壁の大きさを測る場合、ビール市場では大手3社のシェアが大きいので新規参入が難しいということでしたが、この場合は、新規参入障壁の大きさを市場シェアで測っていますが、他に参入障壁の大きさを見る指標はありますか。
 あります。テキスト129頁以降にある、規模の経済性、必要投資額、サンクコスト、差別化、チャネル、特許などです。
 
携帯電話ではNTTドコモがどこの会社よりも集中度が高いのでしょうか。
 「集中度」は、業界全体をみたときの構造を表現する概念です。特定の企業の場合は市場占有率が高いということになります。
 
消費者にとって集中度は低い方がいいのですか。高い方がいいのですか。
 いちがいにいえません。
 
集中度の違いによって収益性や戦略に違いが生じるのですか。
 そのとおりです。テキスト128ページを参照してください。
 
参入障壁を分析する上で、存在が確認された場合、同時に障壁対策は練られるものですか。参入自体を考え直されますか。
 ある市場へこれから参入しようとする場合には、障壁をどのように克服するかを考え、障壁を克服して参入した場合の利益との関係で判断します。
 
独占度が高ければそこに参入するのは難しいというけれど、もしどこかの会社が今までになく多くの人々の支持を受けるような商品を作ったとしたら、上位を占めている企業を超えることもできるでしょうか。
 独占は往々にして現状への安住を独占企業自体に生み出します。こうした時こそチャンスであるという側面は強いのです。
 
競争要因における垂直的要因・売り手・買い手がなぜ、競争要因になるのですか。限定品など個数の限られた商品に対して起こる消費競争を指しているんでしょうか。
 たとえば、売り手(原料などの供給もと)について考えてみましょう。ある原料について、自社と競争している他社がより売り手にとって都合のよい条件(たとえば高値で買うなど)を示したなら、売り手は供給の面で自社よりも他社を優遇するでしょう。売り手が多数いて競争が激しい状況なら、他の売り手に乗り換えればすみますが、売り手が限られている場合は他社よりより条件を提示しないといけないかもしれません。このように、売り手との関係でも市場の競争構造は影響してくるのです。逆に買い手はまさに市場であり、買い手がどのような行動をとるのか、次第で競争は大きく変わってきます。
 
3.競争構造の変化に関して
OEMに関してですが、依頼された企業は利益をもらえるのでしょうか。どの会社の儲けになるのですか。
 製造したメーカーに対しては、発注元から製品の代金が支払われる訳です。発注した企業はいわば転売することになるわけですが、当然買った値段より高く売ることで利益を得ます。
 
アウトソーシングは、専門的な人に任せるという点で、スムーズにいくと思うが、情報がもれるのではないでしょうか。
 一般的にはその可能性がありますが、情報漏洩は当然犯罪であり、明らかになれば損害賠償や刑事処罰の対象になります。
 
アウトソーシングやM&Aが今後増えるだろうと言われますが、業界の再編や統合はこれらによってますます増えていくのでしょうか。それは、企業の巨大化の傾向としてとらえられるのでしょうか。
 業界の再編は進むでしょうが、必ずしも企業の巨大化とは結びつきません。
 
4.その他
今、「知恵の輪」がブームらしいですが、これは自然発生的流行であると思えます。このような流行をマーケティングで予想できないので、発売は博打であると言えますか。
 投資は回収しなければなりません。自分の私有財産の範囲での投資は博打でもできますが、通常の企業活動では他人資本や借入金を用いて投資するのが普通であり、博打は許されません。結果として失敗することがあるのは避けられませんが、最大限リスクを削減するためにマーケティングを行うのです。
 
携帯電話のauが学割や家族割引などによって営業成績を上げていますが、auが携帯電話産業への参入がドコモより早かった場合、携帯電話が普及した当時から、auは業界トップになっていたんでしょうか。
 仮定で話すことは困難です。ドコモが先行したからこそauが差別化できた、という見方も可能です。
 
先日、車を買いました。そこで思ったのですが、「保険」が高いのです。消費財などの商品のではなく、例えば金融商品のようなものにもマーケティングは通用するのでしょうか。それとも、また違った型の戦略をとらなければならないのでしょうか。損保とか火災保険などの市場も寡占市場といえるのではないでしょうか。
 保険市場は従来まさに寡占市場であり、サービスが硬直化していました。だからこそ最近外資系の保険会社などが新しい保険商品で攻勢をかけており、既存の保険会社もそれに対抗する動きが怒っているわけです。新規参入企業が的確な市場調査をふまえた商品開発によって成功した事例といえるでしょう。
 
ユニクロは初期こそフリーズなどの商品でかなり売れていたが、最近は売れていないと思われる。それは「ユニクロ」というブランドが若い世代には「画一的でダサい商品」と言うことを感じられている証だと思います。そこで、ユニクロのCMには有名人が続々と使われていますが、あれはオピニオン・リーダーになるのでしょうか。さらに、商品自体に魅力を感じなくなっているのに、無理に有名人を使い、広告し続けているユニクロの戦略は間違っているのではないでしょうか。先生のご意見よろしくお願いします。
 ユニクロの売上が一時期の勢いを失っているのは確かですが、それでもカジュアル衣料市場において大きな地位を占めているのも事実です。失速の原因が何かをきちんと調べ、自分の印象だけで判断しないことが重要です。私見では、ユニクロに対して流行商品の枠組みで見るべきではないと思います。
 
Auがスティック携帯に続いて、今度はカメラなしの携帯を販売することになりました。 Auがニッチ戦略を展開しようとしていることはもはや明白です。ニッチ戦略は、「攻撃」という要素だけでなく、「防衛」の要素もあるのでしょうか。
 そのとおりです。
 
ポーターの5つの競争要因で、私の家の近くには2つの居酒屋と2つの飲食店が連なって立っている場所があります。しかもお互い売れ筋のよい商品や酒の発想を盗みあって商売しています。これでは自ら他店の代替的存在になってしまっている気がしますが、何の狙いがあるのですか。「ただ売れるから」だけですか。わざわざ競争要因を増やさなくてもいい気がしますが。
 十分検討せずに追随合戦をしている可能性は高いですが、差別化ができないか、市場が限定されている状況ではこうしたことになる場合はあります。
 
競争分析など、だんだんとややこしくなってきましたが、企業は本当にこんな面倒な分析を行っているのですか。飲食店では必要ないですよね?
 通常の企業は大なり小なりやっています。飲食店などは小企業が乱立して競争が激しいことが多いですから、競争分析は本来ぜひとも必要です。
 
生鮮食品は価格が急に高くなったりするので、EDLPは難しいと思うのですが、EDLPをすることによって、安っぽいイメージがついて逆に悪いイメージになるということはないですか。
 安っぽいイメージにしないようにすることです。
 
プライベートなものを扱う企業と家電などのパブリックなものを扱う企業ではブランド戦略などが異なるでしょうか。
 もちろんです。
 
選挙においてマーケティングというのは重要なのですか。もし重要ならば選挙ではどういう形でマーケティングが使われているのですか。
 ほんらい重要ですが、必ずしも系統的には行われてはいないと思われます。多様なニーズをもった「国民」という市場を対象に支持を争うわけですから、どういったセグメントに対してはどのようなポイントを打ち出していくのか、といった取り組みが必要なはずです。
 
 
第8章 製品対応
 
0.マーケティングの4P・・・復習として
 
 
1.マーケティングにおける「製品」
(1)製品とは何か
製品=便益の束  例)化粧品会社
※拡張された製品
 
(2)アイテムとライン
製品アイテム
製品ライン
製品ミックス
※幅  フルラインか、パートラインか
 長さ 
 
2.新製品開発
(1)新製品開発の意義
 
 
(2)新製品開発のプロセス
 
 
3.製品ライフサイクル
(1)製品ライフサイクルとは
 
 
(2)4つの段階
 @導入期〜開発された新製品の発売開始時期
課題:消費者の認知
活動:広告、チャネルの確保
利益:高コスト→低利益あるいは損失の継続
 A成長期〜製品が市場に受容され、売上が急増する時期
課題:競合企業の参入への対応
活動:ブランド確立など
利益:規模の経済性→コスト低下→利益
 B成熟期〜市場が成熟し、売上の増加率が低下する時期。競争優位の確保にとって重要な時期
課題:価格競争への対応→寡占の達成
利益:減少傾向
 C衰退期〜市場が縮小し、売上も利益も低下する時期
課題:撤退か、現状維持か、縮小対応かの判断
 
(3)製品ライフサイクルでは全てを捉えられない
 @衰退しない製品
 Aブランド単位でみると波がある製品
 B巻き返しに成功した製品
 
(4)計画的陳腐化
   生産者のなんらかの操作によって製品の寿命を計画的に短縮し、買い換えを促進させる政策
 @スタイルの陳腐化 例)自動車のモデルチェンジ
 A機能的陳腐化   例)携帯の多機能化
 B素材物理的陳腐化 例)蛍光灯