2003年12月11日
マーケティング論
−第十一回 市場への対応(3)チャネル(10章)−
<質問への回答>
1.価格設定の基本方針
プライス・リーダーはシェアが大きい会社のことですか。
実際には市場シェアの大きい企業の設定した価格に他社が追随する形が多いでしょう。
どれくらい売れるかを想定して価格を決めるとおっしゃってましたが、どれくらい売れるのかってどうやって分かるのでしょうか。似たような製品が市場にある場合や全くの新製品の場合はどうするのでしょうか。
すでに講義したように、市場調査で売れ行きの見通しも行います。
今日では、どの価格設定方針が一番よく使われており、一番有効な方法と考えられているのですか。
たとえば新製品なのかどうかなどによってそれぞれ異なっています。ほかの問題でもそうですが、どんなときにも「一番よい」「一番有効」という簡単な答えはまずあり得ない、と考えてください。
どの種類の方法で価格を決めるかは、何を基準に決めるのですか。また、コスト・プラス法での利益は、どうやって決めるのですか。方法を何種類か、あわせた上で決めることもあると思うのですが、どうでしょうか。
利益は、それぞれの企業がその製品によってある期間にどれだけ利益をあげようとするのかという目標設定に関わってきます。そうしたことも含めて、いくつかの方法で価格設定について検討した上で判断するのが一般的でしょう。
企業などは、新製品を売り出す時、まず最初に準備する量というのはどのように決めるのですか。価格とも関わりが出てくるとは思いますが。
損益分岐点法などを用いれば、利益、売上げ見込みなどとの関係である程度決まってきます。
コスト・プラス法はメリットがある反面、目標を達成できないといった限界があると思うのですが、それでもこのコスト・プラス法は多くの企業に取り入れられているのでしょうか。
目標が達成できるかどうかは最終的には誰も保証できないのですから、いずれにせよ何らかの「見通し」を含んだ計算にならざるをえません。
2.新製品の価格対応
市場浸透価格戦略と導入価格では目的は同じなのですか。
違います。テキストを参照してください。
代替財が多い財は、市場浸透価格戦略をとるということでしょうか。
一般的にはそういえるでしょう。
地上波デジタルテレビも現在の価格は50万くらいします。これも「上澄み吸収価格戦略」なのでしょうか。
確実なところは調査しないとわかりませんが、おそらくそういえるでしょう。
DVD等でも、上澄み吸収価格戦略を取らず、最初から低価格で大量に販売してしまえば、シェアを一気に確保できるのではないでしょうか。
個々の商品についてどちらの戦略がふさわしいのかは、具体的に検討する必要があります。消費者が価格に敏感かどうか、すぐに大量に販売が可能か徐々に売れ始めるのか、などが検討材料になります。
新製品を上澄み吸収価格戦略で販売した場合、どのような時期に価格を下げるものでしょうか。
これは一概にはいえません。
上澄み吸収価格戦略を用いた場合、顧客のニーズと全く合わない、ということもあり得ますようね。その場合、企業にはかなりの負担となるはずで、この戦略は一種の“儲け”のように思えました。このことを考えると、開発費に多量の投資をしたとしても、上澄み吸収価格戦略を取らないほうが、企業にとってはいいのではないでしょうか。それでも、この戦略をとる重大な理由があるのですか。
むしろ大量に売れるかどうか見通しがたたない商品こそ、上澄み吸収価格をとらざるをえません。
4.心理面を考慮した価格対応
来年から価格の表示が内税になりますが、これにより端数価格はなくなってしまうのでしょうか。
税込みの端数価格になるでしょう。
価格対応にはさまざまな種類がありましたが、高級ブランドである、シャネル・グッチなどは、どの価格対応を行っているのでしょうか。
価格とは売り方であると話されていましたが、ブランドものはいくら高くても買う人はいると思います。どんどん高くしていってもよいのでしょうか。
高級ブランドなどの場合は、威光価格のように、価格そのものが売り物である側面があるのでそうした検討が必要です。
家電製品とかよく「どこより安い」とかいって値下げしたりしてます。これも実勢価格を用いているのですか。
よく「もし他店が安ければ、その広告をお持ちください。それより安くします」ということがありますが、どういう価格対応になるのでしょうか。
こうしたことも実勢価格として理解できるでしょう。
二重価格表示は「心理面を考慮した価格対応」と「割引による価格対応」をミックスした価格対応であると思われますが、正しいでしょうか。
そういえる場合があるのは確かです。
7.その他
ディズニーグッズやスポーツチームのグッズなどはPBに当てはまるのですか。
PBとは異なるでしょう。
(1)価格カルテル
「価格カルテル」の話がありましたが、談合で決めたほうが、お互いに合意しやすいと、私は思うんですが、なぜ不法になるのでしょうか。
不当な利益を得るために高い値段で価格を固定化してしまうことを防ぐためです。
自動販売機の値段はどこも大体同じですが、これはプライス・リーダーに追随しているからですか。価格カルテルではないのですか。
缶コーヒー・ジュースなど、プライス・リーダーが決めた価格に絶対に追わなければならないのですか。大学内では110円ですし、普通は120円、場所によっては80円するところもあります。なぜ、場所によって価格が違うのですか。これもプライス・リーダーの意向なのですか。
自動販売機でも別な価格のものがないわけではないですし、中身はスーパーなどではもっと安く売っている場合がありますから、カルテルとはいえないでしょう。つまり、プライス・リーダーに従う必要は必ずしもないわけで、それは従った方が利益になるとそれ以外の企業が考えるから成立するわけです。
価格カルテルと独占市場は関係ないのですか。
寡占市場・独占市場においては、価格カルテルが成立しやすいとはいえます。
(2)具体的な価格設定
最近の家電製品ではオープン価格という言葉が使われていますが、これは何ですか。
かつてはメーカーが小売り段階での販売価格を「定価」として決めていました。しかし、メーカーが一方的に「定価」を定めることは小売店における公正な競争を阻害するという考え方から、法律で定められた特定の商品以外については「定価」を定めないことになりました。その後は「メーカー希望小売価格」という形でメーカー側から小売店に対して販売価格が提示されてきましたが、近年ではそうした販売価格の提示も行わないことが広がっています。これが「オープン価格」です。実際には従来でもメーカーが希望小売価格をどう設定するかにかかわらず、小売店は自分が仕入れた価格に、経費と利益を上積みして小売価格を決定していた訳ですから、本質的にはあまり変わりません。
売り方の問題とありましたが、例えば、携帯の価格など、設定されているものが分かりにくいものなどは利益率は高いと思うのですが、どうでしょうか。
わかりにくい=利益率が高い、とはいえません。わかりにくいから売り方が悪いとも限りません。
価格設定において、世界的に商品を売り出している会社などでは国ごとに、その製品にいくらまでお金を出せるかという買い手の考え方が違うと思うのですが、国ごとに、価格設定における開きはあるのですか。
あります。
私は、スーパーでバイトをしておりますが、最近、ハーゲンダッツのアイスが普段の250円から、188円で販売されています。他のスーパーでもそうであると言っています。これだけ長く188円で販売されていれば、ずっと188円で売ればいいのにと、ふっと思いました。一度188円で買った消費者は、250円に戻った時、なかなか買わないのでは、と思います。188円だと売り上げも伸びると思いますが、なぜ基本価格を188円にしないでしょうか。
スーパーは大量販売が可能なので、仕入れに際してメーカーや卸に対して優位であり、低い価格で仕入れることが可能です。従って、188円でそろっているのはむしろスーパー相互間が実勢価格で値付けをしていると考えられます。メーカーとしては、通常は小売価格を250円と想定しているのでしょう。
Docomoがパケット代を安くすると、vodafoneもパケット代を1/5にするなど、価格競争が繰り広げられています。しかし底値というものがあり、いずれは価格で競争するのは限界があると思いますが、どうでしょうか。
価格競争は限界がありますが、時には限界を超えて(つまり原価を割るような)競争が進むことがあります。この場合はその損失に耐えられなくなった事業者が市場から退出することで決着がつきますが、いずれの企業の疲弊も激しく、結局は消費者にもしわよせがくることも少なくありません。
ミネラルウォーターの価格は様々ですが、これはただ単に、水の仕入れコストが違うからですか。それか価格設定のプロセスを経て決められているのですか。
様々な水源からそれぞれの技術で採取して販売しているわけですから、違ってきて当然でしょう。
「需要と供給の曲線」では、2つの曲線が交わったところが市場価格になりますが、例えば、ヴィトンなどの高級ブランドの場合は、市場価格がずれているように思われます。この価格は消費者・生産者ともに平等な価格と言えるのでしょうか。
需要供給曲線によって決まる価格はあくまで市場価格のしかも原理的な価格であり、実際に設定される個々の商品の価格はほかの要因、「売り方」で直接には決まってくると説明した通りです。
通勤や通学にバスや電車を使っている人は、運賃が上がったからといって利用をやめるわけにはいきません。なのに、鉄道会社やバス会社はどうして値上げをしないのでしょうか。
このように、人々に選択の余地がないか少ないもので、かつ生活上不可欠な製品やサービスが「公共料金」として決められており、公的機関の認可や届け出が必要になっています。電気・ガス料金、鉄道やバスの運賃などがそれにあたります。
第11章 流通チャネル対応
1.流通チャネル対応の体系
(1)チャネルとは
4Pのなかの”Place”がチャネル。マーケティングにおける「場所」と「移動」に関わる問題。
@流通チャネル
生産者から消費主体(生産的消費、個人的消費を問わず)までの製品の流れに介在
する多様な事業者や機関を、製品の流れに沿ってとらえたもの。
中核となるのは卸売りや小売り事業者などの中間機関。
※なぜ中間機関が必要なのか・・・「中抜き」問題とも関連して
Aマーケティング・チャネル
流通チャネルを、マーケティング主体の側から見た呼称。
(2)チャネル戦略の体系
@チャネル選択
Aチャネル管理(チャネル評価を含む)
2.チャネルの選択
(1)三つのチャネル政策
@開放的チャネル政策:チャネルを特定しない。多数の消費者との接点が必要な場合。
メーカーの支配力は弱い。
A選択的チャネル政策:自社製品を取り扱う中間業者を選別し、支配力の強化をねらう。
B排他的(専属的)チャネル政策:特定の小売業者にのみ取り扱いさせる。支配力強い。
(2)垂直的マーケティング・チャネル(VMS)
VMS=Vertical Marketing Systems :生産者、卸売業者、小売業者を一体化したシステム
今日では、個別企業というよりもVMS同士の競争が激しいといえる。
@企業型VMS:生産者・流通業者が企業統合しているもの。
例)メーカーの系列販売会社、小売業のPB
A契約型VMS:相互に独立した生産者、流通業者が契約関係によって統合しているもの。
例)ボランタリー・チェーン*1
フランチャイズ・チェーン*2
B管理型VMS:チャネルを構成する事業者のうちの一つが、その持てる力によってチャネ
ル全体を指導的に組織していくタイプ。セブンイレブンの例が有名。
(3)チャネル選択の意思決定課題
@販社か卸か
A系列小売店か量販店か
3.チャネルの管理
4.これからのチャネル対応
(1)チャネル・キャプテン(リーダー)と流通システム
チャネル・キャプテン:チャネル構成員をまとめて主導権を発揮する存在
@生産者主導型:大規模メーカーが主
A卸売業主導型:生産者・小売業者とも多数の場合。出版など
B小売業主導型:大手小売業(大型スーパーなど)が主
C消費者主導型:生協など
(2)チャネル管理手法の変化
従来:メーカー主導の価格維持政策(pp.244-245)
今日:システム全体のパワーアップへ
SCM
製版同盟
7章 流通分析
1.日本型流通システム
さまざまな流通システム・・・図7-1(p.149)
2.日本の流通構造の変化
(1)小売構造の変化
パパ・ママ・ストア中心からチェーン化された小売業への集中が進展
(2)卸構造の変化
卸の機能とは・・・取引数最小化の原理
卸の変化・・・段階が減少しているのは確かが、果たして消滅するか?
3.流通取引関係
(1)メーカー主導型チャネル支配の崩壊
流通系列化の弱まり
建値制の崩壊
(2)小売業の変化
「メーカーの販売拠点」から「消費者の購買拠点」へ
*1 ボランタリー・チェーン:独立した小売業者が組織化・協業化を図るもの。ロゴの統一、共同仕入れ、共同販促などによって効果的なマーケティングと効率化を図ろうとする。
*2 フランチャイズ・チェーン:典型的にはコンビニ。形式的には独立した小売業者が、一定の加盟料と手数料(ロイヤリティ)の支払いを条件に、本部の提供する経営指導、商品提供、共同販促などのサービスをうけるもの。実際には本部のサービス提供が十分でない場合やロイヤリティが高額でほとんど小売業者の利益が残らないチェーンもあり、しばしば問題になっている。