2003年12月18日
 
マーケティング論
−第十二回 市場への対応(3)コミュニケーション(10章)−
 
 
<質問への回答>
第11章 流通チャネル対応
1.流通チャネル対応の体系
大規模メーカーが、開放的チャネル政策をした場合でも支配力は弱くなるのですか。メーカー側に利があると思うのですか。
 開放的チャネル政策は、販路を拡大することで販売機会を増やす効果がありますが、チャネルに対するメーカーの支配力は弱く、卸や小売りに主導権をにぎられやすくなります。
 
一つの会社が個々の製品によってチャネルを違うものにすることはあるのでしょうか。
 あります。多角化した企業はもちろんですし、同じ製品ラインのものでも価格帯や製品の性格によってチャネルを分けることはあります。かつての自動車などがそうです。
 
チャネルで重要視されるものとは消費者の需要以上に大切なものはあるのでしょうか。
 チャネル選択の基準についてはさまざまな要因が関連しており、その一部は前回の講義でふれたとおりです。消費者の需要が絶対的な基準ではありません。
 
化粧品会社が独禁法違反に問われた例と合法的な選択的チャネル政策の違いはなんですか。選択的あるいは排他的チャネル政策は独禁法違反にはならないですか。
 メーカー側が取引を不当な理由(メーカーの設定したもの以外の価格で販売するするなど)で排除しなければ違法にはなりません。積極的に開放的に営業していくか、特定のチャネルを重視・優遇するかどうかです。
 
無印良品がファミリーマートでも販売されていますが、これはどういう図式になりますか。
 もともとファミリーマートも無印もセゾン系だったので、当時はグループ内での商品供給だったことの名残です。
 
大手100円均一のダイソーでは、商品のほとんどがダイソーブランドの商品ですが、これは排他的チャネル政策ということになるのでしょうか。
 チャネル管理のところの説明は基本的にメーカーの視点からみたものです。
 
「ドコモショップは、携帯をただで仕入れている。だから古い型は1円にできるんだ。」とドコモショップ店員が言っていました。携帯のチャネル体系はどうなっているのでしょうか。
 携帯電話の販売店は、携帯電話の機械それ自体の販売による利益だけではなく、新規契約に対して通信会社から得られる契約手数料や報奨金、機種交換時の手数料などが主要な収入源です。「電話機の販売店」ではなく「通信会社の契約代理店」だと考えてください。旧機種は通信会社にとって不良在庫ですからそれよりも新規契約をむすぶための「えさ」として顧客にまいたほうが、通信会社としては儲かるわけです。当然、そのコストは通話料金にはねかえっていることを、利用者としては知っておいたほうがよいでしょう。Yahoo! BBが無料で接続装置を配布しているのも基本は同じ理屈だと推測されます。
 
2.チャネルの選択
VMSを取り入れている企業は例えばどんなところでしょうか。
 VMSというのはシステムの名称ではなく、仕組みの説明のための概念です。広くとらえれば、今日主要なメーカーや大手スーパーは大なり小なりはどこも管理型VMSないしはその発展としてのSCMを取り入れています。またたとえば、企業型VMSの典型は自動車産業です。
 
小売店側がVMSを主導して生産・流通・小売を全て自社のコントロールで行おうとすることの目的は何ですか。
 小売り主導による管理型VMSの目的は、第一に、小売店が収集した情報に基づいて的確な製品企画を行い、的確に商品の供給を確保しようとすることです。第二に、コストを削減するとともに価格設定上の主導権をにぎることです。
 
テレビの通販などは、どのようなVMSになるのですか。
 流通システム上は、テレビ通販は量販店と同じです。
 
管理型VMSにはセブンイレブンの他に百貨店、例えばそごうなどは含まれるのでしょうか。
 自分でチャネルをコントロールしているかどうかが基準ですから、含まれません。
 
3.チャネルの管理
セブンイレブンのように自社でチャネル管理をする企業と違う、ローソンなどのコンビには、間に卸売業者が入るので、コストが高く付くのではないですか。
 現時点では、すべての商品を卸ぬきで仕入れることは不可能です。また、コンビニであればどこであれ自社企画商品を開発しています。ただ、セブンイレブンが典型的な事例でありかつ成功しているということです。
 
なぜ従来のチャネル管理手法から今日のSCMなどのチャネル管理手法へと変化していったのでしょうか。
 情報ネットワークや物流システムの整備によって、小売りの店頭での販売情報がリアルタイムで生産に反映されるようになったこと、価格競争が激しくなりコスト管理が厳しくなったこと、消費側のニーズの多様化などの要因があります。
 
企業のチャネル政策はどこかに公開されているのですか。知りたい時はどうすればいいでしょうか。
 企業が「こういうチャネル政策をとっている」と表示することはありません。「チャネル政策」という概念は、その企業の行動自身から分析するための枠組みなのです。たとえば、ある人の価値観がどうであるかはたいていの場合本人がどういっているかに関わらずその人の行動自体から判断されますが、それと同じです。
 
チャネルキャプテンのところで、4つの類型がありましたが、これらはどの様な理由で決定されるのですか。
 誰かが決めるものではなく、起こっている現象を分析するための枠組みなのです。
 
7章 流通分析
2.日本の流通構造の変化 
小売店が強くなっている現代、卸としては今まではマージンが出ていましたけど、今日の授業を聞く限り、あぶないのでは、と思ってきました。卸は小売店またはメーカーと合併した方が賢いのでしょうか。それともいい方法がありますか。
卸業者はいらないかもしれない、ということを話されましたが、ではなぜ卸業者ができたのでしょうか。
 情報ネットワークや物流が未整備な時代には、取引コスト最小化原理が働き、また卸が商品情報の結節点の役割を果たしていたわけですが、それらがほぼ失われつつある中で、卸がどのような独自の役割を果たしうるのかが問われています。企画力や情報力によって、メーカーや小売りの機能の一部もむしろ取り込むような発想が必要になってくるでしょう。
 
今日の授業を聞いていて、小規模の小売店はもういらないということなんですか。多量生産したものは量販店にまかせ、個人的に作ったものは直営するという結論でいいんでしょうか。
 大手メーカーの製品を販売するという枠組みでは、大きな流れとしてはそういう傾向です。しかし、いっぽうで「one to oenマーケティング」などの重要性が指摘されるなかでは、量販店だけですべての消費が完結するとは思えず、小規模な店舗であればその機動性を生かした「消費者の代理人」としての役割を果たすことで生き残りを図る方向が考えられるでしょう。
 
最近、ディスカウントショップができてきていますが、なぜすべての小売業がディスカウントショップにならないのですか。客は、安い店に流れると思うのですが、普通の小売店はなぜ続けられるのですか。
パパ・ママ・ストアよりもチェーン化された小売店へ変わっていった方が有利なのですか。
パパ・ママ・ストア中心からチェーン化された小売業へとマーケティングが進展される、とされているが、実際、現在どこへ行っても同じようなものばかりある。そこを逆に、ここだけしかない、というようなパパ・ママ・ストアでマーケティングをしていく方法で経営をのばしていくことはできないのでしょうか。
 ディスカウントと同じような品揃えで個性化されない店舗の生き残りは難しいでしょう。しかし、従来からある小売店は、顧客と人間的なつながりが濃く、いわば無意識のうちに「oneto oneマーケティング」を行ってきたという強みもあります。また最近では、商店街ぐるみでこうした身近な顧客とのつながりを深めることで生き残りを図ろうといううごきもあります。また、個人経営で店舗数も少ないと言うことは逆にいえば機動力がある(その気になればいきなり翌日から品揃えをがらりと変えることもできる、営業時間が臨機応変など)ということですから、それを生かして個性化を図ることができます。
 
家電メーカーの直営店が減少しているようですが、やはり不況だからでしょうか。
 講義を聞いていればわかるはずです。
 
地方で作るものは大手企業とは対抗できないと思うのですが。それなりにコストがかかり、売るのにも広がりをもたないので、どのようにすれば企業のように様々な所に広めることができるのでしょうか。これからは大きな企業のチェーン店のようにのみこまれてしまうのでしょうか。
 先週の講義の冒頭で紹介した愛知県の豆腐店の事例のように、個性的な製品や地域のニーズに対応した販売など、地方企業ならではの道があります。日経流通新聞などを丁寧に読んでみてください。
 
消費者の支配力が強いとか、卸をとばす、とかは、海外式のものが日本にきたのですか。今までの日本はやはり遅れていたと言えるのでしょうか。
 海外のやり方がそのままもちこまれたわけではなく、日本の流通システムが日本の経済社会構造の中で行き詰まってきたというほうが正確でしょう。
 
3.流通取引関係
従来のメーカー主導の価格維持政策から今日の制販同盟などは大きな潮流である価格破壊の流れによって引き起こされた、もしくは促進された、のでしょうか。
 製販同盟などの動きが価格対策だけで行われているわけではありませんが、価格競争の激化によって促進されたことは確かでしょう。
 
その他
ジャスコや私の家の近くのスーパーでは「トップバリュー」というロゴのついた商品が売っていますがこれはPBですか。また「トップバリュー」のものはSATYでも売っていますが、SATYはイオングループなのですか。
 すべてそのとおりです。
 
家電量販店などで安売をする商品は、メーカーにいくらまでならいい、ということと言われているのでしょうか。それとも家電量販店の独断で決めているのですか。
 前回も説明しましたが、最近はメーカーの価格統制がきかないので、店頭価格は卸値を基準に個々の小売り企業が自分で決めています。
 
 
第10章 コミュニケーション対応
0.プロモーションとコミュニケーション
  プロモーション(promotion):
従来は狭い意味での「販売活動」であったが、今日では実際の取引に先行する販売活動(事前販売=広告など)と取引以後の販売活動(事後販売=アフターサービスなど)の諸活動を含む概念。
  コミュニケーション(communication):最近はこちらをよく使う
直接的には「誰が、どのようなチャネルを通じて、誰に対して、何を伝え、どのような効果をあげるか」。しかし、コミュニケーションの語源を考えれば、単に情報を一方的に伝えるというよりは情報を「共有する」ということに重点があり、まさにこの点が「プロモーション」から「コミュニケーション」が使われるようになった大きな理由である。
 
1.マーケティングにおけるコミュニケーション
(0)マーケティング・コミュニケーションの本質的性格
    需要の刺激・創造、維持
    ・ニーズやウォンツを刺激して自己の商品を購買するようし向ける
    ・商品の購買後は買い手の反復購買や口コミなどによる拡販をめざす
    ・ブランド・ロイヤリティの確立・強化なども
 
(1)コミュニケーション・モデル
    送り手の情報はいかにして受け手に届くか:図10-1
 
(2)コミュニケーションの反応プロセス
    消費者は情報を得てどのように行動するのかについては、複数のモデルがある:図10-2
 
2.マーケティング・コミュニケーションの領域
(1)コミュニケーション要素としての企業活動
    広義には「製品」やメセナなどを含む企業活動全体が消費者とのコミュニケーション。
    マーケティング・プロモーションとしては一般に次の四つが用いられる。
      @広告、Aセールス・プロモーション、B人的販売、Cパブリシティ
 
(2)人的コミュニケーションと非人的コミュニケーション
人的コミュニケーション:主に人的販売〜店頭などでの接客時。ただし口コミも重要
非人的コミュニケーション:主に広告、他にイベント、パブリシティ*1など
  
3.コミュニケーション・ミックス
広告、人的販売、セールス・プロモーションなどをどう組みあわせるか。
(1)コミュニケーション・ミックスの決定要因
製品のタイプ、プロダクト・ライフサイクル上の位置、企業規模、標的によって異なる。
    ※プッシュ戦略
     プル戦略
 
(2)新しいコミュニケーション・ミックス
諸要素の融合化へ
 
4.広告対応
(1)広告とはなにか
「広告とは、身元のはっきりした主体が対価を払って行う、アイディア、商品やサービスの非個別的な提示と推奨である」(コトラー、1997)
  ※あくまで事前販売・事後販売であり、売上に直結はしない
    広告の役割:@知らせるA説得するB想起させる
 
(2)広告媒体
   実際に広告はなんらかの媒体(表10-2)によって対象に伝達される。
   媒体をその特性に応じて組みあわせるのが媒体ミックス。
   考慮すべき要因〜広告目標、媒体の分布、メッセージの条件(ラジオは絵がでない、など)
           購買決定の時間や場所、媒体の費用
 
(3)広告訴求内容と広告分類
@製品広告と企業広告
製品広告:その企業が販売する製品またはサービスそのものの広告
企業広告:企業自体を広告し消費者などの好意を得ようとするもの
A情報提供型広告と説得型広告
  情報提供型広告
  説得型広告
  リマインダー型広告
 
5.セールス・プロモーション対応
消費者や中間業者に対して商品やサービスの購買を奨励するための直接的な方策。販促情報(消費者の注意をひくもの。サンプルの提供=サンプリング、実演販売など)、誘因(購買を促すもの。クーポン、ノベルティ=プレミアムなど)、勧誘(ただちに購買行動をとるようしむけるもの。値引きなど)がある。
 

*1:テキストp220参照。