リゾート経営論
−第3回 余暇とリゾートの理論−
0.(討議)なぜ「シーガイア」は破綻したのだろうか(続き)
(1)前回グループ討議のまとめ
・経営者が宮崎しか見ていない。ターゲットが絞れていない。
・ゴルフ場+プール+会議場という組み合わせが?
・プロモーションが十分でない。イメージできていない。
・セグメントが不明確。大人も子どもも、では? コンセプトも不明確で、何をしたいのか不明。
・バブル崩壊以後なのに見通しが甘い。土地神話に依存。
・海があるのにプールが目玉ではだめだろう。
・経営者が楽観主義、郷土意識つよすぎ。社長の「成功」体験にひっぱられた
・強迫観念(「やらざるをえない」)があり、消費者に目が向いていなかった。最初からやめておくべきだった。
・話題性がない。来客数が減ったときに手を打つべきだった。取引先への情報開示が必要
・経営者が市場の変化に対応していない。国と銀行に追随している。
(2)コメントカードから
#経営者の資質・責任
・経営者の感情がはいりすぎでは。経営に「感情」が入り込むのは危険ではないか。
・社長の判断力不足、楽観主義。
・社長に「待った」をかけられる人がいなかった。
・リゾート経営のプロが経営陣にいたのか。松林のプロだけでなく。
・ビデオでは社長をかわいそうだという印象だったが、税金の無駄遣いであり、かわいそうではすまないのでは。
・コスト意識がスポーツ産業同様かけている。
・徹底した上からの経営で、組織の底辺の意見が疎外されているとことに問題。
#市場との関係
・日本人がリゾートを海外に求めるようになったのが最大の客足減少要因では。
・もともとの「南国のリゾート」というコンセプトがまちがいでは。
・もっと地域になじんだ観光開発が必要。
・そもそもセグメントやコンセプトを設定していたのか?
・宮崎のような地方都市に巨大なリゾートを作ったこと自体に無理がある。
・若年層が来たいと思うような施設が必要だった。
・海外旅行が人気を呼んでいる時代に、訪問者の予想を過大にみつもりすぎであった。
・経済だけでなく文化の方向性も読み誤ったのではないか。
・リゾートにしてもテーマパークにしても顧客の要望を充たしてくれるものが少ない。
・リゾート産業は平日と休日の差を埋められないという点で経営が困難だ。
・過大な設備投資が入場料にはねかえったことが問題ではないか。
・話題性不足(多数)。
#経営の見直しが必要
・計画段階では多くの人が土地神話に毒されていたからやむを得ないが、バブル崩壊以後見直しがなされなかったところに問題がある。
・自分たちの中だけで何とかしようとしたことに問題があるのでは。
・見直しが必要なのは確かだが、どうすれば?
#その他
・思い切った経営という意味では悪くない。時期が悪かったのでは。
・なぜ銀行が融資し続けたのか?
・旅行会社の評価や、ディズニーランドとの違いなども検討する必要がある。
・外部環境だけの問題ではない。ディズニーランドは経営できている。
1.そもそも余暇とはなんだろう
(1)なぜ「余暇」を考えなければならないか
・リゾートは「余暇を過ごす場」の一つである
→余暇の本質的意義を実現する「場」としてのリゾートを構想することの意味
(2)余暇とはなにか
@一般的な定義
「余暇とは、個人が職場や家庭、社会から課せられた義務から解放されたときに、休息のため、気晴らしのため、あるいは利得とは無関係な知識や能力の養成、自発的な社会参加、自由な想像力の発揮のために、まったく随意に行う活動の総体である。」(J.デュマズディエ)
直接的にはLeisureの訳。
※Leisureはラテン語の「なにもしないこと」とギリシャ語の「自己の教養を高めること」 に起源。
シンプルに分ければ、人間の活動を「労働、生活、余暇」に三分することになる。
A余暇の意義
余暇とは「余った時間」ではない
・休息は当然だが、それだけではない ※ピューリタン的理解の限界
・人間の発達をささえる知的活動のための源泉 ※アリストテレスとマルクス
・さらに、知的活動の原点である「遊び」の意義 ※ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』
B余暇の発生
余暇の発生は、資本主義の成立・発展とぬきがたくむすびついている。
・近代以前:
一部の支配者を除き日常的には生活、労働、余暇を切り離すことができない。
(大半の人が余暇を得るための剰余がない+ライフスタイルそのものの制約)
大半の人(民衆)にとっては日常は生活と融合しており、たまに「祭り」がある。
※「ケ−ケガレ−ハレ−ケ」の循環・・・現代にも通じるものとして
・近代社会:
多くの人が自分の労働を時間を単位にして販売することで生活の糧を得る。
→時間によって労働とそれ以外(生活、余暇)を切り分けることが可能に
剰余生産の拡大によって、多くの人の余暇を支える物質的条件ができた。
・現代社会:
余暇の大衆化によって単なる「余った時間」でない独自の価値をもつようになった。
余暇そのものが重要な利潤の源泉と考えられるようになった。
C権利としての余暇
第二次世界大戦直前ごろから、余暇は「人権」の一部と考えられるようになった。
<理由>
・労働疎外の広がりによって、人々が人間性の回復を強く求めるようになったこと
・人間性の回復は、資本(企業)にとっても労働力の維持のために必要であったこと
・第二次世界大戦後はさらに、物質的充実に比して生活や労働の中での精神的消耗が激しくなっているため、「心の豊かさ」が求められること。
<たとえば>
・世界人権宣言(1948)第24条
・日本国憲法 第25条
D余暇の条件
・その活用の仕方について個人の自由意思にゆだねられる「時間」
・選択した過ごし方を実現する「物質的・精神的条件」
・時間をどう使うかについて思いめぐらす「構想力」
※強制された自由時間、強制された「余暇活動」は「余暇」ではない。
→日本型企業社会の改革すべき問題点がここにはある。
(業務命令による長期休暇、ボランティアなど)
2.現代におけるリゾート
(1)リゾートのイメージ
<討論>
1.「リゾート」から連想する言葉をいろいろ出してみよう
2.いままで行ったことのあるリゾートで、印象に残っているのはどこ?
あるいは、行きたいリゾートはどこ? それはなぜ?
3.自分たちの持っている「リゾート」のイメージはどんなものだろう。
4.どうしてそういうイメージをもったのだろうか?
(2)現代日本の「リゾート」
@イメージの源泉〜「リゾート法」下でのリゾート開発
・「3点セット」:ホテル(マンション)+ゴルフ場+スキー場orマリーナ
・「会員制」
Aなぜ「3点セット」で「会員制」なのか
投資回収の論理が先行してきたことに今日の「リゾート開発」の原点がある。
Bリゾート破綻の根本原因
・本質的には、「リゾート開発」を本気でやろうとしてはいなかったところに問題。
・日本におけるリゾート市場の未成熟
日本:短期滞在、高単価・・・長期休暇がとりにくいなど
欧米:長期滞在、低単価
C新しい「リゾート」づくりへの模索
ほんとうの「余暇」を過ごす場所としての「リゾート」づくり→第6回ごろ紹介
(3)そもそも「リゾート」とは
@リゾートの語源
もともとは「resortir」。 re:たびたび sortir:外へ出ていく
A二つのリゾート
・憧憬型リゾート:もともとリゾートが特権階級だけのものだったことに由来
ex)イギリスのバース
・回帰型リゾート:産業革命以後の労働者階級の「人間性回復の場」として
鉄道の開通により、リゾートが大衆化する。
→現在のリゾート像は、この二つのいずれかまたは混在としてある
プレゼンテーション要項(再掲)
(1)進め方
第8回〜第9回 2回生によるケース・スタディ
第10回〜第13回 3回生以上によるビジネスプランのプレゼンテーション
(2)要項
@2回生:適当なリゾート企業や地域を選び、その成立の経緯および現状と課題を紹介する。
原則として必ず現地に行くか、具体的な資料を取り寄せること。
ex)東京ディズニーリゾート、ハウステンボス、琵琶湖リゾート、シーガイア
アマンリゾート、地中海クラブ
欧米のリゾート地(ニース、スペイン、パーム・ビーチetc)
アジアのリゾート地(バリ、グアム、ペナンetc)
A3回生以上:自分たちのリゾートづくりビジネスプランを、この講義をふまえて考える。
既存リゾートや観光地ののリニューアルでも、新規の開発でもよい。
以下の項目を含むこと:戦略的なコンセプト、ターゲットとなるセグメント
立地、交通、地域住民や自治体、環境との関係、
必要なら施設計画、プロモーションプラン
5〜10年程度の資金計画(入場者数や客単価見通しを
ふまえる)
(3)発表形態:レジュメ、投写装置、OHP、(powerpointについては検討中)を用いる。
(4)運営
常任運営委員が企画し、運営委員が交代で司会、進行、準備を担当する。
※一つのグループの発表に対して必ず討論班を設定し、最低でもその討論班からは意見や質
問を提示し、発表班にコメントを求める。他の班からも意見や質問をだし、討議する。
同じようなビジネスプランについてはまとめて発表し、一括して討議してもよい。
(5)グループの構成
原則として4〜6人。3人はありうるが7人以上は不可。
※事情のある人は個人レポートでも可。事情はないがどうしてもイヤという人は減点のうえ可。
個人レポートのテーマはグループ発表のテーマと同じ。8000字程度、締切11月末予定。
回生の混在はみとめるが、3回生以上が多数なのに2回生枠へのエントリーは不可。
3.その他
(1)運営委員の選出
2回生:旧基礎演習クラスから各1名
3回生:各ゼミから1名
4回生以上および小集団に所属しないものから1名
この中から常任運営委員を4名選出。
(2)コメントカードについて
出席はとらないが、毎回コメントカードを集めるので質問や意見を積極的に出して欲しい。
講義への参加意欲旺盛な人についてはボーナス点を出します。