リゾート経営論
−第7回 エコ・リゾートの可能性−
 
 
0.前回講義へのコメントから
○地域開発が持続可能であるかを判断するためにはどういったことをすればよいのですか?
 きっちりした環境アセスメントを行うことと、地域の中での合意形成を丁寧にやることが基本です。
 
○町づくりの一環としてリゾート開発をする際には冷静にその地域を判断し売り出すためのプロモーションが大事だという事は分かったが、そもそも町、村の人数が少なく魅力がない地域ではどのようにリゾート開発するのか。人口が少なければ税収が少なく開発を行う会社などにとってはあまり魅力的には感じないと思うのだが。
 下線部の意味が不明。開発する会社にとって税収は関係ない。地域の人口とリゾートとして外から来る人の数は関係がない。地域の人口が少なくても外からたくさん人が来て収入になれば開発会社としてはよい。
 
○観光開発のやりすぎってお金の使いすぎがはやり主でしょうか?
 お金だけでなく、人的資源、環境の浪費なども含まれます。
 
○リゾート開発にともなうのが環境破壊。今の時代「環境」という言葉がキーワードの一つとなっておりリゾート開発も例外ではなく環境に配慮しなければいけない。でも、環境によいという事を前面に出そうとするのは「開発そのものをやめたほうがよい」といった批判がでてかえって逆効果になると思う。
 「持続可能」という概念をていねいに理解してください。開発を否定しているわけではないのです。「環境を大切にする」というのは、いまあるものをそのままにしておくこととは違います。
 
○地域に何もないことは他と比べて優れたものもないが劣っているものもない。しかし劣っているものがないことは、ある意味強みでもあるという発想もある。それと何もないということはそこから何かを創り出せるという考えもあるのでしょうか?
 なにもないところから何かを作り出す、という発想も当然あって良いと思います。
 
○地域づくりにとって大切なのはただ開発を行うのではなくて市民にとって住みよい地域づくりが大切であると思った。
 地域住民にとって「何のために開発するのか」ということは、結局それによって地域を活性化し自分たちの暮らしをよくしようということでしょう。長い目で見てそれと矛盾する開発ではおかしいということです。
 
○トマムが日本リゾートの失敗例として取り上げられていましたが、同じようなスキーリゾートで成功している例は国内にあるのでしょうか?白馬村はうまくやっているように感じますが・・・
 ぜひ調べてみてください。白馬は確かによい例としてあげられることが多いですが、それでも問題点はあります。それが全体的な成功の中での一部の問題なのか、本質的な問題なのでしょうか。
 
○よく例に出てくる“地中海リゾート”って何ですか?どこにあるんですか?あんまり聞いたことがないのですが・・・
 「地中海リゾート」という会社で、全世界でリゾートを展開しています。
 
○地元の知恵、資源を基礎に内発的発展をしていく事が大事とわかったが、それに耳を傾けたり、また意見がいいやすいような一般の人たちに意見を求めるような場を地域は作るべきだと思う。そのような場はあるのですか? 
 残念ながら多くの地域で議会がそういう場として機能していません。ほんらいはそうあるべきなのですが・・・結局、手作りでやってますね。ちゃんと考えているところでは。
○リゾート開発によって、なぜ地元雇用は増えないのか?人手も必要になるし相当の雇用があるのではないか?
 長期、安定的な雇用にならないのです。それは説明したはずです。
 
○成長の中に衰退の芽があるといっていたが、これはどのような場合でも衰退があるのですか?例外的に衰退がなかった例はないのですか?
 成長する理由がまさに衰退の原因となる、ということです。ですから成長の原動力に安住せず、原動力が逆に衰退の契機になる前に新たな原動力や方向性を見いだしていくことが必要なのです。
 
○普通なら弱点であるはずの蚊が多いことを強みとして客寄せに使って成功したと言っていたが、常識的に考えてごく短い間のブームで終わってしまいそうだが、その後どうなったか?
 短期のブームで終わる可能性もあります。しかし、うまくリピーターを確保することで安定的にすることもできます。いずれにせよ「蚊」は地域に人を呼び込むきっかけにすぎないことをよく理解しておくことです。
 
1.観光とリゾートをめぐる新しい潮流
(1)サスティナブル・ツーリズム(Sutainable Tourism)
 
(2)サスティナブル・ツーリズムの種類
 @エコ・ツーリズム
 Aグリーン・ツーリズム
 Bエコ・ツーリズムとグリーン・ツーリズムの違い
 
(3)日本での動き
 a)エコ・ツーリズム〜「保護」と「観光」のはざまで
  <関係年表>
   1931年 国立公園法制定:「保護」と「観光」の両立の始まり
   1961年 国民休暇村の整備はじまる:休暇を自然の中ですごすことが国策的に推進
   1970年代頃 自然保護運動の高まり〜自然保護と「観光」との関係に問題意識広がる
    ex)1971年 尾瀬の自動車道路建設問題
      1973年 国立公園での「公園事業」から「ゴルフ場」を削除
      1975年 屋久島の一部などを「国立公園」から外し「原生自然環境保全地域」に
           ※「保護」と「観光」の初の政策的分離
      このころから、自然保護運動を原点とする宿泊施設などができはじめる
   1987年 リゾート法
   1993年 白神山地と屋久島が「世界遺産」に
  <現状と課題>
    自然のなかでの安らぎやふれあいを求める人は増加している
       ex)小笠原etc
    しかし、依然として「保護」と「観光」のはざまで揺れ続けている
       ex)入場者制限問題〜尾瀬、白神
       ※ただし、日本の場合単純な「保存」(いっさい手を加えない)は実際には
        ほとんどあり得ない〜「自然保護」の誤解に注意。
    「自然にふれあう」ことが自然破壊になる事例の増大、自然からのしっぺ返し
       ex)4WD車によるオフロード走行
         大雨時の増水による水難事故の増加
   
 b)グリーン・ツーリズム〜農村政策としての出発
  <関係年表>
   1992年 「新しい食糧・農業・農村政策の方向」:グリーン・ツーリズムを取り上げた最初
   1993年 「農山漁村でゆとりある休暇を」推進事業
   1994年 農山漁村滞在型余暇活動促進法制定
   1996年 農林漁業体験民宿の登録始める(2000年4月1日には登録728軒)
  <現状と課題>
    ・多様な広がり・・・ex)高知県檮原町:
                北海道新得町:
    ・官主導・・・あくまで「農山村政策」である〜旅行会社などとの連携がない
           民間の自主的活動との矛盾が生じる場合も
           横並び
    ・単調さ〜ディスティネーションとしての魅力をどうとらえるか
    ・高コスト性〜自然食、手作り・・・
 
 
2.エコ・リゾートの可能性
(1)エコ・リゾートとは
 
(2)どのようなエコ・リゾートがあるのか
  @自然保護・開発反対運動原点型
  A自治体主導型〜おもに農村体験
  B自然学習・観察中心型
  C健康志向型
  D山村留学
 
(3)エコ・リゾートの今日的意義
@「持続可能」であり得る
   ・自然環境との調和
   ・地域社会との調和
   ・内発性
A都市住民のニーズとの適合
   ・自然
   ・癒し
   ・参加
 
(4)エコ・リゾートの課題
@自然との調和の困難性
A大人数を受け入れられない〜発展の限界をどうとらえるか
B消費者のニーズに応えられるか
    ※「相互性」の重要性:消費者も一方的消費ではなく「参加」「理解」が必要
                  ex)「新日本婦人の会」の産地直送(産直)活動
                      →「教育」の視点も
C高コスト性〜自治体の負担や個人のボランティア的活動への依存は限界
D広報の制約