2002/05/01
 
 
 
 
 
サービス・マネジメント論
−第4回 サービス・マネジメントとは何か−
 
 
 
 
 
 
0.前回講義についての質問など
(1)サービスの基本的要素に関して
@なぜ一般的に考えられている「サービス」と、今回のサービスの定義はこのように違ってくるのか。
 日常会話で使う言葉と、専門用語では厳密さに違いがあるのは当然です。
 
A在庫ができないことが問題点としてでていましたが、そのほうがいいこともあると思いますが。例えば在庫がないから損はしないとか。
 在庫を経営方針として「しない」のとそもそも「できない」のとではまったく意味が違います。
 
B歯医者の例がよくわからないのですが、ドクターの感じの良さということでしょうか。
 歯医者の場合の結果はなんとなく分かったのですが、でも過程がよく分かりません。
 サービスに対する顧客の価値の置き方として、サービスをうけた結果だけでなく、サービスをうける過程にもおなじように重要な価値をおいているという例にだしたものです。歯科医にかかる場合、もちろん歯を治したいわけですが、よくなればいいというだけではなくて、やはり治療が痛みがなく、スムーズで、十分な説明をうけられるかどうか、が顧客にとっては重要なわけです。
 
C「顧客と共同生産」の具体例がもっと知りたいです。
 「顧客と共同生産」は前提としてサービスの提供者が人の場合なのでしょうか。又は、精神的なサービスのときにおいてですか。
 たとえば、企業や自治体に対するコンサルタントのサービスの提供は、経営への助言や都市計画の策定といったものです。しかし、助言や計画の策定のためには、あらかじめサービスの提供を受ける側から十分な情報を得ておく必要があり、また時には受ける側(企業や自治体)の関係者と意見交換を行う必要もあります。つまり、顧客側の参加なしにサービスを行うことができません。この場合、サービスを提供する側も提供される側も組織であり個人ではありません。
 
(2)サービスの構成要素に関して
@サービスの意味を誤解しがちだが、おまけをもらうのもサービスの一つですか。
 これは違います。第一回の講義を振り返ってください。
 
Aファミレスのポイントカード、子供向けのおもちゃは、サブ・サービスの特にどの部分に入るのですか。
 まず考えてみましょう。おまけではないことに注意。
B刑事コロンボのところが分からなかった。もっと聞きたい。
 ここは今回は説明しません。単なる事例なので。
 
Cイメージ消費の例は意味がわからなかった。
 実際に提供されているサービスそのもの以外のものに、顧客が価値を見いだすというのが「潜在的サービス要素」です。イメージ消費とは、そのサービスや商品の有用性ではなく、イメージが消費されている現象をさすもので、たとえば高級ブランドのバッグなどが典型例です。例に挙げた新幹線で言えば、ほんらい提供されているサービスは早く目的地に着くことですが、たとえば子どもなどにとってはそのことのみならず「かっこよさ」や「スピード感」が消費の対象になっているのです。
 
D「態度はサービスか」のところがよく分からなかった
 態度のいい、悪いがすなわちサービスのいい、悪いではないということです。
   
Eほっといてほしい客か、対応を求めている客を見極めるのは、職員のセンスでしょうか。
 そうは言っていません。これからの講義で考えてみてください。
 
 
 
 
 
1.サービス・マネジメント論の系譜
 
(1)二つの源流
 @アメリカの「サービス・マーケティング」研究(1970年代後半〜)
    特徴:製品(goods)との対比でサービスの特徴を捉える
           「マーケティング」一般から「サービス・マーケティング」の自立へ
       具体的なサービス活動のいわば「やり方」の検討
       「顧客」への注目・・顧客満足論との関係
         *「サービス品質」の測定が重視されることのよしあし
 A北欧の「サービス・マネジメント」研究(1970年代〜)
    特徴:全体的な戦略としてのサービス・マネジメントを重視する
       「関係」を重視する
 
(2)日本の独自の「サービス・マネジメント」論
  前田勇氏・・・「サービス向上」論としての「サービス・マネジメント」
    特徴:既存のサービス活動をどう具体的に改善するか、に焦点を当てる
 
 ※詳しくは、近藤宏一「サービス・マネジメント論の枠組みと課題」『立命館経営学』第35巻第  4号掲載、参照
 
2.サービス・マネジメントの基本的な考え方
 
(1)サービス・マネジメントとは
 
 サービス・マネジメントとは
  サービスを提供する組織のあり方と、その活動の指針を導く経営活動
   *もう少し簡単にいえば、
     「サービスの生産過程についての経営と管理」
 
 
 具体的には、
  @サービス活動全体(戦略、組織、現場)を貫く方向性を示すこと。
  Aそれに応じたサービス活動の仕組みをつくること。
  Bサービスを提供する側とうける側との相互作用を通じてサービスの品質を向上させること。
  C以上の活動が全体としてよい循環を作るようコーディネイトすること。
 
(2)サービス・マネジメント・システム(テキスト12章)
 
 サービス・マネジメントを実際に行っていく上での基本的な仕組みについての考え方
 以下の五つの要素によって構成される(テキストp216、図11参照)
  @マーケット・セグメンテーション
  Aサービス・コンセプト
    以上の二つは、マーケティングあるいは戦略の領域・・・(1)の@
  Bサービス・デリバリー・システム
    マーケティングをふまえた実際のサービス活動の仕組み・・・(1)のA、B
  Cイメージ
  D組織の理念と文化
    以上の二つは組織の内外における関係の構築・・・(1)のCにかかわる
 
(3)なぜ「システム」か
 @サービスにおける戦略と実際の活動
    戦略と活動との相互作用が直接的である
    「場当たり」にならないために
 A「システム」としてサービスを考えることの重要性
    「人」に問題が矮小化されがちであるというサービスの特殊性から
    「循環」を作ることの意味
 B発想としてはさまざまな応用が可能
   例)まちづくり、地域おこし  
      *参考:コトラー他著『地域のマーケティング』1994年、東洋経済新報社。
 
3.サービスの受け手−利用者、顧客−への価値の提供(テキスト第10章)
 
 サービス・マネジメントを考える上で、そもそもサービスの受け手がサービスをどのように捉えるのか、を理解しておく必要がある。
 
(1)受け手が感じる「価値」がサービスの「価値」を決める
   @サービスは「顧客価値」によって評価される〜テキストp163、図10参照
 
   Aサービスの品質に対する評価は、期待と実績の差から判断される〜テキストp148,図8参照
 
 
(2)常連さんが大事だ=顧客ロイヤリティの重要性
   リピーターが利益を生み出す→「生涯価値」という発想
     計算ももちろんだが、具体的に考えてもリピーターの収益性・効率性は高い