サービス・マネジメント論 質問への回答
(第2回)
1.SASに関する質問
・ヤン・カールソンの戦略は現在では通じないということですが、具体的にどこが通じないのでしょうか。
具体的な戦略展開の内容が必ずしも有効ではないということで、考え方の基本は今でも非常に重要です。航空業界はハブ・アンド・スポークシステムを基礎とした連携による市場制圧競争と、徹底的なコストダウンによる価格による競争が中心になっています。各国の代表的国際航空会社が単独で国際線での顧客獲得を競った時代とは状況が異なっているので、競争の重点が異なってきています。
・なぜビジネスマンをターゲットにしたのでしょうか。その成功は時代によるのでは。
航空会社のコスト構造からして、正規運賃を支払う乗客のしめる割合が高いほうが収益力が高いので、正規運賃を支払う可能性の高いビジネス客は収益上重要なのです。
・スカンジナビア航空はどうやって離発着の時間を厳守できたのかがよくわからなかった。
・なぜ時間厳守が黒字につながるのですか。
ビジネスパーソンは時間にうるさいので、その信頼を獲得する上で時間厳守が重要であることが全社的に強く認識されたからです。結果としてビジネスパーソンの信頼を得ただけでなく、機材や人員の効率化にもつながり、黒字の源泉の一つとなったわけです。
2.ノードストロームに関する質問
・従業員が自腹を切って顧客に応えようとするが、そこから従業員が得るものは何でしょうか。
顧客の信頼であり、長期的な顧客との関係性のなかから売り上げが獲得できるからです。
・ノードストロームのやり方は割に合わないのではないでしょうか。
割にあわないのならここで紹介しません。
・現在も同じようなサービスを行っているのでしょうか。
最新の状況はフォローできていませんが、基本は変わっていないでしょう。
・他の百貨店と比べて利益率が良いのか知りたい。
アメリカの他の百貨店がどこも経営状況が悪化する中で業績を維持・向上させてきたのは確かです。
3.SASとノードストロームの共通の質問
・SASやノードストロームのようなやり方を導入して失敗した例はなかったでしょうか。その失敗した理由とは。
同じやり方を形だけ導入して失敗した例はあります。理由は、基本的な考え方や発想、視点を学ぶ必要があったのに「なにをやったのか」だけをまねしたからだと考えられます。
・個性によるサービスより、均一化されたサービスのほうがよいのでは。
なぜそう思うのかを述べてください。そうしないと回答のしようがありません。
・現場に重きを置きビジョンを示すやり方は中間管理職の必要性を薄くしているのですか。
相対的に薄くし、あり方の変化を求めているのは確かです。
・スカンジナビア航空とノードストローム百貨店の共通点は会社が何を目指している のか従業員全員が理解しお客にサービスする点と考えてよいですか。
そこが基本であることはまちがいありませんが、それがすべてではありません。
4.他社に関する質問
・現在の航空業界において注目すべきサービス戦略があればぜひ紹介してください。
むしろぜひみなさんでぜひ調べてください。ここ10年くらい注目されているのはサウスウェスト航空、コンチネンタル航空、シンガポール航空です。
・学生のような時間はあるがお金がないような人をターゲットにして成功した航空会社はありますか。
ヨーロッパには低価格運行を売り物にしたチャーター便専門の航空会社が多数あります。
・JRはSASと同じような改革を行っているでしょうか。JRは電車がよく遅れているけれど何か対策をしているのでしょうか。おこなっていないとすればどうすればいいのでしょうか。
・JRではすべての顧客のニーズを完全に充足させるのは難しいと思うのですがそのような場合どう対応していくのですか。
単純に並べて比較するのではなく、基本的な発想からなにがいえるか考えてみてください。たとえば、「遅れ」のもつ意味でも、当時のSASにとってといまのJRにとって違うでしょうし、JRでも新幹線と在来線では違うでしょう。そうすれば、重点の置き方や対策の取り方が違ってくるのは当然です。
・山中さんがノードストロームのやり方を持ち込んだ百貨店はどういう店なのでしょうか。
東武百貨店です。
・コンビニのコンピュータ端末のサービスが百貨店で取りいれられるとサービスが広範囲に提供できると思うのですが、どう思われますか。
もうやっています。
・ナイキの会長フィルナイトは世界中の下部組織のすべてに至る決定を全て自分にゆだねないと気がすまないと聞いたことがあるけれど問題はないのでしょうか。
真相は知りません。非常に巨大な才能をもつ人物がそうしたことができる可能性を否定しませんが、問題はその人物が退いた後そうした組織はほぼまちがいなく危機に瀕するということです。
・講義の中で出てきたような会社や人が日本にもいるのでしょか。
いますよ。調べてみてください。
・日本で最高のサービスを行っている企業は世界でも通用するのでしょうか?
他の質問と同様、なにをもって世界に打って出るか次第です。「同じやり方」ではほぼまちがいなく成功しません。
5.言葉の意味がわからない
・他のニーズをある程度無視して事業展開するのも戦略ですか。
マーケティング論で学んだ「セグメンテーション」を復習してください。
・顧客生涯価値の説明があまりよく理解できませんでした。
今後の講義でとりあげます。
・マネジメントとはマーケティングなども含まれているでしょうか?
今後の講義でとりあげます。