サービス・マネジメント論
-第3回 Ⅲ.サービスの基本的特徴
Ⅳ サービス・マネジメントとはなにか-
Ⅲ.サービスの基本的特徴
1.サービスの基本的特徴(「入門」p.24~、「マーケティング」p.56~)
(1)サービスの定義
サービスの定義にはいろいろあるが、サービス・マネジメント論においては、
ある主体が、他の主体にとって有用な、人、「もの」、およびシステムの機能または活動のみを提供すること。(わたし近藤のオリジナルの定義なので、テキストとは違う)
具体的にはどういうことか?
提供する主体 提供される内容 提供される主体
散髪屋さん(理髪業) 整髪という「人」の活動 個人
レンタカー会社 人を乗せて移動できるという「もの」の機能 個人や組織
コンサルタント会社 都市計画などを作るという「システム」の機能 企業や自治体
(2)サービスの基本的特徴
①基本の基本:無形性(形がない)
活動や機能は物的なかたちをとらない
無形であるために、次のような問題が生じる
・在庫ができない
・品質が事前に確認できない(例:美容師の腕はやってみてもらわないとわからない)
②無形性から派生する特徴
a)同時性(または不可分性 「入門」p.29「マーケティング」p.60)
サービスは対象がないとなりたたないし、対象は提供する側が準備することができない。
またサービスは、必要なその場でそのときに行われなくてはならないことが多い
※受け手がそのときその場にいなければ、仮にサービス活動が行われても無駄。 例:乗客のいないバス
b)結果と過程の等価的重要性
サービスにおいては結果として有用であったというだけでなく、活動や機能の提供過程
の質も問われることが多い。
例:歯医者
c)顧客との共同生産
しばしばサービスはその活動の一部をサービスの受け手の側が自ら行うことによって成 り立つ。
例:コンサルタント業
レストランでのお客さん自身の役割
2.サービスの構成要素
(1)全体像
サービスは、複数のサービス要素を含んだパッケージとして提供されることが多い。
例:交通サービスの場合、サービスはこういう構造になっている。
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サブ・サービス |
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コア・サービス |
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安全性、確実性、平等性
連続性
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①:快適性、利便性、迅速性
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②:接客態度、情報サービス、予約、
大量性、機動性、飲食物
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事故の際の対応など |
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コンティジェント・サービス |
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(2)コア・サービス
それが提供されないと、そもそもサービスとして成り立たないサービスの内容。
(3)サブ・サービス
コア・サービスに付随する副次的なサービス。
しかし、重要性は高い(コア・サービスはあるのが当たり前なので、サービスの提供をうける側は、実際にはサブ・サービスでサービスの評価を決めることが多い)。
サブ・サービスは二段階となることも多い。
①サービス内容それ自体は必ず必要だが、程度が異なるもの(上の例では快適性など)
②サービスが必要とされる目的によってあったりなかったりするもの
(上の例では乗務員などの接客態度や、予約ができるかできないかなど)
(4)コンティジェント・サービス
通常の状態以外に対する状況適応的なサービス。
主に、通常のサービス活動が攪乱されたときにそれに対応・処理することを内容とする。
例)事故、停電など外部の攪乱要因:SASの雪の日のコーヒー
顧客・利用者などサービスの受け手からの「特別な」要求
:超高級レストランで「チリ」を注文する刑事コロンボ
(6)態度はサービスか(「入門」p.44「マーケティング」p.54)
人に対するサービスにおいて、態度が重要であるのは確かだが・・・
例1)温泉旅館で、愛想のない仲居さん
例2)ヤブだが、愛想のいい医者
つまり、サービスの目的との関係でそれが求められているときに、求められている態度がサー
ビスである(愛想がよければサービスがよいわけではない)。
→サービスには「機能的側面」と「情緒的側面」がある、と理解すべき
3.「もの」とサービスの関係(「入門」p.46「マーケティング」第5章)
形のある「もの」とサービスの関係では、次の点を理解しておく必要がある。
①「もの」を媒介としたサービス活動がある
例)レストランでは食べ物が出てくるが、単に食べたいだけなら中食でも家で作っても
よい。つまり、調理自体がサービスである。
②「もの」とサービスが相互に代替性がある場合がある
例)大学へ行くために自転車を買うか、定期券を買うか
③「もの」の機能を発揮するためにサービスが必要なことがある
例)ユーザーサポートのないパソコンを買うと・・・
Ⅳ.サービス・マネジメントとは何か
1.サービス・マネジメント論の系譜
(1)二つの源流
①アメリカの「サービス・マーケティング」研究(1970年代後半~)
特徴:製品(goods)との対比でサービスの特徴を捉える
「マーケティング」一般から「サービス・マーケティング」の自立へ
具体的なサービス活動のいわば「やり方」の検討
「顧客」への注目・・顧客満足論との関係
②北欧の「サービス・マネジメント」研究(1970年代~)
特徴:全体的な戦略としてのサービス・マネジメントを重視する
「関係」を重視する
(2)日本の独自の「サービス・マネジメント」論
前田勇氏・・・「サービス向上」論としての「サービス・マネジメント」
特徴:既存のサービス活動をどう具体的に改善するか、に焦点を当てる
※詳しくは、近藤宏一「サービス・マネジメント論の枠組みと課題」『立命館経営学』第35巻第 4号掲載、参照
2.サービス・マネジメントの基本的な考え方
(1)サービス・マネジメントとは
サービス・マネジメントとは
サービスを提供する組織のあり方と、その活動の指針を導く経営活動
*もう少し簡単にいえば、
「サービスの生産過程についての経営と管理」
具体的には、
①サービス活動全体(戦略、組織、現場)を貫く方向性を示すこと。
②それに応じたサービス活動の仕組みをつくること。
③サービスを提供する側とうける側との相互作用を通じてサービスの品質を向上させること。
④以上の活動が全体としてよい循環を作るようコーディネイトすること。
(2)サービス・マネジメント・システム(次回以降詳しく)
サービス・マネジメントを実際に行っていく上での基本的な仕組みについての考え方
以下の五つの要素によって構成される(「入門」p.81、「マーケティング」p.216図)
①マーケット・セグメンテーション
②サービス・コンセプト
以上の二つは、マーケティングあるいは戦略の領域・・・(1)の①
③サービス・デリバリー・システム
マーケティングをふまえた実際のサービス活動の仕組み・・・(1)の②、③
④イメージ
⑤組織の理念と文化
以上の二つは組織の内外における関係の構築・・・(1)の④にかかわる
(3)なぜ「システム」か
①サービスにおける戦略と実際の活動
戦略と活動との相互作用が直接的である
「場当たり」にならないために
②「システム」としてサービスを考えることの重要性
「人」に問題が矮小化されがちであるというサービスの特殊性から
「循環」を作ることの意味
③発想としてはさまざまな応用が可能
例)まちづくり、地域おこし
*参考:コトラー他著『地域のマーケティング』1994年、東洋経済新報社。
サービス・マネジメント論 グループ・プレゼンテーションの準備について
毎回の講義90分を、その回のプレゼンテーション担当班が協力してプロデュースしてもらいます。したがって、自分たちでプログラムを作り、受講生が勉強になるような充実した内容を準備してください。
次の点に気をつけて準備を進めてください。
1.講義全体のプロデュースについて
①各グループの順番を単に並べるのではなく、どのようなつながりを作っていけばよいか考える。
②司会者とディレクターを配置し、時間を管理する。
③近藤がコメントする時間(個別なら各班2分程度、一括なら全体で10分程度)や、カード記入の時間も考えておく。
2.評価について
内容とプレゼンテーションのよしあし両方をふまえた評価シートを、各回の代表者で協議して作成してください。また、プレゼンテーション、試験、出席の配点を考えて提案してください。
3.各班のプレゼンテーションについて
(1)内容について
①興味のあることだけを発表するのではありません。自分たちで決めたサービス業について、最初に配ったレジュメで指示したような点をきっちり調べて受講生に説明しなければなりません。
②具体的な例を示すのはよいですが、それぞれの分野のサービス業全体の状況を代表するか、あるいは特徴がよくわかるような例を示す必要があります。
(2)資料について
一冊の本、一カ所のwebsiteだけにたよるのではなく、複数の情報源を使ってください。特に、次のようなものはぜひ参照してください。
・業界や企業の基礎データについて:各種政府統計、日経テレコン、就職ガイド本も役に立ちます。
・最近の状況について:雑誌(「ダイヤモンド」「日経ビジネス」)、新聞記事(「日経流通新聞」)等
・各企業や業界団体の公式ホームページ
※公式でないホームページにはたよらないこと
なお、データの出所(参考資料リスト)は必ず明示してください。出所の不明瞭なデータや内容はまったく役にたちません。
(3)プレゼンの方法について
ただレジュメを棒読みするだけではプレゼンテーションになりません。逆に、PowerPointなどでビジュアルに凝っても、中身がなければなんともなりません。
①図表を使う・・・グラフなどを使うと、状況が把握しやすくなる。
②対話的に進める・・・受講生にマイクをむけたり、手を挙げてもらって数を数えたりするとよい。
③重要なポイントを明確にする