サービス・マネジメント論 質問への回答(第5回)
サービス・デリバリー・システム
サービス・デリバリー・システムの図がよくわかりません。デリバリーはどんな意味ですか。
deliveryは直訳すると「配送」ですが、ここではサービスをその受け手(顧客、利用者)へ届けるプロセス全体をさします。システムですから、そのプロセスをどのようにシステムとして構成しマネジメントするのか、というのが課題になります。
図は、システム全体がバックステージとフロントステージからなり、フロントステージは顧客(利用者)も含めてマネジメントの対象となること、バックステージとフロントステージそれぞれが三つの要素から構成されることなどを示しています。
生産と消費が同時でないサービスにはサービス・デリバリー・システムは機能しないでしょうか。
フロントステージとバックステージに距離があるということになります。そうした形態にふさわしいデリバリー・システムが必要ということです。
サービス・デリバリーの図で顧客が物的要素、技術、従業員に入り込んでいるのは具体的にどういうことでしょうか。
顧客がサービス活動に入り込んでいることと、こと、三つの要素それぞれに接点があることを示しています。
サービス・デリバリーの図で他の顧客がいるのはなぜですか、その意味はあるのですか。
顧客の役割で説明したような、サービス生産プロセスに直接的または間接的に参加しているということを示しています。
サービス・デリバリーの技術はレストランでは「料理の腕」になりますか?テーマパークでは何になりますか。
技術とは主にハードウェア的な技術をさしています。料理の腕は、基本的な技能という意味では技術(料理道具という物的要素を使いこなすという意味での)になるでしょうが、料理の腕そのものが売り物になるような場合にはむしろ人材のほうにはいるでしょう。ファミレスで必要な「料理」と、高級フレンチの店で必要な「料理」の違いですね。
テーマパークでは従って、さまざまなアトラクションをコントロールすることや、入場をうまく調整して混雑感を減らすなどがあるでしょう。
サービス・デリバリーの図はレストランだけでなく旅行代理店にも当てはまりますか。
もちろんです。
サービス・デリバリー・システムはインターネット(エキサイトなど)ではどうなっていますか。
ネット上のサービスにおいても、サービス・エンカウンターはあるわけです。ただ、そこのフロントステージには人がおらず、閲覧されているページの技術と物的要素が顧客に対応し、顧客は選択したり書き込んだりという形でサービスの生産プロセスに参加しています。
フロント・ステージ、バック・ステージ
サービス・デリバリー・システムにおけるバック・ステージとフロント・ステージの重要性は同じですか。
どちらが重要というものではなく、双方不可欠です。
コンビニの場合、フロント・ステージとバック・ステージはどうなりますか。
フロント・ステージは店舗でしょう。バック・ステージは、広くとればコンビニ本部における店舗指導や仕入れ管理、製品開発なども入るといえます。
バスの運転手はフロント・ステージですか。
オープンキッチンではシェフの技術だけでなく、なべ・オーブンもフロント・ステージになりますか。
いずれもそういえるでしょう。
エンカウンター・従業員の役割
サービス・エンカウンターの意味がよくわかりませんでした。
顧客に直接接する点のことです。encounterは出会い、遭遇です。スピルバーグの有名な映画「未知との遭遇」の原題は、Close Encounters of the Third Kind です。
サービス・エンカウンターにおける「提供する場」の場とは具体的になんですか。
サービスを提供する場、そのものです。
従業員の役割のアクターの意味がよくわかりません。
いろいろな役割を組み合わせて、それを全体として「演技」として顧客に示すということになります。ここには二重の意味があり、第一にはよい演技者として顧客に良質のものを提供する必要があるという意味と、従業員がよい役者として自分の人格や個性とは関係なく顧客に対して適切な演技をするという意味があります。派手なプレイボーイ役で有名な俳優が私生活ではきわめて質素で家庭的であったという話がありますよね? それと同じことです。
従業員の役割を果たすために従業員に一番求められることは何でしょうか。
「望ましい行動」を自ら作り出すのは大変だと思うのですが、具体的にはどうすればいいのでしょうか。
上の続きになりますが、自分に何が求められているのかをよく理解することでしょう。そして、そのことによって自分自身が達成感や満足感を得られるようになれば、自ずと向上していくといえます。
言葉の意味
エトスの意味がわかりません。
国語辞典では「社会集団・民族などを特徴づける気風・慣習。習俗」とあります。また、「芸術作品に含まれる道徳的・理性的な特性。気品」という意味もあり、ここでは倫理的に高い水準にある気風や慣習ということでしょう。
セグメントとコンセプトの関係がわかりません。
これはテキストを読んでください。
顧客と客の違いはなんですか。
「客」とは客観的な表現です。「顧客」とはサービス提供組織からみて「自分たちの客」という意味になります。
その他
サービス・システムにおいて従業員のやる気や見た目(イケメン店員)はどこに位置づけられますか。
やる気は人材育成上の課題です。見た目は物的要素でしょうね。
食べたらすぐに出なければならないラーメン屋もサービスでしょうか。
サービスの定義からして、サービスはサービスです。そのサービスの質の問題は別です。
サービスの用語、会社の理念を朝礼のときに言ったりするのは意味がありますか。
形から入るという意味はあるでしょうが、高い質のサービスをめざすうえではあまり効果がないと考えています。
SASのチケットなしで乗れた話ですが、他の客に対してチケットに対する意識が低くなるという悪影響はありませんか。
その危険性はあります。
顧客の満足を判断する方法はどのようなものがありますか。
顧客満足度調査という手法があります。
価値あるサービスで企業に利益が出なくても、続けることで世間での評価が上がり利益は出るようになるでしょうか。
利益が出る前に資金が尽きればおしまいですから、真に価値あるサービスであればそれを伝える工夫は必要でしょう。