サービス・マネジメント論
-第7回 サービス・マネジメントの展開(1)-
サービスの特徴をふまえたサービス事業の経営のためには、サービス・マネジメント・システムを基礎にしながらもさらにいくつかのポイントについて特に注意を払う必要がある。これらの点についてこの後の講義では解説していく。
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1.顧客ロイヤリティと顧客満足(テキストp257)
(1)利益の基礎はリピーターである
なぜリピーターが利益を生むのか
①新しい顧客は最初はむしろ費用を生むが、反復利用してもらうと経費より収入が増える
例:クレジットカード
②リピーターはサービス内容を理解しているので、サービス提供側の手間が省ける
サービスへの期待水準も安定しているし、サービス活動への参加もスムーズである
③リピーターは口コミをつかって宣伝してくれる
④関連の商品を買ってくれる
例)ほかで安く売っていることを知っていても、いつもいく美容院で化粧品を買う
(2)どうやればリピーターが作れるのか~顧客ロイヤリティの向上
顧客ロイヤリティ:たとえば、「ラーメン食べに行こう」と思ったら何も考えずに「天下一 品」というような感じ
顧客ロイヤリティを高める前提
①顧客満足→後で説明
②スイッチング・コスト:顧客・利用者がサービス提供者を変更するときに必要なコスト
*金銭的というより肉体的・精神的負担 例)かかりつけの医者
③人間関係の絆
*三つの要因の影響力の大きさは、問題となるサービスの性格によって変わってくる
顧客ロイヤリティはなぜ重要か・・・テキストp263
(3)顧客満足(CS)
顧客満足=顧客(利用者)のサービスに対する主観的な評価の結果
「飢えや渇きをいやす」という客観的な生理的充足感とは異なる
なぜ顧客満足が重要か:
①「買い物が楽しかった」というような主観的充足感自体も消費の目的になる
②充足感は、次への期待を生み、リピーターを生み出す原動力になる
*顧客満足を高める原動力はサービス品質の向上・・・これについては次項以下で説明
2.従業員満足とインターナル・マーケティング
(1)「ハッピーな従業員は顧客満足を高める」(テキストp273)
人材の重要性からすれば従業員が意欲を持って働ける職場づくりが必要である
満足感を持って働く従業員が顧客満足を高め、そのことで従業員の意欲も向上する
(2)どうすればハッピーな従業員を作れるか~笑顔ほど高いものはない?!
内部品質を高める・・・ ①従業員が個人的欲求を満たすことのできる人事配置と制度
*マズローの欲求段階説
②仕事のしやすい職務の構造や仕事の流れ
③設備・道具が十分である
④やる気を引き出す組織の風土
⑤もちろん、適切な報酬や評価
*サービスは一般に低賃金・不安定雇用労働者によって支えられることが多いが、
それでよいのか、という問題はある。
(3)インターナル・マーケティング
「有能な従業員を彼らの欲求を満足させるような『仕事そのもの』によって引きつけ、育成し、動機付け、ずっと働き続けてもらうこと」のために従業員にはたらきかけることを、マーケティングにたとえた言葉。
特に重要なのは従業員のエンパワーメント(「入門」p.178)
*エンパワーメント:力を付けることと権限を与えることの両方の意味を含む
単に権限を再配分するのではなく、従業員を信頼しきる、ことが重要。
「従業員一人一人を企業家のように」 例)3M
3.ホスピタリティ
顧客満足を高める従業員の顧客・利用者への接し方-「真実の瞬間」-をどのように考えるのかというところで、はじめて顧客への態度や姿勢といったホスピタリティ(文字通り訳せば「もてなし」)の重要性がでてくる。
(1)ほんとうのもてなしとは
・日本では、もてなす側の主観的な姿勢が重視される・・・「顧客本位」ではない
また、もてなす側の一方的「奉仕」によるある種の擬制的な上下関係・・「お客様は神様 です」
→これは下手をすると押しつけになる 例)デパートなどの店員
・「押しつけ」から顧客(利用者)の主体性の尊重へ
例)ホテルオークラのタオル(「入門」p185)
必要条件・・・複数の選択肢の提示と顧客(利用者)の自己決定
(2)どのようなもてなしが必要か~ホスピタリティが充たす三つの基本欲求
①安全・安心:身体的・心理的・経済的脅威に脅かされないこと
例)「時価」のすし屋
②自尊:顧客に恥をかかせないことが非常に重要である
*「顧客が信じたことは、顧客にとっては真実である」
~納得しがたいが、そう考えないといけない
③公平:顧客によって態度を大きく変えるべきではない
*顧客に「公平に扱われている」と信じてもらうことが大切。